七つ集めると神龍と呼ばれる大きな龍が現れてどの様な願い事でも一つだけ叶えてくれるという半ば都市伝説の様な噂話がある。『俺は七つ集めた事がある奴を知っているぞ』と言う者もいれば『あんな話はでっち上げだ』と言う者もいた。話の真偽の程はわからないが、今まさに神龍を呼び出す為に必要だとされるボールを求めて激しい争奪戦が繰り広げられていた。
【フリーザ一味】
「こちらにボールがあると思うのですが、出しては頂けないでしょうか?」
フリーザは不敵な笑みを浮かべながら目の前の老人に話し掛ける。左右にはザーボンとドドリアの二人が控えている。老人はしばらく考える様な仕草をしていたが、ふと何かを思い出した様だ。
「少しお待ち下され」
と言うや席を外した。
「本当に有るのでしょうか?」
とザーボン。何処かフリーザの機嫌を伺う様な感じもする。しばらくして
「お待たせしましたな、こちらですかの?」
と何かを手にして戻って来た。
「おお、間違いありません!ドドリアさん‼︎」
ドドリアが老人からボールを奪い取った。
「どうなんですか?ドドリアさん?」
「間違いありません。バッチリです!」
「フリーザ様‼︎」
「ホッホッホッ、これで6つ集まりました。ですが気を抜くんじゃありませんよ、お二人共。どうやらベジータ以外にもボールを狙っている者達がいる様ですからねえ」
【ベジータ】
「よし、なんとか1つ確保できたぞ。フリーザ達が6つを集めた時点でスキを見つけて奪ってやる......」
傍らには頭を抑えてうずくまる小さな男の子。
「運が向いてきやがった。願いを叶えるのはこのベジータ様だー‼︎」
【ブルマ・クリリン・悟飯】
「どうですか?ブルマさん」
何やら小さな機械を片手で操作しながらその画面の様な物を覗き込んでいるブルマに声を掛けるクリリン。
「ちょっと、あんまり急かさないでよね。あっ!」
ピッ‼︎
機械が短く鳴った。
「二人共〜反応が有ったわよ‼︎」
「本当ですか⁉︎」
「ヤッター」
二人に向けて得意気に機械の画面を見せるブルマ。
「北北西の方向に10km位の所にあるみたい。数はねえ...驚かないでよ。なんと24個よ‼︎」
「24個ですかー⁉︎」
二人同時に驚きの声を上げる。
「すげ〜‼︎一気に揃っちゃうかもしれないぞ!急ぐぞ悟飯、誰かに先を越されちゃうかもしれない‼︎」
「ハイ、クリリンさん‼︎」
二人は反応の有った場所へ急いだ。
それぞれがボール集めに帆走していた時、急に辺り一面が夜になった様に真っ暗になる。そして遥か彼方に大きな光の柱が立ち昇る。その様子をそれぞれの場所で眺めていた。
【少年チャーリン】
とある古びた小さな一軒家に少年は両親と住んでいた。彼の名前はチャーリン、今日でちょうど9歳になった。その9歳の誕生日を祝う為の家族パーティがささやかに開かれていた。
「チャーリン、折角の誕生日だというのにプレゼントが『チョコレートボール』一箱しか用意出来なかった。本当にない」
「チャーリン、折角の誕生日なのにプレゼントが『チョコレートボール』一箱しか用意出来ないなんて、本当にごめんなさい」
貧しさ所以に息子にまともなプレゼントをあげる事が出来ない事が両親には辛かった。
「どうして?謝らないでよパパ、ママ、僕『チョコレートボール』大好きだよ。とっても美味しいんだよ。そうだ‼︎みんなで一緒に食べようよ。きっともっともっと美味しいと思うんだ‼︎」
悲しそうな両親とは対照的にチャーリンの表情はとても明るい。実際に彼はこの『チョコレートボール』というお菓子が大好きだった。片手サイズの小さな箱に10個の球型のチョコレートが入っていて、一箱あれば毎日1個ずつ食べても10日も楽しめるからだ。
(今日は僕の誕生日なんだからパパとママが3個ずつ、僕が4個でもいいよね)
上機嫌でお菓子の封を開けるチャーリン。フィルムを剥がして蓋を開けた。チャーリンは気がつかなかったが紙製の蓋には小さな『金の龍神』が印されていた。その全てが露わになった時......
奇跡は起きた。
突然『金の龍神』が輝き始め、それが一際強い光を帯びたかと思うとそこから強い光の束の様なものが上昇した。光の束は途轍もない勢いで屋根を突き破り天高く伸びて行く。
「Oh〜大変、みんな早く表へ‼︎」
「Ah〜大変、チャーリン!早く表へ‼︎」
「うわあ、一体何が起こったの〜‼︎」
3人は慌てて表に飛び出して更に驚愕した。瓦礫と化した我が家から天へと伸びる龍の姿があった。しかもなぜだか辺りが夜の用意に暗い。
「我が名は神龍、どんな願いでもひとつだけ叶えてやろう。さあ、願い事を言うがよい」
呆気に取られていた3人だったがいち早く我に返ったチャーリンが神龍に問い掛ける。
「ねえ、本当になんでもお願い事を叶えてくれるの⁉︎」
「ああ、もちろんだ。さあ願いを言え」
「だったら僕のお家を元に戻して‼︎ねえお家を元に戻してよー‼︎」
「わかった、その願い叶えてやろう」
神龍がそう言うと壊れていた家が元の壊れかけの家に戻った。
「でわ、さらばだ」
神龍の姿が7個の小さなチョコレートのボールに変わるとそれぞれが飛び散っていった。辺りも元の明るさを取り戻す。
しばらく唖然としていた両親が正気に返りチャーリンに話し掛ける。
「なあチャーリン、その...なんだ...もう少し立派な家じゃなくてもよかったのかい?」
「そうよチャーリン、どうしてわざわざ元のお家を戻してなんてお願いしたの?」
二人の問い掛けはもちろん責めている訳ではなく、ただ素直な疑問からだった。
「だって僕、このお家大好きだもん。パパもママと僕だけのとってもとっても大切なお家だもん!」
チャーリンの言葉に思わず二人の涙腺が緩む。そして
「Oh〜チャーリン!」
「Ah〜チャーリン...」
「パパ、ママ‼︎」
三人はただただ互いに抱きしめあった。
【フリーザ一味】
「あと...あと一つだったというのに......」
肩をワナワナと震わせている。足元には握り潰された『チョコレートボール』の箱が六つ。つい先ほどまで『銀の龍神』が印されていたが今は消えている。
「ちくしよー.........!!! ちくしょおおお〜〜〜‼︎‼︎!」
神龍を呼び出す事を何者かに出し抜かれた事で荒れまくるフリーザ。
「フリーザ様、どうか落ち着いて下さい!」
必死でなだめるザーボン。
「.........」
いまだに惚けた様に神龍がいた方向の空を眺めているドドリア。
その三人の口に何かが飛び込んだ。
先程神龍が変わったチョコレートボールだった。
「!?」
突然の出来事に何が起こったのか理解出来なかったが、徐々に口一杯に甘くて優しい味が広がる。
それはほんの少し前までは毎日味わっていたはずなのにどこか懐かしさを感じさせるものだった。
そう、彼はこの味が大好きだった。
『銀なら七つ、金なら一つの龍神マークが揃えば神龍が現れてなんでも願い事を叶えてくれる』
ほぼ毎日食べていたのにそんなものを見た事はなかったしただの噂話だと信じていた。そう、一年前に初めて『銀の龍神』を当てるまでは。
それからというもの『チョコレートボール』の入荷の噂を聞けは必死に買い漁った。それでも最初の頃はチョコレートボールもちゃんと食べていた。...いつしかチョコレートボールは廃棄の対象となってしまった。
「そうでした......チョコレートボールってこんなにも美味しいお菓子だったのでした。私としたことがどうかしてました...」
それは他のザーボンとドドリアの二人も同じ。いや同様の事がベジータやブルマ達にも起こっていた。
【終幕】
フリーザ「良い子のみなさん、それとイイ大人のみなさんも。オマケを目当てに大量買いをする事は悪いとは言いません。ただ、お菓子を無駄に廃棄するのは感心しません。そのお菓子はもしかしたら他の誰かにとってはとても贅沢品なのかもしれませんよ。キチンとお菓子も味わって下さい。このフリーザとの約束です。もしも約束を破る様な事があれば......この世のものとは思えない程を味わう事になりますよ。」
おわり
駄文、お目汚し失礼いたしました。初めて投稿してみましたが楽しかったです。