東方幾能録   作:arnehe

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虚無の人形~上巻~2

力は脆く儚いと彰様はよく言っていました。

力を求めるには何かを捨てることが大切とも言っていました。

私の中にあるものは決して消えたりしません。

あなたの求めた冷静さとは私と共にあるのだから。

 

はい。どうも彰です。

今俺は命蓮寺という寺に来ています。

まぁ知り合いがいるからだけど、こっちとしてはやはり聞きたいことがあるんだよね。

「おかしいな久しぶりに会いに来たのにまたも縛られてる。デジャブ?」

声を発するや否や誰かが入ってくる。

しかしその顔を見ることなく。彰は気を失ってしまう。

そう転生する程度の能力である。

 

「陰陽屋さん。陰陽屋さん。今日は仕事いかないの?」

ん?ああ、またあれか。これ案外精神的にくるんだよね。ったくタイミング悪いんだよ。

さっき誰かいただろ。

確かあれは家に取り憑いた座敷わらしと仕事が無い陰陽師の時か

「陰陽屋さん。陰陽屋さん。」

「何だよ~仕事なんて最初から無いんだよ」

「うん知ってる」

「冷やかしか!」

怒る陰陽師とそれを見て笑う座敷わらし。

うん呑気なこの雰囲気はやっぱり好きだ。

「陰陽屋さん。陰陽屋さん。」

「何だ?」

「何で泣いているの?」

「ふん泣いてないさこれは汗だよ。」

明らかに涙だろうにこの陰陽師は意地っ張りだったな。

「陰陽屋さん。陰陽屋さん。あっちに沢山の人が見えるよ」

「ん、そうかもう潮時か」

「それはどういう...きゃ!」

ボロだった家に沢山の人が押し掛ける。

「貴様、妖怪の間者であろう」

この時代の縁者は確か、いまでいうスパイみたいなものだったか?

「はは、こんなしがない陰陽師になんの用でしょう?こちとら丁度仕事ができたばかりなんですが!」

おいおい、この大群に向かうやつがいるかよ。

これは人間と妖怪が信頼関係を持った結果の出来事だ。

このとき俺はその大群に紛れてたっけ?

嵐が過ぎると一つの倒れた男が

さっきの陰陽師だ。

「くそ...」

「おー生きてたか」

「どこの誰かは知らないが、もうそろ俺は死ぬ。いやそんなことはどうでもいい。実は一つ噂があるんだ。

なんの関係もなく、ただ契約者の幸せを保証する。[幸せ屋]てのがあるらしい」

「知ってる」

「なら話は早い。尚更関係無いだろうが不躾ながら一つだけ、ひとつだけ頼まれてほしいことがある」

「言って良いよ」

「そこに震えてる座敷わらし...を頼...んだ...。」

冷たかった。

一言で言えばこれしか言えない。

そのくらいこの上なく冷たかった。

動かない人形と化したその肉塊を眺めることしかできなかった。

そして彰は男の頼みごとを

「承った。」

と小さく言った。

「お兄さん...お兄さん...陰陽屋さんどうしたの?」

座敷わらしが彰に聞いてくる

この子は知っている。

陰陽師がもう起きないことを

「お兄さん...お兄さん...何で起きないの?」

この子は知っている。

この問いに誰も答えないことを

そして突然沸騰するかのような泣く声が聞こえるのだ。

誰が泣いているかもすぐわかる。

ただ聞きたくないと言わんばかりに彰は目を閉じていた。

子供の泣く声は良いものではない。

そう彰は考えたのだ。

「返してよ...ねえ、返してよ!」

彰に当たり散らす。

抵抗することなくそれを受け入れる。

「あそこにあなたはいた。」

あそことは大群が居たところだろう。

「でも攻撃をしていなかった。」

見ていたのだ。

嫌でも焼き付く血の色、生々しく想像を絶する臭いを感じながら、ただあの男が最後まで自分のために

血縁もない家族のために戦ってくれていたところを。

「あなたのこと知ってるよ。幸せ屋でしょ?なら私と陰陽屋さんを幸せにしてよ!仇...取ってよ...」

「それが君のの幸せならば」

一呼吸も置かず即答する。

 

「おっとと。ここは確か命蓮寺か?」

気がついたようだ。

しかし起きるのが遅かった。

「い、生き返った...」

(見られたか!)

すぐさま記憶操作を行う。

簡単に言えば記憶の保有時間を減らすのだ。

約3秒まで下げる。

「あっ彰さんじゃないですか!驚かさないでくださいよ。」

聖白蓮であった。

(疲れた。)

副作用は使った力に応じて疲労を与えること。




見られてしまう彰は咄嗟に能力を使う。この選択はよかったのか?
次回に続きます。
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