ハイスクールD×D―龍帝に見初められし少年   作:nica

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はい。こちらも大変お待たせしてすいませんでした。
ISと違って全然文章が浮かばず、まったく更新ができませんでした。
この投稿も無理矢理の形なので、粗が目立つでしょうね。話も全然進んでないし。
そろそろ序章終わらせんとな~。


第11話:訓練の一幕

 稟がヴァーリと出会ってから数ヶ月が経過した。

 稟との初対面時にミラから殺気を向けられたヴァーリだが、一週間も経たない内に再び稟の前に現れて絡んでくるようになった。

 その時にミラ達ドラゴンがヴァーリに対して殺気を放ったりしたが、アザゼルとヴァーリに宿りし『白い龍』――アルビオンからの謝罪とヴァーリを許してほしいとの懇願。ヴァーリ本人による心からの謝罪の言葉。そして何より、稟があの時の事を気にしていないという事でミラ達ドラゴンも渋々矛を収めた。彼女達が完全に納得したという訳ではないが、それをいつまでも引き続けるほど狭量でもない。再びミラの逆鱗に触れない限りは稟との接触を許された。

 ただ、あまりにもしつこすぎた場合は強制的にご退場願ったが。その時のヴァーリはミラとではないが力あるドラゴンと戦えた――実際には軽くあしらわれたのだが――事で、実にイイ笑みを浮かべたりしていたが。

 さて、そんな些細な出来事もあったが今日も今日とて稟の訓練は行われていた。『神の子を見張る者』本部から結構離れた森で。その森は堕天使、悪魔、両陣営の領域ではないが故に無法地帯ではあるが、そうであるが為に稟の訓練にはもってこいの場所でもある。ミラ達がいれば万が一の事もないであろうし。

 ミラの眷属の中でも特に強力な力を秘めし龍――『古龍種』の力を身体に馴染ませ、その力を纏ったまま彼女達との戦闘訓練。その相手は銀火龍リオレウス――仲間内ではソルと呼ばれている、銀髪碧眼の騎士を思わせる物々しい鎧を纏った偉丈夫。彼はその場から一歩も動く事なく、自身に向かってくる稟を軽くあしらい続ける。

 そうして合間合間に休憩を挟みながら訓練を続ける事数時間。訓練を終えて力尽きた稟は、最早恒例となったドラゴン達の介護を受けていた。

 今回の勝利者はミラのようだ。彼女は気絶している稟を抱き締めて満面の笑みを浮かべている。それを羨ましそうに、悔しそうに、妬ましそうに見つめるシャンティエン、シャガルマガラ、ラオシャンロン、ダラ・アマデュラ、アマツマガツチ。彼女達はぶれなかった。

 そして彼の訓練相手だったソルは、彼の番となる金火龍リオレイア――ルナと呼ばれている金髪碧眼の、豪奢なドレスを身に纏った誰もが王女と称する出で立ちをした美女――と共に周囲の警戒を行っていた。

 ミラは稟成分を補給しながら悦に浸りつつ、一つだけ普段とは違う光景が展開されている場所に眼を向けた。彼女が視線を向けた先。其処には――

「くっ……ただの岩で、光力で作った槍を砕くなんて……」

「ハッ! 俺様達と同程度の力を持つならばともかく、それ以下の力しか持たない堕天使の小娘如きに防がれる程俺様の力は脆弱じゃねえええぇぇっ!!」

「だからって、こんな理不尽な……!」

「無駄無駄無駄無駄ぁっ! その程度で俺様の攻撃から逃げられるものか!」

「きゃあああああぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 黒い槍を片手に迫り来る無数の岩を必死に避けようとして、結局避けられずに槍を砕かれ、岩の群れに呑み込まれるレイナーレ。そんな彼女の近くで眼を回して気絶しているドーナシーク、カラワーナ、ミッテルト。そして、屈強な体格をした、見る者に肉食獣と思わせる風貌と雰囲気を放つ男――轟龍ティガレックスがいた。

「レイナーレといいましたか。あの娘」

「ん?」

 岩の群れに埋もれていくレイナーレを見つめていたミラに、隣に来ていたラオがそう声をかけてきた。

「ティガが手加減をしているとはいえ、僅かな時間であれど彼相手にあそこまで粘るとは中々やりますね」

「……そうね」

「流石はあの男が眼を付けていると言うべきなのでしょうか」

 しかしミラはその言葉には答えず、じっとレイナーレの方を見つめる。そして時折稟に視線を落としては何かを考えるかのような表情をするミラに、ラオもまた何かを考えるように眠っている稟に視線を送る。

 さて、何故この場にレイナーレ達がいるのか。そしてレイナーレがティガレックスと戦闘訓練をしているのか。

 それは、レイナーレがドーナシーク達を紹介された翌日まで遡る。

 レイナーレがドーナシーク達を紹介され、ミラがヴァーリに殺意を向けた翌日。稟の部屋で寝ている稟に膝枕をし、彼の頭を愛おしそうに撫でているミラの下へアザゼルとレイナーレがやってきた。

 至福の時間を邪魔された事でミラの機嫌が急降下していったが、二人の真剣な眼差しにミラは眼を細め、話を訊く事にした。アザゼルがミラの前で真剣な表情をしている時は、大抵が稟に関連する事だからだ。

 そうして話を訊いた結果。レイナーレがアザゼル直属の部下になった事。簡単に動きが取れないアザゼルの代わりに、レイナーレ達が稟の護衛を主目的として行動する事になった事。その為にはレイナーレ達の力を向上させる事が重要であるので、ミラ達ドラゴンに彼女達を鍛えてほしいという内容だった。

 話を訊き終えたミラは瞳を閉じ、稟の頭を撫でながら思考を巡らす。別にレイナーレ達がいなくとも、稟を守るだけであればミラ達がいれば十分。寧ろレイナーレ達は邪魔となるだろう。

 しかし、前回の不穏分子の件がある。強大な力を持ちながらまんまと罠に嵌り、稟を危険に晒してしまった件が。そして稟の身体だけでなく、精神(こころ)の事をも考えるならば……。

 瞳を開けたミラはじっと自分を見つめてくる二人を、レイナーレを見つめる。彼女の心の奥を見透かすかのように、瞬き一つせず。

 ただ自分を見つめてくるミラに、レイナーレは身体を緊張させる。別に威圧されている訳ではないのだが、ミラの瞳に気圧されるものを感じてしまう。それでも、決して彼女から視線を逸らす事はしなかったが。

 数分見つめ合っていた二人だが、最初に視線を逸らしたのはミラだった。視線を逸らしたミラはアザゼルの頼みを承諾し、彼女達に特訓を施す事にした。

 特訓を施す為には彼女達の力を知る必要がある。なので稟の訓練に同行するよう伝え、今に至るのだった。

「小娘にしてはそこそこやると思ったが、所詮この程度か。王からの命令だったとはいえ、時間の無駄だったな」

 岩に埋もれたレイナーレの方を見て、ティガレックスはつまらなさそうに鼻を鳴らす。そしてこれ以上やってられるかと言わんばかりに踵を返そうとして、

「…………まだ、私はやれる、わよ……」

 岩に埋もれていたレイナーレが、その岩を吹き飛ばして立ち上がった。

 ティガは立ち上がったレイナーレをじっと見つめ、

「……立っているのも辛いその状況で、まだ俺様に挑むと? 止めとけ。勇敢と無謀は違う。万全な状態でさえ俺様に手も足も出なかったのに、そんな満身創痍な状態でどうにかなると思ってんのか?」

 槍を杖代わりにして立ち上がり、ボロボロになっても尚戦意を失わないレイナーレに対してティガは鬱陶しいものを見るような眼でレイナーレを見る。

 ティガからしてみればこの戦闘訓練は彼の望むべきものではなかった。彼にとって戦いというものは生き甲斐であり強者と戦う事を至上の喜びとしている。この訓練相手が同じ眷属であるドラゴンならば、ティガは喜び勇んで訓練に取り組んでいたであろう。ドラゴンでなくとも、アザゼル達上級堕天使が相手であれば今以上に満足していたかもしれない。

 だがしかし。現実に相手をした存在は彼に触れる事さえ出来なかった。王であるミラが彼に訓練を命じたのだから多少は期待していたのだが、その期待はあっさりと裏切られてしまった。

 これでは何の為に訓練に付き合ってやったのか分からない。無駄に時間を潰されてしまっただけだ。

 だから、立ち上がって再び挑もうとしているレイナーレはティガにとって鬱陶しい存在だった。

「それに、これはたかが訓練だ。命を懸けた死闘なんかじゃねぇ。なのに何をそんなに必死になる必要がある?」

 そんな相手からはさっさと解放されたい。

 例え後で王から折檻を受けようが、いつまでも弱者の相手をしていたくないのだ。それが将来的に彼を愉しませる存在になるかもしれなくとも、彼はそこまで気が長いほうではない。

「確かに、これは……たかが、訓練だけど……」

 レイナーレは今にも気を失いそうな自分を叱咤し、ふらつく身体が倒れないよう自身を懸命に支える。

「私にとって、この、訓練は…………」

 何故自分がここまで必死になっているのか。それはレイナーレ自身にさえ解らない。

 ただどうしてか。

 挫けそうに、諦めそうになる度に、稟の顔がレイナーレの脳裏を過って。

「アイツの……側に、立つ為の……」

(あん? なんだ、小娘の力が……)

「通過すべき道だからよ!!」

「こ、これは……!?」

 レイナーレの背に黒い翼が二枚顕現し、更にもう二枚。薄らとだが、確かに存在する翼があった。

 それと同時にレイナーレの力の鼓動が先程よりも拡大し、ティガは思わず声を上げてしまった。今のレイナーレから感じられる力は、先程の比ではない。まだティガに及ぶほどのモノではないが、それでも格段に向上している。

 それを遠巻きに見ていたミラとラオは。

「覚醒、ですか? 恐らく瞬間的でしょうが、彼女の力が爆発的に増しています。とは言え、ティガに通用する程とはいきませんが」

「……みたいね。レイナーレの翼は元々二枚だけだけど、微かにもう二枚翼が顕現している」

「ギリギリ、中級堕天使に届くか否かの力ですか。薄らと顕現している翼が完全に顕現出来ていれば中級に届くのでしょうが。あの男は、これを見越してレイナーレを?」

「さて、分らないわ。レイナーレの潜在的な力には眼を付けていたでしょうけど」

 そう言葉を交わし合う。そして同時に稟に視線を落とす二人。

 いくらレイナーレが潜在的に中級堕天使の力を秘めていようが、この土壇場での覚醒は都合がよすぎる。ならば、考えられる事は……

 険しい表情で稟に視線を落としていた二人だが、やがて顔を上げた二人は自身の考えを否定するように首を振る。

「……王」

「まだ、確証はないわ。結論付けるには性急すぎる」

 ラオの言いたい事を悟ったのだろう。ミラはラオの言葉を遮るように言葉を被せるが、それは自身に言い聞かせるような声音でもあった。その顔にはどこか不安な色が浮かんでいる。

「……は、はは! なんだよ、俺様相手に出し惜しみしていたってか!?」

 一方でレイナーレと対峙しているティガは、どんどん膨れ上がるレイナーレの力に悦びを隠し切れずにいられない。元々獰猛な顔はより危険に歪み、その顔は見る者に恐怖を与えかねない程に怖ろしいものになっている。

「おもしれぇっ。その力を俺様にぶつけてこい! より強く、より暴力的に! 何も考えず、溢れるままにその力を揮え!!」

 ティガは愉しそうにそう叫ぶが、レイナーレにはそれに答えるだけの力も残っていない。今にも倒れそうな身体を何とか支えている状態なのだ。当然、自身の力が上昇している事にも気付いていない。

 薄れていく意識を何とか繋ぎ止め、レイナーレは自分に残された『力』を振り絞るかのように爆発させる。

「――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああっっっ!!!!!?」

 咆哮を上げながら、翼をはためかせティガへ直進するレイナーレ。

 ティガの岩石飛ばしによって距離を離されていたレイナーレは、今の自身に出せる全速力で彼との距離を詰めていく。

 それを余裕の表れか、迎撃せずに舌なめずりするかのような表情で見てくるティガ。両者の距離は瞬く間に縮まっていき。

 二人の距離が零になる、その刹那。

 今まで朧気に存在していた二枚の翼が。

 その存在を示すかの如く、確かに、顕現した。

「っ!? Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 それに何かを感じ取ったのか。

 ティガから余裕の表情が消え去り、彼の顔には驚愕の色が浮かぶ。

 レイナーレと接触するよりも僅かに速く。彼は後方へ五メートル程飛び退くと同時に、彼等龍種が放つ事の出来るバインドボイスと呼ばれる咆哮を上げる。

 ティガのそれは他の龍種のモノよりも強力で、聴くものにを与える規格外なモノだ。先程までのレイナーレならば、この一撃で沈んだが。

「――ッ!」

 翼が四枚顕現しているレイナーレは、先程までよりも強い力の鼓動を感じさせる黒い槍で見えざる咆哮の衝撃を突きながら掻き消してティガに迫り。

 遂に彼女の一手が、

「……は、はは」

 ティガに届いた。

「……やれば、出来るじゃねぇか」

 そう言うとティガは右頬に手をやり、そこから滴る自身の血を舐める。

 彼の右頬には刃物で裂かれた傷痕があり、そこから血が流れている。その程度の傷は彼にとって傷と呼べる傷ではない。蚊に刺されたようなものだ。

 だが彼は頻りにその傷痕を触り、血が手に着く度にその血を舐めとる。

 そうしながら彼は、彼にその傷を負わせたレイナーレへと振り向く。

 ティガに傷を作ったレイナーレは限界を迎えたのだろう。先程まで顕現していた翼が消え、ティガのすぐ後ろでうつ伏せに倒れていた。

 ティガはそんなレイナーレをじっと見つめ、

「…………いつでも、その力を出せるように力を磨いとけよ」

 聞こえていないだろうがそう言わずにはいられなかったティガ。

 彼はそう言うと自分を構成している物質を解き、その身を粒子状の何かへと変換して稟の中へと戻っていく。

 決してジト眼で見つめてくるラオが、無表情に瞬き一つせずに見つめてくる己が王の視線が怖ろしかった訳ではない。断じてない。

 ラオとミラは稟の中へ戻っていくティガをじっと見つめ、粒子状の彼が消えるとラオは溜息を吐いた。

「まったく。ティガは……」

「……ラオ」

「はい?」

「レイナーレの治療は任せるわ」

「……了解しました」

 ともすればやんちゃな子供の母親とも見れる雰囲気を放つラオに、ミラは短くも重要な言葉を放つ。

 その言葉を聞いたラオは微かに瞳を細め、ミラに一礼すると倒れたレイナーレの下へ向かう。

 それを見届けたミラが思考を纏めるかのように眼を閉じとたころで、腕に微かな振動が響く。そこに視線を送れば、今まで眠っていた稟が薄らと瞳を開けていて、

「稟、眼が覚めたのn……」

「……来る」

「え……?」

 声をかけたミラの言葉を遮り、稟はぽつりとそう溢した。

 その意味を問い掛けるよりも速く、稟に遅れる事数十秒。ミラは稟の言葉の意味を理解した。

「――っ!?」

 森の中を流れていた空気が、変わった。

 強大な力を秘めた存在の空間に捕らわれたかのような、暗く、重い、威圧的な空気へと。

『王!!』

 周囲の警戒の為に森の中を周っていたソルとルナが大急ぎでミラの下へ向かい。

 シャンティエン、シャガルマガラ、ダラ・アマデュラ、アマツマガツチ。レイナーレの介護に向かったラオシャンロンがその場で臨戦態勢を執り周囲を警戒する。それを視界の端で確認したミラは、

「私が、この我が……同族の気配に気付けなかった? ここまで接近されておいてその気配に一切気付かなかった?」

 乾いた声で、そう呟く。

 同族の接近に気付けぬ程、自分はそこまで腑抜けてしまったのか?

 腑抜けてしまってはいるのだろう。かつての自分と比べれば。ラースにもそう言われてしまったし。だが、例え腑抜けていたとしても同族の接近に気付かない筈がない。よしんば気付けなかったとしても、稟よりも速く他の同族達が気付く筈。彼女達が張ってある独特な結界に何者かが触れればすぐに察知できる。

 そう。いくら稟がミラ達と繋がっているからと言っても、彼女達が稟より遅く他者の接近に気付くという事はない。

 だというのに……

「稟が、我等より先に気付いた……?」

 確かに稟は気配に敏感ではある。気配に敏感でもなければあの光陽町(じごく)で生き残れなかったのもあるが。しかし、いくら敏感とは言ってもそれは所詮人間での範疇での話。察知能力は人外であるミラ達と比べると遥かに劣る。

 ならば何故。人間である稟が人外であるミラ達よりも先にこの気配に気付く事ができたのか。彼女が嫌な予感を胸に思考をぐるぐる巡らしていると、

「王よ、またきた」

 彼女が現れた。

 あの時と同じ幼い姿のまま、その巨大な存在感を隠さないまま。

「オー、フィス……」

 周囲のドラゴン達が臨戦態勢を維持したままその場を動かず、ミラが呻くように呟いた事を気にする事もなく。オーフィスは無雑作に、無警戒に稟とミラへと近付く。

 稟はドラゴン達の反応に内心首を傾げるがこれといて何かを言うでもなく、一度ミラを見てから自分達に近付いてくるオーフィスへと視線を移す。

 オーフィスと稟達の距離が徐々に零に近付くにつれ、ドラゴン達から発せられる威圧が増し、空気が重くなっていく。

 しかし、オーフィスはそれを意に返介さず。

 一歩一歩。ゆっくりと近付いてくる。

 あと一歩。手を伸ばせば稟に触れられるであろう距離になった時。オーフィスはそこで歩みを止めた。

 そこから彼女は動かず、また一言も発する事なく稟をじっと見つめる。稟もまた、自身を見つめてくるオーフィスを見つめ返す。

 重い空気が漂う中、一分、二分と時が流れ、

「えっと……君は?」

 この空気に耐えきれなくなったのか。

 困ったような表情を浮かべて稟が言葉を発した。

 オーフィスは瞬きもせずに稟を見つめていたが、

「我は、オーフィス。そこにいる、王の眷属」

 稟から視線を離さず、稟を抱き締めたままのミラをそっと指差す。

 その言葉の真偽を確かめるようにミラを見上げる稟。

 暫し呆然としていたミラだが、稟の視線にハッと我に返ると咳払いを一つして頷く事で彼女の言葉が正しいと示す。

 稟はそれにふむと頷き、オーフィスに問い掛ける

「そうか。それで、そんな君が何故こんな場所に?」

「お前に、会いにきた」

「俺に?」

「お前は、あの王が初めて執着した人間。全ての眷属を跳ね除けてでも、独占欲を示した人間。眷族(ワレ)のお願いを断るほど、惹かれている人間」

『………………』

「だから、お前に会いにきた。お前が我に協力してくれれば、王も我の頼みを聞いてくれると言った。その為に此処にきた」

 そこまで言ってオーフィスは口を閉ざして稟を見つめる。

 稟の、ミラの協力を求めていながら、オーフィスはそこから先を口に出そうとしない。稟達に協力を求めるのならばその目的を明かし、どのように協力してもらうかを述べ、強力に対する対価を示すべきであろう。それなのにオーフィスは一切口を開こうとせず、何を考えているのか判らない眼でじっと稟を見つめているだけだ。

 これには流石の稟も困り、彼は助けを求めるかのようにミラに視線を送る。だがミラはオーフィスに険しい視線を送っていて、彼の視線に気付いてはいるのだろうが何か言おうともしない。ならばと他のドラゴン達にも視線を向けるが、彼女達もミラと同様オーフィスを睨んでいて稟に何かを言おうとする事はなかった。

 この状況に困った稟はミラとオーフィスの間に視線を巡らせる。この状況を変えられるのは最早自分しかいないが、どういう言葉を発すればこの状況を変えられるのか。

 稟は暫し悩み、

「……つまり、君は、何らかの目的の為に俺達に協力してほしくてこの場所にきたと?」

 間違ってはいないだろが、眷族(なかま)だという彼女を警戒しているドラゴン達を視界の端に捉えつつ念の為オーフィスに確認をとる稟。

 その問い掛けに、オーフィスは若干の間を置いた後でこくりと頷く。

 稟はふむと頷き、じっとオーフィスを見つめ、

「なら、君の目的を教えてくれないか? 目的が分からないと、協力のしようもないしさ」

「………………」

 そう問い掛けるも、オーフィスは無言。ただただ稟を見つめるだけである。

 自身を見つめてくるだけのオーフィスに困り果てる稟。助けを求めるようにミラへ視線を向けるが、彼女は未だオーフィスを睨み付けたままだ。動かせないこの状況に頭痛を感じ始めた時。

「……我は、帰りたい」

 ポツリと、オーフィスが小さく呟いた。

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