東方幾能録   作:arnehe

45 / 73
悲しみの人形は夢を見る。深い深い夢を見る。しかしそれを覚ましてはいけない。
悲しみは消えることなど無いのだから。夢は見続けさせた方がある意味救いなのだろう。


虚無の人形~下巻~9

「何よ...これ」

紫は目の前の光景を信じられずにいた。

そこを埋め尽くすのは虚無である。

特に哀しみを思う訳でもなく。

ただそこにある虚無に恐怖を覚えるのだ。

そしてそれは何かをというようにどれかを指すものでなく、もっと根源的なものである。

転がっている何かの死体、彰を見て泣き叫ぶけいねの姿、最後に彰の四肢がない姿である。

 

これのたった数十分前

彰は不法侵入もとい訪問をしてきた文と取材と称してお茶を飲みに来ていた。

「丁度良い、天翔の曲芸師の話でもするか」

「本当ですか!お願いします。」

と目の前まで来ているものだから

「うおっ!まあまあ落ち着け」

驚くのも当然である。

「天翔の曲芸師は正体不明だった。」

「はい!?いきなりすぎて訳わかんないです。」

「まあそうだろうな。天狗の種族はどこの生まれかをはっきりさせるからな。俺が知るにふらふらと現れ一時を過ごし里を襲った吸血鬼の一件のあと姿を消した。」

「そこまでは私も調べました。しかしそれ以上の情報は残ってないんですよ。」

「あいつはあんまり喋らなかったからな。」

(俺のことだけど)

「あいつの能力は風を操る程度の能力又の名を気圧を操る程度の能力。文、お前と一緒だ」

「え?...」

「と言ってもお前と違って風を起こし物を操れるといった具合だな」

皆も分かることだが能力は遺伝する。

つまり

「もしや、いやそれは...ないないない」

文も動揺していた。

(と言っても別に文の親何てことは無いけどな)

そうもちろんそのようなことは億分の一の確率であっても有り得ない。

しかし彰は

(勘違いさせといた方が楽だよなというか覚えてろよ自分の親だぞ)

呆れの中に内心笑う完全に悪役の顔になっていた。

「まあ深く考えるな。実態は誰もわからない」

「はあ、確かにそうですね」

(よし。ひとまずこれで誤魔化したぞ)

「ところでさっき魔理沙さんが異変だとかで私のところへ来てましたね」

「なぜそれを早く言わない!?」

「あの二人だったら解決はするので途中でスクープ目当てに出掛ければよいかと...どこいくんですか?」

「ちょっと急用を思い出した。さっきの件は解り次第連絡するから。」

「はい、そう言うことであればお願いします。」

飛ぼうにも文が居たので徒歩にしようとした。だが

「彰さんまさか歩きですか?良ければ送りますよ?」

「スクープ目当てだろうに。まぁお願いしようかな?」

分かりましたと文は言い、彰を掴み空への旅を始める。

「んーこれは凄い速さだ。さすがは天狗といったところか。」

「やだなー彰さんに言われると照れますよーははは。」

文は何故か色々な飛び方を今披露した。

「あのーそろそろいかないか?」

「あっこれは失礼」

時間のこともあるが別のことに彰は気が気でなかった。

(胸、胸当たってる。)

文の豊満な胸がたゆんと彰を解きほぐす。

(あーこれはめいに怒られるなー)

心の中のなにかが一つポロっと壊れた気がした。

 

「魔理沙今よ」

「分かってるんだぜ。

彗星 ブレイジングスター」

圧倒的高火力で枝麻を押し込む

「やったか!?」

明らかにフラグめいたことを言う慧音が一人

「うーん確かに強いね。さっきの霊夢のスペルといい魔理沙のスペルといい一体ずつの私なら負けてたかもね

でも、真偽 私をどうか導いて 今の私は負けない!」

自分の根を破壊しながら弾幕を作り出す。一つは細くとがった針のように、一つは妖力を弾幕へと

形も様々で四人の二方向に固定弾幕を形成し、そこにランダムに弾幕を放っていた。

「それそれそれー」

霊夢たちは避けるに徹するしかない。

 

この頃めいは

「おかしい、さっきと同じところだ。」

洞窟から出ようとするも行きよりも時間がかかっていた。

洞窟に目印となるような岩を置き、移動したがいつの間にかそれが目の前に

ここでさっきの女の声を思い出す。

「速くしないと死ぬわよ」

「やはりあの女は結界を···ご主人様が!」

走り出す。暗い洞窟をただただ走る。

抜け出せないとわかっていても走ってしまう。

そして途中で

「はっ、私は何を。冷静の顕現である私が焦り?」

またもやあの女の声を思い出す。

「嫌な見栄を張るの良くないわよ」

はっとして辺りを見渡す。

「み、え?」

少しすると何を思い出したのか、明らかにニヤッとほくそ笑み

「そうでした。私には···がありました。私はなんの見栄を張っていたのでしょうね?ふふ」

 

「ねぇ霊夢。」

アリスが霊夢に言う。

「なに?」

「枝麻さっきから動かないんだけど」

ピクピクと口が動き何か喋っているようだ。

といってる間に人格が変わった。

「ごっめーん。何か二人が喧嘩しちゃってさー。私が相手するから。

それじゃいっくよー  彼岸 悲しき恋よ捨てないで」

弾幕の癖が変わり森のなかで使いやすい反射弾を駆使している。その名の通りねちっこく追い掛ける追尾弾もあった。

先程と違い相手を拘束するものではなく枝麻の周りを沢山の弾幕が覆いそれを回りに押し付けていく形だ。

(癖が変わった?どうやらそれぞれを共有していないのは本当だったか。)

慧音が冷静に試行錯誤していると

「慧音危ない!」

追尾弾が背後にあったのだがそれを彰が撃ち落とす。

「先生!」

「「「せっ先生!?」」」

慧音の声に呼応して皆が驚く。

(今驚くとこだろうか?)

彰が思う。

「言ってなかったっけ?」

「「言ってないわよ!」ぜ!」

あらそうかいと彰が霊夢たちの反論を受け流し知らない顔の方へと見る。

「みーつけた。あなたはどっちで呼ぶの?御伽?枝麻?どっちでもいいけど偽物みーっけ!」

他にあたっていたものをすべて彰に向ける

「知ってるよ。御伽」

「っ!しっ幸せ屋さん?いや違う違う違う違う違う違うこいつは偽物なんだ。あのときのように私を騙すつもりなんだよ!

 拒絶 真実を見つめる眼」

(幸せ屋さん?あっ確か)

アリスは枝麻のいっていたことを思い出す。

(守ってくれていたといっていたが何故今偽物として殺そうとするのだろう。)

「あっ!そう言えば」

(枝麻は死なないともいっていた。殺すことで真実を?)

「人格は記憶も共有しないということだわ!」

明らかにこの結論が正しいことを悟った。しかしそれを解決するほど時間がなかった。

だから

「魔理沙!あの人を助けるわよ!」

「え!?アリス?うんわかったぜ。」

「雅符 春の京人形」

「光符 アースライトレイ」

スペルカードを発動する。

それを避けながら枝麻は

「邪魔をするな!!」

周りを吹き飛ばす。

「「「「キャッ!」」」」

ここで枝麻の動きが止まる。人格が変わるようだ。

「幸せ屋さん今だよ。居るんでしょ?殺って!」

御伽が動きを止めていた。

「でも!お前は」

彰は躊躇する。久し振りに会ったからだろうか。

「良いから!殺ってよ!」

もう後はない

「くそっ!」

殺すことを決心し彰は首めがけて動き出す。

三メートル

「ふざけるな御伽!裏切るのか!?」

枝麻が発狂する。

一メートル

「もう終わりだよ。幸せ屋さんは本物なんだよ!」

御伽が最後の力を振り絞る。

三十センチ

「ふーあぶなかった。まさか御伽が裏切るとはね····」

「「「え!?」」」

時間が凍りつく。実際にそういうわけではないがその様に、数秒のことがもっと長く感じた。

集まるときも三人だった。

まだ一人いたのだ人格が。

そいつは彰の攻撃を避けると根を彰に巻き付け地面にうちつける。

「がは!」

内蔵が混ざったような錯覚を覚える。

そして根が彰めがけて刺さる。

「ぐっ!」

根には光る液体が

「それはまさか」

彰の研究施設にあった。実験段階であったが脳神経を一部殺す劇薬。

それは能力を無くすために作られた。

つまり

(ベクトル操作がきかない?)

「これで最期だ···。っ!」

彰を貫こうとしたその時

「術式解放 対価を払う憐れなる者よ」

蒼白い光が彰を包む。

 

「ふーまにあいました。あの方はそれすら見越していたと言うのですかね?」

めいが力を解放していた。

「あなたが悪いんですよ。ご主人様」

隙間が開き

「何がどう悪いのかしらね?」

紫が登場する。

「あなたには関係ないんです。」

「まぁそうよね。それよりあの光はなんなの?」

「ご主人様の能力です。」

「能力?私こんなのあるって知らなかったけど」

「ふふ、信用されていないのですね。とまぁ冗談はおいといて」

とめいが説明に入る。

「ご主人様の能力を説明するにはまず概念解釈の変化を知っていただきたかったのですが、まぁここは省きます。

今のご主人様の能力は[概念解釈の具現化]と言います。今までは力、つまり発現する力について変化をさせることが主でした。

要は元々あるものを変化させたに過ぎないと言うことです。しかし今回の能力は違います。まぁ先を見てみましょう。」

「確かに見た方が速いわ。そうしましょう。」

 

(めいか。この力は)

圧倒される力に身を任せる。

「お前は偽物のはずだ···」

枝麻がさっきとどめをさせなかったことでまた攻撃してくる。

「第肆十弐章参節!」

辺りに蒼白い光が出始める。

森を明るく照らし

「幻!」

蒼白い光からその声に呼応するかのようにあるものが姿を顕す。

それは巻物であった。

 

「巻物?」

紫が訊いてきた。

「間違えてはいませんね。正確には記憶の巻物です。章が人生の分岐点、節がその時の能力です。」

めいがすかさず説明に入る。

「ん?よくわからないわね。その時の能力?」

疑問は解消しなかった。

 

巻物には端がなく光に隠れている。

(この力だけは使いたくなかった。)

そして彰は躊躇無く指先を薄く切る。血が滲み、赤く巻物の上にポタッと一滴落ちていく。

「第什弐章伍節 発現!」

巻物の一部が赤く燃えて字が消える。

そして

彰の体の四肢が強靭なものへと変化した。

「異能力 我狼」

それは四肢だけ見れば我狼そっくりであった。

彰の中にあった様々な感情が力に変換されていく。

「能力なら新しく作ればいいんだ!」

彰は枝麻に向かって走り出す。

根を払いのけ弾幕を揉み消し近づいていく。

「来るな来るな来るな。来ないでよ、修羅 三位一体」

弾幕を形成し彰を狙う。

「第伍章参什壱節 発現 式神 女郎蜘蛛」

これは何処かの陰陽師が使っていた陰陽術。多少の力を吸収、双殺する働きがある

「いけ!」

沢山の女郎蜘蛛が弾幕を吸収する。

「あと少し!」

彰が力を振り絞る。

すると枝麻の前に黒い何かが通る。

それは彰を吹き飛ばし森の樹木を倒す。

「んなっ!」

黒いなにかおぞましい存在と黒の着物がこちらを見てニヤッと笑った。

そして黒の着物は枝麻に話しかけ

「そうよね。初めて意見が合ったわね。逝きましょうか。あの方のもとへ」

目を大きく見開き笑顔を浮かべ根が集まっていく。

「まさか、やめろ!」

根が全て枝麻を貫く。

彰はすぐさま立ち上がる。

枝麻のもとへ一歩二歩三歩

ここで足がもげる。始まったのだ。

苦痛に顔をしかめながら足のないことで腕の力で体を動かす。

あと数十センチ

そして今度は腕がもげていく。

最初に右腕、次に左腕。

数センチ

枝麻を見上げ最期に

首が腐り落ちた。

 

「ご主人様の能力は概念解釈の具現化、今記憶というものを具現化しているの。

我狼とかいった奴の感情を力に変える程度の能力を使用している。」

「そんなことしたらなんでもありじゃない。」

「これだから何も知らない者は···。この能力にも代償はあるのよ?」

「それは?」

見た通りよとめいは言い、彰の方向を指差す。

いつの間にか決着がついていた。

「なによこれ」

周りがなにも残っていない。物質としてはあるがこの戦いはなにも生んでいなかった。

「先生!」

慧音が彰の体?を抱えている。

「なによこれ!」

紫がまた訊いてきた。

彰の代償は体の生命活動、つまり死ぬこと。

他人の能力を使うということは力にみあうように体を変化、適応させる。簡単に言うと適応能力で力を適応させるということ。

しかしそううまくいかないのが現実である。工場の製品一万個のなかに完全に製品として売られるものがいくつあるだろうか?

実際にはいくつかは欠陥商品がある。

つまり適応しきれなかったのだ。

そしてこの副作用は永遠に消えない。制限時間は体が腐りきるまでその間だけ力を使える。ほぼ最終手段である。

そしてもうひとつ、記憶を媒体として能力をしようするので覚えてなくてはならない。

「そしてご主人様記憶を司っているのはこの私。ご主人様の記憶の管理をしているのもこの私」

めいが説明をしていた。平然、あたかも当然のように冷静と焦りを司るめいは死体をただ見て言った。

 

「冷静と焦りは紙一重。結局は自信があるかないか。だからといって記憶がないわけにはいかない。ないからこそ起きる焦りもあるから。だから私が管理する。ご主人様を永遠に世話をして私に依存する事が私の願い。それ以外はなにも要らない。ご主人様、こんな私を頼って」

虚空に話しかけ現場をあとにする。




事件を解決したが皆の不満、疑問を解決することはできなかった。
二つ目の力を解放した今。能力の不具合に違和感を覚える彰だが

次回

事件は会議室で起きている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。