pso2仮想戦記二年前の戦争 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
新光暦239年11月。オラクル軍は恒星スパルタンの撤退戦を成し遂げた後、ダーク・ヒューマン及びダーカーの連合軍は撤退を始めていた。その中で、ダーク・ヒューマン独立派を率いるアウグスト・シュヴァーベンは行動に移ろうとしていた。ダーカーから、深淵なる闇からの、ダーク・ヒューマンという人類の独立を懸けた戦いを始めようとしていた。深淵なる闇自体は、アークス達によって封印されたが、その刹那、作り出したダーク・ファルス・双子の模造体の一体にその意思を残していた。そしてそれが膨大なダーカーを使役し、ダーク・ヒューマンを家畜の如く飼育していることはすでに述べた。
アウグストは深淵なる闇が作り出した物だが、二百年の眠りについていた黄金の意思を屈服させる事は出来なかったのだ。ましてや宇宙最恐の存在といえどその搾りカス程度では。
アウグストはクラウゼウィッツを伴いながらダーク・ヒューマン第二本星シャーテンブルグに向かった。道中、ゲオルグやフランチェスカら重鎮の手勢を各惑星に振り分けていた。勿論これは、深淵なる闇の、と言うより深淵なる闇の飼い犬になる事によって自らの栄光と私腹を肥やしている暗黒銀河教国貴族通称、反独立派または教会派と呼ばれる連中の差し金であった。
アウグスト
『この私を始末するつもりだと言う事だ。』
クラウゼウィッツ
『やはり漏れていましたか。流石に幾百年も飼いならされ謀略を重ねた者達を少し侮りましたな。』
アウグスト
『奴との一騎打ちを邪魔されることだけは阻止しなければな…クラウゼヴィッツ。フランシスには言ってないな?』
クラウゼヴィッツ
『はい。諸提督にも内密にしておりますが…本当にやるのですか?危険が大きい上、御身に何かあれば…』
アウグスト
『奴が力を蓄えていない上、双子の幼子の姿をしている今こそ、奴を殺すチャンスだ。今しかないのだ。奴が完全に油断している今こそ時なのだ。そしてこの戦いに皆を巻き込ませぬ。これは余の戦いだ!』
クラウゼヴィッツ
『そこまで言うのであれば止めは致しませんが、閣下の命は閣下ご自身の物だけではないことをお忘れなきよう。』
クラウゼヴィッツは一礼すると艦橋から降りていった。階段の下りた先にはクラウゼヴィッツの副官であるカウリバス少将が待っていた
クラウゼヴィッツ
『各提督達には伝えたか?』
カウリバス
『ハッ!全艦隊は6時間後直ちに転身。全指令を停止し、第二本星シャーテンブルグへ向かえと打電しました。』
クラウゼヴィッツ
『いかに閣下の力がダーク・ファルスと同等といえど、相手は腐っても深淵なる闇。下手をすれば命に関わる。だが倒すには今しかない。その為には諸提督の協力が必要だ。結果さえ良ければ後は閣下に申し開きするだけのこと…結果が出てしまえば、その過程など取るに足らん。』
イラストリアス麾下二万の艦隊はシャーテンブルグ衛星軌道に乗った。艦隊をその場に残し、そしてこのクジラの様な優美な船体を持つ全長7.6キロの巨大な鉄塊はシャーテンブルグの美しい地表に降下していった。
ドックの外には多くのダーク・ヒューマンの民と兵士達が英雄の帰りを待っていた。そして口々に叫んだ。
『sieg Reich‼︎(帝国よ勝利せよ‼︎) Der Sieg Held‼︎(英雄に勝利を‼︎)』
皇帝を名乗るだけの力を持ちながら至尊の冠を友に託し、そして友に為に戦ったこの緑髪の青年は、生前も、死後も、そして今も目に移る者に光を与える存在であった。
クラウゼヴィッツ
『足らんと言う顔をしてますな。』
アウグスト
『当然だ。我が手に収めるは全てよ!』
(そうだな…フランシス。姉上を守る為に戦った頃と変わってない…お前の父上の仇を打ち滅ぼした後の虚しさ。忘れなれないほど苦しかった。互いに生の充足を得られなくなった。だから誓った。全てを手に入れると。)
?
『おやおや、元帥のお帰りだ。』
アウグストの視線の先には豪華絢爛な服を着たやせ細った若い男が立っていた。
アトラス・ヴォン・アインツヴェルン。
銀河教国貴族の中で名門中の名門アインツヴェルン家の若き当主である。教国教会にも大きな力を持っており、ダーク・ファルスのご機嫌をとって大きくなった家を相続した…ようはボンボンである。当然教国教会の力を使う事が出来るから、反独立派である。
アウグストは折角、過去の美しい記憶に浸っていたのを、この男によって邪魔されたこの青年は恐ろしい程の形相をこの貴族に向けた。
そしてその貴族も恐ろしい形相を浮かべる男を見て憎らしくニタニタと笑っていた。ダーク・ヒューマンの民達は、この二人が、互いに剣を抜いた時、この第二銀河が炎に包まれる事を分かっていた。
民達は二つの思いを持っていた。一つは家畜の如く飼い慣らされ続けるとしても強大な力の庇護の元でふ生き長らえる事を選ぶ者、本当の自由のために全身全霊を持って戦う事を決めた者。
人々は大きく揺れていた。兎に角にもこの二人のやりとりを固唾を飲んで見守った。
アインツヴェルン
『言っておくけど、今回は表彰では無いよ。敵を潰乱させたのにも関わらず撃滅するまで追撃しなかった事、敵に人質にされた事で我らが主人はご立腹だ。
先に帰ったトゥハチェスキー元帥はそれが原因で引退したのにも関わらず蟄居させられたのだからね。貴族特権も剥奪され、息子も強制敵に兵に取られ、二人の娘も今頃我が主人の使徒(ダーカー)達の慰め物になってるだろうよ。死にたくても許されず、老いるまで犯される続けるのさ!
おお、凄い‼︎一体何十、何百の使徒の母親になるのやら、ついでに君の姉君と妹君も加えてあげようか?アハハハハハハハハハwww』
アウグストは嫌悪の表情を浮かべながら、そのまま車に乗り、その場を後にした。しかし車内では、この美しい翡翠の鬣を持った獅子が荒れ狂っていた。
アウグスト
『おのれ‼︎よくも姉上とセーニャを侮辱したな‼︎あいつは俺が殺す‼︎その憎らしい皮を剥いで、髑髏を引っぺがしてそれで酔い潰れるまで酒を飲んでやる‼︎』
それをクラウゼヴィッツは無表情でそれを見ていた。やがてアウグストはこの鉄仮面を被っているのか一切喜怒哀楽を見せないこの参謀見て、冷静さを取り戻した。
アウグスト
『冷静になれと言いたそうだな。』
クラウゼヴィッツ
『ご推理の程、感服いたします。』
アウグスト
『全く、私もそうだが、他の提督は卿を気に入らんと思っているのに、よくシューマッハとガラハウは卿とまともに喋れるな。』
クラウゼヴィッツ
『別に気に入ってもらおうとも思っておりませんが、あの二人、ついでにセープ大将とは幼少からの腐れ縁にございます。特にこれといったものはありません。』
アウグスト達は、豪華な宮殿の前で車を降りた。その宮殿は黒く塗られた巨大な建物であり、そこらかしこにネガフォトンスフィアや金細工で飾られていた。
黒宮殿と呼ばれるそれはダーク・ファルス・双子の姿を模した深淵なる闇の本拠地であった。控えの間にてクラウゼヴィッツは控えると、アウグストは礼装を身に纏い、堂々と広間に向かっていった。そこには右に貴族や武官の列。左は大中の上級ダーカーとダーク・ファルス・模造体が列を作っていた。
そして奥の玉座では双子がそれぞれ寄りかかるように座っていた。アウグストはこの双子の前にひざまづいた。
双子
『アウグスト…君には失望したよ。もう少し僕らの役に立ってくれると期待してたのに。』
アウグスト
『期待を裏切ってしまって誠に申し訳無く存じます。然し、我が忠勇なる将兵を無駄に死なせるは創造主様の子らを無駄に死なせる事となりますので、必要無いと判断いたしました。』
双子
『そうか。だか僕たちとしては君をこれ以上生かしておく必要が無いんだ。君の中にある27年分のネガフォトンそれは僕の体から出たものだ。さぁ、返して貰うよ。』
双子は狂気に満ちた笑いをあげながら黒い霧となって、アウグストを包んだ。しかし、呑み込まれる直前。二発の銃声がなる。そして双子の死体が転がっていた。
アウグスト
『私はアウグスト・ヴォン・シュヴァーベンだ!アウグスト・ヴォン・シュヴァーベンという一人の人間だ‼︎そして、銀河教国…いや銀河帝国の皇帝だ。よって私は誰かによって利用される存在では無い‼︎私は貴様らの道具では無いさぁ、立て!どうせ死んではおるまい‼︎』
双子→深淵なる闇
『フフフ…手荒い事をしてくれる。だが残念だ。君を取り込むのはやめにしよう。お腹を壊しそうだ。』
深淵なる闇が手を挙げると貴族達は銘々に武器を取り出し、ありとあらゆる扉が開き、ダーカーと貴族の手勢が入ってきて、広間は二千から三千の人員で埋まった。そしてただ一人アウグストはそこに残されている。
アインツヴェルン
『終わりだ。苔頭‼︎』
アインツヴェルンは引き金を引こうとした。然し、宮殿が大きく振動して引き金を引く事は出来なかった。
貴族
『何事か‼︎衛兵報告せよ。』
貴族兵
『申し上げます!黒宮殿をおよそ四万の兵に囲まれました!敵兵は全て装甲擲弾兵と思われます‼︎更に、シャーテンブルグ衛星軌道に約20万の艦影を確認‼︎』
アインツヴェルン
『バカな⁉︎それだけの大兵を何処から⁉︎』
ハンブルグ
『簡単な事さ!』
大広間一帯にハンブルグ・シューマッハの声が響き渡る。
ゲオルグ
『我々はこのために引き返し、衛星軌道を制圧。兵を降下させ、御前の前に手勢を率いて来れば良い。クーデターを起こすのであれば普通はここまでするからな。』
アウグストは苦笑いした。クーデターを起こすのであれば、自らの手勢を持って制圧するのが普通であった。だがアウグストは本人のプライド故に自分の部下の力抜きで勝ち得ようとした。確かにアウグストの力であれば切り抜ける事も不可能ではない。然し、確実性は無く、アウグストはダーク・ファルスでは無く人間である事を前提にしたクラウゼヴィッツは諸提督に密書を渡して置いたのである。
深淵なる闇
『どうやら数の上では勝てなさそうだ。良いだろうアウグスト。僕に…いや我に勝てるものならやってみるが良い。所詮貴様も余から生まれた存在。我を倒す事など叶わぬ。待っておるぞ…フハハハハ‼︎』
所詮なる闇はアインツヴェルンを始めとした貴族達を伴いネガフォトンで何処へと消え、ダーカーも各々消えていった。
ゲオルグ
『閣下!お怪我は?』
アウグスト
『いや…無い。何故卿らがここにいる?』
ハンブルグ
『クラウゼヴィッツより密書を貰いました。そこで大急ぎで回頭し戻ってまいりました。』
アウグスト
『そうか…。然し、奴を逃してしまったな。』
ハンブルグ
『閣下。ご無礼を承知で申し上げます。陛下は実に強大な敵に向かって進んでおられます。その姿は多くの臣や民を惹きつけ、その姿は立派です。
ですが、陛下をお支えする我らは閣下をお守りするが使命。なれど閣下が己が道を走る一方、同じ道を行くものたちをお忘れになられてしまうのです。
どうか閣下には、才無く、不甲斐なき身であれど閣下と共に歩む者たちがいる事をどうか忘れないで欲しいのです。閣下の野望、大志は臣下皆の大志でもあります。どうか御理解を頂きたく存じます。』
アウグストは微笑を浮かべるとハンブルグの肩をしっかり掴み、こう答えた。
アウグスト
『そうであった。私は卿らのような優秀かつ仁義に溢れる者たちと共に歩んでいる事を私は忘れてしまっていた。我が人生最大の過ちであるな。二度とせぬ。』
クラウゼヴィッツが大広間に入って来た。気がついたアウグストはクラウゼヴィッツの方に向いた。
クラウゼヴィッツ
『閣下。貴族軍が艦隊を派遣しました。数二万。先鋒部隊であることは明白ですが、敵の指揮官が、バルトハルト・シュヴァルである事が判明いたしました。』
アウグスト
『バルトハルト・シュヴァル…死なずには惜しい男よ。ハンブルグ‼︎ゲオルグ‼︎直ちにバルトハルト艦隊を迎え撃て‼︎クラウゼヴィッツは全軍の統制を取れ!フランチェスカ、ザムエルスキは他の艦隊に召集を呼び掛けよ!出陣する‼︎皆、己が義務を果たせ‼︎』
提督一同
『はっ‼︎』
新光暦239年10月29日第二銀河内乱が幕を開けた…
そしてその頃、第一銀河では、タジム・クヴァシルヒ・ミシェル・フェデルことタクミ・F中将の第一艦隊が教国艦隊を相手に撤退戦を繰り広げていた…
英雄達は…違う道を歩む…