pso2仮想戦記二年前の戦争 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
第一艦隊は、秘密の補給物資を積み込んでいた。これは、タクミとガブリエルが、もしもの時のために用意した、特殊迷彩を施した、少数の輸送艦である。その僅かな休息時間で、第一艦隊の面々は敵の追跡艦隊の対処を考慮していた。
フリードリヒ
『6個艦隊とは、随分豪勢な追撃ですな。』
タクミ
『そりゃ、要塞奪った挙句、決戦で本隊の殿やって、オマケに敵の大将人質にして、スパルタン宙域を悠々と一周して、遠回りで逃げてるんだもの。そりゃ喧嘩売ったと思われてもしょうがない。』
アリス
『本隊は、我々が宙域を一周している間に、ワープして回廊の入り口まで飛びましたから追撃も不可。腹いせの対象に出来るは私達位なものです。』
アースグリム
『だったら我々もワープして仕舞えば良かったのでは?』
グリッドマン
『それは無理ですな。要塞クラス主砲搭載艦はあの一斉射でエネルギーをかなり使いましたからな、ワープするだけの出力とそれを得る時間はありませんでしたから。』
ヒューズ
『そのエネルギーを得た瞬間、この6個艦隊…ワープしてこっちに来られたら、終わりですな。まだワープ可能な艦艇が揃ってないからな。』
サミュエル
『少なくともあと数時間必要だ。そうすれば、回廊手前まではワープ出来る。』
タクミ
『何処かでやり過ごすか…マトイ、この周辺の宙域図を見せてくれないか?』
マトイは頷いて、コンソールを操作した。艦隊旗艦武蔵の会議室の大パネルに宙域図は映し出された。
タクミ
『近くにアステロイド帯か…艦隊丸々治りそうだな。』
グリッドマン
『補給物資が足らんので籠城は出来ませんがね。』
マトイ
『増援は望めないから…そうなると。』
タクミ
『あの岩ん中でひたすら敵を叩いて突破。それしか無いな。まともに撃ち合ったら負ける。』
サミュエル
『あのアステロイド帯はかなり広大だな。この中に敵をおびき出してはどうか?』
アースグリム
『どうするんです?』
サミュエル
『1個分艦隊程度の戦力をアステロイド正面に待機。他の艦隊はアステロイド帯に分散、分艦隊が敵の艦隊をアステロイド内に引き寄せたら、分散した艦隊が袋叩きにする。敵はアステロイド内に別の方向から迂回するだろう。今度は反対側の出口に機雷を撒いておいて侵入を阻む。これで二個艦隊は削れる。残り4個艦隊のうち何方かを突破する。』
タクミ
『なるほど。それに付け足しても良いかな?敵がこのアステロイドを包囲すれば其れなりの包囲陣になる。結構厚い線だ。普通に突破は難しいどころか不可能。本来ならアステロイド帯に入ること自体が詰みなようなものだが、このまま会戦をやるのは自ら首を差し出すようなものだ。そこでアステロイド帯の大型隕石に熱核エンジンを装着して特攻兵器を作る。これで突破口を開こう。』
グリッドマン
『では急がねば。敵がワープアウトしてから現在四時間、敵が此方にワープするまであと二時間しか有りません。』
タクミ
『敵迎撃艦隊は、ヒューズ少将麾下艦隊!その他、艦隊はアステロイド帯に進入し、準備に掛かれ‼︎』
幕僚一同
『『『『ハッ‼︎‼︎』』』』
第一艦隊は慌ただしく、アステロイド帯に入り、準備を始めた。この一見すれば、非現実的な籠城戦をやらざる得なくなった理由があるとすれば、schloss von gotts要塞迄敵を引き寄せたく無いと言った理由であった。要塞付近迄、敵を近づけてしまうと、要塞付近での戦に発展するだけでなく、実は、schloss von gotts要塞はこの時ルイ・フィリップ少将により、改修と補強作業が行われており、今後の第一銀河防衛には不可欠であった。その予算は、艦隊旗艦級戦艦守護衛士(ガーディアン)級だけで一個艦隊を組めるほどの予算が掛かっており、これを戦闘で中止されれば、多額の国費が消えるのだ。後は単純に、要塞を包囲され、戦力余裕のない内にオラクル国領を荒らされるのを防ぎたいからでもあった。
数時間が経過した。暗黒銀河教国追撃艦隊6個艦隊総艦艇数
約60,000隻がワープアウトした。その前にヒューズ提督麾下、スサノオを旗艦にした、5,000隻の艦隊が立ち塞がった。銀河教国艦隊から見れば、虫ケラの様な存在であるヒューズ艦隊を見た貴族達は笑いを隠せなかった。
銀河教国貴族
『フン!たかだかその程度の数で、我ら貴族の道を阻もうなどと、不届き者め!粉砕せよ‼︎』
銀河教国貴族
『虫ケラめ!消えるが良い‼︎』
銀河教国貴族
『人間如きに‼︎』
総勢60,000の艦隊はひたすらこの5,000隻に砲火を加えた、が一発も有効打を与えられ無かった。彼らは撃った、
しかし射程距離外から撃っていたのだ。砲術士官も参謀も距離外である事を教えてやれば良いのだが、肝心のそれらも貴族である事から、戦を知らなければ、出陣していても距離すら測れない者ばかりだったのだ。もしくはそうじゃ無くても、余計な口出しを、しかも平民如きがその様な事をすれば軍法会議など掛けられることもなく、その場で射殺される事への怖れが彼らの口を閉ざした。そう考えれば、この60,000隻に乗る数十から百数十万の将兵達は実に不運であった。そしてこの杜撰な砲撃の中に立たされたヒューズは正直、実に不服そうであった。彼としては猛火の中、勇猛に反撃し、敵艦を撃ち減らしながら、退却する事を想像していたのだが、猛火には包まれたものの、全く熱を持たぬ猛火に立たされた事への不満が募っていた。
ヒューズ提督
『なんと杜撰な射撃だ‼︎こんな程度の腕しか持たん連中とはガッカリだ!今から、戻って、F提督とオイゲン少将からポツダム連隊をお借りして白兵戦を行うぐらい余裕があるぞ。全く、どんな連中が指揮を取っておるのやら。』
オラクル士官
『射程に入りました。全艦にミサイルと魚雷を発射させ、逐次砲撃しつつ後退します。』
ヒューズ提督
『それで問題無い。あと、残った核ミサイル三発も発射しろ。持っていても仕方が無いからな。』
ヒューズ提督は敵艦隊を撃ち減らしながら後退を開始した。やっと敵艦隊がヒューズ艦隊との距離を縮めてきたのでやがて、砲火が迫る様になり、次第に被害が出る様になった。しかし、それでもヒューズ艦隊は衝突艦を出す事なく、後退したのだ。
教国士官
『敵旗艦が判明しました。G型艦隊旗艦型戦艦(第二銀河側のガーディアン級の呼称)スサノオです。』
教国貴族
『まて、それはあの小僧が手を焼いている人間の艦か。あれを撃ち取り、あの小僧の鼻を明かしてやれ‼︎』
ヒューズ提督
『付いて来たな…全艦機雷に気をつけながら後退。』
ヒューズ艦隊がアステロイドに侵入し、そして敵の艦隊も後を追う。そしてアステロイド帯に閃光が走った。大小の光がついたり、消えたりしているのだ。
教国貴族
『何事⁉︎』
教国下士官
『き、機雷です。アステロイド帯の入り口一帯に撒いてあります!』
教国貴族
『後退だ!急げ‼︎』
教国士官
『無理です。既に二個か三個艦隊がこの入り口に入ってしまっております!玉突きの状態のうえ、四方八方友軍の艦で身動きが取れません!』
教国貴族
『無理とはなんだ‼︎それをやるのが貴様ら平民の仕事…』
無数の機雷と、ヒューズ艦隊からの砲撃で、敵艦隊は沈められていった。正面から突き崩すのは無理と判断した残りの艦隊はアステロイドを迂回してヒューズ艦隊の後方にある入り口から侵入しようとした。
教国貴族
『敵艦隊の後ろについた‼︎全艦砲撃開…』
後方に回り込んだ艦隊はアステロイドに隠れていた第一艦隊の残存艦艇から砲撃を加えられ、これもまた正面の艦隊と同じく玉突きになり、屍を重ねていった。暫くして、敵の艦隊はやっと後退し、アステロイドを包囲した。
タクミ
『やっと退いてくれたか。どれだけ敵の艦隊を撃ったかもう数えきれないな。』
アリス
『我が方、轟沈143隻、敵は20,000隻程を失いました。』
イオ
『敵はあのしっちゃかめっちゃかの中でも良く砲撃していたのにこっちの損害はたったそれだけだなんて…。こっちが凄いのか、それとも相手の酷さなのか。』
フリードリヒ
『間違い無く後者さ。ヒューズ艦隊はこっちに後退するまでに沈んだ艦は片手あれば数えられるほどだったんだぞ。恐らくあれは殆ど会戦なんかに出た事ない司令官と兵士を満載した戦闘艦隊と言うより、練習…遠足艦隊だな。』
そこに艦橋の隔壁が開き、サミュエルが宇宙服のヘルメットを取って、軍用ベレーを被りながら入ってきた。
サミュエル
『ただいま。手頃な隕石に熱核エンジンと核爆薬を装着してきた。正直どれ程被害を与えられるか分からんが、いやはや、外から武蔵を見てみるとたかだか数十メートルのビルに匹敵する艦橋が数キロの船体のど真ん中に立っていると小さくて可愛く見えるな。』
タクミ
『よしよし!とても良し‼︎さっさとトンズラするぞ!良し、全艦回廊方面に転換!隕石ミサイル点火‼︎』
突如、アステロイドから大きな小惑星クラスの隕石が数個包囲艦隊に向かって突き進んできた。勿論、包囲していた敵艦隊は大混乱である。迎撃しようにも、艦砲ではビクともせず、駆逐艦程度に至っては簡単に潰されてしまった。そして隕石ミサイルは一定距離になると核爆薬が作動して爆発し、更に敵艦隊を削っていった。こうして艦隊は包囲陣の数カ所に穴が空いた。そして回廊方面に空いた穴を通って第一艦隊は離脱した。
タクミ
『マトイ。敵艦隊全艦に通信を繋げてくれ。』
マトイ
『分かった。…良いよ大丈夫。』
敵艦隊全艦にこの若い青年将校の顔が映し出された。敵の将兵は何が起こった分からずただ呆然とそれを見ていた。
タクミ
『此方は、オラクル船団共和国第一宇宙艦隊司令長官のタクミ・F中将です。先ずは互いの健闘を讃えさせてもらう。そしてもう一つ、当方はこれ以上の流血は望まぬ。どうか貴公らにはそのまま御国に帰って頂きたいと思っている。この戦闘でもそうだがどうやらそちらは経験が不足しているようだ。だが対する此方はみな将校から一兵卒に至るまで百戦錬磨。既に実力に違いがある事がお分かりいただいたと思う。悪い事は言いません。即刻退去なさい。』
と通信を送った。実力不足だ。格が違う。相手にもならんと言われた貴族達は激昂した‼︎『貴族を侮辱しおって‼︎』
『おのれ!あのみどり髮の小僧みたいに気に入らん奴だ!』『我ら貴族をなんと心得る‼︎』と怒りを露わにしたが、その下につく将兵達、とりわけ平民出身の下士官達は今すぐに引き返したかった。惜しみなく核ミサイルやら、機雷やら使って、大軍に屈さずただひたすら戦い続けていたあの艦隊をまるで気狂いのような物に感じていたのだ。
教国士官
『閣下。フランシス・オーヴェルニュ大将が、PG4エリアにてかの艦隊を待ち伏せしているので、追撃任務を譲られたしと通信を送っておりますが?』
教国貴族
『…しせよ。』
教国士官
『…は?』
教国貴族
『無視しろと言っている‼︎おのれ緑髮の小僧の片割れめが…手柄を独り占めしよって…そうか。』
この艦隊を束ねる貴族出身の提督は副官にニヤリと笑いながら振り返った。
教国貴族
『回廊入り口までワープせよ。小僧の片割れがあの人間どもを逃せば、我らが奴らにとどめを刺すのだ。もしあの人間どもが片割れに滅ぼされたら、その時には片割れの艦隊は30000程だから20,000隻程度には減らされているだろう。此方はまだ35000隻程おる。あの小僧の片割れの首を取ってやろう!敵にやられたと見せてな。』
黒い企みが英雄を襲おうとしているがこの時の英雄達に取っては実にどうでも良い事であった。