薄暗い森の廃墟と化した人や妖怪など来ることもない場所。そこに黒の着物はいた。その不釣り合いな環境下では妖怪となった人間などただの背景と同化して気がつかないのではないかと思えるほど影が薄く感じる。不自然に物が置かれる机と椅子とコレクションの数々。そこに黒の着物はコレクションを眺めながら座っていた。
「っ!?」
じゃらじゃら
「あら、起きたみたいね。久しぶりって言うべきかしら?」
そういう黒の着物は椅子から立つと妖怪と化した人間の方へと足を運ぶ。妖怪は自暴自棄なのか、明らかに破壊衝動にかられ周りのものを吹き飛ばし鎖を破壊しようとする。
「うんうん!良いわね。その欲望。ねぇせっかく助けたのだし私に協力してみない?」
シーンと静かになった。気を失ったのだろうか。
「…あの時の人か?」
静かになったかと思うと自我が戻ったようだ。それを黒の着物は不機嫌そうに口を尖らせる。
「あーあーもう精神が回復がしたの?ちょっと面白くないわね。まぁいいわ。そうよ久し振りね。」
本人と発覚して怒りに身を任せようとする。
「ははは、そんなに目くじら立てて怒らなくたっていいのに。だって私は力を与えると言ったけど、妖怪にならないなんて言わなかったわよね?」
死の宣告を聴かされたような衝撃が心に響く。そして打ちひしがれてしまう。黒の着物はそれを見て。
「単純ね。それに感受性も高い。まっそこもいいんだけど。本当よ褒めてるわ。」
「…俺はいったいどうなるんだ?」
やっと言えた言葉。それも弱々しく。本当に何のために力を貰ったのだろうと、そしてそんな甘い話などないというのに嬉々として乗った自分の浅はかさを大いに恨む。
「一つ、あるわよ。力を持ったまま人間に戻ることができる方法が」
「っ⁉︎」
そこにもたらされる希望。若干計算を感じるが、いまそれしか方法が無いのならと一人の妖怪がやる気に満ちた顔で
「俺はお前に従う。だからさっさと始めよう。」
「即決ね。流石だわ。その欲望をあの方のために捧げましょう。」
そう言って方法を教える。それと同時に計画を話す。
「本当にそんなんでいいのか?」
「ええ、それだけでいいわ。あなたはこの石を適当に埋めるだけ、それだけで人間に戻れるわよ。」
「俺はお前をなんて呼べばいい。」
「うーん。別に敬語なんて期待してないから〜。黒、うんこれでいいわ。」
男は心の中で名前を反芻する。
「…覚えた。それにしてもいいのか?安直すぎるだろ。」
「あなたには言われたく無いわ!」