オリジナルキャラのダリシュの父親のハーデスとその兄であるタトゥースとのキルヒム家の後継争いの話です。
基本的には悲しいお話なので、ハーデスの過去は、つらかったということを表現したかったです。
ちなみに、星界の紋章や星界の戦旗のキャラが一人も出てこないので、どっちかというと二次小説というよりは、3次小説のような気がします。

設定

シュリル・ウェフ=キルヒム・ハーデスの青年時代です。ちなみに彼と母親の関係はあまりよくなくて、どちらかというと兄タトゥースとの関係の方が親密だったという風にしました。


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星界の風章「決闘」

シュリル・ウェフ=キルヒム・ハーデスは、こんな事態が起きるとは思わなかった。いや、むしろ、絶対、起きたくなかった。

 

紋章院の特殊諜報組織『青の牙』の長であるヘルマスターを決める決闘。

ハーデスは、この日が決まったとき、深い悲しみと憤りを感じていた。

 

「あの日から、兄さんとの関係が壊れてしまった……。あの日から兄さんが変ってしまった。母さん、ひどいよ。こんな辛いことを私に課せるなんて。」愛用の凝集光銃の手入れをしながらつぶやくように言うハーデス

 

 

決闘の日の3ヶ月前

 

 

「タトゥース、ハーデス、よく聞いて、二人にここに来てもらったのは、次のキルヒム家の後継者、つまり『青の牙』のヘルマスターを指名するため。」

ハーデスの母親のシュリル・ウェフ=キルヒム・アテナが言った。

 

彼女の姿は、瑠璃色の腰まで伸びた豊かな髪にエメラルドグリーンの瞳を持ち、歴代のヘルマスターで最も美しいといわれる美貌を持っていた。

 

「そうですか、わかりました。(やっと、母さん、僕に後継ぎを正式に告げてくれるつもりだ)」確信するタトゥース

 

 

「わかったよ。母さん。(やっと、兄さんがヘルマスターだ。嬉しいな。大好きな兄さんのもとで働けるなんて。)」タトゥースがヘルマスターだと確信するハーデス

 

だが、二人の想いとは裏腹にアテナが指名したのは、ハーデスだった。

 

「次のヘルマスターは、ハーデス。あなたよ。」決意した風に言うアテナ

 

その瞬間、ショックのあまり二人とも沈黙してしまった。

 

いち早く、ショックから立ち直ったハーデスが抗議した。

「母さん、どういうことなの?どうして、タトゥース兄さんがヘルマスターじゃないんだ。信じられないよ。いっていることおかしいよ。」怒りの目でアテナを見るハーデス

 

「母さん…理由を。どうして、僕が駄目なのですか?」普段は沈着冷静なタトゥースだが、このときばかりは、声を荒げていて、唇を振るわせいた。

 

 

「ええ、二人とも納得いかないようなので、説明するわ。確かに今のところの実力は総合的にはタトゥースが上。特に思考結晶に関することはハーデスを圧倒している。でも、個人能力だけでヘルマスターを選ぶわけではないの。簡単に言うとハーデスには、部下の信頼はあるが、タトゥースにはない。これが決定的な理由。」二人を眺めながら言うアテナ

 

 

「どうして…部下に信頼されていないって?」疑問を口にしていたがタトゥースはアテナの言いたいことは、わかっていた。

 

その後、アテナは、ヘルマスターとしての資質に関して二人に説明した。

タトゥースの性格は、常に冷静沈着で慎重であったが、自分の感情を抑えるあまり、あまり他人と交流することは少なかった。そして、作戦面において、常に自分の安全性を確認して、成功率の高いものしか、これまで選んでなかった。しかも、彼は思考結晶を扱った特殊工作が得意であったために、部下の力を軽視しがちだった。でも、作戦成功率や生存率はきわめて高く、ハーデスよりも成功を収めていた。

それに対して、ハーデスは常によくも悪くも感情を表現していた。とにかく熱血な感じで成功率ということを考えず、最前線で作戦を行っていた。部下に対して言いたいことは、言い。思ったことを口に出すタイプだった。諜報員の中では、珍しいタイプだったが、彼の常に全力でやる姿勢は、部下達に好感を持たれていた。少なくても、あまり、前線にでないタトゥースよりは、信頼も厚かった。

ヘルマスターである『青の牙』のリーダーとしては、部下の信頼を重要視した。タトゥースよりもハーデスの方がこの点でははるかに優れていたのであった。

 

「母さん、私をキルヒム家から除籍してよ。そうすれば、兄さんがヘルマスターになれる。それに部下の信頼なんか、ヘルマスターになってからも得れる。お願いです。」絶対にタトゥースをヘルマスターにさせたいハーデス

 

 

「ハーデス。そんなことは、できないわ。この決定を変える方法は一つだけ。」

 

「そうだ。ハーデス。母さん、決闘を要求します。僕がヘルマスターになるために。」何かを捨てて、何かを決意したような表情で言うタトゥース

 

 

「そ、そんな兄さん。嫌だよ。兄さん。」今にも泣き出しそうな表情ハーデス

 

「タトゥース。わかったわ。あなたの要求を正式に受ける。日時は3ヶ月後、場所は、ポイント26-87にある紋章院が管理している突撃艦の廃船で行う。」憂鬱な表情を浮かべるアテナ

 

「わかりました。母さん。じゃぁ、ハーデス。その場所で。」そういって、タトゥースはゆっくりとその場から去っていった。

 

「待ってよ。兄さん。兄さーーーーーーーーーーん」

最後は子供のとき以来の涙を流してタトゥースの去っていく背中に向けてハーデスは絶叫した。

 

 

決闘を告げられてからの1週間後、ハーデスは悩んでいた。キルヒム家の決闘の勝敗は二つあった。負けを宣言するか、相手が死ぬか。その二つだけだった。ハーデスがそのことについて悩んでいると、タトゥースからメッセージがハーデスのクリューノに届いた。

 

<ハーデス、わかっていると思うが、決闘は全力で行え。手を抜いたり、簡単に負けを宣言するのは、僕の誇りを侮辱するものだ。そうさせないための警告の映像も送っておいた。ぜひ、見てくれ タトゥースより>

その映像に映っていたのは、ハーデスが『青の牙』で最も仲が良かった部下二人の死体だった。

 

「…・兄さん、なんてことを…。まさか、ハイカールも」

 

ハーデスは、そう思い、親友であるナシュータ・ボルジュ=メギド・ハイカールにクリューノで連絡をとった。

 

 

「どうした?ハーデス。何かあったのか?」無愛想な表情でハイカールは通信に出た。

 

「よ、よかった。生きていた…」

 

「…ハーデス、泣いているのか?…とにかく、会おう。その様子だとその方がいいだろう。例の場所で。」

 

「うん、わかった。ハイカール」

 

 

イザラス区・沈黙の森

 

「ここに来るのは、久しぶりだな。ハイカール」

 

「そうだな。初めて、ハーデスとあったところだ」

 

「うん。10歳のとき、私が泣いていて、この森に迷い込んでいたら、木の上から突然、降りて、うるさいといったのは、今で覚えているよ。」懐かしそうに言うハーデス

 

「そんなこともあったな。さぁ、話してみろ。」急に肩を叩き促すハイカール

 

「わかったよ。ハイカール」親友のハイカールが自分の気持ちを察したことを感じるハーデス

 

ハーデスは、その後、キルヒム家の後継者に母親から自分が指名されて、そのため、それを不服とする兄のタゥースから決闘を申し込まれて、約3ヶ月後、それをしなくてはならない状況であり、それだけでなく、タゥースは、自分に最も仲の良かった部下まで殺した。自分と本気で勝負させるためにということも説明した。

 

 

「ハイカール、私はどうしたらいいのだ?」

 

「私からは一言だけいう。親友の君には生きていて欲しい。それだけだ。」真剣な瞳でハーデスを見つめるハイカール

 

 

「わかった。絶対、生き残る。君のために。」完全に決心するハーデス

 

「そうか、約束だ。親友としての」そういって、無言でハーデス抱きしめるハイカール

 

「わかった。ありがと。」

 

 

再び、決闘の当日・廃艦になった突撃艦の一室

 

「もうすぐ、時間だ。タトゥース兄さんもここに入っただろう。たぶん、殺さなければこっちが殺されるだろう。ハイカールのためにも、私は生き残らなければならない。絶対にだ」

凝集光銃を握り締めて、最後の決意を決めるハーデスだった。

 

 

『青の牙』のヘルマスターであり、キルヒム家の当主を決める決闘は、突撃艦の廃艦で行われることになっていた。その場所を選んだ理由は、まず、『青の牙』という組織の性質上、敵から自分の姿を隠しながら倒すということも求められていて、あまり、広くない突撃間の内部ではそれがやりやすかった。そして、そういう狭い空間で相手の動きを読み、倒すという心理的な戦術も決闘では必要だった。

この決闘は、制限時間があって、3時間。それ以内に敵を倒せないと、爆発するというものだった。さらに、この突撃艦にあるのは、救命夾が一つだけだった。敵を倒すか、負けを認めさせた時だけ、作動するように細工されたものだった。

 

 

決闘開始の時間の1分前になって、タトゥースからハーデスに通信が入った。

 

「どうやら、その顔は覚悟が決まったみたいだな。ハーデス」

 

「はい、兄さん。」

 

短いやり取りの中に互いに探り合う二人だった。

 

 

……決闘開始時間……

 

ハーデスは、決闘開始と同時に自分の銃の腕を最も生かせる地形でタトゥースを待ち伏せるという作戦をまずとった。タトゥースよりは、銃の腕に関しては自信があったが、タトゥースもそれをわかっているので、まずは、状況を少しでも有利にするための措置だった。

 

 

「…ち、兄さんに先を読まれたか。」

ハーデスは突撃艦でもかなり、広い場所である短艇の格納庫でハーデスに近づく物体を確認した。

 

顔と腕の辺りに実体弾のギャトリング砲を備えた100ダージュ程の人型の機械兵士が3体ハーデスに向けて照準を定めた。それを察知したハーデスは、凝集光銃を連射して、即座に破壊した。

 

しかし、その後も機械兵士は際限無くハーデスを襲った。腕が剣の形をした近接戦闘タイプや、ロケットランチャーを身につけたタイプなど、様々なものがハーデスを囲み襲ってきた。

 

「母さんが私を選んだ理由がわかってきた気がする。これを実戦に兄さんは使ったら、他の『青の牙』の皆さんはどう思うだろう?彼らの誇りをいたく傷つけるだろう。」

 

その猛攻を必死に耐えて、ハーデスは傷だらけになりながらも、タトゥースを捜索した。

その結果、ハーデスは一つの結論に達した。これまで出てきた機械兵士の数や出現ポイントから最も、それらをコントロールしやすい個所がわかった。突撃艦の機関部で時空泡発生機関が元あった個所、廃艦になったこの突撃艦には、すでにとりはずされていて、巨大な空間ができているはずだった。そう思い、ハーデスは、残り時間が30分を切った状態でそこへたどりついた。

 

 

「よう、遅かったな。ハーデス。待ちくたびれたぞ。」空間の中で一人タトゥースはたたずんでいた。

 

「兄さん。これが、兄さんの決闘での戦術というわけですね。わかりました。でも、勝つのは私です。」決意した風に言うハーデス

 

 

「そうか、その傷だらけの姿で僕を倒せると思っているの?甘くみられたな。僕も。さてと、そろそろ時間がない。決着をつけようか。ハーデス」黒いマントの中に隠していた右腕を見せるタトゥース

 

「兄さん、その腕は…改造されている。しかも銃兵器に…。そこまでして……」タトゥースの姿に驚くハーデス

 

そして、激闘の火ぶたは切って落とされた。

 

タトゥースはいきなり、右腕の砲塔から、拡散粒子砲を発射した。その一撃にハーデスは驚きながらも、なんとかかわした。左肩と右腕にかすりはしたが、その痛みをこらえて、タトゥースに向けて、凝集光銃を間髪いれずに3連射した。しかし、タトゥースの右腕の砲塔からエネルギー上の壁ができて、それを防いだ。

 

「く、攻守兼用の兵器というわけか。(この距離では、出力を強化したこの凝集光銃をでも破れないか。)」間合いも計りながらも考えをめぐらすハーデス

 

ハーデスはそう思い、今度は、接近して、凝集光銃で壁を貫こうとした。その瞬間、右腕の砲塔のエネルギーが剣に変形して、ハーデスの接近する瞬間にその巨大な剣をふりかざした。その突然の変化にハーデスは対応しきれず、剣はハーデスの銃を握っている右手首を切り落とした。

 

「うわーーーーーーーーーーーー」

ハーデスは右腕を切り落とされて、傷口から血が大量に流れ出していた。そして、ハーデスは痛みに耐えながらも、一旦、機関部だった空間から撤退して、傷口の処理を優先した。まず、血を止めるために、液状の凝固剤吹きつけ、さらに止血剤を投与してなんとか、死致量までの大量出血は免れた。

 

 

「どうした、ハーデス、もう、終わりか。そっちから来ないならこっちからいくぞ。」タトゥースはゆっくりとハーデスの元へ近づいていった。

 

「ふー、いちかばちかの賭けにでるしかないな。」そういって、目をつぶり、何も構えもせずにタトゥースの前にたたずむハーデス

 

「うん、どうした?(何をするきだ。ハーデスは)」慎重なタトゥースは、その行動で一瞬、動きを止めた。

 

その瞬間、ハーデスは背中に隠しておいた古代地球で愛用されていた実体弾の古式銃のコルトパイソン357を取り出して、左手に持ち、連射した。

それを見たタトゥースは、エネルギー上の壁を展開した。しかし、それが彼の決定的な敗因だった。有利な立場でありながら最後まで自分の身を優先させる戦いを選んだことが結果として、彼を負けに追いやったのである。

ハーデスが撃った弾はまず1発目は、跳弾で、タトゥースの後ろに転がっていた自分の右手首を弾き飛ばした。そして、その手首が空中に浮き上がったものをさら2発目ではじいて、タトゥースの所へ接近させた。空識覚でそれを捉えたタトゥースは内心でしまったと感じた。

タトゥースがそう思った瞬間にハーデスはすでに3発目の弾を発射させて、凝集光銃のエネルギーの制御系を破壊して爆発させた。強化されたその凝集光銃のエネルギーは、光源弾倉の何十倍の威力を発揮した。その爆発の余波で、タトゥースの防御壁は一瞬、かき消された。その隙を間髪入れずに4発目の弾が右腕の砲塔をつらぬいた。そして、貫通された個所からエネルギーが漏れ、タトゥースの右腕は崩壊と同時に爆発した。

 

爆発にまきこまれたタトゥースの体はすでに右腕だけでなく、右足も砕け散って、左手も焼け爛れていた。そして、破片が内臓に無数食い込んでおり、一目でとても助かるとは思えない状況だった。

 

 

「み、見事だ。ハーデス。僕の弟よ。お、お前の勝ちだ。」死の淵に立ちながらその表情は穏やかだった。

 

「兄さん。タトゥース、兄さん。」ハーデスは、タトゥースの元へかけより、涙を流していた。

 

「ハーデス泣くな。これは、僕の運命だったんだよ。次のヘルマスターはお前だ。おめでとう。さぁ、僕にとどめをさしてくれ。」満足した風に言うハーデス

 

「でも、兄さん。私は…」躊躇するハーデス

 

「ハーデス、早く、僕を楽にさせてくれよ。それに、僕はヘルマスターになるために生きてきたんだ。ここで死ぬのもしょうがないさ。そうだ、言い忘れたけど、僕が死んだ後、僕の記録を一切、消してくれ。これは、僕の遺言。」苦しそうに言うタトゥース

 

「なんで、兄さん?」

 

「いったろ、僕はヘルマスターになるために生きてきたんだ。なれなかった今、生きていた証拠を残してもらいたくない。ハーデス、我が弟の記憶に僕がいればいいさ。」声も途切れ途切れになり力なく微笑むタトゥース

 

その言葉を聞いたとき、ハーデスは、兄タトゥースとの思い出を思い出していた。しかも、楽しい時のばかりだった。

 

 

ハーデスの回想

 

「ハーデス、大丈夫か?こんな森に迷い込むとは、馬鹿だな。さぁ、帰ろう。」優しく、背負うタトゥース

 

「ありがとう、兄さん。」泣きはらした目で笑うハーデス

 

…………………………………………………………………………………………………

「兄さん、やったよ。初めての任務成功だ。兄さんのサポートのおかげだよ。」凝集光銃を握り締めて興奮するハーデス

 

 

「まったく、お前は無茶だな。こんなところで無茶するな。お前は僕の大事な弟なんだから。すこしは、考えろよ」穏やかに諭すタトゥース

 

「わかったよ。兄さん、今度は気をつけるよ」満面の笑みを浮かべるハーデス

 

 

…………………………………………………………………………………………………

 

「兄さん、いつになったら、母さんは兄さんを後継ぎと言ってくれるのだろう。遅いなぁ。まったく、もったいぶらせてないで、さっさと決めて欲しいよ。」

 

「まぁ、落ちつけ、ハーデス。それは、母さんが決めることだ。それに、僕の夢はヘルマスターになることだけど、そんなにあせっていない。自分で一歩ずつ成長するだけさ」

 

「まったく、兄さんは母さんに甘いよ。私達のことより『青の牙』のことを優先しているんだよ。親という役割に関しては、ほとんど、果たしていないよ。」不満げなハーデス

 

「まぁ、母さんも色々大変なんだよ。でも、僕がヘルマスターになったら、ハーデスを片腕にするよ。いいだろう。」

 

「よろこんで、お受けいたします。ヘルマスター…なんてね。でも、それが今の私の夢だな。兄さんのためならいつだって、死ねるしね。」

 

 

「ハーデス、死ぬなんて言うな。まだまだ、僕の役に立ってもらえないと困るぞ。さてと、とりあえず、一緒に訓練しようか。互いの夢のために」

 

 

………………………………………………………………………………………………回想終了

 

ハーデスはコルトパイソン357をタトゥースの額につきつけながら、タトゥースとの楽しい記憶を思い出していた。

 

「に、兄さん……」銃を握っている指が震えるハーデス

 

「さぁ、やるんだ。ハーデスの手で僕を殺してくれ。」そういって、目を瞑るタトゥース

 

 

その後、一発の銃声が突撃艦に響き渡り、タトゥースは絶命した。

 

 

数分後、救命夾から脱出したハーデスの表情はもはや以前と変っていた。彼は、この決闘を境に親友のハイカール以外に感情を表に現すことはほとんどなくなった。

ヘルマスターとして、常に冷静沈着に行動する人物へ変った。そして、シュリル・ウェフ=キルヒム・アテナをこの決闘以降、母と呼ぶことはなかった。これは、アテナに対するささやかな復讐だった。

 

 

 

再び、イザラス区・沈黙の森

 

「ハイカール、ようやく、正式に『青の牙』のヘルマスターになったよ。」憂鬱そうに言うハーデス

 

「そうか……。」ダリシュをじっと見つめるハイカール

 

 

「おめでとうは、言ってくれないのかい?」親友に言葉を促すハーデス

 

「おめでとう…。ハーデス、あまり無理をするなよ。愚痴ならいつでも聞くから」そういって、そっとハーデスを抱きしめるハイカール

 

「ありがとう。いや、助かったよ。君のおかげだ。ハイカール」

そして、つらいときに必ず側にいる親友に感謝するハーデスだった。

 

「ハーデス、生き残れよ。私のために」

 

「わかったよ。ハイカール」自分の新たな使命を感じ、親友の言葉をかみ締めるハーデスだった。

 

沈黙の森はそんな二人を静かに、そして柔らかに包み込んでいた。

 

 

<完>

 


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