pso2仮想戦記二年前の戦争 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
かくして初陣を圧勝で飾った第一艦隊だったが、艦隊建設と、スサノオを姉妹艦である、艦隊旗艦守護衛士級のフル建造の為、ドック要員が足りなくなり、スサノオは帰港出来ず、戦闘で損傷した艦以外は、こうして宇宙に放り出されている。その陣容は、スサノオと無傷の戦艦四隻、駆逐艦八隻であった。それともう一隻全長7㎞にも及ぶドック艦である。これは今、スサノオを収容しており、スサノオの改修を行っていた。主な改造点は艦首レーザー主砲の砲門を増やすことである。砲門数は2倍の十二門七列の八十四門である。口径を狭め、高出力、連射性の高い新型砲を搭載する。他にも、後部に連装主砲を上部に追加する位であるが、艦首の改装は大掛かりの為、全自動の設備でも三日四日は掛かるのであった。その間にタクミはアークス本営に報告をする為に、単身船団に戻った。幕僚達はついて行くと言ったが、面倒になるから良いと言って留まらせた。
タクミの報告は単純なものであった。
敵艦隊を発見し、これを撃破し、補給路を防衛した…これだけである。
ウルクもただ頷き、予定を聞いただけだった。内容は…
『タクミはこれからどうするの?』
『人に会って、その後に艦隊に戻る事にします。』
『マトイさん?(ニヤニヤ)』
『ご想像に任せる。』
こんな感じである。そしてタクミは本営を後にした。全く、そんなじゃ無いと何度も言っているだろうと不満気だったが、目覚めた事も言って無かったし、心配でもあったから良い機会だろうと思ったのだろう。
『アフィンの話だとこの辺りで勤務しているはずなんだが…』
アフィンとはタクミの、同期であり、優秀なアークスでもある。現在では船団直衛の任に就いており、同じく船団直衛であるマトイの宿舎を聞き出したのだ。
『タクミ…?』
後ろから呼ぶ声がするので振り返ると
銀色に輝く、髪を持ち、ツインテールに結び、紅白で彩られた、特殊なデザインの服を着て、立っている少女が居た。
『タクミ!』
そう叫んだと思ったら飛びついてきた。蒸発してしまう。そう思いつつも、腕を彼女の背中に回し、抱き返した。
『ただいま』
『おかえり…良かった』
暫くして、二人は離れた。
『心配したんだよ。起きて直ぐに、艦隊勤務に就いたって聞いたから、フラフラなんじゃ無いかって。』
『ギリギリ平気だけど、また直ぐに艦隊に戻らないといけない。』
彼は続けて、こう言った。
『マトイ、食事に行きませんか?奢るよ?何が良いかな?』
『うん、でも大丈夫なの?』
『平気だよ。では行こうか?』
こうして四時間が過ぎた。ここで二人の端末が呼び出した。一方は艦隊に戻るように、もう一方は、周辺警備にである。
『時間になっちゃったね。』
『またこうして会える?』
『勿論、だけどもう少し、戦況が安定しない事にはね』
『安定させてくれるんでしょう?』
互いに微笑し、別れを告げて、それぞれの場所に戻った。彼は顔をしかめ、考え込んだ。彼は本営に一つの危険性を提示されていたのである。それはオラクル船団現与党がアークスの台頭を許さず、これを妨害し、組織、及び、船団防衛軍の戦力を大幅に縮小しようとしていたのだ。彼らの言い分は、アークスと言う軍組織が、政治の主導権を握り、軍閥政治にするつもりである。吾々はそれを許さず、組織を縮小させると言うものであった。はたから見れば、民主主義の基本概念を軍閥勢力より守り、軍事費用を削減し、それを民衆に均等に配るとつもりと思うだろうが、実態は彼らの私腹を肥やす腹つもり為であり、現政権の政調を乱し、彼らの不当な専横を邪魔せんとする、アークスが邪魔であった。その為、彼らは船団国防軍重職に自分の息のかかった者を入り込ませ、シンパを増やし、更に、野党の過半数迄、支配下に置き、アークスと対立していたのである。更に問題は、彼らの勢力は、防衛軍の四割に及び、勢力の輪は、船団内外に及んでおり、アークス主力の部隊を乗せた艦隊がとある惑星に寄った際、アークスが多数乗っていると言う理由だけで追い返される程であった。次第にアークス内でも、憤慨する声が上がり、政党勢力に天誅を下し、我らが、主権を握るべきという者も現れた。それはアークスとしてはそれをやる訳にもいかないがこのままでは船団の存続にも繋がる事態にもなる可能性が秘めていた為、自制する様に呼び掛けるだけになっていた。
『このまま行けば、内戦になる。』
現に船団直衛のマトイらが警備に頻繁に出されている時点でその兆しは大きくなっている以外にも何物でも無かった。
その為、タクミはこう言われていた。
『クルーと政府関係者に注意せよ』
クルーを疑いたくない。然し、不満を抱えていることは間違いないし、政治家達は間違いなくこちらの動きを読み、攻撃するか、こちらを引き込みに来るに違いない。彼はこの事態を防がねば成らない責任があった。
『少なくともアークスから攻撃する事は有るまい。だが事実上船団を、二分する戦いなんかやってみろ。ダーカーのゴミ虫共はここぞとばかりに、攻めて来るに違いないのだから。』
彼は、歩幅を狭め、半ば駆け足で帰路に着いた。なんにしても警戒せねば成らないし、タクミには政治など分からなかった。ただ彼は政治の概念は、最善の専制より、最悪の民主政が勝る。これだけである。専制というのは、政治の責任を民衆が選んだ為政者に罪をなすりつける事できる、これは専制の罪でもある。民主政は政治の不祥事は全て為政者を選んだ民衆の責任になる。これらの共通点は、為政者を、民衆が選ぶ事が出来ると言う点である。かれは民主政は政治をやるのも一人の人間では無く、民衆である事を考えた上で人間の尊厳と自由を守る事の出来る民主政を支持するのである。
『民主政は我々人間の尊厳と自由が保障されている。然し、専制はそうはいかない。言論と表現の自由が保障されなければ、人間は自分の意思を持たず、考えない生き物になってしまう。それに階級社会は、人間から搾取するのが基本概念であり、彼ら以外の人間は動物またはそれ以下の扱いをされる。これは人間が最もやってはいけない事だ。』
だが今、それは崩れている。表現と言論を司るマスメディアは公平さを無くし、その殆どが政治に加担し、そうでないものは弾劾され、民衆を洗脳し、不満を抑え続けている。これが今のオラクル船団の内情であった。遠からず、この船団は二つに分断され、血で洗う、内戦に突入するのだが、これを見越せない者は居なかった。この日、深遠なる闇との戦いから三ヶ月が過ぎようとしていたのであった。……………