東方幾能録   作:arnehe

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守護の都〜中巻〜9

異変。それは幻想郷内で起こる大事件。そんな大事件だが比較的簡単に起こせたりするものである。信頼があれば裏切り。初見であればそれだけで天狗が新聞を取り上げる。そして最後は……。

 

「あなたそこで何してるのかしら?」

 

幻想郷管理人。八雲紫はある場所に来ていた。そう博麗神社のコタツの中である。理由は簡単であった。いざ帰ってみれば霊夢らはいなく、待ったら帰ってくるだろうとコタツでぬくぬくと過ごしていたら寝ていた。そうただそれだけである。

 

「少なくともあなたにそう言いたいわね。そこで何してるのかしら?」

 

もうすぐ春になろうとしているこの時期に

 

「コタツで寝てたのよ?見てわからないの?」

 

悪びれもせずにそう言う紫に誠也は一言。

 

「済まないが、お前はバカなのか?」

 

「少なくともお前が言うことじゃないわ!」

 

「……心外だ。」

 

「まぁまぁ、落ち着いてってなんで私がなだめてるのよ。」

 

とりなすように紫はコタツから這い出て

 

「改めて何しに来たのかしら?」

 

「あーそれは。この杭を……。ドグァ!」

 

何かを口走ろうとした誠也を殴り黒の着物は一言。

 

「話が長くなるので始めましょうか?」

 

「ふふ、喧嘩っ早いのね。」

 

黒の着物は鼻で笑って

 

「いいえ、何事にもクールさが必要だと思いまして。例え予想されていなくてもね。」

 

紫は黒の着物と対峙したことはない。たまたま居合わせただけではあるが彼らがここで何かしようとしていたのは見てすぐ分かった。

 

「奇符 ハンガー スプレッド。」

 

先手は誠也であった。まるで吊るすための一本の線が紫に向かう。しかし紫は油断なくその場から離れる。すると一本の線は複雑に周辺を変質し始めた。氷柱のごとく鋭く尖らせ敵の油断を切り崩す。紫はスペルカードルールの創始者であり幾多の経験をしている。しかし彼女でも悪意ある戦いは久々で鈍っていたのだろう。だからこそ紫は線から遠くへ、しかし確実に誠也の元へ迫っていった。しかしスペルカードから察すればわかることであるが大アルカナ吊らされた男は誠也は自らを動くことはない。なぜなら

 

「捕まえた。ふふ、ユートピア。」

 

黒い靄が紫を包む。黒い塊は溶けると跡形をなく消えていった。

 

吊るされた男はいわゆる釣り糸であった。紫は鈍っていたとまではいかないが隙間を一切使わずに舐めていたように思えた。それにしても紫は別次元に飛ばされたのだろうか?それを知るのは今は誰もいない。

 

「ふぅ油断ならないわね。計画が台無しになるところだったんだもの。しっかり絶望してもらいましょう。ねぇ?幻想郷管理人さん?」

 

人里

 

妖怪の宣言は一気に抗争に発展した。人間の陣営はそれこそ宗教の間を超えた信頼とまではいかないが今の窮地を脱したい気持ちは一緒なのだ。

 

「見てなさい妖怪。眼光 十七条のレーザー!」

 

そのレーザーは周囲の妖怪を吹き飛ばした。しかしいつの間にか増えて来た妖怪にその穴を埋められ本丸に突入できずにいた。まるでそれは押しては返す波のようである。また別の場所では

 

「符の弐 陰陽散華!」

 

霊夢が陰陽玉を跳ねさせて妖怪をしっかりと仕留めていく。

 

そう彼らの思いは

 

「私こそ皆を率いるのにふさわしい。)

 

(賽銭賽銭賽銭賽銭賽銭賽銭賽銭賽銭)

 

……どうやら例えには不向きな奴らだったようだ。

 

その隅では狼男のような見た目の妖怪の爪が子供の頬を掠める。薄く血が流れ、恐れた農夫の男の子は泣くことを忘れ呆然としていた。その場を離れなくてはいけないのに体が動かない。それは常に何かがまとわりつき剥がれない感覚である。彼の目にはゆっくりと見えたはずである。

 

「すまねぇが死んでもらう。」

 

喋れたであろう妖怪は短くそう告げると腕を振り上げ……しかし妖怪は素早くその場を退避した。なぜなら退避した場所には既に小さく土が凹んでいたからである。

 

「こちらこそすまんが、こんなわんぱく坊主でも私の寺子屋の生徒なんだ。だからお前には死んでもらう。」

 

寺子屋から今の騒ぎに駆けつけた慧音であった。

 

「ほう、お前は……ああ、同類か……。」

 

妖怪は小さくそう呟く。

 

ピクッと小さく眉を吊り上げ慧音は静かにそう聞いた。

 

「それはどういう?」

 

「お前には関係ないことだ。」

 

妖怪はなんでもない風にそう切り捨てると行動を再開する。

 

きみも襲って来た妖怪に一瞥すると握っていた妖怪の腕と思われる遺体を投げ出した。

 

「汚ねぇな。寄って来んな。こっちはこのあと甘味処でご主人様と二人きりで食べに行くんだよ。」

 

少なくともそんな具体的な約束はしていないのだが……。

 

「仕方ねぇ一瞬で終わらせてやるよ。」

 

そうきみは誰にいうわけでもなくおもむろに妖力を練り出す。明らかなるオーバーキルである。躊躇いもなく放つと妖怪たちは散り散りに……とはならなかった。

 

「厄も妖力も私にかかれば皆無力。むしろ信仰する皆に分けてあげましょう。」

 

そうクルクルと回りながら鍵山雛は莫大な妖力弾を集め出し、そして妖怪たちに付与し出した。自身に忠実な妖怪となった雛にとっては枷の無くなった体を自由に動かす。妖怪達はくるくると回り出した妖気に包まれ腕の破損などの深手もまるでなかったように元通りとなる。先程のきみに投げられた妖怪らもむくりと体を起こし出した。

 

「ッチ!きりがねぇ!おい!そこの紅白お前何か策ねぇのか?」

 

「あんたこそこないだ見たいな一撃で相手を屠れないの?」

 

「あ?もうそれやんねぇよ。あれすると動かなくなるどころかご主人様と甘味処で食事した後静かにベッドインできねぇだろうが!」

 

もはや煩悩の塊と化したきみは霊夢の要求を一蹴。

 

「ちょっあんたそれでも管理人代理の従者!?」

 

「もう解約しただろ!そんなもん!」

 

とことん横暴である。そこで霊夢と行動を共にしていた魔理沙が声をかける。

 

「じゃあ、こう考えようぜ?今きみが一撃必殺な技を出したとする。それをお前のご主人は大層喜びになってそのまま介抱アンド甘味処であんみつをあーんされる。そしてあわよくばご主人の方からきみを襲い……ハッピーエンド〜!」

 

どんどん要求が増えているのはなんなのだろうか?彰にとって異変よりその後の方が危険である。それはもちろん霊夢も

 

「そんなうまく行くわけ……「ナイスアイデア!!」……もう勝手にしなさい。」

 

「よし決心はついたな。これから本丸を落としに行くぜ!」

 

倉持邸

 

「きみだけに行かしといて良かったのでしょうか?」

 

くおが小さくそう聞いて来た。彰はそれについて優しく答える。

 

「ああ、きみにもパスが通っているはずだし正直さっきの規模ならぎりぎり殲滅できるはずだ。」

 

パスとは彰と従者との間に通っている魔力などの導線でありきみの場合妖力が通っている。

 

「そうですよ。これほどで負けてしまってはご主人様に示しがつかないじゃ無いですか。」

 

めいはそんなこともわからないのかと彰に賛同して(常に賛同する立場なのだが)言った。

 

「あれ?セレスが居ないな。」

 

「うーん、恐らくまたどっかほっつき歩いているんでしょう。」

 

「あの人ならあり得そうです。」

 

そしてそんな心配するような二人の従者だが読書する為に移動する彰の後ろを追従するように歩きながらニヤリと笑った。

 

((今きみにはパスは通っていない。この戦いで使い切れば……。))

 

パスとは彼らを繋ぐ線。前回の戦いより彰の力の封印を解いたきみやめいはパスを切っている。彼らの渡された本には一節にこう書かれている。

 

『各々は力に依存する。』と。

 

博麗神社

 

「……あなた達何してるの?」

 

なんともデジャヴな発言をするのは彰の従者の一人セレスである。

 

「またわからないの?杭を打ってるの。」

 

「いやそれこそ見ればわかるから。」

 

腑抜けた解答をする黒幕と思える奴らに呆れたようにそうセレスは言う。

 

「それよりなんでここがわかったの?」

 

「ん?そんなの簡単簡単。だって私は技術力を司ってるんだから。」

 

「……説明になってない。」

 

「別に説明なんていらないよ?だってきみ達ここで死ぬんだから。」

 

そう行ってセレスは思い切り杭を打つ男に突進を仕掛ける。

 

が、不幸なことに杭は深く埋まった。

 

「ぐぁ!」

 

殴られ飛ばされたのはセレスであった。

 

「……遅いな。」

 

吹き飛ぶように姿の見えなくなったセレスは一直線に樹木をを倒して行く。止まるころには見事なエンジェルランプを意匠とした洋風な着物はボロボロになり四肢も先程右腕を再生したばかりである。

 

「あーあー今の常人なら数回は死んでるよね。まだ私も負けるわけにはいかないし、例え尽きても相手を消滅させなければね!」

 

油断。それは今までの経験からすれば初めての経験であった。眼光を鋭くしたセレスは一気に間合いを詰めて視認できない結界に指を通す。瞬間触れたところから腐り落ちて行く。

 

「あああぁ!!……はぁはぁ。」

 

痛みに苦しむセレスは済んでのところで止まり縦線一本引かれ切断されたかのような断片を晒した。

 

「この結界は時間だ。天然の結界とも言える。時間軸をずらし血流さえも速さを変える。ちなみにそこの結界は二倍くらいの時間の差がある。まぁあいつの受け売りだけどな。」

 

「そんなの体が腐る理由にならないよ。」

 

「俺もよくわからないけど多分お前らだけだと思うぞ。力の塊よ。」

 

まだまだ異変は始まったばかりである。

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