一つの妖怪が人間の山を作る。その一報が聖徳太子のもとに届く。勇んで聖徳太子を急かす物部。そうこの場には信仰の体現、聖徳太子とその従者がいるのである。それを聞いた一同すぐに現場に直行する。形はどうであれ人を助けるのは慣れてはいけないと思い知ることになろうとも。
そこには死臭と焼き爛れたような人の顔。シルエットだけ見れば人間の形を持った何かがそこには立っている。このような異形など一つしかいない。
「待ちなさいそこの妖怪!」
これをいうのは現代の聖徳太子、豊聡耳神子。今、見知らぬ妖怪と対峙する。それは里の人々を守るため、見知らぬ妖怪はこちらを確認などせず黙々と人だったものをむさぼっていた。背後に従者を従え聖徳太子はその妖怪に呼びかけるもその声は虚しく、見知らぬ妖怪にかき消される。
「うがああーーー!」
「っ!?」
言葉を持てぬ妖怪は最下層、弱小と呼ばれているがそんな常識は今この場で消え失せる。
それは知覚する意味を持たない身体能力。力の体現。何者も凌駕するその膂力。そして哀れな何かの姿。それでも弾幕ごっこで培った経験から避ける。その間わずか数センチ。それでも、かの妖怪が姿を亡くしたのだ。
「うがああーーー!お、俺は!」
聖徳太子は自我を持つ妖怪か?としばし考える。その間も攻撃は繰り返される。横に動く妖怪の爪。バックステップで避ける聖徳太子。この中途半端の異形は何者なのか?そもそも理性を持つのか?そんな疑問が頭の宙に浮く。そこに屠自古らが入って応戦する。
「太子様。ここは我らにお任せを!」
「任せました。」
妖怪の特徴を観察する。人型妖怪にしては獣のような身体能力、獣にしては知性を持つ。明らかに相反した特徴。まるで物語によくある神獣のように圧倒的な力技。狡猾して何分の時間が過ぎたか?
「お、俺は。俺はマモルンダ。」
ここで屠自古が吹き飛ばされる。道端の石ころとでもいうかのように蹴ってあっという間に物部に標的を変える。連携を崩された彼女らに助けに行く暇すらなかった。弾幕ごっことは違うただの争い。弾幕ごっこにはない容赦の無い力加減。そして死の恐怖。
「仮面が一つありましたとさ。」
それは昔聞き慣れたフレーズ。
「天地の道理を無視する仮面であったそうな。」
最後に聞いたあのセリフ
「道理はいずこへ?」
問いかける、そして
「その道理はここにある!」
有無を言わさない傲慢な答え。
「我らは道化と旅の道を行く漸鑑神子。さぁ!道化芝居を始めよう!」
ふざけた謳い文句。確かな存在感。確かに周りに存在を明かす。それがいまの一抹の希望を見る。