pso2仮想戦記二年前の戦争   作:オラニエ公ジャン・バルジャン

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15話 国民の麻薬

惑星リリーパの勝利は本国であるオラクル船団に伝わり、各植民地星にも伝わった。だが新たな問題が浮上した。タクミが戦った正体不明の艦隊。ダーカーである事は間違いなかった…だとしても明らかにダーカーとは違う明らかに違うものであった。タクミは帰国後即刻この戦闘データを提出。アークス本営にてアークス首脳部と国防軍首脳部による連合作戦会議が開かれた。先ず、敵旗艦と敵の司令官に話しが上がった。資料によるとあの敵艦隊の旗艦は第二次帝政時代の英雄アウグスト・シュヴァーベン大元帥の座乗艦オーディンと瓜二つ、いやそのものでは無いかという議題になった。そして敵の司令官はアウグスト・シュヴァーベン大元帥では無いか?という事だった。もしそうならこれ程大事件かつ危機的状態にある事となるだろう。常勝の天才であったアウグスト・シュヴァーベンがダーカー側に居る。考えただけでも恐ろしかった。確証が無い以上彼らは違うと否定した。だが翌日、新光暦239年10月1日新たな衝撃の事実と共にそれは確証付けられてしまう。

偶然、戦艦スサノオのカメラに敵旗艦オーディンと至近距離で撃ち合ってすれ違った際に敵旗艦の艦橋をカメラに抑える事が出来たのだ。解析した結果ダーク・ファルスの反応を出して、指揮席に座る男はアウグスト・シュヴァーベンの容姿をしていたのだ。そして、その副官についているダーク・ファルスは、第二次帝政オーヴェルニュ朝初代皇帝フランシス・オーヴェルニュである事が判明した。会議参列者は血の気を失っていた。稀代の最強の英雄を相手にしなければならないという現実に耐えきれなくなっていた。どんな方法でこの世に戻ってきた事が不思議でしょうがなかったのだろう。そしてもう一つの事実…。リリーパ遭遇戦の跡地に派遣した工作部隊が、一組の男女の死体を確保した。国防軍の兵士では無く、ダーク・ファルスの着ている装束の塗装と模様で飾られた第二次帝政の軍服を着ていた二人男女。調べた結果ダーカーと同数のネガフォトンを体内に宿し、僅かながらのフォトンも宿し、人間よりも、繁殖能力の高い人間である事が判明した。つまりダーカー型の人間、人間型のダーカー。どちらにしても新たな人類が誕生していて、自分達は知らず知らず戦っていたのだ。オラクル船団は、この新人類、ダーカー型ヒューマンを、ダーク・ヒューマンと呼称した。マザーシップ・シャオの見解によると遥か以前からダーカー因子によって汚染された人間を生存させる研究がダーカー側でも行われており、近年のダーカー・ファーム(ダーカー占領地の人類に僅かながらダーカー因子を注入して、ネガフォトンを量産する農場。遅かれ早かれダーカー因子を注入された人間は死ぬ。)やアークス模倣体のデータが参考になっている事も明白であり、その為かヒューマンより能力が高い事も判明した。その後、15歳程の少年兵や65歳程の老兵までいた事から、かなり前から数を増やしていた事も分かった。これからはダーカーとダーカーにより生み出されたダーク・ヒューマンの連合軍と戦わねばならなくなり、然もこうしている間にダーク・ヒューマンを主力にした師団クラスの陸軍部隊に植民地惑星を占領され、守備隊は全滅、住人も、蹂躙され、成人子供を問わず男性は労働力、成人女性や明らかに処女年齢を超えていない女児すらも女性は慰安目的で凌辱され、老人は皆殺し、そしてひたすらダーカー・ファームに送られる。燦々たる事態にもなっていた。オラクル国防軍はこの情報を現状軍内でのみ公開し、対策と新戦術を構想するよう参謀本部に通達した。

ここでオラクルの新政府について語らねばならない。第三次民主制の後継者はジョージ・マッケンジー率いる政党を与党とする第4次民主共和政治体制であった。国民と軍部の信頼と人気は厚いが、タクミや他のアークスや国防軍の一部はあまり、この男を信用しなかった。この男はダーカーとの戦闘は聖戦と評して戦う事を奨励しており、国民を扇動していたのだ。当の本人は戦場に一度も出た事は無いのだが。タクミはあの男はやり方や言い方は首相とは違うが性根は一緒だろうなと思っていた。しかし、この男の政治手腕はとても高く、現にここ最近の国防軍の華々しい勝利の数々を巧みに使い、自分と自分の所属する政党を与党に引き揚げた。彼の政党は彼と共にクーデターには加わらなかった政治家の殆どを中心に作り上げた政党であり、クーデター時の与党からはマッケンジー派と呼ばれた。更にジョージ首相は自分の配下たるマッケンジー派を各所に配置し国民を扇動した。この時、戦果をあげた提督をピックアップし国民に英雄、愛国者と祭り上げ国民の戦意を向上した。軍内は自衛隊時からのマッケンジー派のシンパである提督や将軍も多かった。だがこれを快く思わない提督や将軍もおり、ジャンやバルバラといったアークス出身将校。ジェームズ、カスペン、ヴロツワフ、アサージといった現場主義将校。そして政治家嫌いで政治に興味をあまり持たないタクミと言った者達であり、取り分けタクミに至っては若年提督ながらもその功績の高さを評価され、公私問わず外を出ればマスコミやパフォーマンスに駆けつけた政治家達の選挙行動に無理やり駆り出され、あらぬ噂でスクープになったりとろくなことになっていなかったのだ。その為か、以前より始まっていた往年の先輩将校達が自分達より功績を上げる若年将校への嫉妬感を大きく成長させる結果にもなり、タクミを初めてとした若年将校は肩身の狭い思いを余儀なくされた。そんな彼らの苦労を知らず国民は打倒ダーカー‼︎全宇宙の民主共和制による解放を声を大きく訴え出したのだ。更に悪い事に一部将校達が例のダーク・ヒューマンやダーク・ヒューマンによって占領された植民地惑星の蹂躙状態を無断で公表してしまい国民の知るところになってしまったのだ!いよいよ怒りと戦意は最高潮に達した。ダーカーとダーク・ヒューマンを一人残らず殺せ‼︎ダーク・ヒューマンを同じ目に合わせてやれ!一人残らず奴隷にしろ‼︎と民主主義国家の国民にあるまじき暴言が普通に出る程の怒りを露わにし、更に情報を秘匿していた軍部主要…取り分けアークス首脳部への反感を高めた。オラクル国防軍はこの機密を暴露した将校を罰しなければならなかったが、マッケンジー首相の口添えもあり処罰はされずマッケンジーはこれを利用し扇動し更に戦意を向上させ、この将校達を愛国者と讃え、自分の側近にしてしまったのだ。そんな渦中にあるオラクル船団では占領された植民地惑星の敵討ちとでも言うのか、ダーカー領内を長駆遠征し、根絶やしにせよ‼︎と遠征軍の機運が高まっていったのだった。そんなオラクルの移民船のとある一隻にあるとある料亭に四人の男が集まっていた。顔ぶれはタクミとクーデター時の第四艦隊司令官の後任として着任した、アークス内でのタクミの同期であるガブリエル・G・アレンスキー年齢22歳の中将と同じくタクミの同期であったが対立していた政治家の政治問題を批判したが為に誠実な政治家であった父を殺され政治家になった。フレーゲル・ジャグホット与党下級議員と三人の後輩であり上二級アークスに昇進したばかりのエドワード・アースグリム大佐待遇といった面々であった。端からみればアークス訓練学校の同窓会みたいに見えるが、後にFファミリーと呼ばれる救国精鋭集団の中核メンバーであり切っても切れぬオラクル四銃士と呼ばれる若者達の最初の会合であり、歴史的瞬間でもあったのだ。この連中は先ず、互いの健康を祝して乾杯し、笑いあって飲んで食べて歌ってと同窓会みたいに騒いでいたがあらかた落ち着いたのか、それぞれワインやビールを片手に今後を見越して討論を行っていた。『おいフレーゲル、小耳に挟んだんだが俺やアレンスキーが艦隊を長駆遠征させてダーカー領内を完全侵略すべしと俺たちに明日の作戦会議に参加させようとしたのはおたくの首相閣下らしいな?』タクミは憎らしげに言った。フレーゲルも不思議な顔をしながら、『そうなのだ。昨日まではあまり乗る気じゃなかったあの人妖首相が今日になって軍部に実行命令を出してな厚生労働大臣で俺の師匠である武田先生が同期のアフマド国土交通省大臣と話してるのを聞いたんだ。理由は知らんがな。』とワインを飲みながらこれは美味いと頷きながら答えた。『何を根拠にこんな戦いをするんだ。補給線も40年前に奪われたSchloss von Gott(神の城)要塞も奪還出来てない。そんな状況で遠征軍なんか無理だ。』と、アレンスキーもビールを片手に言った。『相変わらず我が祖国の政治家さん達は何がしたいか分かりませんな。俺は新造艦を与えられて、まさかタクミ先輩の分艦隊に配置されるなんて、思いもしませんでしたよ。』と言うエドワードにタクミは『あの第12艦隊の司令官の元で参謀をやるよりは良いでしょ?』と言った。『あんな脳筋で発想力の無い馬鹿正直司令官の元にいたら、命がいくつあっても足りはしませんよ。』国防軍は自衛隊時からのベテランも多い、然し、戦闘により経験もあり、柔軟な判断の出来る指揮官が少なくなり、経験こそあるものの固定概念に囚われがちな指揮官が多くなってしまい、能力のある若年将校達との溝を作ってしまい、多数の将兵の白骨を朽ちさせる事になっていたのだ。そういった背景もあってか、国防軍の士官や将校の中にはアークスや、国防軍若手将校を快く思わない者もおり、その一方でそんな老害の元で働いたり死なねばならない事に不満を募らせる将兵も数多く存在した。そんな互いが互いの足を引っ張り合ってるという軍隊の勝利で熱狂的な愛国心に目覚めた国民というのはなんとも滑稽である。どの時代も国民が求めるのは狂気的な出来事であるのは人類史の悲しき性であろうか。狂気、戦争の勝利の余韻それは国家による国民への麻薬である。新光暦239年初秋。オラクルとダーカーの戦いは更に苛烈なものになっていくのだった。

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