ハイスクールD×D 俺と愉快な神話生物達と偶に神様   作:心太マグナム

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ようやく書き終えました。こんなに長く書いたのハジメテ……

あ、今回から小説タイトル変更しました。

何でお前らSAN値チェックしねぇんだよ!?
⬇︎
俺と愉快な神話生物達と偶に神様

こんな作品ですが今後ともよろしくお願いいたします。


VSコカビエル&ナイ神父 3

ナイ神父に誘われ木場はバルパーガリレイの前へと立つ。その目には激しい怒り、そして憎悪が宿っている。

 

「バルパーガリレイ!」

 

木場がバルパーの名を呼ぶとバルパーはエクスカリバーから木場へと視線を向ける。その目には新たなエクスカリバー誕生による喜び、そして木場に向ける愉悦の感情が宿っている。

 

「ほう魔剣使いか、私に何の用だ?新たなエクスカリバーの誕生でも祝いに来てくれたのかね?」

 

ほくそ笑むバルパーに対して木場の怒りと憎悪をより深いものへと変わりバルパーに魔剣の切っ先を向けて叫ぶ。

 

「黙れ!僕は貴様が行なった悍ましい計画の生き残りだ!僕は同志たちの仇を討つためだけに今まで生きてきた!同志たちの無念、ここで晴らさせてもら「あーれー!」オブッ!?」

 

今すぐにでも魔剣の切っ先を突き刺しそうな気配を醸し出しながら木場が自分の心の内に秘めた怒りと憎悪を吐き出していると突如としてナイ神父の障壁を突き破って飛んできた定治が木場に衝突してしまい木場は変な声を上げてその場から吹き飛ばされてしまう。

 

 

「イテテテ…完璧に油断してた…まさかあの野郎開発されながらも攻撃してくるとは思わなかったぜ…まぁ偶然足に魔力を付与してたおかげでクソ邪神の障壁が解除できたのは幸運かね?うん、不幸中の幸いって奴だな。……ん?」

 

定治はコカビエルにより突き飛ばされたが大してダメージは受けてないようで軽口を叩きながら後頭部を抑えながら起き上がり、後頭部をさすっていると定治の視界には吹き飛ばされたのにも関わらず平気な顔して起き上がる定治を見て固まるバルパーとフリード、そして近くで鼻血を流して倒れている木場が目に入る。

 

「お、おい裕斗どうした!鼻から血が出てるじゃねぇか!チクショウ許せねぇ!一体誰にやられたんだ!?」

 

定治は鼻血を流しながら倒れている木場の元へと駆け寄り木場の上半身を持ち上げ木場の身体に他に傷があるか、木場にまだ意識があるのかを確かめ、一体誰が木場をこんな目に合わせたのかと怒りを露わにしながら激昂しながら木場自身に尋ねると木場は人差し指を真っ直ぐ定治へと向けると

 

「さ、定治くん……」

 

と発言する。

 

「…………」

 

木場の口から予想だにしてなかった犯人の名前聞き、定治はなんとも言えないような表情を浮かべてから木場をゆっくりと寝かせた後近くにいたバルパーへと視線を向ける。

 

「おい、お前バルパー・ガリレイとか言ったよな?」

 

「あぁ、そうだがそれがどうかしたか?」

 

定治は何とも言えない表情のままバルパーに本人確認をしてバルパー本人であると確認すると唇をワナワナと震わせて拳を強く握りしめてバルパーに怒りの視線を向ける。

 

「お前が裕斗に鼻血を出させたんだな…!許せねぇ…!俺の友達によくも…!絶対に許さねぇ…!」

 

「は?」

 

「やっぱコイツイカれてますわ……」

 

定治が怒りの視線をバルパーに送る一方で視線を送られているバルパーはというと何故自分が定治に怒りの視線を送られているのかわからず困惑し、その隣にいるフリードに至っては正にイカれた人物に向ける視線を定治に向ける。

 

だがこの光景を目の当たりにしたナイ神父が至って冷静に定治に現実を伝える。

 

「いや定治がぶつかった所為だからね。思いっきり激突してたからね。なんか友人が傷つけられて激昂するシーンみたいにしてるけど傷つけたの定治だからね」

 

「…………」

 

「…………」

 

ナイ神父の言った真実に定治はまたもなんとも言えないような表情で口を閉じているとナイ神父もまた冷静に定治を見つめる。

 

長いようで短い沈黙の数秒、最初に動いたのは定治。定治は膝から崩れ落ちた後拳を地面に叩きつけた後、息を大きく吸う。

 

「ウォォォッ!!俺は!お前を!絶対に許さねぇぞバルパーガリレイィィ!!」

 

「うっわ無かった事にしたよ。私のツッコミなかった事にしたよ」

 

ナイ神父の真実を無視し定治は顔に怒りを浮かべて近くにいるであろう呼び出した神話生物達を呼び出す。

 

『ユキちゃん!ほっちゃん!ビヤーキー!「シカトはやめよう」行くぞ!裕斗の仇!俺が討つ!』

 

ナイ神父のツッコミを無視し、定治は木場を傷つけたバルパーを倒すため神話生物に集合をかけたのだがそこに集まったのはビヤーキーのみ。そして集まったビヤーキーはというと非常に申し訳なさそうな表情を定治に向けていた。

 

『あの、定治様すみません』

 

『なんだビヤーキー!』

 

友を傷つけられた怒りにより定治は話しかけるビヤーキーに苛立ちながら返すとビヤーキーは尚も申し訳なさそうにしながら定治に向けて口を開く。

 

『ユキ様なのですが御夕飯を食べる前にこちらに来たらしくエネルギー切れになってしまった為一旦戻られましたよ』

 

『……え?』

 

ここで定治、忌まわしき狩人のエネルギー切れによるための帰還を聞き思わず固まる。

 

だがまだビヤーキーの口は閉じようとしていない。

 

『それと先程までコカビエルの※※※開発をしていたほっちゃん様ですが反応がつまらないと言って帰られました』

 

『……What's?』

 

ここで定治、星の精の帰還を聞き思わずネイティブな英語を発音する。

 

だが、まだまだビヤーキーの口は塞がらない。

 

『それと非常に申し上げにくいのですが私もハスター様から呼び出しをかけられてしまったので戻らないといけません。ですのでここからは1人、もしくは新たに仲間をお呼びください。それでは失礼致します。頑張って下さい』

 

そして最後にビヤーキーは自分も帰りますとだけ言うと定治に有無を言わさず勝手に帰還してしまう。後に残ったのは固まる定治のみ。定治はしばらく固まったままだったがようやく事態を完璧に理解したのか再び膝から崩れ落ちて力の限り絶叫する。

 

「……チクショォォォォ!!これだから神話生物共はぁぁぁ!!いつもいつもアイツらフリーダムすぎんだろぉぉぉぉ!!」

 

定治が崩れ落ちて力の限り絶叫しているとそんな定治を見かねてかナイ神父が定治に声をかける。

 

「定治」

 

「あぁん!?なんだクソ邪神!」

 

声をかけたナイ神父に対し定治は今すぐにでもナイ神父に掴み掛かりそうな表情をナイ神父に向ける。そんな視線を送られているナイ神父は大して反応せずに首をしゃくって定治にそちらを見るように促す。

 

「落ち込んでいる様だがそんな暇は無いよ。エクスカリバーは完成した。エクスカリバーが一つになった時膨大なエネルギーが発生する。エクスカリバーの方を見てごらん」

 

「……なんだあの魔法陣?エクスカリバーが生み出すエネルギーを燃料にしてんのか?……おいまさか」

 

ナイ神父に促され定治はナイ神父の話を聞きながらエクスカリバーと魔法陣を見ていると定治の脳内で最悪の事態が思い浮かんでくる。そして定治の脳内で浮かぶ最悪の事態を理解しているようにナイ神父は頷く。

 

「察しがいいね。その魔法陣は発動におよそ20分ほどかかるが一度発動されればこの街など軽く消し飛ぶ威力のモノを生み出す。魔法陣を生み出しているのはコカビエルさんだ。彼を早く倒さないと駒王町が滅んでしまうよ?」

 

定治の脳内で浮かんだ最悪な事態がナイ神父に肯定され、それを防ぐ方法が如何に面倒なのかを理解し定治はキレながらナイ神父に向けて距離を詰めていく。

 

「ハァァァァッ!?何だそれ!?ふざけんなよ!そういうのは最初に言えよ!」

 

「いや直前に行った方が面白いかなって」

 

「死ね!!ダァックソッ!裕斗聞いたな!?あと20分でこの街が消し飛んじまう!ここはエクスカリバーより先にコカビエルを倒しにいくぞ!」

 

定治はナイ神父が腰掛ける一誠に気づかずナイ神父を罵倒した後未だ倒れているであろう木場がいる方向に視線を移し、木場にコカビエルを先に倒そうと伝えようとするがそこで定治が目にしたのは定治が全く予期していない光景だった。

 

「ハァァァァッ!!」

 

「ハッハァァ!!この超素敵仕様になったエクスカリバーにそんなチャチな魔剣で勝てると思ってんのぉぉぉ!?弱ぇ弱ぇ!!」

 

定治の視界に映るのはエクスカリバーを手にしたフリードとまだ寝ているだろう思っていた木場が切り結んでいる光景。この光景を見た瞬間定治は裕斗がナイ神父の話を全く聞いていないのを理解し、力の限り絶叫する。

 

「裕斗全く話聞いてNEEEEEEEEEE!!」

 

「いつまで談合を続けているつもりだ?」

 

「あっぶね!」

 

定治が力の限り絶叫しているとコカビエルが不意を打つように巨大な光の槍を定治に向けて投擲する。定治はいち早くコカビエルが作り出した巨大な光の槍に気づくと大きく横に飛び、砂煙をあげながら光の槍を躱してコカビエルに視線を向ける。するとそこには先ほどまでの笑みが消え失せたコカビエルが定治の目に入る。

 

「……奇襲のつもりだったのが容易くよけるか。まず褒めてやろう。俺に新たな性癖を植え付けるとは大したものだ。「褒められてる気が全くしねぇ!!」そして聞いていた以上に厄介な神器、また神器使いだ。アザゼルが警戒するのも頷ける。この俺が知らない強力な生物を何種類も呼び出し使役する能力、そして神器だけに頼らず様々な魔術を行使しオマケに体術も優れている。。戦争が起こる前の余興程度にしか思っていなかったが、お前はかなりの強敵のようだ。」

 

「(……コイツ、目に驕りが無くなりやがった)」

 

コカビエルの出すオーラは先ほどと変わっているようには見えない。恐らく力の底は先ほどまでと変わらないだろう。だが定治は直感で理解する。戦いはこれからが本番だと。先ほどまでのコカビエルはまるで生意気な少年を痛めつける傲慢な大人のような視線だった。しかし今は自身を一人の敵として見ている。

 

「(こりゃぁやっちまったなぁ……最悪だ)」

 

定治は後悔した。最初から手段を選ばず本気で殺しにかかればこうはならなかったかもしれない。相手が油断していたあの時こそ一番楽に殺せたと。定治は今までの戦いに自分自身コカビエル同様に驕りがあったのを理解し自分を深く戒める。

 

コカビエルが定治を一人の敵として視線を送っているのと同様に定治も気持ちを切り替えコカビエルに同じような視線を向け、深く深呼吸をしながら父夢桐より教えられた武術の構えを取る。

 

「故に!俺はお前、阿見定治を目的達成の為の最大の障害と判断し!驕らず!油断せずに!どんな手を使ってもお前を殺すと宣言しよう!」

 

「ああそうかよ!なら俺はダチとこの町を守る為にお前を倒すと宣言してやる!ナーク=ティトの障壁・鎧・兜・籠手・具足!」

 

コカビエルと定治は同時に動き出す。コカビエルは無数の光の槍をすぐさま生み出し定治に向けて投擲し、定治はナーク=ティトの障壁を発動。生み出された障壁を操り自分の体を覆うような鎧を作り出しながら地を跳ねコカビエルの光の槍を躱す。

 

コカビエルの光の槍を躱しながら定治は周囲を確認し、周りの状況を理解しながら次の手、その次の手をシュミレートしながら動き続ける。

 

「(一誠と小猫ちゃんはニャルに監視されてて動きにくそうだな……部長もありゃニャルに支配をかけられちまってる。コカビエルを倒す為に一誠の神器を使わない手は無ぇ。部長の魔術も充分戦力になる。小猫ちゃんは…クソッ俺あの子は力強い事くらいしかわからねぇ!…….フゥ、さて次手はどうする俺……!)」

 

 

 

定治とコカビエルが激戦を繰り広げている一方で木場とフリードの闘いは早くも決着を迎えようとしていた。木場とフリードの周りには砕かれた魔剣のかけらが大量に散らばりその中央では木場が魔剣を杖代わりにしてどうにか立っており、対してフリードは弱り切っている木場を残酷な子供のような目で眺める。

 

「ヒャーハッハッハッ!!いやー弱ぇ弱ぇ、お前程度じゃこの超素敵仕様エクスカリバーちゃんの相手にならねぇなぁオイ?」

 

「ハァ……ハァ……!」

 

フリードの挑発に木場は歯ぎしりしながらフリードを睨む。目の前に憎むべき聖剣とバルパーガリレイがいるというのに木場は何も出来ずにいる。それが木場から冷静さを奪う。

 

「まだ、まだだッ!!僕は負けられない!!」

 

「そういえば、だ」

 

木場がなんとか立ち上がり剣を構えたその時、バルパーガリレイが何を思ったのか木場の元へ歩いていく。

 

「あの時被験者が一人脱走したと聞いていた。どうせ野垂れ死ぬだろうと思っていたがまさか悪魔に転生していようとは」

 

そう言ってバルパーは木場に冥土の土産だと言わんばかりに自身が生み出した聖剣計画の全貌を語り始め、およそ人が口にするのも悍ましい自身が行なった事全てを嬉々として話し出し、やがて全てを語り終えたバルパーは狂気の笑みを浮かべ木場に唾を撒き散らしながら告げる。

 

「君らには感謝している。お陰で計画は完成したのだから!!」

 

この声は駒王学園にいる全ての人物に聞こえ、コカビエルと闘っている定治の耳にも入り、バルパーが行なった計画の全てを聞いた定治の頭の中に数々の記憶が蘇る。

 

『私はより偉大な魔術士になる為この子供たちの寿命を奪い我が物とする!そうすれば私はさらなる寿命を得てより高みへと至るのだ!』

 

『わからないのか?これは必要な犠牲なのだよ!私が救世主となる為のなぁ!コイツらの精神を吸い上げた後私はクトゥグアの封印を解き、吸い上げた精神で出来上がる宝具で私はクトゥグアを操り汚れたこの世界を燃やし尽くす!その後私は燃え盛る大地に立つ救世主として君臨するのだ!!』

 

それは過去に定治が防いできた計画、儀式の首謀者達が放った言葉の数々。いずれも誰かの為では無く、己の欲望の為に多くの人々を犠牲にしようとしてきた者達だった。

 

数々の忌まわしい記憶を思い出した定治は頭に血管を浮かばせ、高く跳躍するとコカビエルが光の槍を放とうとしている手の関節を外してから八つ当たりのようにコカビエルの頭を蹴り飛ばす。

 

「……クズ野郎が!」

 

コカビエルを蹴り飛ばして地面に着地した定治は憤怒とも侮蔑とも言える表情を浮かべてバルパーガリレイを一瞥する。だがバルパーガリレイはその視線に気づく事なく一通り語り終えて満足そうな表情を浮かべた後何かを木場の元へ放り投げた。

 

「欲しければくれてやる。因子はもうより質の良いものを量産できる体制に入っているのでな」

 

バルパーガリレイが放り投げたのは深い青い色の物体。一見すると一体それが何なのかわかるものはおそらくいないであろうそれを見て、話を聞いていた誰もがそれはバルパーの悍ましい計画により犠牲となった者達から抜き出された因子の集合体だと気づく。

 

木場は因子の集合体を拾い上げ優しく包むと傷ついた身体のことなど忘れ体を怒りと悲しみに震わせる。

 

「……貴方は自分の研究の為に、欲望の為に、どれだけの命を弄び犠牲にしたんだ。貴方のせいで、みんなは……!!」

 

木場がそう静かに呟いたその時、因子から青く光る球体がいくつも現れ木場の周りを包むように回り始め、球体はやがて人のような形へとなっていき木場の元へと集う。

 

「あれは……人か?」

 

「……みたいですね」

 

その幻想的な光景は見る人々を魅了し、一誠と小猫は魅入るようにその光景を眺めていた。しかしナイ神父はその光景を魅入るように見つめておらず学者のように淡々とした表情で青い集合体を見て呟いた。

 

「ほう、彼の思いが抜き取られた因子の持ち主の意思を呼び起こしたのか?こんな事がたったそれだけで起きたのか……興味深いね」

 

人の形を成した青い光は聖歌を奏で、木場も気がつけばそれを口ずさむ。そして人の輪郭を象っていた光ははっきりとした人間の姿へと変えていく。木場はその姿を目にした時思わず涙を流しそうになるがそれを懸命に堪えながら死んでいった同志たちに声をうわずらせながら語りかける。

 

「僕はずっと疑問に思ってたんだ。僕よりも夢を持っていた子がいた。僕よりも生きたかった子がいた。……僕だけが平和な日々を過ごして良いのかって。……ッ!」

 

涙を堪える木場。木場が涙を堪えるのはたとえ死んでしまったとしても会う事が出来た同志たちに泣いている所、情けない所をを見せたくないというちっぽけな男としてのプライド、それが木場の目から出る涙を懸命に堪えさせていた。青き魂は涙を堪える木場に語りかけ、木場は涙を堪えながら頷くと青き魂は木場の中へと入っていき後には亡き同士たちの言葉を受け取り、必死に涙を堪える木場だけが残る。

 

定治は懸命に涙を堪える木場を眺め、起き上がってこちらへと真っ直ぐ向かってきているコカビエルに気づいていながらも苦笑しながらルールブックのページを開く。

 

「(……油断、しないつもりだったんだけどな。だけどこれはダメだ。やらずにはいられねぇ、やんなきゃだめだわ。悪いな少し前の俺)」

 

自嘲気味に笑う定治。しかしその笑みには確かな優しさも浮かんでいる。コカビエルはもう近くまで来ている。ここでルールブックを使わずにおけばコカビエルを迎撃できる。だがそれは出来ない。木場の友として、涙を堪える友の為ここでやらない訳にはいかない。覚悟を決めた定治はルールブックに魔力を込め神話生物の名を呼ぶ。

 

「ノフ=ケー」

 

「隙だらけだぞ阿見定治!鎧の着いてない箇所!そこだぁっ!!」

 

ルールブックに魔力を込め終え、木場の近くに門が設置された。だがそれと同時にコカビエルは定治の身体の殆どを覆っている障壁が覆っていない箇所、定治の手首目掛け作り出した刃を振るう。門を作る事に集中していた定治にこれを避ける術は無く、コカビエルによって切り落とされた箇所からは鮮血が舞い、定治に通常の人なら叫びかねないほどの激痛が襲う。しかし定治は叫ぶ事なくコカビエルへと向き直ると

 

「ごちゃごちゃうる、せぇ!!」

 

「しまっ!?」

 

定治は襲ってくる激痛に叫ぶ事なく切り落とされた手首をコカビエルの目に押し付け相手の視界を奪ってそのままコカビエルの胴元を力の限り蹴り飛ばす。コカビエルの胴元にぶつけられた足からコカビエルの肋骨がヒビ割れる感触を感じながら定治はコカビエルを蹴り飛ばし、コカビエルは砂煙を巻き上げ地面と衝突した。

 

木場の近くでこのような闘いが行われたが木場はそれに気づかず懸命に涙を堪え、最早言葉になっていないが自らの身体へと受け入れた同志達へ謝罪と感謝の声を呟く。

 

「みん、な……ぐっ……ぁぐっ……!」

 

 

「オイオイオイ?いつまで泣いてんですかぁ?隙だらけでやんすよぉ!!」

 

悲しみにくれる木場、しかし敵は泣き止むのを大人しく待っていてはくれない。悲しみにくれる木場を見て好機と判断したフリードは木場の背後に回ってエクスカリバーを木場の首めがけ一直線に振るう。

 

「隙だらけなのはテメェだよクソ神父!!」

 

「ゴフッ……!?」

 

しかしそれをフリードの敵である定治が絶対させまいと横から蹴り飛ばす。横から飛ぶように跳躍した定治は勢いをそのままに神速の蹴りをフリードの脇腹に突き刺し、フリードは木場の首を切り落とすことなく、口から血を吐き出しながら横に数メートル蹴り飛ばされる。

 

 

敵をあらかた吹き飛ばし終え、定治は切り落とされた手首を出血を抑える為、制服のタイで締め付けながら木場の背後まで行くと木場に手首を見せないように背中合わせ優しく木場の名を呼ぶ。

 

「裕斗」

 

「さ、定治く「振り向かなくていい」……え?」

 

優しい声音で木場の呼ぶ定治。木場は定治の声に気づき涙を未だに堪えながら定治の声が聞こえた方向へ振り向こうとする。しかし定治は声でそれを止めさせた。今定治の手はコカビエルによって切り落とされている。タイで締め付けて出血は抑えているものの完全に血が止まっている訳ではない。友に余計な心配をかけさせたくないというちっぽけな意地が木場を振り向かせるのを止めさせる。

 

「泣いとけよ」

 

定治は木場が振り向いていない事を確認すると、友に先ほどからずっと言いたかった事を伝える。その声は普段ヘラヘラと笑っている男からは想像も出来ない程の優しい声。友を思う優しい声は木場の心目掛け真っ直ぐ飛んでいくり

 

「いっぱい泣いていいんだよ。その涙は男の子の意地やプライドで堪えなくていいものなんだ。こんな時、泣いちまうのは絶対に悪い事じゃない。……これは俺個人の考えなんだけどさ、思いっきり泣いて、そんでもって最後に思いっきり笑う。それが死んじまった奴を見送る為に一番だって俺は思ってる」

 

定治の言葉を聞き、木場の目から堪え続けた涙が溢れ出していく。だが木場のちっぽけなプライドはそれでもなお、木場の涙を堪えさせ続ける。言いたかった事を伝え終えた定治だが木場が懸命に涙を堪えているのを感じ取り、木場が涙を堪える理由を理解して口元を少し釣り上げる。

 

「(ハハ、そうだよな裕斗。男の子のプライドや意地はちっぽけだけど簡単に捨てられるほど安くはない。一言二言言われたくらいじゃ捨て切れやしない。わかるぜ裕斗。男の子ってのはホント生きづらいよな。……ハハ、ようやく来たよ。遅ぇんだよノフ=ケーさん)」

 

友を思い定治が口元を釣り上げていた時、ようやく先ほど設置した門から吹雪と共に一匹の獣が悠然と歩いてきた。まるで見計らっていたかのように現れた白銀の獣ノフ=ケーに定治は心の中で笑いながら毒づいた後、木場から離れる。

 

「……さっきうっかり周辺を吹雪にしちまうノフ=ケーさんを呼び出しちまってさ。多分俺には何も見えねぇし聞こえねぇと思う。それにしても寒ぃな……裕斗、俺は魔術を使えばこの吹雪でも十分に動ける。だけど裕斗はそんな事出来ねぇだろ?ノフ=ケーさんの体は暖かいんだ。ノフ=ケーさんに抱きついて暖でもとるといいぜ」

 

定治はまだ切り飛ばされていない方の手で木場の肩をポンと叩いた後現れたノフ=ケーの元へと向いてノフ=ケーにある頼み事をする。

 

『ノフ=ケーさん』

 

『すまないね定治、ちょっと野暮用で来るのが遅れたよ……って定治お前さん!』

 

「手が無くなってるじゃないか!」ノフ=ケーはそう言おうとしたが定治が片目を閉じながら人差し指を口に当てているのを目にして口を噤む。ノフ=ケーが口を噤むのを確認し、定治は下を向いて懸命に涙を堪える木場に親指を向ける。

 

『悪いけどそこにいる人間、裕斗っていうんだけどさ。ソイツの事守ってやってくれ。頼む』

 

手を切り落とされ、自身が立つ地面が血による染みだらけになってもなお気にせず笑いながら頼む定治にノフ=ケーはそんな事言ってないで傷を直しなと言いかけるが口をつぐみ、ゆっくりと、深く頷く。

 

『……解ったよ。今からこの周囲を強烈な吹雪に包ませる。並みの奴は入れないよ。この子は私が上から包んでおけばこの吹雪でも大丈夫。だからお前さんは好きなだけ暴れてきなさいな』

 

『おう、ありがとノフ=ケーさん。そんじゃ行ってくる』

 

『やれやれ、お前さんと会うたび男の子ってのは難儀な生き物だって思わされるもんだ。……はいよ、行ってらっしゃい』

 

ノフ=ケーが定治の願いを聞き入れ定治は良かったと頷いてノフ=ケーと木場の元から離れ、それと同時にノフ=ケーは自身が持つ力を使い周囲を視界さえ満足に見えないほどの吹雪を生み出した。

 

ある程度の吹雪を生み出した後ノフ=ケーは木場の元へと近寄ると木場の隣に寄り添うように座り木場に語りかける。

 

「さて、お前さん、裕斗くんだったかね?」

 

「……え?」

 

ノフ=ケーが話し出したのは日本語ではないが間違いなく人間の世界の言葉。悪魔の駒の力によりその言葉を聞き取れる事が出来た木場は隣に座る獣が人の言葉を話す事が出来るのを理解し涙を堪える事も忘れ思わずノフ=ケーを凝視すると木場に凝視されたノフ=ケーは涙を堪えていてグチャグチャになった表情のまま驚く木場を見て面白そうな物を見たように静かに笑う。

 

「フフフ、驚いたかい?さっきまでは一族の言葉で話したから聞こえなかっただろうけどあたしゃ実は定治の大体5代ほど前の深淵の門の担い手のお陰でソ連っていう国の言葉を話す事が出来んのさ。……不器用な人だったけど、優しい人でね。一生懸命私に教えてくれたのさ。」

 

「…………」

 

昔自分に人の言葉を話せるようにしてくれた過去の深淵の門の担い手の不器用な笑みを思い出しノフ=ケーは微笑むが隣にいる木場の視線に気づいて気持ちを切り替える。

 

「おっと今はそんな事どうでもいいね。さて裕斗くん、お前さんに一つ聞きたい事がある」

 

気持ちを切り替え、ノフ=ケーは木場に涙を堪える木場に子を慰める母親のように優しく問いかける。

 

「どうしてお前さんはまだ涙を堪えとるんだい?」

 

「……え?」

 

つい先ほど現れたばかりのノフ=ケーから出された予想していなかった問い。木場はノフ=ケーからまさかこのような問いが来るとは思わずあっけにとられてしまい、ノフ=ケーからの問いに答えられる事が出来ない。ノフ=ケーはそんな木場の心持ちを知ってか知らずか、頭を使って木場を背に乗せた後、先ほどと変わらず子を慰める母親のような優しく語る。

 

「定治は私にお前さんを守ってくれと頼んだ。そしてお前さんには思いっきり泣いておけ、そういった筈だよ」

 

先ほどノフ=ケーは登場が遅れたのを野暮用があったからと言っていたが実のところノフ=ケーに野暮用なんて無い。現れなかった本当の理由は定治が今自分が背に乗せている少年に言いたい事がありたげに見ていたのを見てそれが終わるまで現れないと決めていたため。

 

定治が言いたかった言葉、涙を堪える木場の姿。それらを最初から見て聞いていたノフ=ケーは先ほど定治が向かっていった方向を向いて口元を釣り上げながら続きを話す。

 

「生憎わたしゃ人間の機微ってやつがちょいとわかりづらい。なんで定治の奴がお前さんに泣いておけと言っていたのかはいまいちわからない。だけれど、定治がああ言ったのはきっと意味があるんだろう?だから思いっきり泣いておきなさいな。大丈夫、この吹雪だ。辺りに声なんて聞こえないし、姿もぼんやりとしか見えないから誰がどうなってるかなんてわかりゃしないよ」

 

そう言ってノフ=ケーはもう言う事は無いと言わんばかりに身体を軽くゆすり背に乗っていた雪を振り落とす。吹雪は強まり木場から体温を奪おうとする。しかしそんな状況だからこそ乗っているノフ=ケーの毛と体温の暖かさがより安らぎを与えてくれる。

 

「……暖かい」

 

木場はノフ=ケーの身体にしがみつきながら誰にも聞こえないくらい小さな声で呟く。だがその呟きはしっかりとノフ=ケーの耳へと入りノフ=ケーは誇らしげに笑う。

 

「フフフ、そうだろう?わたしゃとてもとても寒い場所に住んどるからね。どんな寒い場所だろうと私に包まれればへっちゃらさ」

 

「……そう、です、ね」

 

誇らしげ笑いながらに言うノフ=ケーに木場もつられて微かに笑みを浮かべた後ノフ=ケーの身体に顔を埋める。

 

「……少しだけあったまってもいいですか?」

 

「ああ、構わないよ」

 

「ありが、とう、ございます……」

 

木場の願いにノフ=ケーは二つ返事で了承する。木場はノフ=ケーに何とか礼を言うとノフ=ケーの身体に顔を思い切り埋め、身体に強く、強く掴まる。ノフ=ケーの身体に顔を埋める木場の頭によぎるのは定治とノフ=ケーの言葉。この場ならきっと大丈夫。一人の人間と一匹の獣の優しさ、そして寒い吹雪の中で感じる温もりが木場の涙を堪えさせてきた男の子の意地、プライドを溶かし尽くし木場は心の底から死んでしまった友の事を思い力の限り泣き叫ぶ。

 

「あ、あぁぁぁぁ!うわぁぁぁぁ!!みんな、みんなぁぁぁ!!あぁぁぁぁ!!」

 

泣き叫ぶ木場にノフ=ケーは何も言うことなく自身の周囲を1メートルだけ吹雪の勢いを弱めて木場が寒さで困らぬようにするのであった。

 

 

 

木場が力のかぎり泣き叫んでいる時、定治は苦笑しながらコカビエル達のいる方へと歩いていた。

 

「やれやれ困ったもんだぜノフ=ケーさんよ。たしかに辺り周辺を吹雪かせることには了承したけどこりゃいくらなんでもやり過ぎだ」

 

定治が苦笑しながらコカビエルの元へ歩いているとそこで道中あればいいかなと思っていた物を発見し嬉しそうな声を上げる。

 

「お、あったあった。これをくっつけてっと……治癒×10」

 

定治が見つけたのはコカビエルによって切り落とされた自身の手。定治はそれを拾い上げると切断された手首部分に押しつけるようにくっつけて治癒の呪文を唱えた。

 

治癒の呪文は何回も書けることで手首の切断面を塞いで行きやがて切られた筈の手が定治の思う通りに動く。

 

「ん、本調子とまではいかないけど十分いけるな。……さて、これからどうすっかね」

 

切られた手の調子を確認し終えた後、定治は周囲に自身に殺気をむける3つの気配を感じる。それは恐らくバルパー、コカビエル、フリードの三人。見栄を張って木場に言った手前一人でどうにかしようと考えていた定治の元へ二つの気配が近づいてくる。定治が二つの気配の方へ振り向くとそこには空を飛ぶピンク色の奇妙な生物ミ=ゴ、そしてその奇妙な生物に掴まれているゼノヴィアの姿が目に入る。

 

「困っているようだな阿見定治」

 

「ああ、割と困ってる。来てくれて助かったよ。それで、怪我は大丈夫か?」

 

「ああ、アーシア・アルジェント、そしてここにいるお前が召喚したミ=ゴという生き物のお陰で身体も本調子になった。感謝してもしきれん」

 

ゼノヴィアと定治が交わしたのはたった二、三の会話。しかしこの二、三の会話は初めて会った頃だったらきっと二人とも想像すらしなかっただろう。それ故に定治とゼノヴィアは互いが互いに今までとは大分違うような印象を覚え、楽しそうに笑う。

 

「ハ、なんだ礼もちゃんと言えるんだな。お礼は期待してるぜ?」

 

「ああ、期待以上のものをくれてやるさ」

 

定治が軽口を言えばゼノヴィアもまた軽口で返す。闘いで意識が高ぶっているのか、それとも共通の目的の為に動いてるからくる信頼感なのか二人は近づいてくる敵の気配に恐れる事なくなおも楽しそうに笑う。

 

「オッケー、それじゃ早速だけど働いてもらうぜ?」

 

「ああ、行こうか定は『重い』ヘブッ!?」

 

敵との距離が縮まっていく。気持ちを切り替え向かってくる敵とぶつかろうとしたその時、今まで沈黙を守って来たミ=ゴが呟いたと思ったら掴んでいたゼノヴィアから爪を離してしまう。突然の事にゼノヴィアはあっけにとられ鈍い音と共に地面とキスしてしまう。そんな光景を定治はバッチリと目にしてしまっており

 

「(し、しまらねぇ〜……)」

 

定治はなんとも言えないような表情で地面とキスするゼノヴィアを眺めていた。




テキトーな神話生物紹介

ノフ=ケー
極寒の地に住む獣。自分の周りのある程度に吹雪を呼び起こす力を持っている。およそ五代ほど前の深淵の門の担い手の優しさに触れ、人間を好むようになり以後人間に友好的な態度を取り続けている。ちなみにこの五代ほど前の担い手ですが完全な脳内設定なので実際のクトゥルフ神話の誰かというわけではありません。自称人の機微に疎い()。性格のモチーフは映画とかでよく見るやさしいおばちゃん、もしくはおばあちゃん。

最後にチョロっと出て来たミ=ゴの紹介は次回へと送らせて頂きます。



ナーク・ティトの障壁・鎧・兜・籠手・具足

定治が作り出したナーク・ティトの障壁を操りそれぞれの形になるように作ったもの。魔力を込めれば困るほど堅牢な鎧になるが動きを阻害しないようにしているため関節部分には貼られていない。それを手首部分だけだがコカビエルに見抜かれてしまい定治は手を切り落とされてしまっている。

定治の手首は切り落とされてしまったため、本調子とまではいかなくなっており握力などが低下してしまっています。完璧に治すためには優れた医療知識を持ったものの治療が必要です。ん?そういえばミ=ゴさんは……!


最後に今回の話を書いてて思った事。

内臓マグナム「ん?あれ?最後の方のゼノヴィアと定治、なんかいい感じになってね?え?何これ?え?」



……みなさん、ヒロインはやっぱりいた方がいいと思います?
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