ハイスクールD×D―龍帝に見初められし少年   作:nica

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おかしい。
書いても書いても全然話が進まない……


はい。そんな訳で漸くハイスクールの方が投稿できました。が!前回戦闘シーンを描写すると宣いましたが、ごめんなさい!それは次回に持ち越しとなりました(汗)
ここまで会話が長引くとは思わなんだ(白眼)


ともあれ、漸く投稿できたハイスクールです。
読んでいただけると幸いです。


でも、ミラとアザゼルの会話シーンが上手く書けなかった……
自分でも納得いくできではないのですが、私のポンコツ脳ではここまでが限界でした。
これはおかしいだろ。
この文章は納得いかん!
ってな部分がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。
書いていると脳内補完して、どこがおかしいかが分からなくなっていますので。


第4話:不安

稟がアザゼルから頼みを受けて二日後。

アザゼルの執務室には稟とミラ、レイナーレが集まっていた。

「頼んだぞ、稟。お前さんにはドラゴン達が付いてくれているが無理だけはするな」

「はい」

はぐれ悪魔討伐任務当日。

アザゼルの部屋で詳細な説明を聞き終えた稟は、アザゼルから真っ直ぐに見つめられて発せられた彼を心配する声音に、少しばかりくすぐったいものを感じながらうなずき返す。

「レイナーレ。貴女も頼みましたよ。必ず稟と二人で無事に帰ってきて下さい」

「は、はい!」

アザゼルから声をかけてもらっている稟を妬ましそうに睨み付けていたレイナーレに、アザゼルの右腕たるシェムハザが苦笑しながら声をかける。至高の堕天使と敬愛しているシェムハザに声をかけられたレイナーレは顔を綻ばすが、彼の言葉が稟を想っての言葉である事に気付いた時には内心顔を顰めてしまう。

(アザゼル様もシェムハザ様も、何故この人間の事を。人間なんて所詮、無能で下等な種族じゃない)

内心不満を溢すが、それは表には出さない。

正直たかが人間よりも、自分を見てと思うレイナーレだが、そんな事を言える立場でもないしそこまで恥知らずになったつもりはない。

「じゃあ、俺達はこれで」

「あぁ、任せた」

そうこうしている間に稟とアザゼルは話を終えたらしく、稟はアザゼルに一礼してから部屋を出て行こうとし、ミラもそれに続く。それに気付いたレイナーレは慌ててシェムハザに一礼すると、稟達に続くように部屋を後にした。

一方で残った二人は。

「これでよかったのですか?アザゼル」

「これでよかった、とは言えんさ。正直、後悔していないと言えば嘘になるからな」

「どんな名目であれ、稟を利用している現実は変えられませんからね」

「……そうだな。いくらアイツの身を護る為とは言え、俺達はアイツを利用しちまっている」

「ですが、最早賽は投げられた……」

「あぁ。最早俺達に出来る事は、稟が無事に帰ってきてくれる事を祈るだけだ」

真剣な瞳で、稟達が出ていった扉を見つめながら言葉を交わしていた。

(何とかミラは了承してくれたが、あの時ほど死の恐怖を感じた事はなかったな……)

思い返すのは三日前の事。稟にはぐれ悪魔討伐の依頼をする前日に、ミラへ今回の件を説明した時の事。

 

三日前の夜。

 

「それで?こんな時間に私を呼び出して、堕天使の総督殿は何を企んでいるのかしら。私は一刻も早く稟の下に戻りたいのだけど?」

アザゼルの部屋に呼び出されたミラは、不機嫌さを隠そうともせずに半眼でアザゼルを見つめていた。それにアザゼルは苦笑し、

「お前さんは本当に、アイツの事で頭がいっぱいなんだな。お前さん、そんなに稟の事が好きなのか?」

「何を馬鹿な。当然でしょう」

からかうようなアザゼルの言葉に、ミラは動揺を微塵も見せずにあっさりと言ってのける。少しは顔を赤らめたり、照れ隠しに怒鳴ったりするなどの反応(リアクション)を予想していたアザゼルは、予想外のミラの返答に驚いてしまう。

「私に、いえ。私達にとって、稟はかけがえのない大切な存在。あの子の想いは美しく、魂の輝きは尊い。そんなあの子に私達は惹かれた。その私達が稟を好きなのは当たり前でしょう」

真顔であっさりと言ってのけるミラをマジマジと見つめるアザゼル。そんなアザゼルを鬱陶しそうに見て、

「用もないのなら私は戻るわよ」

さっさと部屋を出て行こうとするミラ。

「ま、まてまてまてまて!用ならあるから戻るな!」

それに慌てて待ったをかけるアザゼル。

ここでミラに帰られて話が出来なければ色々と駄目になってしまう為、彼の表情は必死なのだった。扉に手をかけていたミラは呆れた顔で振り返り、

「だったら用件を素早く言いなさい。貴方のくだらない話に付き合う気は毛頭ないのだから」

そう言って、アザゼルの対面に用意されていた椅子に座る。

「す、すまんな。では、改めてお前さんを呼んだ理由を話そう」

アザゼルは表情を改めてミラに向き直り、軽く一呼吸する。

今から話す事は、ミラの逆鱗に触れる内容だ。

稟を大事に想っているミラの、否。彼女を含む、稟の内にいる全てのドラゴン達の逆鱗に触れる内容だ。だが、これは避けては通れない話。稟の、彼の今後を、彼の身を護る為には話さなければならない内容。

アザゼルは意を決し、口を開く。

「お前さんを呼んだのは、稟に関してだ」

その、言葉に。ミラの瞳がスッと細まり、空気が重くなったように感じられた。

「お前さんも勘づいていると思うが、最近稟の周囲の空気がキナ臭い」

ミラは何も答えないが、その瞳が無言で続きを促してくる。

「恐らくは、稟をよく思ってない堕天使達が動き回っている。俺に反発的な奴等がな。このまま放置しておけば稟に危険が及ぶかもしれんが、まだ確証には至っていない」

ミラから発せられる空気が徐々に重くなる。いつの間にか彼女の身には雷が纏われており、彼女の身体中を奔っている。傍目から見ても凶悪な力を秘めている事が分かるその雷は、いつ荒れ狂ってアザゼルに襲い掛かるか分からない。

アザゼルは冷や汗を掻くのを抑えられない。下手な言葉を選べば、次の瞬間には自分の命が消し飛んでしまいそうになるのを嫌でも感じるからだ。だが、最早後には退けない。

「そこで、お前さんに頼みがある。本当は俺もこんな頼みをしたくないんだが、稟の今後を考えると、頼まずにはいられない」

「…………勿体振らずに続きを言いなさい」

感情の色が消え失せた平坦な声音で、ミラは続きを促してくる。必死で、込み上げてくる怒りを抑えようとしているのだろう。彼女の身に纏わりついている雷が徐々に荒れ狂いはじめている。

「……分かった。お前さんに頼みたい事は、不穏分子を焙り出す為に稟を……っ!?」

アザゼルが最後まで言い切る前に、彼の眼前に雷が奔った。その雷には攻撃の意思はなかったが、思わず彼はその雷を躱していた。

寸でのところで雷を躱したアザゼルは、恐る恐るミラに視線を向ける。

彼女は俯いており、肩を震わせていた。しかし、それが悲しみからきている震えでない事くらい誰でも分かる。彼女の身からはとてつもない殺気が溢れているのだから。

その殺気が部屋を包み込み、アザゼルを逃がさんと彼の身に纏わりつく。だが、その殺気は決してアザゼルに向けられたものではなかった。

ならば、誰に対して向けられたものなのか?

それは、彼女自身に向けられた殺気。稟を救う為に世界を渡ったというのに、その渡った世界で稟を危険に晒してしまっている自分自身への殺意。

ならば、あのまま元の世界に稟を置いていた方がよかったのだろうか。否。その答は断じて否だ。あの、歪みきった狂った光陽町(せかい)に居続ければ、稟は遅かれ早かれ、死んでいたかもしれない。だからこそ世界を渡ったというのに、その世界でも稟は……

稟を救いたいのに、その代償に彼を危険に晒す。そんな自身の愚かしさに怒りが込み上がり、それが殺気がとなりこの空間を支配する。

アザゼルをして絶対的な死を思わせるその空気に、しかし彼はミラから視線を逸らさない。否、逸らせない。逸らせば最期。圧倒的なまでの死が自分に襲ってくる気がするからだ。

「……そう。稟の身を護る為に、あの子を利用しようというのね」

ミラの静かな声音と対称的に、雷が縦横無尽に部屋中を奔る。赤黒く染まった雷は禍々しい殺意を内包し、それとは矛盾するかのように、どこか神々しい輝きを放っていた。

「貴方が稟の事を考えてくれている事は理解している。でもね……」

自分が紡ぐ言葉が八つ当たりである事は理解している。アザゼルとて好きで頼んでいるわけではない事くらい理解している。考えに考えた結果、それが今の段階で唯一の策なのであろう。だが、ミラには耐えられなかった。それでも感情が爆発するのを抑えられなかったのだ。その行為が理不尽だと罵られても。自分勝手だと蔑まれても。どうしようもなかったのだ。

それほどまでに、彼女にとって稟は特別な存在なのだ。たかが人間の子供である筈の稟が。

俯いていたミラが面を上げる。その瞳は冷たく、暗い色を宿した。

「稟の身を護る為に稟を利用する。そのような事を我が赦すとでも?」

見た目相応の愛らしく、鈴の鳴るようは声音はなりを潜め、威厳溢れる、重苦しい声音でミラは言葉を紡ぐ。その声音は『絶対者』のそれに相応しい。

しかし、彼女の瞳には透明な雫が流れていて。

「稟の今後を考えれば、確かに貴様の策がいいのかもしれん。不穏分子は早目に摘まねば、手遅れになるのも理解している。だが我は、我等は、それで稟が傷付く事を享受するわけにはいかん」

少女の姿をした人外は、『白き王』は、圧倒的な殺意と威圧感を身に纏い堕天使総督に告げる。

目の前に具現化した、『絶対的なまでの死』。アザゼルは抗う気力さえ奪われそうになるが、完全に呑み込まれそうになるのを何とか堪える。ここで呑み込まれてしまえば、全てが無駄になるから。

「しかし、貴様には恩がある。我等を、稟を保護してもらっている恩がある。だから問おう」

厳かに告げられる『白き王』の言葉。

雷は未だ荒れ狂い、室内を駆けているが、不気味な静けさが部屋を包む。

「貴様の話す策。その先にあるのは、稟の平穏なのだな?」

「……………………あぁ」

真剣な瞳で、泣きそうになっている瞳で見据えてくるミラの瞳を見つめ返し、アザゼルはゆっくりと頷いて答える。

「稟の身を護る為とは言え、アイツを利用しようとしている事は変えられようのない事実。だが、この策さえ上手くいけば稟の周りは安全になる筈だ。確実と断言は出来んが、少なくとも稟を疎ましく思っている奴等を排除出来る口実を作れる。そうすれば、稟の安全性は今よりも増す」

稟の事を考えての行動である事は事実。そしてそれは、彼を利用しているというのもまた事実。ならばそれを説明するのに、ミラに納得してもらう為に虚言を弄するのは愚行である。

彼女達ドラゴンの純粋な想いには、こちらも純粋な想いで真摯に応えなければならない。稟の事を想うのであれば尚更だ。

稟を保護して数年。アザゼルも、稟の事を大事に想っている。

彼の過去を詳しくは知らないが、彼が心に深い傷を負っている事はそれとなく察している。一体何があれば、あの年頃の子供が心に深い傷を負うというのか。

それでも心が屈折する事なく歩み続け、自分を含む堕天使達と良好な関係を築こうと努力し、その努力が形になってきている稟。種族が違っても、それに偏見を持たずに自ら歩み寄る稟。そんな稟を、たかが人間という理由で害を齎そうとする者達から護りたい。

素直に自分を慕ってくれている稟に、いつしかアザゼルはそう思うようになっていた。

暫し無言で見つめあうミラとアザゼル。

アザゼルは緊張した面持ちでミラからの返答を待つ。

これで彼女が納得してくれなければ、アザゼルの命はすぐにでも消し飛んでしまうだろう。それほどまでに彼女は、彼女達ドラゴンは稟の事を想っている。

「…………そう、分かったわ」

一瞬とも、永遠ともとれる時間が経った後。

先に視線を外してそう呟いたのはミラだった。

ミラから発せられていた殺気も、威圧感も、雷も、全てが嘘であったかのように消えている。

アザゼルは自身に纏わりついていた死の感覚が消えているのを感じると、何とかこの場を乗り越えられたと、ホッと一息吐いて椅子に座りなおす。正直部屋は見るも無惨な姿に変わり果ててしまったが、無事にミラの協力を得られるならば気にする必要もない。

「話を遮ってしまって悪かったわね。続きを聞かせて頂戴」

「今度は攻撃しないでくれよ?」

いつも通りの雰囲気に戻ったミラに苦笑しつつ、茶化すかのように、けれど切実な思いでそう言ってからアザゼルは話しはじめる。

 

 

「貴方達も、一枚岩ではないのね」

アザゼルの話を聞き終えたミラが初めに溢した言葉がそれだった。やれやれと、どこか呆れたように頭を振るミラに苦笑して、

「まぁ、しょうがないだろう。どんな組織であれ、意思を持つ者が複数いればそれぞれの思惑が出来上がる。それを一つに統一するなんざ土台不可能な話さ」

肩を竦めてそう答えるアザゼル。

「貴方の組織の話でもあるでしょうに。それでよくもまぁ総督をやっていけるわね」

「俺には優秀な副官がついているんでね。俺なんかが頂点(トップ)でも何とかやっていけるのさ」

「そう。その優秀な副官殿はさぞかし苦労しているのでしょうね。こんなだらしのない上司を持って気苦労が絶えないでしょう」

その時。どこかの部屋でアザゼルの右腕とも称されている堕天使がくしゃみを連発していたが、それは些細な事である。

「まぁ、という訳でな。お前さん達には本当に悪いと思っているが」

「それ以上言わなくていいわ。貴方の想いは解ったから」

「…………すまんな」

バツが悪そうに、謝罪の言葉を口にするアザゼル。

そんなアザゼルにミラは苦笑を溢す。

「謝るのはむしろ私の方でしょうに」

普段はおちゃらけていてだらしのないアザゼルだが、根は真面目でお人好しなのだ。こんな頼みなんて本当はしたくなかったのだろう。自身の力で解決出来ない事に憤りを覚えているのだろう。その事はミラとて分かっている。

「でも、最悪の場合は私達も動くわよ?それだけは譲れないから」

「分かっている」

「そ。ならいいわ。それで、話はもう終わりかしら?」

「あぁ、これで俺の用件は終わりだ。長々とすまなかったな」

「本当よ。折角の稟との時間が減っちゃったじゃない」

わざとらしく不満そうな顔をするミラ。

「はは、それはすまなかった。なら、今からでも稟の所に行きな」

「貴方に言われるまでもないわ」

アザゼルの返しにミラはそう返し部屋を出ていくのだった。その足取りは早く、本当に稟の下へ早く戻りたがっているのがはっきりと解る。

ミラが部屋から出ていった後、アザゼルは深い溜息を吐きながらぐったりと椅子に身を放る。

「全く、稟の奴はとんでもない存在に好かれたものだな」

思い返しただけで背筋が震える絶対的な死。直接自分に向けられたものではなかったが、あれほどまでに死の恐怖を味わったのは果たしてどれほどあっただろうか。

呟いたアザゼルの顔は、酷く引き攣っていた。

 

 

(ミラは了承してくれた。なら、俺達も逃がす訳にはいかん)

三日前のミラとの会話を思い返し終えたアザゼルは、顔を引き締めシェムハザに視線を送る。その視線を受けたシェムハザは頷き、アザゼルの部屋から出ていった。

「無事に帰ってきてくれよ」

その呟きは、どこか不安そうに揺れていた。

 

 

アザゼルがそう呟いていた一方。

(私達がいるから、万一の事態は防げるけど……)

はぐれ悪魔が潜伏していると思われる廃墟を目指しながら、先を歩く稟とレイナーレ、というよりも稟を心配そうに見つめながら、ミラはアザゼルと会話していた時の事を振り返っていた。

(主殿が心配ですか?王よ)

(あの堕天使の言葉に従うのは癪ですが、これも小さな主の為。小さな主を信じましょう)

(然り。なに、いざとなれば我等が動けばよいのです)

稟の身の安全について思考を巡らしていたミラに、彼の内に宿るドラゴン達ー天廻龍シャガルマガラ、天翔龍シャンティエン、蛇王龍ダラ・アマデュラがミラにそう語りかけてきた。その声音には、稟を心配しすぎるミラに対して若干の呆れが含まれていたが。

(大体、王は心配しすぎなのです。我等が小さき主殿に付いている限り、万一の事態もないでしょう)

(そうそう。心配のしすぎは身体に毒ですよ?主君を信じてあげましょう)

(それは分かってるけど、しょうがないじゃない。心配なものは心配なのだから)

続けて重ねられる嵐龍アマツマガツチ、幻獣キリンの言葉に、ミラはどこか拗ねたように答える。

ミラ自身、自分が心配しすぎている事は理解しているが、稟の事になるとどうしても過保護になってしまう。何でもかんでも自分で抱え込んでしまう稟を見つめ続けてきたのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだが。

(それに、どうしても嫌な予感がするのよ……)

そう。稟を心配しすぎているのは、何も過保護からきているだけではない。アザゼルの話を聞いてから、彼女は嫌な予感を感じていたのだ。その予感は収まるどころか日に日に増していき、この日になって確実に大きくなっている。

ドラゴン達は互いに顔を見合せ、

(嫌な予感、ですか?)

代表して風翔龍クシャルダオラが聞き返す。

ミラはそれに頷き。

(えぇ。私の勘違いだといいのだけど、どうしても膨れ上がってくるの)

その言葉に、ドラゴン達は再び顔を見合せる。

自分達の王たるミラが嘘を吐くなどありえない。ならば、その予感は確実に実現するのだろう。

王が不安そうにしている、ありえざる事態。

(ならば、我等はどんな些細な事も見逃してはなりませんな。クシャル)

(えぇ。稟殿には私が風の鎧を)

(索敵は、アマツ?)

(承りました)

その尋常ならざる事態。

それにほかのドラゴン達も気を引き締め、万一の事態に備える為に準備を整え始める。

(とは言え、私達は手を出せないのだけど)

(あの堕天使との約束など、無視してしまえばよいのでは?)

(それは駄目よ。アザゼルには恩があるのだから)

(しかし、それで小さな主に何かがあっては)

(分かってるわよ、でも……)

稟の事を考え、思考が同じところをぐるぐると回ってしまうミラ。彼女とて他のドラゴン達の言いたい事は分かっている。だが、それでも。

「ミラ?」

ふと、前を歩いていた稟が立ち止まりミラに声をかけてきた。

「あ、何?稟」

「いや、何か難しい顔をしていたからどうしたのかなって」

ミラを心配そうに見つめてくる稟の瞳をくすぐったく感じ、若干頬が綻ぶミラ。

ここで、貴方の事を考えていたと正直に言えば、稟はどんな反応をしてくれるのかという思考が過るが、その思考に蓋をして、

「ちょっと、今後の事を考えていてね。貴方が気にする事ではないわ」

「……そう?なら、いいけど。あまり考え込まないようにね」

そう言って、稟は再び前を向いて歩き出す。

そして、稟を無視するように先を歩くレイナーレに、稟が声をかけ続けるのを見ながら、

「……この予感が、当たらなければいいのだけど……」

不安そうに呟く。

しかし空は、そんなミラの気持ちを嘲笑うかのように不穏な空気を漂わせている。

暗雲が立ち込め始めた空は、まるで凶兆のようで……

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