タイトルは一応、トライフをイメージしてつけましたが、あまり話の内容と合っている気がしません。
二人の会話が中心の話なので、それほど中身はないですが、挑戦してみました。
この話にでてくるシュリルという翔士について、「初陣」にのっているので、できたらそれも読んでくれると嬉しいです。
久々にジントとラフィール以外のコンビの話を書いたけど、けっこう難しかったです。
二人のコンビが好きな人がいて、楽しんでくれたら嬉しいです。
「どうやら、戦わなかったのは、おれたちだけか」
狩人作戦の作戦終了の通知と共に、各艦隊の報告書に目を通して、トライフ・ボルジュ=ユブデール・レムセール大提督は、不満そうにつぶやいた。
彼の姿は、アーヴにはめずらしくがっちりした体格、髪は緑色、浅黒く中高の顔は精悍であり、ある種の猛禽類を思わせていた。
「閣下、狩人艦隊司令部の報告書に何か不備でもありますか?」
その様子を見ていた参謀長のカヒュール・ボート=サテク・公子・レメーシュ准提督はつぶやいた。
「いや、そうではない。ただ、他の艦隊は小規模なりとも戦闘はあった。あの強行偵察が主任務のスポール提督率いる第一艦隊でさえもだ。しかし、俺の艦隊はこれだけの数がありながら、結局一回も戦わずじまいだ。」
「閣下、そんなことを気にしていたのですか?」
「そんなこととは、なんだ。この第二十一艦隊は、狩人作戦の決着を決めるためのいわば、必勝の艦隊だ。それがだ。一回も戦闘なしだぞ。」
「しかし、閣下、この艦隊は現に戦わずして勝つという戦戦略上もっとも、有効な戦法に有効でした。ですから、無理にそのようなことを気にすることはないと思います。」
「確かにお前の言うことも一理ある。でも、そんな役割なら俺ではなくてもよかったではにないか。それならビボース提督のように何も考えず敵領土を蹂躙したほうがまだ、面白みがあるというものだ。」
「閣下がビボース提督の今回の突出した侵攻を支持しているとは思いませんでした。」
「違う、ビボースなんぞを支持しているわけではない。ただ、戦わないならそっちのほうがましだということをいいたかったのだ。」
「なるほど。要するに閣下は、今回の役回りに不満があったのですね。ですが、閣下は、この艦隊を任されたとき、とても満足されていました。それを今になって、狩人艦隊司令部を批判するのはどうかと思いますが・・・・」
「そんなことわかっている。ただ、俺の思惑通りにことがいかなかったことに苛立っているだけだ。」
「なるほど。しかし、軍士のほとんどは戦わずして勝った事にとりあえず満足しているようです。祝宴も行われたし、不満があるのは閣下だけだと思います。」
「それもわかっている。だから、この苛立ちをなんとかできないものかとしているんだ。次の大規模な作戦まで時間があるし、この役割はもう二度とこないかもしれない。」
「そんなに悲観なされることもないでしょう。今回の狩人作戦の天王山を事実上任されたのは閣下ですし、軍令本部も閣下の評価は高いから次の機会もあるでしょう。」
「そうか、わかった。納得しよう。ときにカヒュール、何か面白い話は何か。もう、この話題は不愉快になる一方だ。たまには気の利いた話題に変えろ。」
「はあ・・・面白い話と言われましても、そうですね。三つほど用意します。今のところは・・・・」
「ちょっと、待て?三つのうち、どの話を最初に話そうとしているのだ。」
「はい、私が昔飼っていた猫の話をしようかと思いました。」
「それは、俺が面白いと思う話か・・・」
「いえ、閣下の好みには合わないと思いますが、試してみないとわかりません。」
「それは却下だ。もしかして、おまえの三つの話の中で最後に面白い話をする気ではないのか」
「はい。一番、閣下が気に入る可能性の高い話は三番目にしようかと思いました。」
「おまえは優秀だが。一番高い可能性を先に言わず、もったいぶる」
「すいません。わかりました。では、三番目の話をしようかと思います。」
「ちょっと、待て。二番目の話はどんな内容か。少し気になるな。」
「ええ、私の家風について話そうかと思いました。」
その言葉を聞いたとき、ふとトライフはカヒュールの家風について興味を抱いた。だが、それ以上にカヒュールが自分の興味をひきつける話があるという話ぶりに驚いた。
「うん、今回はおまえの家風については、やめておく。最後の話を聞こう」
「はい、わかりました。私がする話は、今回の狩人作戦である武勲をした翔士の話です。」
「ほう、どんな翔士なのか。」
「今回の狩人作戦の初陣でいきなり列翼翔士から前衛翔士の二階級特進果たしました。」
「待て。初陣で二階級特進だって、そいつは生きているのか。」
「ええ、もちろんです。死んで二階級特進の翔士の話題など閣下も聞きたくないでしょう。」
「うむ、そうだな。その翔士の名前は何と言うのだ。」
「閣下、その前にこれを見てください。その翔士がある巡察艦で特別に先任砲術士として、模擬戦闘の結果です。ちなみに星界軍の伝統どおり、公式記録には載りません。」
トライフは端末腕環でその情報を受け取り、思わず拳を握り締めた。
彼の星界軍の翔士としての誇りと矜持がその行為にいたらせたのであった。
「なんだ、これは。練習艦隊の判定委員との模擬戦闘で10連勝だと。練習艦隊所属のやつらは何をやっているのだ。こんな新米たちに負けるなんて。これは何かの間違いではないのか。」
「いいえ、閣下、これは紛れもない事実です。それにこの実力があったからこそ、狩人作戦で二階級特進の武勲を立てたと思います。」
「そうか、しかし、どうして列翼翔士が先任砲術士をやるのだ。位階が合わないだろう。」
「それも、練習艦隊の判定委員から先任砲術士をやるように指名がきたみたいです。」
「なんだと、その翔士はいったい何なのだ。いい加減、もったいぶるのは、やめろ。」
あまりにもトライフの常識とかけ離れた新米翔士の正体がきになり、思わずトライフは叫ぶ。
「シュリル・ウェフ=キルヒム・ユーリル前衛翔士といいます。」
「シュリル翔士?どこかで聞いたことがあるな。」
「『黄金眼の天才児』といえば、閣下もきいたことがあるでしょう。」
「あの『黄金眼の天才児』か。なるほど、星界軍飛翔科修技館史上、最高の成績を上げたというのは伊達ではないということか。ああ、そういえば、『至高』でも戦った。あのときは、見事にやられたな。しかし、10連勝とは・・・・・判定委員もふがいない。」
「ですが、別に憂慮すべき事態ではないでしょう。むしろ、どうやら今回のことで練習艦隊の判定委員の方々もより、いっそう新米翔士の教育に力が入っているみたいです。これまで新米相手だったので、漠然としてぬるま湯みたいな綱紀があらたまったみたいです。」
「そうなのか。確かに、今回のことは彼らの矜持や誇りを刺激しただろうな。しかし、それにしてもすごいな。」
「閣下、驚くのはまだまだです。実はシュリル前衛翔士が実戦に出る前にひと騒動、狩人第五艦隊に起きまして、それにかかわったみたいです。」
「なんだ、判定委員に10連勝のほかにも驚くことはあるか。」
「はい。その前に少し説明があります。私はこの狩人作戦で狩人第五艦隊の参謀長のセスカース准提督と知り合いです。」あいかわらず無表情話すカヒュール
「それが何の関係があるのだ。」
「その現場を実際に見たというか処理に携わったのが彼なのです。」
その後、カヒュールはそのときの状況を詳しく説明した。
彼の説明によれば、シュリル前衛翔士は当時、狩人第五艦隊の艦隊司令長官と参謀長であるコトポニー大提督とセスカース准提督と一緒に軌道酒保街<ハルグー>で歓談をしていた。そして、そのときに、近くである軍匠科の女性翔士をめぐって、乱闘が起きたのである。
「なるほど、経過は理解した。そこで、コトポニー大提督がシュリル前衛翔士にその乱闘を止めるように命令したのだな。」
「閣下、見事です。そのとおりです。ですが、どうして、コトポニー閣下がその行動をとると思いました?」
「コトポニー大提督は乱闘が起きて、それをほうっておくほどの無責任な人ではないし、かといって自ら止めに行くような目立ちたがりでもない。手ごろな相手としてシュリル前衛翔士を指名したのだろう。もっとも、彼女がいなかったら、その役目は参謀長に負かされたと思う。」
「なるほど。閣下をどうやら、誤解していたみたいです。どうやら、人を見る目は確かなようです。後に同じようなことをセスカース准提督も言っていました。」
「あたりまえだ。俺は無能ではない。そんなやつが星界軍の大提督になれるか。それで、乱闘を止めた相手はどんなヤツだったのだ。」
「詳しい話は後で説明しますが、空挺科翔士が15名です。『青き雷(いかずち)』という部隊です。空挺科の地上制圧部隊ではなかなか名がとおっているそうです。」
「なるほどな。それをどうやって、止めたのだ。」
「閣下、最初はある軍匠科の女性翔士に不道徳な行為を行おうとしているところを注意して、次に警告、最後は実力的行動、ひらたくいえば、殴り合いで解決しようとしました。」
「そうか、しかし圧倒的に不利だな。俺なら援軍を呼ぶが、相手がただの素人なら俺も15人くらい平気だが、白兵戦の専門の空挺科翔士とやりあうとは分が悪すぎる。」
「はい、星界軍の規則では武器による私闘は禁じられていますし、彼女も素手で戦いました。」
「そうか。それで、結局どうなったのだ。もう、もったいぶるなよ。これは、命令だ。」
カヒュールが話を引き伸ばすような雰囲気を感じてトライフは機先を制した。
「はい。三分ほどで空挺科翔士15人が全員、病院船送りです。」
「参謀長、嘘を言っているのか。お前は。」思わず大声を上げるトライフ
「いいえ、事実です。もし疑うならコトポニー閣下の報告書も見せましょうか。」
「いや、疑ってわるかった。」
「閣下から陳謝の言葉を聞けるとは驚きです。」
「カヒュール参謀長、俺だって、謝るときはある。それより、シュリル前衛翔士とは一度話して会ってみたくなった。非常に興味深い。」
「それはなによりです。私がこの話をしたかいがあります。ですが、まだ、最初に言ったシュリル前衛翔士が二階級特進となった武勲の話はしていません。」
「おお、そうだったな。しかし、今回の戦いは大規模な会戦はなかった。掃討戦ばかりだから、武勲を上げるというのは難しいぞ」
「ええ、ですが確実にシュリル前衛翔士は二階級特進に値する武勲をあげました。巡察艦の先任砲術士として突撃艦12隻を撃墜しました。しかも、味方の援護もなく、機雷の残弾が四発という状況の中です。」
「なんだと、どんな魔法を使ったのだ。しかも確か、シュリル前衛翔士が乗っていた艦はほとんどが新米でそのときが初陣だったはずだ。そんな連中が12隻撃墜だと」
「ええ、しかも負傷者は出ましたが、死者は0です。」
「おい、いまなんていった。」
「はい、死者は0です。」
「まったく、とんでもないことをするな『黄金眼の天才児』。あきれて、何も言うことができん。カヒュール参謀長、そのときの資料は思考結晶にあるな。」
「はい、あります。私も見ましたが、こんな方法で敵を殲滅できるとは思いませんでした。その称号にふさわしい翔士であることは、今回の戦いであらためて実感しました。」
「そうか、とりあえず、後で見ておく。ときにカヒュール参謀長」
「はい、なんですか?閣下。」
「おまえはやはり、優秀な男だ。俺が満足できる話を用意してくれた。おまえに感謝する。」
トライフ拳を振り上げて、大げさに主張した
「光栄です。」カヒュールはきわめて、冷静にトライフの感謝を受け止めた。
こうして、いつもの質実剛健、猪突猛進なる司令長官と冷戦沈着かつ、無感動の参謀長は旗艦<スールビルシュ>において、いつもの情景をあらわしていた。
あらたなる戦いが再び始まるまで・・・・・・
<完>