昔々私は諏訪対戦が終了し神奈子と共に行政を行っていた。その時私の目に飛び込んできた光景は
「きゃー!」
草原の中、甲高い声を女性が発し片手を隠していた男を周りを妖怪が囲んでいた。ここは諏訪の国の外、本来なら助ける必要などない。私は助けようとした。何でかは知らない気付いたらそうしていた。しかし届きそうにないと諦めかけたその時。
「手を出したならしょうがない。」
するすると片手を隠していた布をはずす。
その手には妖力が備わっていて鬼の腕に相違ない。
その男は女性の目をもう片方の人間の腕で隠し、周りの妖怪どもを蹴散らしていた。
私は遅くではあったが確信したあの男も妖怪なのだとしかし不思議と殺してしまおうなどと思わなかった。
気付いたら襲っていた妖怪は血みどろとなっていた。
これがはじめて会った神となりうる妖怪である。
その者は女性を助けると再び片手を隠し女性にあるものを持たせ別れた。そのものには大妖怪かそれ以上の妖力が込められていた。恐らく他の妖怪に狙われないように御守り代わりなのだろう。私は興味をそそられた。助けたことではなくその女性がその者を崇拝しその者の神力が微力ながら存在し扱えるように宿していたことについてだ。私はあの男に接近を試みた。
「あんたは妖怪かい?」
男は一瞬ビクッとしたがそれを立て直し片手を隠して
「そういう君も人間でないようだが?」
面白い返しだ。単にそう思った。本来ならここはもっと驚くところだろうに
「わかるということはあんたは少々人間離れしているようだ。」
そういうと観念したのか布を取る。
「そうだなー俺は今のところ半人半妖と言ったところかな?」
男はそういった。
「そんな特殊な存在がなぜここに?」
「諏訪対戦ならぬものがあると聞いてな。っと思ったんだが終わったので帰ろうとしていた次第だよ。」
「あんた、面白半分で来ていたなら良かったね。殺されてたよ」
許せなかった。私自身が真剣に思って行動したこの戦いをこの者が馬鹿にしている気がした。だから私はありとあらゆる神としての力を男に行使した。
辺りを撒き散らし野を壊す、神としての力を。
しかしそれは失敗に終わる。男は生きた、もろに受ければ並みの妖怪であっても消し去るその力をその男は生きることで力を証明した。
勿論腕は鬼のまんまである。
あいつは手も足も出なくうなだれる私を撫でていた。何もしゃべらず撫でていた。
一時の間を無かったことにし話を続ける。その男はなんと妖怪との戦いで片手に術を施したせいでもとに戻らないと言っていた。しかし依然となぜ鬼なのかは解らなかった。
「ではさっきのお詫びとしてその腕を治してやろう。」
男は
帰ると神奈子が早速殺しにかかったが男は平然と避ける
。そして私が男を連れてきた理由、興味を持った事を説明すると神奈子も賛同してくれた。男はこの神社の巫女的な扱いとなった。表面上はね。
初日
とりあえず自己紹介を済ませた。男の名前をゼンと言った。何故か漢字については教えてくれなかった。さあ今日のから神力の扱いといこう。お遊びのつもりだが、もしかしたら同胞となるかもしれない。神としての素質は
充分だ。
一週間後
ゼンが空を見ているので何故かと声かけた。ゼンは
「一緒に見てくれた友がいるから」
と言っていた。ゼンは昔のことを話したがらない、だから私は言及することを止めた。
数日後
「あんたまた国の外の人間を助けたのかい。酔狂なこった。」
最近というか前からなのかわからないが人間を毎回助けているようだ。
「別に良いだろうそのくらい」
良いけどと私は思うがその都度神力が増加しているように感じた。
そのまた数日後
力を扱えるようになったはいいが今後どうしようか。ゼンはたぶん旅たつだろうが...あ!そういえば腕を治していなかったな。そう思い修行で疲れ寝ているゼンの腕を持とうとするとグチョグチョと不規則に変化した。私は恐怖を覚えた、なんなのだと。その腕は気が付くとなんと人間の綺麗で健康的な腕になっていた。
次の日
ゼンは治った腕を一瞥するとありがとうと言ったが私としてはなんのことかわからなかったので
「どういたしまして?」
変な抑揚となっていた。ゼンは案の定旅たつといったがこのあとに祭りが控えているからそれまでいてほしいと言うとその提案で納得したようだ。
祭り当日
ゼンはこれまで祭りの準備を手伝っていた。そのお礼をしたかったがゼンが見当たらない。何で居なくなった?
お礼位させてほしかった。
神在月の宴会場
今日はある話題で一杯だった。それは神たちが諏訪の国の近くで消滅したということだ。なんともそいつらは隣国の神であり諏訪の国を襲撃しに来たらしく。見た目人間の新参者である神にしてやられたそうだ。その新参者の神は自分のことを
しかし心当たりが確信に変わることなどなかった。
迂闊だった。戦闘での傷を自分の治癒力を上げて治そうとしたが急過ぎて定義付けを忘れていた。体だけくっ付けるだけなら良かったが姿も鬼のまんまなんとか直しても片腕だけもとに戻らなかった。
(あーどうしよっかなー)
だらしなくそう考えていてもしょうがないにでとりあえず布で隠すことにした。すると妖怪が前を通りすぎた。どうやらあの旅の娘を襲うらしい。基本的に俺もそこまでお人好しでない。実際諏訪対戦を見に来たということもあり時間がなかった。だから助ける理由もなしにする行動は軽率過ぎる。あ!ひとつあった理由。よくよく考えたらこの片腕じゃどのみち国に入れてくれないよな。姿を変えてと、うん助けようその時に片腕切ってもらって...
結果弱すぎて話しにならなかった。どうしようこのままだと入れないだけど!と思ったらついでで助けた娘さんが
「ありがとうございます。つい最近まで大きな戦争があったものですから...」
ん?つい最近まで?ということは終わっちゃたか!何てことだ。帰ろうかな?あっでも家倒壊してたっけ?やっぱあの吸血鬼腹立つわ!これからどうしようかな?とりあえず御守りの代わりの物あげたけど...まあ旅といくか!
そうこうしてたら帽子かぶった少女に会った諏訪子というらしい。どう見ても少女だがこの感覚には覚えがあった。それは昔の都でも感じていた。説明は割愛するが要はこいつできる!?みたいな人物なのだろうと思う。
成り行きに身を任せたら神社の手伝いされているんだがしかも神奈子とかいうのもいるし、まあそろそろ場所を移転しようとしてたしちょうどいいか。
明日になって初めて聞いたんだが彼女らって神だったのな。驚きだな。そうかあの感覚は神力によるものだったのか。ていうか諏訪子とかいったか、あの子がどうやら神力の扱いを教えたいとかで稽古させられているんだが...。まあやって損することなんてないしやるだけやってみるか。なんか出来ました。やったね。と言ってもこれからどうしよう。神なんて俺にはあまり合わないと思っている。だけどあのとき誓った覚悟は神というものに合っていると思える。
ある程度時間が過ぎたが旅に出ようと思う。先に逝った彼らのために目一杯話をしてやりたいのだ。と俺は思い当たり彼女らに声をかける。そうするとやはりかと溜め息をついて祭りがあるからそれまでいてほしいと言ってきた。特に俺は急ぎの用などないのでその提案を受け入れる。
祭りまでいるといってもまだ時間がある。だから俺はその分今までのお礼として準備を手伝うことにした。守矢神社の人間がそれの準備に勤しむ、これも信仰心の助けになればと思った。そうして手伝っていると不意に握り飯を鍛冶屋のおやっさんから貰ったりと逆に感謝しきれないものを俺にくれた。これが、持ちつ持たれずの関係かと俺は懐かしく思うのであった。
祭り当日となった。辺りは賑わいとても心地よい雰囲気を醸出している。俺はじゃあ今のうちにとこの国から出ようとしたその時、おやっさんが出口に立っていた。
「お前ここから出ていこうとしているな?」
俺は顔を合わせられなかった。合わせると戻れない気がしていたからだ。しかし俺のこの気持ちを知らずに
「お前にひとつ渡したいものがあるんだ。」
と言って一つの巻物を手渡す。
この国じゅうの住民の名前が書かれていた。
「一人一人直筆だ。これで忘れることなどないな!」
おやっさんは笑いそのまま祭りの明るく光る方へ歩いていった。些細なものでも嬉しく感じるのはもう末期だったんだろう。ここにいすぎた。でもそれでも俺には快い空間だった。ただそう思い、そう実感し俺はこの国を出た。
国を出るとそこにはいくつかの神力が諏訪の国の方向に移動しているのを感じた。意味がわからないが最後の仕事として彼らを祭りに歓迎しようと思った。
「これはこれはご機嫌麗しゅうございます。」
「む?誰だ貴様」
集団のひとりがそう訊ねた。
「私はこの先の諏訪の国で巫女らしき仕事をしていたものです。それよりどうですか?こちら諏訪の国では今祭りを開催しているのですが...皆様も」
友好的に接しようと思いこの言葉となっている。
「生憎我らは祭りを楽しみに来たのではないのだ。」
「...と言いますと?」
「ひひ...今諏訪の国で祭りを開催しているのは我らも知っている自明の理、つまり今の諏訪の国は平和ボケで戦など考えておらんだろうよ。それにこの国で妖怪が出入りしている確かな情報も我々は持っている。それを逆手にとり奇襲をするのだ。」
なんと彼らは諏訪の国を襲撃しようとしていたのだ。
「へー。しかしそれは些か卑怯ではないですか?皆様は高貴な神方、宣戦布告をしてからでも...「我らは今というこの世の残酷さを教えるに過ぎない。何も間違っておらん」ほおー」
俺の口調が変わってしまった。しかし別によかった。
「それでは皆様に祭りを案内しましょう。もう始まっているんですよ?」
「だから我らは...」
神の一人の懐に体を入れる。
「血祭りと言う祭りにね!と言っても血も涙も無いか」
そして神力を吸収した。神は神力を失うと
「貴様今何をした!?いったい何者だ!?」
消滅する。
「俺か?俺はそうだなーじゃあ漸鑑の御神とかと名乗っておこうか。」
漸とは時間の緩やかな流れ、鑑は物事を写すこと。さすらう旅を見届ける者、それが俺のこととする。
激戦のなか、ある神が火を用いた。そしてその火種は巻物へ。俺の中にあった火種も今ゴウゴウと燃え出していた。だが俺は笑った。これで殺す動機ができた。正気の沙汰でないと思うだろうが俺は何回も理不尽な仕打ちを受けてきた。
「あーあもう許す気力もないな。だから...」
その表情に誰もが恐怖した。
「
神の姿である彰を知るものは数少ない。そんな中でもひとつ共通のものがある。それを知ったとき正気のどころでなく狂気の沙汰でないと感じるだろう。
次回
青年よ大志を抱け