東方幾能録   作:arnehe

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守護の都〜上巻〜6

そして村の近くの山

 

「で?今回の退治する妖怪の種類は?」

 

そう気怠く先生は私にそう聞いて来た。

 

普通のハクタクは妖怪の全てを知りその対処法を伝えたとされる神獣。しかし慧音はワーハクタク。その差はやはり歴然でありその神々しさはない。が、なんだかんだ知識欲に忠実に彼女は生きる。血は争えないといえる。

 

「目撃証言を妖怪の記録と照合した結果、おそらく八尺様と呼ばれる妖怪かと。」

 

元は旅人の霊と言われ独特な声と高い身長で知られる。それに魅入られた者は生きては帰れぬ。主に若い世代を狙う。

 

「それ妖怪だったっけ?まぁいいか。行くとしよう。」

 

「はい!」

 

山はやはりいくつもある樹木が太陽を隠し辺りを暗くしている。確かにこんな不気味なところに進んで入るものはいないだろう。そう考えていた時のことである。木の影から女性が頭を出し目を丸くしながら

 

「そこのお兄さんがた。どうしたの?迷ったの?」

 

慧音はこの場に現れた女性にこの場にいる理由を聞いた。

 

「ああ、確かにおかしいわよね。最近妖怪が出るとうるさいものね。安心して私は夫を探しに来たの。できれば一緒に探してもらえる?」

 

どうやら彼女はこの付近に住む木こりとその女房らしく。夕方には帰るはずが夫が帰って来ないので探していたらしい。

 

「お互いこの山のことはある程度知っているつもりだし迷っているわけではないはずなんだけど。」

 

「そういうことなら。」

 

とことんまでお人よしな慧音に従い彰も夫探しに付き合った。妖怪が夜まで出ないだろうと思ったのである。

 

しばらくもう陽が傾く頃ようやく見つけた小屋があった。そこは不気味にお札を張り巡らせ結界で守っているようにも思う。木こりはここにいると彼らは思った。何故ならそこからは泣き声が聞こえるのである。離れていると思っているがここまで聞こえるのはそれほどの大声で泣いているのだろう。慧音は用心しながら小屋に近づきそっと戸を開けた。

 

「ひ!?誰だ!!お、お前さんはあの妖怪の仲間か?」

 

「なんのことかわからんがお前を探していたが?」

 

そこには小さく縮こまる男の姿があった。ここまで狂乱の姿を見せられるとただ事でないと思ったのか慧音が近寄る。そうして年甲斐も無い男をエスコートし外へ出ると、手助けを頼んだ女性が来ていた。どうやら先の泣き叫びが彼女まで届いたのだろう。心なしか肩で息しているように思える。そして男の姿を見て泣きながらすごい速さで抱きついた。そして男はさらに泣き始めた。

 

「もう、心配したんだから。」

 

妖怪は出なかったが木こりとその女房の温まるいい話を目の当たりにし慧音は

 

「いい話ですね先生。」

 

と一言。

 

そして女性は抱きついたままこちらを向き、

 

「ありがとうございます。夫を見つけることができました。これで……。」

 

「お前ら!助けてくれよ!こいつは俺の!!」

 

女性は大きく口を開けると勢い良く男を食べ始めた。赤にまみれ辺りを一色に染めた。骨があろうとお構いなく。そしてものの数秒でバキバキと音を立てて食べ終えるとニヤリと笑い

 

「逃げた餌を食べられますわ。ポポ」

 

その女こそ妖怪の正体、八尺様と呼ばれる者。

 

「まぁ、だろうなとは思ったよ。」

 

「ポポ、あらそちらのお兄さんは正体を見破られていましたのね。」

 

「いやはや、隠蔽の旨さは良かったよ。妖力をうまく隠せてるしね。でも流石にあの小屋に逃げ込む男の姿を見るとね。分かっちゃうさ。お前を入れさせないための結界というのがね。」

 

「あら、やっぱり分かっちゃうわよね。あの男が小賢しい結界なんてはるから食べれなかったのよ。お兄さん達には感謝してるわ。まぁ次は胃袋の中ですけどね。」

 

そう言って慧音の方へと肉薄する。彼女の爪が慧音を貫くと思われた。しかしそれを止めるものがあるのだ。

 

「すまんな。慧音の戦闘訓練となると思ったが、こっちも我慢の限界だ。可愛い生徒を傷つけるのは嫌なんだ。」

 

私は自身の体を支えるその腕の主を見据える。妖力が漏れ出て、またそのご尊顔は怒りを表していた。姿を変えて鬼の形相へと変わっていく。角が生え爪は伸び顔の形も変わったように見えた。

 

「さあ、蹴られるのと殴られるのどっちがいい?」

 

「ポポ、わたしには効かないわ。だって当たらないもの。」

 

そう文字通り透過し彼の繰り出した拳は風を切った。

 

「あなたは触れられない。だけどわたしは触れられる。ポポ、これの意味わかるかしら?」

 

彼女は女性とは思えない速さで腕を振り抜く。彰はそれを手で受け止めはした。しかし勢いは殺せず腕はあらぬ方向へと吹っ飛んだ。

 

彼女はその腕を拾い食べ出す。

 

「おほ、この腕うまいね。」

 

「それはどうも。」

 

嬉々として感想を言う彼女に彰はうんざりした声でそういった。

 

「慧音、塩あるか?」

 

「へ?あ!さっきの村で少しいただきましたよ。」

 

「その女に向かって撒け。」

 

「はい!」

 

塩は古くから邪気を吸収すると言われるためそれを使えば触れられると思ったのである。つまりそうであるかは適当である。

 

そういっている間に彰の拳が彼女の顔を掠った。

 

「当たった!」

 

そう慧音が言うが結局は一発しかも掠っただけでは有効打とは言えない。それではダメだ。

 

「久しぶりかな。ここまで妖力を出すの。」

 

そう言い彰は砂を拾い宙に投げる。

 

砂が空を舞い地面に落ちるかのように見えた。

 

「ポポ、塩でなく砂でなんてあなた頭おかしいの?当たるわけないじゃない。」

 

「俺は無駄なことはしないよ。聞いたことあるだろう?鬼でなしの雅って名前をさ。」

 

「っ!お前もしかして!あの……。ここで会うとはね。あの村のやつ良い鴨を見つけたって言うから協力してやったのに!!くそ!」

 

そして必死の行動に彰はニヤッと笑い……。

 

「お前の雇い主には大体予想はつくが……。すまんな。お前は死という善意の協力者となるんだから大丈夫さ。快く死ね。」

 

そしてことを終えた彰に慧音は

 

「なんだか拍子抜けです。あの女が妖怪だなんて……。」

 

すっかり騙されていた。慧音は放心としながらそう言う。

 

「慧音。君はもう少し疑うってことを覚えよう。」

 

「はい。面目ありません。でも良いのですか?」

 

ふと思ったのか。彰にそう聞いてみた。

 

「ん?ああ、あの村の村長のこと?あれは別に良いや。殺されかけたけど。」

 

「それは自身が生きてるからですか?」

 

ありえないと言いたげな彼女に彰はこう諭した。

 

「いやいや、違うよ。あれはああやって人を殺さないとあの村が生きていけないからさ。」

 

おそらくあの村はあの八尺様に山へ子供をお供えしているのだろう。しかし子供の人数も底をつき村長は慧音を見て思ったのだろう。良い鴨が来たと。

 

現代

 

「……それは優しさというのか?」

 

「うーんわからないかい?それは優しさだよ。」

 

そう言って慧音は藍の後ろの障子をじっと見る。そこには黒く誰のものかはわからないが知らない影がそこにはあった。

 

「っ!」

 

藍がそれに気づき後ろを振り返るとその影は消えていく。そして障子を開ける頃には

 

「……いない。あれは一体。」

 

「従者だよ。確認不明のね。」

 

その言葉に藍は目を広げ

 

「まさかあの四人が来ているのか!?」

 

「いや、それが実はそれらとは別にいるんだ。」

 

「それはどういう……。」

 

「先生のことを喋ろうとすると監視がつくんだ。それこそ重要なことを言わせないための口封じとしてね。」

 

そこに彰の狂気を感じる藍であるがここで訂正があった。

 

「先生はこのことを知らないんだよ。それを濁らせる仕草も、それに気付く様子もない。あれは正真正銘先生が指示出しているわけではない。」

 

「従者の暴走?」

 

「わからないただこれ以上は私自身が危ないんでね。聞いた君にも監視はつくかもしれないが。まぁなんとかなるだろう。あとは他を渡ってくれ。誤魔化しもここまでしか効かなかったな……。」

 

無責任だなと思いつつ彼についての情報を喋るという必死の行動に少しばかりの敬意を持ち

 

「何故そこまで?」

 

そう聞いてくる藍に慧音は照れ臭そうに

 

「惚れてるからかな。好きな人には幸せに生きていて欲しいんだ従者なんてそんなものの力に頼らずにね。」

 

そういったきり慧音は黙ってしまった。藍は問題抱えたが今は宗教団体をどうにかしないといけないと思うことにした。

 

そうこれから始まる神の修羅場を鎮圧するために。

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