チョコ。

確かに糖分補給は作業の効率を上げる。
しかし、しかしだ。いっぺんに貰っても只々困るのである。

そんな訳で執務室から脱出、別な場所での執務に励む提督であったが……。

青葉追加ボイスおめでとうっ!
次は改二だっ!改二だっ!

作者ID:19074

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※タイトル詐欺注意。

ただただ書き散らした。私は悪くない。





電撃!軍艦青葉のチョコレート輸送作戦!【短編】

「どもぉ、恐縮ですっ!」

 

 ノックの「ノ」の字も知らず、今日も解き放たれるは見かけだけ重厚な木製扉。普段よりも15%程大きな負荷が蝶番にかかり、今日も今日とて扉の寿命は縮まった。

 

「……」

 

 だがしかし、その音を聞いて書類より顔を上げる私にとっては、そんなことはどうでもいい。なんせ扉の修繕費は予算で下りる。

 

 一旦、目線を書類へと落とす。変わり映えのない、今や署名とハンコを待つだけというところまで作業が進んだ書類。

 

 そして、もう一度顔を上げる。

 

「あれぇ? どうしたんですか、そんな七面鳥がVT信管を喰らったような顔して?」

 

 小さめの窓から仄かに差し込む光。季節は冬でも暦は既に春、その証拠に差し込のは春のそれ。

 ぽかぽかと擬音が聞こえてきそうな優しい光のカーテンに包まれているのは……少女だった。

 

 幼いとは言えないが、しかし成熟しきったとも言えない……そう、例えるなら新興国のような体躯。例えがおかしいとは言わないでくれ、性徴を迎え、そして発展途上を通り過ぎた高低差のある身体。でもまだ幼いのだ。

 

「……」

 

 こちらが無言を保つと、相手方はやや挑戦的な表情に切り替わる。表裏を感じさせない風を装った深い笑み。

 

「……なんでここが分かったかって?」

 

 やだなぁ司令官、青葉と司令官の仲じゃないですかぁ~と首を傾げてみせる彼女。ポニーテールを抑えるシュシュが揺れるのがチラリと見えた。

 

「……何しにきた」

 

 書類作業は一旦おいておこう。確かに私は定期的にこの部屋に【疎開】している。もちろん長らく秘書艦を努めてくれている彼女がそれを知らないわけがない。

 だが、だからこそ、この部屋を使う意味を知ってるはずなのだ。

 

「何をしに来たか分からない?」

 

 しかし彼女は知らんふり。話を続ける。主導権を譲るつもりは微塵もないらしい。

 

「では、そんな超✩鈍☆感な司令官に質問です! 本日は如月2月の14日……さて、なんの日ですかぁ?」

 

 そこで私は初めて不敵に笑いを、余裕を見せつける。

 無論その質問は想定済み。ならどうするか?

 

「……今から千八百年近く前の西暦269年のヨーロッパ。兵士の自由結婚禁止政策に反対したバレンタイン司教が、時のローマ皇帝の迫害により処刑された、それに反抗する形で2月14日が『バレンタイン司教の記念日』としてキリスト教の行事に加えられることになる。それが今日のバレンタイン・デー。いつしか恋人たちの愛の誓いの日になった……違いないな?」

 

 情報量による封殺である。バレンタイン・デーとはバレンタイン司教の処刑日のこと。長い長い帝政ローマの弾圧とのなかで生まれた政治的イベントに過ぎないのである。この国が法律で定める全ての祝日の全てに何かしらの意図があるように、そういうものに過ぎないのである。

 

 愛の誓いというのも、背景を見ればいかにこじつけであるかがよく分かるというもの。

 

 

「ご名答っ!」

 

 しかし、である。相手はかの不沈艦。まさかこれだけで終わるわけがない。

 一瞬の隙間もみせず、ぴしっと正解のサインを立てる彼女。息も置かずに続ける。

 

「ちなみに女性が男性にチョコレートを贈る習慣は日本独自のもの。1958年、即ち昭和33年にメリーチョコレートカムパニーが行った新宿・伊勢丹でのチョコレートセールが始まり……初めは全くウケなかったんですけどね……って」

 

 そこで一息。

 

「……そんなの五秒で調べられるじゃないですかぁ……上辺だけの情報戦はやめましょう?」

 

 ヘタに気取ると、返って逆効果ですよ?

 

「駆逐艦相手なら、効果てきめんだ」

 

「司令官は弱い者いじめが好きなんですかねぇ?」

 

 青葉、ガッカリですぅ……。ぼやくように天井を仰ぐ彼女、帝国海軍所属一等巡洋艦『青葉』。

 

「そもそもだな……貴様ら【艦娘】は、あの害獣どもをぶっ殺していればそれでいいんだ。無駄なことを……」

 

「ほぉう?」

 

 無駄なことをするな。しかし皆まで言わせず待ったが入る。

 

 青葉はやれやれを全身で表現。

 

「『汝らのうち、罪なき者まず石をなげうて』」

 

「……」

 

「バレンタインはキリスト教ですからね。今日はここから引用しましょう……司令官(あなた)青葉(わたし)に石を投げるんです?」

 

 そしてぐいっと前に出て、そして顔を突き出した。簡易な臨時執務机は防衛線にすらならず瞬時に崩壊、彼女と私の吐息が交錯。

 よく言えば上目遣い。実情を説明するなら勝ち誇った狩人の目。そこに私の顔が映った。

 

「……面白い冗談じゃあないですか」

 

 

 

 

 ★ ★ ★

 

 

 

 

「と、いう訳でっ……青葉のチョコ、差し上げますっ!」

 

 『という訳』とは果たしてどういう訳なのだろうか。目の前には包装紙。彼女の言葉を信じるならば、中身はチョコレート。

 

「……私は受け取らないぞ?」

 

「この期に及んで抵抗しますっ?」

 

 往生際悪いにも程がありますって……そうは言うが、押し付けられる側の気持ちにもなって欲しいというもの。

 

「ひとつ受け取れば後はなし崩し。昨年私がどれほど批判されたか、忘れたとは言わせないぞ?」

 

「いや司令官、あれは不幸な事件でしたよ」

 

 そう、不幸だったんです!

 彼女は臨時とはいえ仕事場であったはずの机に座りながらそう言う。書類は丁寧に片付けてあるから乱暴とは言い切れないが……いや十二分に乱暴だ、横暴だ。

 

 ちなみにその「不幸な事件」というのは、上層部によって行われた宣伝(プロパガンダ)番組に始まる地獄の三ヶ月のことである。週一で12週間の連続放送、総天然色(フルカラー)、一回30分という非常に手の込んだ戦意高揚番組だったはずが、なぜか『提督=無能』のレッテルを貼られ、しかも現実でも同時期に深海棲艦の反抗を許し、更にはこの頃に去年のバレンタインが重なるという悲劇!

 

 提督とは、無責任な指令を書き残して去り、チョコを貪り、そして最後には美味しいところだけを持ってゆく。

 そんなイヤーな(しかし、間違っているかと言われれば否定できないのが辛い)印象を持たれてしまったわけだ。

 

 

「さぁ司令官! 青葉と一緒にトラウマを、史実(去年)を乗り越えましょう!」

 

「……お前ホント楽しそうだな」

 

「楽しいですよ! だってお祭ですもん!」

 

 そして話は彼女がいかにして今日のイベントを楽しんでいるかに移る。私がこんなところに疎開しているのはもちろん駆逐艦たちなどがこぞってチョコを渡しに来て、しかもその場での実食を強要するからなのだが、別に艦娘同士でもチョコ交換くらいはやっているそうだ。楽しそうでなりより。

 

「……で、古鷹さんがですねー」

「ちょっと待て、古鷹がチョコを作ったのか? あの軍艦が人を着て歩いてるような軍艦が?」

「ちょっと司令官、流石にそれは古鷹さんに失礼ですってぇ……司令官は古鷹さんのことなんだと思ってるんですかぁ?」

「……重巡洋艦?」

「青葉もですって!」

「お前はパパラッチだろ」

「ひどい!」

 

 

 

 

 

 余談だが、今年も深海棲艦の侵攻は続いている。

 大規模作戦中に丸一日のんびり過ごしていた私は後数時間後に比島から帰還することになる大淀にこっぴどく叱られるのだが……私の名誉に関わる問題だ。そこは割愛させて頂こう。

 




あとがきは長くなったので活動報告に載せときます。

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