東方幾能録   作:arnehe

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守護の都〜上巻〜2

英雄と言ったら何を思い浮かべるだろうか?

 

フランスではナポレオンや日本では源義経など、英雄は世の中において敵対する者にとっては異例の存在だと言える。そのため一時は味方であった民衆や仲間も結局裏切りや恐れの存在へと時間とともに認識を変えていった。つまり一つ言えることは普通が一番なのだろう。もしくは裏方に徹したほうが長生きをしたり結局は得になるのだ。

 

「……って言うけど結局はここでのんびりしたいんでしょ!?紫!」

 

「だって霊夢〜いつまでも仕事が多くて休暇も取れやしないわ。」

 

ここまでで分かる通り今博麗神社に八雲紫がいれびたっている。やはり博麗神社の巫女の霊夢としては邪魔なのだろう。いや、めんどくさいだけか。

 

「そんなのんびりしたいなら彰の所に行けばいいじゃない?好きなんでしょう?」

 

「はぁ。良い?霊夢。乙女にはなかなかできないことなのよ?それにもう彰に会えないと思って良いわ。」

 

「へ?なんで?あいつは管理人代理でしょ?」

 

流石に紫の態度を不自然に感じたのか。霊夢が茶化さずに聴いている。

 

「……クビにしたのよ。」

 

「はぁ!?紫がここに連れて来たんでしょ?最後まで責任とりなさいよ。」

 

「彼は自力でこの世界から出ていけるのよ?ここに来るときは場所がわからなかっただけで。もう私でさえ場所を特定できないわ。」

 

「不自然な力の集まりを感じれば、そこに倉持邸ごあるんじゃないの?」

 

「彼の家は強いプロテクトがかかったようだから。もう場所なんて分かりっこないのよ。」

 

「あら?紫にしては諦めが早いのね。」

 

意外そうに霊夢が言葉にする。

 

「ええ、だって彰に喧嘩を売って帰って来たのよ。もう、なんて顔をして会えば良いんだか。」

 

「はぁ。馬鹿ね、紫。」

 

「なんですって?」

 

そう、捨て台詞を言った霊夢に少しばかりムッとしたが紫は冷静に聞いていた。

 

「だってそうでしょ?仲直りしたいならごめんなさいを言う。常識でしょ?紫も私も数々ある異変の首謀者たちと和解してるし、そう言う落とし所をわかっているのかと思ってた。でも、違うみたいね。」

 

紫は何も返せなかった。確かに彼女の言う通りなのだ。勝手にこっちが恐怖して解任したのだから。

 

(だから、いやだからこそ……。)

 

そう思い隙間を抜けていった。その表情に霊夢は不満に思いながら煎餅音を立てて食べ始めた。この後魔理沙が来て煎餅を横取りされるのを博麗の巫女は知らない。

 

博麗神社の周りには季節外れのアジサイが咲いていた。

 

守矢神社

 

「もうこんなに信者を集めてるのかい?早苗。」

 

床や机に沢山のビラがあるのを見て守矢諏訪子が無邪気に訊いて来る。

 

「いいえ諏訪子様。これらはビラと言って宣伝によく用いるのです。」

 

「えっと。そうそれ。わ、私も知ってた知ってた。うん。」

 

(これは知らなかったんだろうな。)

 

そう思い八坂神奈子がこう言った。

 

「まぁこれで信者が増えるとこちらも楽なんだけどね。」

 

「そうですね。でも今は幻想郷の皆さんに私たちのことを知ってもらいたいので。」

 

「ん?こないだ私たちは烏天狗のとこの新聞にのったぞ?」

 

「こちらで言う異変でのことですよね?残念ながらあの時の私たちにあまり良い印象がないので、やはりここで払拭しませんと。」

 

そう意気込む彼女に神々は

 

「まぁ頑張って。」

 

「うむ。期待してるぞ。」

 

そうやって今後のいく末に期待していく。そんな時に

 

トントン

 

「すまぬが此処が守矢神社で間違いないか?」

 

そう不躾に入って来るのは飛鳥の豪族、聖徳太子を上司とする物部布都である。

 

「えーと、どちら様で?」

 

早苗はいきなり現れた彼女に困惑するも尋ねた。

 

「うむ。我は物部布都、道教を信仰する。此度は貴様らに一言言わなくてはならぬことがあって参った次第。」

 

「あっはい。どうぞこちらへ。」

 

いきなりな物言いに流石についていけず、先を促してしまう。

 

数分後

 

「……故に貴様らには太子様の寛大な措置として合併、改宗又は取り壊しを要求する。」

 

此処まで一通り言い終えたのか。ほっと出されていた湯呑みをずずずとすすった。先ほどの過激さは何処へやらちょこんと可愛く座っている。そして

 

「では、そちらの良い返事を期待するぞ。我らも今後新しく入る一柱を迎えねばならぬのでな。暇ではないのだ。さらばである。」

 

そう言って綺麗に茶受けの羊羹も食べ終えさっさと帰って行った。本当に嵐のようであった。

 

「行っちゃいましたね……。」

 

三人は呆然としてその光景を見ていた。

 

「……ねぇ神奈子。」

 

「なんだい?諏訪子。」

 

「喧嘩売られたのかな?神奈子。」

 

「そうなんじゃないか?諏訪子。」

 

「「……。」」

 

そして二柱の神は口を開く。

 

「売られたからには買うのが定石!」

 

「やってやろうじゃないか?道教?知ったことか!信仰闘争など何度もやって来たわ!」

 

「最近神奈子の肌にハリがなくなったところなのさ!だからこの戦争勝たせてもらおうか!」

 

此処に宗教間勃発の新たな異変が始まるのである。

 

「てか、肌のハリとか言うな!お前に私の何がわかってんだ!」

 

「えーん。神奈子が虐めるー。」

 

「えっ!?諏訪子様!?」

 

今日も幻想郷は平和である。

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