神様が世の中を動かすのは決まって1人だけではない。何処の宗教にも必ず補佐がつき神様の仕事に口出しを行う存在だっている。しかしそんな中日本は特にその傾向には一部を除いて当てはまることがない。他と違い、まず神の在り方に違いがあった。日本は八百万の神、世界では一神教のものもある。つまりは神様一人一人のする事が日本では少ないのだ。それも補佐を必要としない程度に。
回る回る。彼女は回る。厄を集め皆を幸せにするために。妖怪の山には様々な存在がいる。厄神もその1つである。その名を鍵山雛という。彼女のそばにいるだけで厄がその身を襲う。それは1つの災害でもある。妖怪と仲良くし己の厄を周りに出さんとするその心はいくらか彼女なりの答えを出していた。
人間が好きだが近づけられない。
彼女はこの世に存在する限り陽を見ることはないのだ。そう考える雛に今現れた黒色。
「悩むわね。あなたもそう思わない?」
「……俺は黒について行くだけだ。」
「つまらないわね。人選間違えたかしら。」
黒の着物はつまらなそうに口を尖らせもう一人の人物を小突いていた。
「えっと……あなたたちは一体?」
雛が戸惑い気味でそう聞くとハッとしたように目を見開くと薄く笑った。
「あらあら、ごめんなさいね。私は黒と呼ばれてるわ。そしてこっちが……。」
「……誠也だ。」
「私たちがね。あなたの願いを叶えようかと思ってね。」
「っ!いえ、厄神である私には現状何も求めては……。」
「ふふ、つれないわね。まぁいいわ。話だけでも聞いて行ったら?」
正直相手に乗せられている感じがしたが、相手の言う通り話を聞いてみることにした雛である。黒の着物たちは薄暗い森の中にあった倒れている倒木に腰掛ける。
「で?話とは?」
黒の着物は雛の疑問に逸れた答えを言った。
「ふふ、最近では宗教間で何か揉め事があるそうね。」
「はい。聞き及んでいますが。あいにく私にはその話は疎いのです。私は厄神妖怪の山などから降りかかる厄を集めるのが私の役目。それしか私にはないのです。」
「それこそ聞き及んでいるわ。貴女には簡単な仕事を頼もうかなってね。」
「仕事……ですか?」
雛にはその仕事がどういったものかはわからない。
「ええ、人間と妖怪との間に立てる仕事よ。」
「え……?」
ニッ
「いま悩んだでしょ?悩んだわよね?」
我が意得たりと言わんばかりに黒の着物はそう言った。
「私は……そんな……。」
「いいえ。貴女まだ認めないの?今まで貴女のおかげで人里周辺に厄を蓄えた妖怪が現れないのにも関わらず貴女には感謝どころか無関心。」
「ですがそれでも……。「それでも貴女は静かに厄を集めているのよ。健気よね健気だわ。でも……。」
そういうと黒の着物は彼女のところまで歩を進め。
「分からないわ私には貴女の考えもその優しいと勘違いしているお気楽な頭も。それでも貴女は人が恋しいのよね。触れて触れられた人間はドス黒い厄を身に宿した。経験は裏切らないわよ。結論も変わらない。貴女にはとっくに失うものなんてないのよ。……だから」
黒の着物はそうまくし立てた。だが雛には譲れない一線というものがあった。
「そんなことどうして貴女に言われないといけないんですか!貴女に何がわかると?疎まれ遠ざかるそして自らも……。そうやって生きてきた私に貴女は何が……。」
彼女の喝破を止まった理由は簡単であった。いつのまにか黒の着物が近くで雛の唇を抑えてあるのを見たからである。
「いいじゃない。自身にないものを求めても。いいじゃない理解などされなくても。一番は自分自身がどうしたいか。さぁこちらを見なさい。恐れなくていいしそらしてはダメ。」
黒の二つの双眸をしっかり見つめている雛を見ながら空気と化していた誠也はじっと経過を見つめていた。
「だってそれこそが欲望だもの。ふふ。」
静かにそう笑うといつのまにか雛は寝ていた。先ほどの葛藤は嘘のような静けさである。誠也はそんな黒に話しかける。
「これでいいのか?」
「ええ、順調よ。結局は強引かもしれないけど引き出させた方が早いものね。」
「済まないが俺には寺子屋に行った程度の学でしかない。もっとわかりやすく教えてくれ。」
誠也の開き直ったその態度に黒の着物は呆れ半分で説明することにする。
「はぁ〜あなたって時に本当に協力してるのか分からないのよね。」
「すまんがこれが素だ。」
「わかってるわよ。まず一つ目これはわかるわよね?」
そう言って一つの杭を取り出す。
「ああ、俺の妖怪化を止めている釘だ。」
「杭よ!杭。これを幻想郷全体に指定のところに埋めるのよ。そしてそれを守護するのがあなた。」
「分かっているさ。俺の願いも黒の考えもな。だが……この厄神は一体なぜ……。」
「良いのよ。その方が作戦も上手くいくし、何より面白いじゃない?」
彼女の計画に抜かりはないと誠也は信じ黒の後ろを連れ歩く。樹木から漏れ出た夕日の光が辺りを照らしていた。
そして今
大広間には先程あった喧騒とは別の、つまりは妖怪がごった返していた。しかし一つおかしいことがある。そう魔理沙と霊夢は思うのだ。それは妖怪の人里の不干渉である。人里の中を荒らさない代わりに外でというものであるが。
「異変……だぜ。霊夢。」
ゴクリと唾を飲み込み真剣な顔でそう魔理沙が言う。呆れた顔で霊夢は
「見ればわかるわよ。それよりこの状態はなんなのかしらね。余計な仕事増やして欲しくないんだけど。洗濯物だってまだ取り込んでないのに。誰か慧音を呼びなさいよ。」
そうのたまうのである。
「皆のものよ!」
何処からともなく喧騒にも負けない声が演説が聞こえてきた。
「かつての我々には神などいませんでした。全てが個人というものが自身を支えていたです。しかし、そんな中でも不確定要素というものは存在します。生き物の力ではどうすることもできないものを我々は神として崇めました。それが天候であり不運であります。それこそ人間の性といえよるでしょう。しかし、我々はなんでしょう?人間のように崇めるものはあるのでしょうか。ここは幻想郷、全ての生き物がすべからく選択をする意義はあります。よって私はこの聖戦とも言える宗教闘争に一石を投じましょう。皆のものよ!手を取りなさい!力を示しなさい!我々にはそれしかないのです。納得させるというならさせて見なさい。人間とも違う。妖怪の宗教とやらを見せてあげましょう。」
唖然としたのは魔理沙たちや他の宗教団体も例外ではないだろう。
「始まったな。」
そういうのは山から遠くを眺める黒の着物と誠也である。
「ええ、今度は想定の範囲でことが進むわね。」
「それにしても。お前のご執心な奴は一体何してるんだか……。」
「……あなた。良い選択をしたわね。少なくとも私の前で彼の方を貶すような真似をすればあなた抜きで計画を始めてたわ。」
「……心得た。」
「さぁ茶番劇を始めましょう。世界を舞台にした……ね?」