主人公の前にいきなり現れた女性。
何処か見覚えがあるような気がするが・・・

ある都市伝説を元にした、短編小説です。
処女作ですので、お手柔らかにお願い致します。

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「おかえり」

「おかえり」

彼女は、とても穏やかな表情で私に話しかけてきた。

見覚えのある顔だ。それに声も。

そんな事を考えていると、彼女は続けて問いかけてきた。

「いつもお疲れ様。お茶でも飲む?」

ここは何処なのか。彼女は誰なのか。

幾つか疑問は残るが、多分夢か何かだろう。

断る理由も特に無いので、お茶を頂く事にした。

 

不思議な感覚だ。

味云々の話ではない。

何かに包み込まれるような、そんな感覚。

とても心地の良い感覚だ。

 

「ねえ、美味しい?」

彼女が問いかけてきた。

「美味しいよ。凄く落ち着く。」

そう答えると、彼女はより一層嬉しそうに笑った。

自分の淹れたお茶を褒められて、さぞ嬉しかったのだろう。

 

そんな事を思っていた時だった。

彼女は時間を確認すると、慌てた様子で言った。

「もうこんな時間。そろそろ行かなくちゃ。」

・・・何故だろう。胸騒ぎがする。

彼女の発言に、これ以上疑問を持ってはいけない気がする。

 

だが、頭が追いつくよりも先に言葉が出てしまった。

「何処に行くの?」

その瞬間、彼女は先程まで浮かべていた穏やかな笑みとは違う、まるで悪巧みをしているような笑みを浮べてこう言った。

「じゃあね。またいつか、何処かで出会える事を楽しみにしてる。」

彼女はフッと消えてしまった。

先程の意味深な発言と、奇妙な笑みが頭から離れない。

 

段々気分が悪くなってきたので、彼女の事を忘れようと、辺りを見廻した。

すると、今までお茶を飲んでいた机の上に手鏡が置いてあった。

手鏡なんか、置いてあっただろうか・・・。

そんな事を思いつつ、覗き込んでみる。

「・・・!?」

驚きのあまり言葉も出なかった。

顔が、のっぺらぼうの様に何も無くなっているのだ。

目も、鼻も、口も。何も無い。

「・・・あ、あああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!あの女!!あの女ァ!!!」

何もかも思い出した。

 

私は、5年も前に交通事故で死んでいる。

そして、この世界に迷い込んだ。

それからはとても退屈だった。

やるべき事も、物も、何も無い。

この世界での私には、どうやら顔と言うものが無かったらしい。

考えに考え抜き、私の死因である交通事故が相当悲惨なものであった為と結論付けた。

だが不思議な事に、前が見えるのだ。

匂いも感じられるし、喋る事も出来た。

そうやって、日々推測や発見をしている私の前に、1人の女が現れた。

その女こそ、先程の女である。

 

私は彼女の顔を奪い取った。

目が覚めると、私は周りから彼女として認識されていた。

戻ってきたのだ。あの退屈な世界を抜け出す事が出来たのだ。

記憶喪失だと訴えると、色んな人から、色んな情報を貰えた。

彼女の名前、年齢、性格、友達付き合い、現在の仕事等、大きな事から小さな事まで、彼女の事は大体把握出来るまでになった。

親戚も、友達も、同僚も、皆優しく良い人ばかりだった。

特に彼女の母親は優しく、本当の母親の様に思えた。

茶道の腕前もピカイチで、母の淹れるお茶はとても美味しかった。

段々とその生活に溶け込んでいき、5年も経つ頃には、彼女の事なんて頭の中に無かった。

彼女は自分自身なのだと錯覚していたのだ。

 

そして、4年目のある日。

新年会が終わり、帰宅途中の駅のホームでの事だった。

普段は見かけない大きな鏡が、自販機の横に掛けられてあった。

その鏡をのぞき込むや否や、私は驚いてその場で腰を抜かしてしまった。

なんと、そこに映っていたのは彼女の顔ではなく、のっぺらぼうの私の顔だった。

全てを悟った次の瞬間、視界がグニャグニャと曲がり、私はまたこの世界に飛ばされてしまったのだ。

 

そこからは先程までの通り。

今まで完全に忘れていた。

彼女は、彼女の体を取り戻した。

一方の私は、また地獄に突き落とされたのだ。

そんなの嫌だ。

何故私だけが不幸にならなくちゃいけないの?こんなのおかしい。間違ってる。

 

良いよ。今度は絶対に失敗しない。

地獄の底まで引きずり落としてやる。待ってろよ。マッテロヨ・・・・・・。

 

 




どうも、なーさんです。
私の処女作、楽しんで頂けましたでしょうか。
楽しんで頂けたのなら幸いですし、「ここをもっとこうしたら良い」等の指摘があれば、コメント欄にて書いていただけたらと思います。

とあるクイズ番組を観ていた際に、ふと思い浮かんだ物語を、そのまま文章にしました。
前々から小説を書きたいと思っていたのですが、自分の書いた物語を読むのがとても気恥ずかしく、なかなか書けずに居ました。
ですが、今回は不思議と恥ずかしいなんて感情は湧いて来ずに、淡々と物語を作っていく事が出来、こうして、やっと夢が叶いました。

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