東方幾能録   作:arnehe

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守護の都〜下巻〜11

セレスが苦戦しうる二つ目の戦それは、いつかの狼を彷彿とさせる甘い戦であった。

 

「案外弱いのね貴女?」

 

誠也の後ろにある賽銭箱の上に優雅に座りながら黒の着物は静かに言い放った。セレスの疲労は誠也とは目に見えて違っていた。

 

「それはどういう?」

 

セレスの身の程をわきまえない傲慢な物言いに心底呆れながら、

 

「貴女程度の欲望、それも自身さえ振り回されるような不安定な欲望なんて使いこなせてないでしょ?適度に発散させるのが賢いやり方」

 

含みのある黒の着物の言葉を静かに聞くが理解できなかったようだ。未だに考えを巡らせている。その様子にさらに黒の着物は

 

「身の程をわきまえろってことよ。」

 

「なるほどなるほど〜。つまりこう言いたいわけだ?」

 

それをわかっているのかわかっていないのか。セレスはゆっくりと歩く。その様子には不敵なそして不遜な態度に誠也でさえ眉をひそめる。

 

「貴女たちはやっぱり敵ってことだね。」

 

瞬間何かが弾けた。それは気体であり空間でありそして世界そのものを。

 

「違うわ。」

 

呆れに近い声音で彼女は言った。

 

粉塵が舞う壊れた世界に黒の着物そして誠也は博麗神社一帯以外を吹き飛ばした現象に眼を見張った。

 

()()貴女じゃないってこと……。」

 

先程のムッとした黒の着物であったが今は慈愛のこもった微笑を浮かべる。何故なら

 

(どうやら戦力差を理解して応援を呼ぶ程度のことはできるようね。あの子たちの中ではなかなか優秀なのかしら?成長……私達にはない成功へと導くもの。そろそろいいのかしら彰様?)

 

何故なら、彼女の思惑をいい意味で裏切り、すでに世界を変えた張本人は綺麗さっぱりと消えていたのだから。

 

倉持邸

 

「つまりなんだ?今回の異変は」

 

「ああ、おそらく何者かが便乗した結果だろうな。」

 

ふむと藍は小さく唸りこれまでの異変を振り返る。

 

我狼により妖怪全体での異変

 

異変の首謀者は死亡

 

枝麻の土地全体の異変

 

これも異変の首謀者は死亡

 

これらから首謀者役にされた者は任を解くとき殺されている。つまりは役目を終えた後真の黒幕に殺された事となる。今回の首謀者となるのは厄神、鍵山雛。彼女も殺されるということか?そう藍は思索を巡らした。

 

しかしと話の流れから彰は思い留まる。不可解なことに殺される理由に心当たりがない。失敗したからというには流石に早急である。首謀者どちらも類稀な能力を保有していた。今後も捨て駒にでも使った方がいくらかマシだと言える。つまり殺すにはそうならざる終えない理由があるはずなのだ。そう理論付けた彰と藍は解決のため夕日の沈む道へと動き始めた。

 

しかしその論理に正解は訪れることはない。

 

人里

 

「失敗に終わっているわけだが?」

 

「これは私にも予想外だったり?」

 

きみの燻る怒気をどうにか抑えながら魔理沙に問う。その姿はさながら背後に龍を彷彿とされる錯覚を起こす。

 

現在魔理沙の考えた策はものの見事に躱され事態は乱戦へと突入しつつある。

 

魔理沙は戯けた態度できみのそれを躱し、自らの予想が外れたことに驚愕し次の策を練る。

 

厄神の能力が厄を溜め込む程度の能力であった筈だ。それを放出しそれを妖怪に付与出来るとなるとそれは最早厄を操っていることになる。力の制御にいくらか苦戦しているとするならそれは一瞬を突く隙と言える。実際自らの手で交戦はせず配下に力を分けるのに注力しているのが今までの戦闘から予測が出来た。つまり、魔理沙たちが行動するなら一点集中の糸を通すような小さくそして戦闘不能にできる一発。それができるのはきみの一撃のみ。

 

「きみはここからあいつ目掛けて一撃かませられるのか?」

 

「いや、無理だ。あたいの力は射程として半径一、二メートルはっきり言って融通はきかない。」

 

(となると、きみを厄神の近くまでエスコートできる奴はあいつだけだ!)

 

事態は収束へと向かいつつある。

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