ハイスクールD×D―龍帝に見初められし少年   作:nica

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本当はもう少し進めてから更新する予定だったけど、最後の更新から一ヶ月近く経っていたので急遽投稿。
さて、ここからどう原作を改変していくかな。あまり度を過ぎないようにしないと。

次回は戦闘描写を入れる予定ですが、あまり期待なさらぬように。頑張って書いてみますが。


第3話:堕天使総督の思惑

稟が別世界へと訪れてから数年の月日が流れた。『神の子を見張る者』(グリゴリ) に保護された稟は、アザゼルに連れられ彼の部下である堕天使達に紹介された。紹介された当初、稟は様々な視線で堕天使達に見られた。総督であるアザゼルが人間の子供を連れてきた事で、興味深げに見てくる者。人間の子供という事で、侮蔑、嫌悪の視線を投げてくる者。何を考えているか分からない無表情で見てくる者。獲物を見定めた肉食獣のような視線で見てくる者と様々な視線で。

その事に対しミラは物申したげな表情だったが、稟は気にしてないからとミラを抑えていた。自分達の領域(テリトリー)に見知らぬ者が来れば誰だって嫌な顔をするのは当然の反応だろう。いくら自分達の上司が招いたとしても、少なからず表情に出てしまうのは仕方あるまい。稟もその事は承知している。

だから彼は耐えた。彼等に認めてもらうべく耐え続けた。忍耐強く耐え抜き、堕天使達と友好な関係を結ぶ為に積極的に話しかけ続けた。

最初は勿論無視された。ぞんざいに扱われた。慇懃無礼な態度をとられた。路傍の石ころを見るような眼で見られたり、穢らわしい人間がと、暴力を奮われた事もあった。その度にミラ達ドラゴンが堕天使達に殺意を向けるが、稟はそれを抑え、挫けずに頑張り続けた。我慢は得意だから、気にしないでとミラ達を抑えて。

その甲斐あってか、一年後に稟にとっての転機が訪れ堕天使達に認められる事になる。無論、全員にという訳ではないが、それでも種族至上主義を掲げる極一部の堕天使達を除けば友好な関係を築けている。

「こんにちは、シェムハザさん」

「こんにちは、稟。アザゼルが君を探していましたよ」

「アザゼルさんが?」

「えぇ。何やら大事な話があるとか。彼ならいつもの部屋にいると思うので行ってあげて下さい」

「分かりました。ありがとうございます、シェムハザさん」

アザゼルの腹心。右腕とも呼ばれている堕天使ーシェムハザ。稟が此処に来て、ミラ達を除いて稟に友好的に接してくれていた堕天使だ。彼は人間の子供という理由で、稟を遠ざけるというような事をしなかった。寧ろ親身になって接してくれていた。そんなシェムハザに稟は戸惑いはしたものの、彼が純粋に稟を想ってくれている事を理解した稟はシェムハザを慕うようになる。稟が挫けずに頑張れたのも、彼の存在があってと言えるだろう。

ともかく。アザゼルが呼んでいると聞いた稟は、シェムハザに礼を言ってその場を後にする。

いつもの部屋と聞き、アザゼルがいそうな部屋から該当する部屋を脳内で検索する。検索が完了した稟は、アザゼルを待たせないようにと早歩きで目的地へと向かう。自分が呼ばれる用件を考えながら。

そうして歩いているうちに、候補の部屋へと辿り着く。研究室だ。アザゼルは大抵この部屋で、仲間の堕天使達と共に人工神器(セイクリッドギア)の開発・研究を行っている。この部屋にいなければ、探すのは困難になるのだが……

部屋をノックし、入室の許可をもらって部屋に入る。果たしてお目当ての人物はいるだろうかと周りを見渡せば。

「お、稟か?よく来たな」

数人の研究者然とした格好の堕天使達に囲まれるようにして目当ての人物はいた。『神の子を見張る者』総督、アザゼル。

彼は部下に指示を与えると稟に近付く。稟はアザゼルに頭を下げ、

「こんにちは、アザゼルさん。シェムハザさんから用があるって聞いて来たんですが」

「ん、ならこっちで話そう」

アザゼルはそう言って部屋の隅を指す。そこは研究した人工神器を試す為の試験場。防音がしっかりとされている部屋だ。

稟は頷いてアザゼルの後に続く。話の内用に不穏なモノを感じながら。

「さて、お前さんを呼んだ用件だが……」

稟が部屋の扉を閉めると同時、アザゼルは眼を細めながら重い口調で言葉を発する。

「はぐれ悪魔の討伐を頼みたい」

「それは稟一人で?」

稟がアザゼルの言葉に疑問を挟もうとするよりも前に、それより早く言葉を発する者がいた。それは、どこまでも美しき『白』。穢れなき『白』。ミラ。

彼女はいつの間にか稟の前に顕現し、圧倒的な存在感をもってアザゼルを見据えている。

威嚇する訳でもなく、殺意を向ける訳でもなく。ただただそこにいるだけの少女に、アザゼルは冷や汗を掻きながらもミラから視線を外さない。

「……いや、稟とは別に呼んでいるもう一人と一緒にだ」

「……はぐれ程度に?」

「…………実は」

アザゼルにゆっくり近付くミラに、彼はそっと耳打ちする。

ここから先は稟に聞かせられない話なのか。詳細を稟ではなくミラに話すアザゼルに、内心で自分に用があったのでは?と思うが、「まぁ、いいか」と言わんばかりに肩を竦め、稟は二人の話が終わるのを待つ。

アザゼルがミラに何かを話していく毎に、彼女から発せられる雰囲気が凶悪なモノへと変貌していく。そして、それと同時に稟の内に宿るドラゴン達からも禍々しい殺気が放たれ始め、行き場のない殺気が室内を覆い、アザゼルへと纏うわりつく。

アザゼルに向けられた殺気ではないのだが、複数のドラゴンの凶悪な殺気に流石の堕天使総督といえど、生きた心地がしない。それでも彼はミラから視線を逸らす事はしなかった。否、出来なかった。視線を逸らしたが最期。自分の首が飛んでしまうかもしれないと感じているから。

「ミラ?アザゼルさん?」

重苦しい雰囲気を感じ取り、稟が二人に話しかけようとするが、

 

ーーコンコン

 

 

扉をノックする音に遮られてしまう。

「堕天使レイナーレ。アザゼル様の招集に応じて馳せ参じました」

「……レイナーレか、入れ」

「失礼します」

そう言って入ってきたのは黒髪の堕天使。

彼女はアザゼルに一礼し、彼から椅子に座るよう促された為に、稟の横に用意されていた椅子に向かおうとした。その時に稟と眼が合い。

「何故、此処に人間が?」

顔を微かに顰めてアザゼルに問いかけるレイナーレ。

「俺が呼んだんだ。今回の用件、お前さんと稟にやってもらおうと思ってな」

その問いに、アザゼルはそう答える。

「はぐれ悪魔の討伐如き、私一人でも大丈夫ですわ!それを他の堕天使と共にならばともかく、たかが人間の少年と一緒にやれなどと。無能な人間がいたら邪魔でしょうがありませんわ!」

至高の堕天使としてアザゼルを慕っているレイナーレだが、アザゼルのこの言葉には思わず反論してしまう。元々人間が好きではなかったレイナーレだが、アザゼルが人間の子供を保護している事。稟の面倒を見ている事に若干の嫉妬を覚えていた為、耐えきれなくなったようだ。

「大体。力がないくせに偉ぶっている人間は傲慢なのです。それなのに、はぐれ悪魔の討伐に人間の子供という足手纏「それ以上囀ずるな。殺すぞ」い、を……」

更に言い募ろうとしたレイナーレだが、突然の絶対零度の色が含まれた声と、強烈な殺気によって言葉が止まってしまう。

彼女が声の方へと顔を向ければ、アザゼルの隣にいたミラが無表情で、レイナーレが今まで感じた事もない程の凶悪な殺気を放っていた。

「…ぁ、ぅ……」

自分に向けられているわけでもないのに、ミラの隣にいるアザゼルでさえ額いっぱいに冷や汗を掻いている。その殺気を直接浴びせられているレイナーレは、言葉をうまく発っせられずにミラを見つめる事しか出来ない。

「たかが堕天使が、少しばかり力があるだけで稟を侮辱するか?己が至高の存在であると勘違いし、他者を見下し侮るか?その傲慢さ、度しがたい。稟を侮辱する者は私自らが滅ぼしてくれるぞ」

ゆっくりとレイナーレに近付くミラ。その右手には、いつの間にか生み出されたのか円形の形をした雷が荒れ狂っていた。ミラの怒りを体現するかのように。

傍目から見ても、人一人の命を奪えそうな力を感じる円形の形をした雷。その、禍々しくも神々しさを感じる球体に眼を奪われるレイナーレ。

「稟を侮辱する事。それは我等を侮辱する事と同義。己の無知を悔いながら死ね」

「……ミラ」

ミラの手から雷が放たれる直前。稟の声が部屋に響き渡る。その声は決して大きくないが、不思議と全員の耳に入り込む。

「…稟……」

先程までの凶悪な殺気を放っていたミラは、稟の声が聞こえた途端に殺気を霧散させ、円形の雷も無意識に消した。

その時のミラの表情は、バツが悪そうに歪んでいて。

そんなミラに、稟は近付く。ミラは慌てて領域から離れようとするが。

「僕の為に怒ってくれる事は嬉しい。けど、それでミラが誰かの命を奪うとこなんて見たくない。それに、彼女の言い分も何となく解るからね」

離れようとするミラをそっと抱き締め、彼女の耳元でそう囁く。

自分の事よりも、他人を気遣う稟の言葉。

数年経っても全く変わらない稟の性分に、些か毒気を抜かれたミラは自身を抱いている稟の腕に触れ苦笑を浮かべる。

いつだってそうだ。稟は常に、誰かを気遣って生き続けてきた。自分がどれだけ傷付こうが、苦しもうが、それを他人に気取らせる事なく隠し、生き続けてきた。

元の世界での少女との一件がいい例だ。一人の少女を救いたいが為に周りを敵にし、その苦しみも、痛みも、弱音も、他人の前で一切吐かず、独りで全てを抱え込もうと生きてきた。

「……本当に、しょうのない子ね、稟は」

だが、そんな稟だからこそ。ミラは、彼女達ドラゴンは惹かれたのかもしれない。か弱く、脆弱で、孤独な存在なのに、誰よりも心が強い稟に……

自分を抱いている稟の腕を愛しそうに撫で、稟の胸に身を委ねるミラ。

二人だけの世界に入り、何やらいい雰囲気になりだす稟とミラに、アザゼルとレイナーレは居心地が悪くなる。二人に声をかけたいのだが、声をかけてこの雰囲気を壊してしまうのを躊躇ってしまう。断じて、この雰囲気を壊してミラの逆鱗に触れてしまう事が怖ろしい訳ではない。

しかし、いつまでもこのままでいるわけにもいかない。でなければ、稟とレイナーレを呼んだ意味がなくなってしまう。ここは何とかして話を進めなければ。アザゼルが内心でそう思考を巡らしていると。

「堕天使の小娘。稟に感謝しなさい。稟が止めなければ貴様の存在は塵芥も残していなかったわ」

突然ミラがそう言ってきた。

ミラの方が見た目は小娘だとか、稟に抱き締められ、僅かに顔を朱に染めている奴の台詞じゃないよな、等のツッコミはこの際置いておき。漸く口を挟める事に若干ほっとするアザゼル。

実際にはそんなに時間は経っていないのだが、彼からしてみれば妙に長く感じたのだ。

アザゼルはレイナーレを盗み見るが、まだミラの殺気にあてられた恐怖が残っているのか、顔を青褪めたまま固まっていた。そんなレイナーレの状態に仕方ないかと溜息を吐きつつ、アザゼルはミラに話しかける。

「…取り敢えず、こいつと稟にさっきの件を任せていいか?」

「……ふん。稟が拒否しないのであれば別にいいわ」

稟が拒否する事はないでしょうけどと、小声で溢してそっぽを向くミラ。ミラの肯定の意を受けたアザゼルは、稟に視線で問いかける。

「僕は構いませんよ。ただ、彼女は嫌がるかもしれませんが」

アザゼルの視線に頷き、稟は苦笑しながら答える。

「…レイナーレもいいな?」

「…………は、ぃ。アザゼル、様の、仰せのままに…」

「なら、お前達には二日後。はぐれ悪魔の討伐に向かってもらう。本来ならば今すぐに向かってもらいたいところではあるが、稟は人間で色々と準備がいるからな。入念に準備をしておけ。では解散」

アザゼルがそう言って締めると、レイナーレはふらふらと覚束ない足取りで部屋を後にした。

稟はそんなレイナーレを心配そうに見送り、ミラに至っては我関せずの態度だった。

稟に抱き締められているのが余程嬉しいのか、ミラの表情は綻びまくっている。

アザゼルは頭を振り、ミラに視線を向ける。その視線を感じたミラはアザゼルの方へ顔を向ける。

「今回の件、私達は手をださない。けど、稟の身に重度の危険が迫ればその限りではない事を言っておくわ」

「あぁ、解っている。俺だって稟を失いたくないからな。その判断はお前さん達に任せる」

最終確認を終えたミラは、名残惜しそうに稟の抱擁から離れ、稟に退室を促す。

「稟、行くわよ」

「ん。それじゃあアザゼルさん、また」

「おぅ。頼んだぞ」

稟とミラが退室した後。

アザゼルは頭をがしがしと掻きながら溜息を吐き、

「賽は投げられた。後は稟を信じるのみか……」

種族至上主義の思考に染まりかけているレイナーレ。その彼女の意識を変える為。そして、不穏分子を焙り出す為の稟の討伐任務(おとり)

二つの事柄を稟に隠し、何とかミラの協力を仰げたアザゼルは険しい表情でそう呟くのだった。

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