ハイスクールD×D 俺と愉快な神話生物達と偶に神様 作:心太マグナム
今回ギャグ要素ありません。シリアス100%です。
ご注意下さい
今日はリアスとライザーの結婚式が行われる日、定治は溜息をつきダルそうにタイを緩める。
「ハァ〜、だっりぃ……」
定治は現在木場たちと離れ、コルクで蓋をされた瓶を片手に持ちながら披露宴の周りを歩いていた。
「ったく……あの馬鹿。どこほっつき歩いてんだよ……お?」
定治が暫く歩いているとアーシアと一緒に何か話し込んでいる一誠を見つける。
「お、一誠じゃん」
一誠を見つけると定治はいつも通りのヘラヘラした笑いを浮かべながら近づいてくる。
「何々どうしたん一誠?アーシアちゃんと話し込んじゃって。俺も混ぜてくれよ」
「一誠さん……」
「ああ、定治になら言ってもいい」
アーシアが一誠を不安気に見ると一誠はアーシアの頭に手を置いて宥めるように優しく撫でる。そして一誠は定治にこれから行おうとしている事を口にする。ライザーを倒し、リアスを奪うという作戦を。
定治は一誠の話す事に何も言わずに頷くと手に持つビンを転がしながら一誠に向けて口を開く。
「へぇなるほど、ライザーをぶっ飛ばしてから部長を奪って逃げるってわけか」
「ああ、俺はこんな結婚納得できない!魔王様から許可は貰った!俺は部長が喜べない結婚なんか許せねぇ!だからアイツをぶっ飛ばしてこの結婚をなかった事にする!」
恐らく一誠はリアスを奪う事以外目に入っていない。定治はそれを理解すると何時ものヘラヘラとした表情から一変し、静かに一誠を見る。
「……ハハ、一誠お前やっぱり馬鹿だわ。そんな事して向こうさんがどんな報復をしてくるかわかってんのか?あっちは曲がりなりにも貴族だ。貴族って奴にはメンツがある。そのメンツって奴は向こうさんにとっては命の次に大事なもんだ。お前、向こうのメンツ潰してただで済むと思ってんのか?」
定治の言った事に一誠は口を噤んでしまう。だがそれは少しの間だけであり、一誠は拳を握り締めて定治を見つめ返す。
「そんなの関係ねぇ!あいつらのメンツなんて知った事か!俺は俺が正しいと思った事をやる!そしてその結果、報復って奴が来るならそれは俺が全部振り払う!」
そういう一誠を見て今度は定治が黙る。定治が見た一誠には目に決意の炎を宿しており、これを鎮火させるのは不可能だ。だがそれがいい。コイツはこうやって馬鹿みたいにアホで、向こう見ずで、熱血漢で……最高にカッコいい、と定治は思っていた。一誠の決意を耳にした定治は静かに笑うとコレを用意しておいて良かったと思う。
「うん、やっぱりお前馬鹿だ、それもとんでもない大馬鹿野郎だ。だけど俺はお前のそういうところ、嫌いじゃ無いぜ。ほらよ」
定治は先程から持っていたコルクで閉じられたビンを一誠に向けて投げ渡す。投げられたビンを一誠が受け取るとそれは手のひらほどの大きさでビン自体が不透明な為中身がわからない。
「ん?……なんだこれ?」
「お守りだ。お前の目の前でどうしようも無い者が目に入った時、それを祈りながらフタを開けろ。そうすればきっと、奇跡は起きる」
定治が投げたビンにはとある神話生物が入っている。それは恐らくこうなるだろうと思っていた定治が一誠の為に用意したものだった。定治が始めからこのビンを渡すつもりだったのを理解した一誠は定治に向けて拳を突き出す。
「定治……サンキューな」
「……それはライザーって奴をぶっ飛ばしてから言え。礼はその時また聞いてやる。じゃあな親友、式場でまた会おうぜ。……しくじんじゃねぇぞ」
「……おう!」
定治は最後に静かに呟いてから一誠に近づいて拳を向ける。その拳の意図をわかった一誠は定治の拳に自身の拳をぶつける。拳を伝って一誠の覚悟を知った定治は何も言わずに一誠の肩を叩いてから何時ものヘラヘラ笑いを浮かべながら結婚式の会場へと向かっていった。
◆
リアスを賭けた一誠とライザーの闘い、一誠は時間制限つきだが禁手化に至りライザーを圧倒していた。だがライザーは腐っても上級悪魔でありその実力は本物だ。目の前に立つ一誠を自らが全力を出すに相応しい敵と判断したライザーは自身の周囲に魔力が迸らせる。
『相棒、フェニックスの炎は流石のドラゴンでもキツいぞ』
「チィッ……ハッ!」
ライザーに迸る炎を見て赤龍帝ドライグが一誠に警告をする。その警告を聞き一誠はわかってると言いた気に舌打ちをしてから先程定治が言っていた言葉を思い出す。
『お前の目の前でどうしようも無い者が目に入った時、それを祈りながらフタを開けろ。そうすればきっと、奇跡は起きる』
自分の親友が言っていた事を思い出し、一誠は渡されたビンを取り出す。
「行くぞ!今の俺が出せる最高の一撃だ!!受け取れぇぇぇ!!」
ライザーが持っている魔力の全てを使って繰り出された炎の一撃、コレを食らっては最強の生き物と呼ばれるドラゴンですらもただではすまない。
それを見ても一誠は不敵に笑い定治に渡されたビンのコルクを外す。
「定治、使わせて貰うぜ!!」
一誠がコルクを開けた瞬間、ビンから何かが吹き出る。ライザーが放った炎がぶつかり辺りに爆発が広がった。煙が立ち込め、暫くすると煙が晴れていく。自身の全てを出し切った一撃、それが当たったのを見たライザーは自らの勝利を確信し、不敵に笑っていたが直ぐにその顔は驚きへと変わっていく。
「バ、バカな……!俺の炎を止めた!?お前、魔術は出来なかったはずじゃ……!」
ライザーが見たのは無傷の一誠、そして一誠を守るように一誠の前に立ち轟々と燃える炎だった。
『ヌルいヌルいヌルい!!その程度の炎でこの炎の精が倒せると思っているのか!』
「なに……あれ……?」
「生きる炎……?」
「(へへ、正解。ライザー、お前が炎を使ってくるのはわかってた。だからアイツを一誠に渡したんだ。炎で炎の精が倒せるかバーカ)」
まるで生きているように脈動する炎を見て会場にいる悪魔の全てが驚いている中で人間である定治は壁にもたれかかり炎の精を見て不敵に笑っていた。
あの生きる炎は炎の精、グレート・オールドワンであるクトグゥアに仕える者。定治は結婚式前日にこの炎の精を呼び出し、魔術により従属させていた。この炎の精は定治がビンに閉じ込める際に言った一言を忠実に守っている。
『お前を出した奴の事を守れ』
従属させられ、定治にひれ伏した炎の精は定治の命を忠実に守る。先程の一撃で魔力を切らしつつあるライザーは自らの誇りにかけてこの炎の精を倒そうとするが炎の精は倒れない。その様子を見てライザーはあからさまな焦りを見せてしまう。
「クソクソクソ!!この俺が!こんな奴にぃぃぃ!」
炎の精を倒せず、焦り苛立つライザーの一方で一誠は壁にもたれかかる定治の方を向き声に出さずに口パクで定治に言葉を伝える。
「(サンキュー、親友)」
一誠が声に出さずに言った言葉を理解し、定治は少し驚いた様子を見せるが直ぐにフッと笑い誰にも聞こえないような静かな声で呟く。
「おう、ぶちかまして来い。親友」
『さあ、行くがいい。我を解き放ちし者よ。貴殿に祝福あれ』
「ウォォォォォッ!!」
炎の精が役目を果たしたように消える。消えた炎の精の後を通り一誠が聖水を手にしてライザーに向けて駆け出す。雄叫びと共に一誠の拳がライザーの顔面に直撃する。こうして決着はついた。
◆
決着はつき、一誠がリアスを連れてこの場から離れたのだがそれを良しとしない者がいた。フェニックス家の分家たちである。
「ク、追え!追え!こんな事あってたまるか!このような事、あって良いはずが!」
この結婚式の企画を行ったフェニックス家の分家の者は血管を浮かせ自らの眷属に直ぐに一誠を追うように命じていた。命じられた眷属が主の命の元一誠を追おうとしたその時、壁にもたれかかっていた定治が静かに呟く。
「
定治が呟くと定治を中心とし、周りが巨大な障壁に包まれる。一誠を追おうとした眷属は定治が創った障壁を壊そうとするが障壁はビクリともしない。
「ご、ご主人様!周囲に強固な結界を貼られました!我々では突破できそうにありません!」
「何!?クソ!これではフェニックス家の恥では無いか!おのれ下級悪魔の分際でぇ!!」
「やめとけよ」
焦る分家の主に向かって定治が歩いていく。その手には
「貴様は……!リアス・グレモリーの所の人間か……!」
「女は真に自分の事を思ってくれるヒーローにより助けられ、二人は幸せにキスをして終わる。これで物語は完結してんだ。無粋なマネはやめようぜ。感動の余韻が台無しになるだろ?」
倒れているテーブルに片足をかけ、定治は挑発的に分家の主を見る。だがその挑発的な視線が分家の主を余計に苛立たせる。
「人間がぁ……!この私に舐めた口を聞くな!」
「オラよっと」
分家の主が放った炎は定治が蹴り飛ばした魔力を用いて凍らせたテーブルにより防がれる。氷と炎がぶつかり辺りに白い蒸気が立ち込め、定治はそれを払い、
「ったく、あんたはホント無粋な奴だ。良いぜ、俺を倒したらこの障壁解除してやるよ。倒せたら……な!!」
「な、この大きな穴……!定治くん、キミは一体どれだけの力を……!?」
現れたのは木場たちオカルト研究部たちが見たことのない巨大な門だった。巨大な門からはこの世界のモノとは思えぬ冒涜的な言語と大量の水が流れてくる。やがて冒涜的な言語と流れる水を弾き飛ばすように人の三倍以上はあろうかという巨大な魚人が二匹現れる。
『フム、''いざとなったら''……それが今まさにその時、という事で良いのだな定治?』
『ああ、そうだ。だから頼むぜダゴンさん』
水を滴らせながら現れたのは深き者の支配者ダゴンとハイドラ。ダゴンは定治にあの時の夜に言っていたことを確認し、定治がそれを肯定するとダゴンは牙をチラつかせながら笑う。
『まぁ、いいだろう。こう言った趣向も中々悪くない。』
不敵に笑うダゴンだが一方でその妻ハイドラは何か思い残したことがあるようで頬に手を当てる。
『それはいいとして困ったわね……クトゥルフ様をほったらかしにしてしまったわ。一応部下をある程度残しておいたけど……大丈夫かしらダーリン?』
『問題ないさハニー。どうせすぐ終わる。……息子たちも来たようだしな』
自らの主の心配をするハイドラに対してダゴンは心配ないと言う。そしてダゴンの一言を合図にするかのようにダゴンとハイドラが現れた門から続々と深きものどもが現れる。その数はどんどん増えて行き、結婚式の会場を壊しながらその数を増やしていく。
「あ、あぁ……」
「な、なんだこの軍勢は……!」
「軍勢もそうだがあの二匹の大きな魚人……あれはマズい……!あれの実力は上級悪魔……いや、下手したら最上級悪魔に匹敵するぞ……!」
目の前いるダゴンとハイドラ、そして無数の深きものどもの軍勢を見て分家の主の眷属は絶望し一人は膝を着き、一人はただ震える。その中で定治だけは挑発的に分家の主の方を見ていた。
「門を死の都市ルルイエへ繋ぎ深きものの支配者ダゴンとその妻ハイドラ、そしてその配下の深きものどもを無数に呼び出した。倒せるもんなら倒してみろ。まだ奥の手は沢山ある。さぁ、どうする?」
「な……あ、あぁ……」
定治が一瞬で出した軍勢を見て分家の主は膝に力が抜けるように尻餅をついて絶望の声を上げる。定治はゆっくりと分家の主の元へダゴンとハイドラを連れて歩み寄っていくと、分家の主は定治から逃げるように尻餅をついて震えながら手と足を使って離れるがやがて壁にぶつかってしまう。
「そういえば一度見てみたかったんだよ」
壁にぶつかり焦る分家の主に定治が近づいて行きやがてその歩みを止める。分家の主は視界に見える定治の足を見てゆっくり視線を上げていき、見てしまった。深きものどもの軍勢を、その支配者を連れている男の表情を。
「ひ、ひぃぃぃ……!?」
「お前みたいなプライドが高そうな奴のプライドをズタズタにしてやったらどんな表情が見れるのかを、な」
分家の主から見える定治は確かに笑みを浮かべていた。だがその笑みは人の恐れを喜び、狂気を良しとする冒涜的な笑み、見る者を狂気へと誘うものだった。
「さぁどうする?立ち向かうか?それとも諦めるか?選ばせてやるよ」
「……ア」
定治の笑みを見て分家の主は口から泡を吹き出し気絶する。気絶した男を見て定治は笑顔を止め、つまらなそうな表情を見せる。
「んだよ……もう終わりかよ」
『いや無理もないと思うぞ定治、先程までお前が浮かべていた笑み。クトゥルフ様も飛び起きるレベルの凶悪な笑みだったぞ』
『流石にアレは私とダーリンですらドン引きしたわよ……。人間に恐れを抱いたのは貴方が初めてよ定治』
『え?そんなに怖い?』
『『うん』』
『……マジかー。ま、いいや』
深きものどもの支配者であるダゴンとハイドラですら怖いと言われ、落ち込む定治だが直ぐに切り替え、背後にダゴンとハイドラ、そして大量の深きものどもを引き連れ周りで固まる悪魔たちを見る。
「俺の名は阿見定治、空気は読めるが敢えて読まない、そんなごく一般の男の子だ。普通な男の子の俺だが友達の為なら、俺は何だってやってやる。一誠と部長を邪魔する無粋な奴はいるか?このハッピーエンドに文句がある奴はいるか?いるなら出てこい、男女平等に潰してやる。」
定治の言葉を聞き、前に出る者、声を出す者、いずれもいない。この場を支配しているのは紛れもない定治である。こうして定治の名はフェニックス家とその繋がりのある者達を黙らせ、よくも悪くもその名は魔界に響き渡るのだった。
原作2巻これにておわり。
定治がその気になったら大体こんな感じになりますよゴフッ(喀血
なんだろう、とんでもない事をやってしまったような……?
今回はシリアスな分、来週はシリアスなんて知りません。
テキトーな神話生物講座
炎の精
クトグゥアに仕える生きる炎。物理攻撃完全無効な鬼。ビンに入れて護身用に持ち運ぶことが可能な神話生物
ダゴンとハイドラ
深き者どもの支配者にしてクトゥルフの部下の中でも優れた者である二人。この二匹非常に強い。ステータスだけ見れば二匹でやれば下手なグレートオールドワンと殴り合えるくらい強い。定治でもおいそれと突然呼び出せない。あらかじめ呼び出す約束をしておかないと大人しく来てくれない。だが約束をしていればキッチリと働いてくれる何だかんだいい魚人。
SANチェック1/1D10