pso2仮想戦記二年前の戦争 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
新光歴240年1月2日。
アウグストは遂に、首都ヴィサンチ・ノープルへ軍を進めた。然し、そこで待って居たのは深遠なる闇による周到な計画により配備された貴族艦隊と、当面復活してこないはずだったドラゴツィニン・カメン・ツメルキ要塞であった。更にアウグストは初戦10分で2万以上の艦艇を失う結果を招いてしまっていた…。
[ゲオルグ・ガラハウ上級大将 旗艦イラストリアス級艦隊旗艦型超大型戦艦アッシリア 艦橋]
ゲオルグ
『まずいな…初戦10分で2万以上は流石にまずい。』
幕僚
『提督、殿下が全提督にホログラム通信を行うようです。こちらに映します。』
ゲオルグ
『ああ、頼む。』
ゲオルグはそう言うと提督席から立ち、姿勢を正した。すると青白いホログラムが映し出され、アウグストや他の提督達のホログラムが映し出された。ゲオルグは敬礼をすると他の者もそれに習った。
アウグスト
『皆、無事のようだな。』
クラウゼウィッツ
『敵の要塞主砲は完全に使えるようですな。今入った配下からの情報によると、深淵なる闇をコアにして、要塞の全動力を賄っているようだ。要塞主砲の次の発射までの時間は冷却時間を含めてのチャージ時間は35分。』
レオポルド
『つまり、我々は後30分足らずに要塞主砲を無力化しなければまた一個艦隊クラスの損害を被るわけだ
フランチェスカ
『しかし、敵のシールドのせいでレーザーの類は効きません。ミサイルやレールガンを叩き込ませ様にも迎撃を掻い潜り、接近しなければ意味がありません。』
シューマッハ
『虎穴はいらずんば虎児を得ずと言うことさ。殿下、その任はこのハンブルグ・シューマッハが果たして見せましょうぞ!』
アウグスト
『そうか、ではシューマッハは要塞の肉薄部隊を率いて突撃しろ。クラウゼウィッツ、直ちにミサイル艦を集め戦隊を編成しろ。それをシューマッハが指揮を執る。』
クラウゼウィッツ
『はっ。してその間のシューマッハ艦隊の指揮は誰に任せましょう?』
フランシス
『では、それは私めが。』
ゲオルグ
『卿だけではちと手を焼くだろう。俺が半数を肩代わりしよう。』
シューマッハ
『では二人にお願いしよう。』
提督達が方針の確認をしている間に、敵方の動きがあったらしく、アッシリア艦内に警報が鳴り響いた。
レーダー手
『敵艦隊の発進を確認しました!左右両翼、中央にも敵艦隊が現れました‼︎敵は包囲体形を作ろうとしています‼︎敵艦隊中央にアインツヴェルン家のIFFを確認しました!』
アウグスト
『決まったな。全艦‼︎敵中央、アインツヴェルン艦隊を突破し、シューマッハミサイル戦隊の道を作るぞ!』
ホログラム通信が消え、ゲオルグは正面を見据えると配下の兵達に命令した。
ゲオルグ
『聞いたな?全艦中央に火力集中!左右両翼の艦隊が襲い掛かってくる前に仕留めるぞ!』
[ハンブルグ・シューマッハ上級大将 旗艦イラストリアス級艦隊旗艦型超大型戦艦シャムシュ 艦橋]
シューマッハ
『全艦、ミサイル戦隊に指一本触れさせるな!ガードを固めつつ、敵艦隊に強烈なアッパーを食らわしてやるんだ!』
その頃、左翼艦隊を率いるディートリッヒ元帥は艦載機隊と雷撃艇による第1攻撃隊を発艦させていた。
[ハンス・フォン・ディートリッヒ元帥 艦隊旗艦オーディン級艦隊旗艦型大型戦艦マラケシュ 艦橋]
ディートリッヒ
『やはり中央突破せざる得んだろうな。然し、いかに軟弱な貴族達の艦隊といえど後ろの要塞からの支援攻撃がある。そう簡単には抜かれまい。』
副官
『しかし、予想より早く中央突破に移りましたな。第一次攻撃隊は何とか間に合いますが、敵が態勢を立て直せば第二次攻撃隊は迎撃されるかもしれませんな。』
ディートリッヒ
『敵はこういった状態にも即応できる者たちばかりだ。仕方あるまいよ。でなければシュヴァーベン候が登用する訳があるまい。』
副官
『第二次攻撃隊は発艦準備は完了していますが、如何致しましょう?』
ディートリッヒ
『敵の兵は出来るだけ削いだ方が良さそうだからな。第二次攻撃隊も発艦させてくれ。バルトハルト大将にもそう伝えてくれ。』
[コータ・フォン・バルトハルト大将 艦隊旗艦オーディン級艦隊旗艦型大型戦艦 ダレン=ジャン]
バルトハルト
『中央は期待出来んからな、第二次攻撃隊全機全艇発艦‼︎同時に艦隊最大戦速!敵側面を火だるまにしてやるんだ‼︎』
アウグスト
『側面の守りを強化する!装甲の厚い戦艦は艦隊の側面に集中配備、その横に駆逐艦と砲艦は貼り付け!戦艦を盾にしながら、敵の両翼艦隊を迎え撃つ‼︎』
アウグスト軍の艦隊の戦艦は艦隊の盾になるべく敵に腹を見せ、その強力なシールドと装甲で守り、その盾から駆逐艦と砲艦が弾幕を展開していった。次第にディートリッヒが放った艦載機隊も落とされていった。
更にアウグスト軍の諸将達の働きもあり、次第に両翼は押し戻され、中央はみるみる数を減らし始めていた。そして遂に中央に穴が空き、シューマッハ率いるミサイル艦戦隊のミサイル攻撃がドラゴツィニン・カメン・ツメルキ(D.K.T)要塞の外壁を焼き始めた。
『D.K.T要塞 主砲用エネルギー生産反物質炉コア』
深淵なる闇
『喰らい付かれたか…。やはり、アインツヴェルンは使い物にならないね。』
『そうだね。この際だからアウグスト諸共さ、一気に吹っ飛ばしちゃおう‼︎』
『『そうしよう‼︎』』
この時、要塞の異変にクラウゼウィッツの旗艦に所属する分析士官が気がついた。彼は要塞の異常なエネルギーの上昇を見て取り、一大事であることを瞬時に理解した。
分析士官
『総参謀長‼︎敵要塞より高エネルギー反応‼︎異常な上昇数値を示しつつ尚も増大中‼︎』
クラウゼウィッツ
『そんな馬鹿な‼︎そんな事が…そんな事があり得るのか‼︎ええい!直ちに全艦隊に緊急警報発令‼︎急げ‼︎』
[フランシス艦隊]
フランシス
『艦内から見て天井方向に緊急退避‼︎』
[ゲオルグ艦隊]
ゲオルグ
『上だ‼︎急げ‼︎‼︎』
[シューマッハ艦隊]
シューマッハ
『射程に捉えたのに…!クソッ‼︎‼︎退避だー‼︎』
アウグスト軍は狼狽しつつも的確な退避行動等の対応を取っている一方。アウグスト軍の数倍狼狽している者たちがいた。
[貴族軍艦隊総旗艦兼アインツヴェルン家座乗艦
ソヴェリン]
貴族軍兵
『ご、ご主人様!要塞より高エネルギー反応‼︎本艦が軸線の中心です‼︎‼︎』
アインツヴェルン
『つ、通信を!我らの主人に繋げ‼︎』
豪華絢爛な環境の正面に禍々しい光景が映し出され、その中央に核に体が生まれている双子の片割れとその側に佇む片割れが映し出された。
アインツヴェルン
『我が君!我が艦隊の殆どが射線より出て居ませぬ、もう暫し、お待ち…を!…ガハッ‼︎』
アインツヴェルンは何者かに首を掴まれたように悶絶し始め、体が宙に浮き始めた。艦橋にいた将兵達は何が起きて居るのか全く想像が出来ないでいた。既にアインツヴェルンの目が血走り始めていた。そんな中双子は高い声をあげて笑っていた。
深淵なる闇
『ヘクター(アインツヴェルン)。君の退避を待って居るとアウグスト達に逃げられるんだよ。』
『それに、君をもう生かしておく必要は無いんだよ…主砲発射用意。』
双子の前に拳銃型コントローラーが降りて来た。そして要塞の何処かから電子アナウンスが流れた。
『声紋分析開始、声紋分析の結果、我らが主人と認識しました。主砲発射シークエンス開始、発射許可を願いします。』
深遠なる闇
『主砲発射を許可。最終セイフティ解除。』
『了解。最終セイフティ解除、発射準備完了。』
深淵なる闇
『さよなら、ヘクター。君はもう要らない。…発射!』
カチッ
引き金の鳴ると同時に要塞が獣のように吠えた、瞬間‼︎ドス黒い光が撃ち出され、その光は真っ直ぐアインツヴェルンに向かって行き、瞬く間に飲み込んでいった。本当のターゲットにされたアウグスト艦隊は間一髪、全艦の回避が間に合っていた為被害は無かった。
深遠なる闇
『…逃したか。最期まで役立たずとはね。』
『もう一撃くらいなら撃てそうだよ?』
『いや、もう間に合わないよ。迎えてあげようじゃないか?お望みどおり相手してあげよう。』
[アウグスト艦隊旗艦 イラストリアス]
アウグスト
『…近衛兵長!この場にいる全ダーク・ヒューマンの同胞に我が声を伝えよ!急げ‼︎』
近衛兵長
『両翼の敵艦隊にもですか?本艦の位置がバレますので問答無用で襲い掛かってくる可能性が恐れがありますが?』
アウグスト
『構わぬ!繋げよ‼︎』
通信士官
『元帥閣下!敵将アウグスト・フォン・シュヴァーベンが全ダーク・ヒューマン艦隊に一斉送信のバースト通信を行なっています!』
ディートリッヒ
『急ぎ、繋がるのだ!全将兵に聴こえる様に‼︎』
アウグスト
『全ダーク・ヒューマンの同志諸君‼︎今、卿らの棟梁と同胞が有無も言わさず消滅させられた。卿らが主人と、神と崇める存在は我らの生命などこれっぽっちも考えてはおらん!我らは所詮彼等の道具に過ぎんと言う事だ!
だが、しかし!私は、私達は人だ‼︎道具じゃない‼︎一人一人の名前がある‼︎権利がある‼︎個性がある‼︎守る物がある‼︎
人としての誇りがある‼︎‼︎‼︎‼︎
私は決して‼︎このまま家畜のまま人生を終わらせたくない‼︎だがその為には奴を…深遠なる闇を退ける必要がある。悔しいが私にはあれと戦うにはまだ足りない!だからこそ卿らの力を貸して欲しい‼︎命の為!守りたいものの為に‼︎』
アウグストは一呼吸を置くと通信機を収めた。辺りを見るとイラストリアスの艦橋に居る将兵は全員が敬礼を送っており、通信パネルにフランシス、シューマッハ、ゲオルグ、クラウゼウィッツ、レオパルド、フランチェスカ、ザムエルスキと言った大将達の他、他の将校達も敬礼を送っていた。
フランシス
『我々はアウグスト様と運命を共にする所存であります。残存艦艇三十余万、総将兵数約500万。改めてアウグスト様に、いえシュヴァーベン候に忠誠を誓います。』
アウグスト
『迷惑かけるなフランシス。皆も良いのか?』
シューマッハ
『私は閣下に救われました。死ぬ覚悟はとうに出来ております。』
ゲオルグ
『我らは貴方の盾、貴方の剣。この身果てるまでお側を離れませぬ。』
クラウゼウィッツ
『貴方には皇帝になっていただかなければ。でなければ私の悲願は叶いませぬ。その為に命を懸けているのです。全力でお支え致しますぞ!』
フランチェスカ
『我が王の為。例えヴァルハラに旅立とうとも後悔はございませんわ!』
レオポルド
『我らレオポルド高速艦隊、殿下の名が命あれば何処へでも駆けて行く所存。何処へでもお供つかまつる!』
ザムエルスキ
『私は殿下の盾になると決めました!貴方以外の人の元では戦いとうありません。これが最後の戦場になるのなら華々しく散ってみせましょうぞ‼︎』
アウグストは拳を握りしめ、嗚咽を噛み殺しながら答えた
アウグスト
『すまぬ…皆、私と共に駆けてくれ!』
兵士
『閣下。ディートリッヒ元帥より通信が入っております。パネルに写します!』
ディートリッヒ
『シュヴァーベン候。我らも貴方の軍門に加えていただきたい。我らは既に仕える君主もおらず、このまま生き残っても嬲り殺される位なら自分の正しいと思った事の為に戦いたいのです。』
バルトハルト
『我々は見て見たいのです。家畜としてでは無く人として我らが同胞が生きる世界を!』
フランシス
『閣下。総員の準備は出来ております。下知を頂戴したく存じます。』
アウグストは椅子から立ち上がると、腰に挿したカタナを抜刀した。そしてその刃先を要塞に向け、こう叫んだ。
アウグスト
『皆‼︎これより我らはかの者達より我らダーク・ヒューマンを解放する!目標、ダーカー!目標、深遠なる闇!我の通る道を阻むものは悉く刃のつゆにせよ!全艦‼︎突撃開始‼︎‼︎』
フランシス
『全艦隊突撃隊形‼︎殿下の…皇帝陛下の御前を阻むものを攻め滅ぼします!全艦対艦隊戦対白兵戦用意‼︎白兵要員は装甲服を装着し、甲板に待機!ダーカーは必ず侵食して来るはず。絶対に防ぐぞ‼︎』
『『『おおおおおおおおおおおお‼︎‼︎‼︎』』』
ダーク・ヒューマンの雄叫びが宇宙に響いていた。士気高揚。まさしく字の如くであった。対する深遠なる闇は己の眷属(ダーカー)達を呼び出し、それらをアウグスト達に向けて放っていた。
アウグスト
『全艦突撃!目標は要塞のスペースゲート。座礁しても構わん。どんな手を使っても要塞内に乗り込むのだ‼︎』
参謀
『近衛師団と装甲擲弾兵に上陸準備をさせます。』
アウグスト
『私の装甲服も用意してくれ。姉上が編んでくれたマントも忘れるな。』
参謀
『元帥閣下…いえ皇帝陛下御身自らお出ましになるのですか⁉︎あまりにも危険過ぎますぞ!』
アウグスト
『だから行くのだ。今もこうして居る間に多くの将兵が戦っている。そして要塞内にも私に共感した兵達が立ち上がっている頃だ。指揮官が後ろに居ては申し訳ないと思わんか?(奴との決着もつけたいところだしな)
参謀
『……ではご用意致します。』
アウグストは無言で頷くとまた正面を向いた。パネルには艦隊の眼の前までにダーカー達が迫っている事が映し出されていた。アウグストは席から立ち上がり、右腕を大きく横に振った。それは薙ぎ払えという意味だった。
アウグスト
『全艦!撃ち方始め‼︎』
全艦が一斉に砲火を開いた。ダーカー達は激しい弾幕を掻い潜り、おもいおもいの獲物(艦艇)に着陸するが、甲板に待機していた装甲擲弾兵のソードか専用の戦斧に真っ二つに割られたり、フォースで焼き尽くされたり、氷漬けにされたり、蜂の巣にされたりした。だが同様に装甲服に身を包んだダーク・ヒューマンの老若男女が、ダーカーに串刺しにされたり、食い殺されたり、抉られたり、あるいは侵食されそのまま生き絶えたりと正しく多くの艦が地獄絵図になった。
そんな中、旗艦イラストリアスは巨大な船体からは想像できない速度で戦場を抜け、向かってくるレーザーを跳ね返し、遂に要塞にたどり着こうとしていた。
アウグスト
『このままスペース・ゲートに突っ込め‼︎』
通信士官
『陛下!本艦直上に艦艇クラスのダーカーが急接近、数2万!』
アウグスト
『撃ち落とせ‼︎』
通信士官
『手遅れです!至近弾来ます‼︎』
イラストリアスにダーカーの砲撃が襲いかかった。強固な装甲とシールドを持ったイラストリアスはともかく、その随伴の艦艇は次々と撃沈していった。イラストリアス艦内は衝撃で大きく揺れ動き老若男女の悲鳴が艦橋内に響いた。更に各通信兵に被害状況が報告され、混乱の極みに陥った。
しかしそこに獅子の咆哮が轟いた!
アウグスト
『狼狽えるでない我が兵達よ‼︎あれだけの砲火の中、少なくとも我と共にいる卿らは誰一人屍になる事なくこうして生きているではないか‼︎この戦はもはや勝った!天は我らに味方した‼︎勝鬨をあげよ‼︎この戦は勝ったのだ‼︎‼︎』
その次の瞬間、イラストリアス直上にまたワープアウトする物体が現れた。しかし、それはダーカーではなく艦隊だった。先頭を航行するのはマシヤ・フォン・ケベック中将の旗艦オーディンであった。
ケベック
『陛下!マシヤ・フォン・ケベック中将麾下地方平定軍ただいま帰陣致しました。道中改めて我らにつくと表明した地方貴族の同胞も伴い、その数約六万今一度陛下に忠義を尽くす所存にございます‼︎』
アウグスト
『ケベック。よく戻って来てくれた!早速だが余の背中は卿に任せたぞ!わたしはこのままスペース・ゲートに行く!』
アウグストは多くの忠臣に守られ、遂に要塞のスペース・ゲートにたどり着かんとして居た。しかしそこにも多数の砲火がイラストリアスを食い止めるべく火を噴いた。
アウグスト
『このまま乗り上げろ‼︎乗り上げたと同時に上陸‼︎』
数多の鋼鉄の部品がへし折れ、崩れる音を立てて、スペース・ゲートを瓦礫の山に変えながら総旗艦イラストリアスは突入した‼︎
抜刀‼︎
アウグストは己の剣を鞘から引き離す。同時に装甲服に身を包む騎士たちが槍と剣、そして戦斧を目の前に捧げ、幾千の兵士達は一斉に跳躍した‼︎
アウグスト
『Bitte schreibe‼︎‼︎(かかれ‼︎‼︎)』
帝国近衛装甲擲弾兵軍団
『おおおおおおおおおおおおお‼︎‼︎‼︎‼︎』
エルダー・模造体
『者共かかれ‼︎』
ダーカーの群れ
『ウオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎』
両者は激しくぶつかり合った、無数のダーカーに挑むは一騎当千の数千の騎士達。その剣は、その槍は、その斧は、只々、主君の為にダーカーの血に染まり、ダーカーの牙は、釜は、手は、爪は、自らを生み出した創造主の為にダーク・ヒューマン…いや未来の帝国人の血に染まり、一方の主君は倒すべきものに身1つ剣を振り、追迫り、一方は全能の神の如く玉座に座り、自らを断つべく希望をその手で殺し、絶望を与えんと爪を研いだ。
アウグストは阻むダーカーやダーク・ファルスの模造体を悉く切り捨てた。生前の頃よりどのアークスを凌いだ剣の技は今も健在だった。ダーカーとダーク・ファルスは太刀筋を見極められず一刀両断されていく。
アウグスト
『何処だ‼︎何処だ、深淵なる闇‼︎お前だけは決して俺は生かしておかんと決めている‼︎出てこい‼︎』
ダーカー
『イカセルナ‼︎ココデクイトメル‼︎‼︎』
アウグスト
『退ケェェェェェェェェェ‼︎‼︎』
アウグストは剣を振りまわした。その度に多くのダーカーが命を散らした。近衛装甲擲弾兵軍団の活躍もあってか、アウグストの周りにはダーカーが少なくなって居た。しかしそれはアウグストに構ってやれる兵がいないという事であった。正しくこの皇帝になる男の正念場であった。
アウグストは狭い通路を走っていった。その途中でダーカーや、貴族側のダーク・ヒューマンの兵が襲い掛かってきたが、クラウゼウィッツが放っていた密偵部隊やそれに扇動された貴族軍内の裏切り者達がそれらを抑えるべく挙兵し、正しく要塞内は地獄絵図であった。アウグストの白い装甲服は血みどろに染まった。しかしこれは全て返り血であった。しかしこれ程の犠牲を払ったのにも関わらず、この狂気は終わらない。何故なら深淵なる闇が生き続けているからである
アウグスト
『制御コア…。………見つけたぞ!双子!いや深遠なる闇‼︎お前の死に場所をくれてやりに来たぞ!』
深遠なる闇
『遅かったね。もっと早く来ると思っていたよ。』
『君達はまだ僕らの手の内にある。だから早く動いてくれないと困るんだよね?お腹空くし。』
アウグスト
『ならば二度と腹が減らぬようにしてくれよう!姿を表せ‼︎あの悪趣味な花の怪物ではなく、お前が本当に復讐したがっている男の姿に‼︎‼︎』
深遠なる闇
『『粋がりあって若僧が‼︎良いだろう見せてやろう‼︎‼︎あの男の姿を‼︎』』
深遠なる闇は、双子の姿からある男の姿に変わった。その姿をみたアウグストは笑みと恐怖を抱いた。
アウグスト
『本当にあの男の姿になるとはな…俺なら兎も角、オラクルの、特にタクミ・F中将(昇進を知らない)が見ればどれ程怒り狂う事やら。』
深遠なる闇
『この男さえ居なければ、余は宇宙を手に入れて居たものを、この男が全て台無しにした‼︎だが皮肉にもこの男は死に際にフォトンを絶った。そのお陰でこの体を支配できる‼︎フォトナーの直系の肉体を‼︎この肉体で全ての銀河を支配する‼︎そしてこの男の子孫の命を絶ってやる、それが余の復讐よ‼︎』
深遠なる闇が言い終わった瞬間にアウグストの剣が眉間目掛けて突進してくる。それを深遠なる闇はスレスレで回避する。
抜刀‼︎
深遠なる闇も、腰に下げて居たガンスラッシュを引き抜く、それはアークスの士官が使う事が出来るガンスラッシュ『ナーゲリング』であった。しかし形が完全に剣の柄の形になっており、そこについて居たであろう拳銃は取り外されて居た。そしてその柄からドス黒いネガフォトンのレーザーが伸びる‼︎
二人は切り結んだ‼︎何合も打ち合う‼︎もう常人であれば何十、何百と倒れたであろう剣の残像がその場に光っては消えた。
踊るような二人の動きは見る者が居れば間違い無く魅了されたであろう。しかし殺意しか存在しないこの戦場には余りにも不釣り合いな美しさと狂気が確かにあった。アウグストは力の限り剣を振るう。しかし深遠なる闇もまた強大な力と殺意に身を任せ、剣を振った。そして鉄を斬る音がその場に響いた。アウグストの剣が正しく刃の根元から断ち切られてしまったのだ。絶体絶命‼︎深遠なる闇のレーザーの刃が迫る‼︎
しかし次に聞こえるのは肉が焼き切れる音では無かった。レーザーがぶつかり合う音だった。アウグストの剣、正確には残った柄からは青色の光が出ていた。それはアークスの、つまりフォトンを使えるものしか出せない色をしたフォトンの光だった。
深遠なる闇
『何故だ…記憶や元になった人格は兎も角、貴様の肉体と力は余の物、少量とは言えど体内にフォトンを宿しているだけのお前が何故それを使える‼︎』
アウグストにも詳しい事は分からなかった。しかしアウグストは剣が折れた時こう願った。『力が欲しい‼︎この闇を打ち払う力を‼︎』とそしてフォトンが答えた。アウグストは口を開いた。
アウグスト
『確かに貴様の言う通り、肉体と力はお前に授けられたものだ。紛い物だ。だが1つわかる事がある。それは俺が、私が!オラクル帝国軍大元帥、オラドニア(オラクルの旧称)帝国皇帝アウグスト・フォン・シュヴァーベンである事だ‼︎その力は!意志は‼︎フォトンと共にある‼︎‼︎』
アウグストは青の光刃の剣を構え直す。深遠なる闇もまた、黒の光刃の剣を構え直した。
斬撃‼︎二人はまた切り結ぶ。レーザーの接触音がアウグストの耳をつんざく、しかしアウグストは力を入れ、深遠なる闇を押し戻す。その力は正しくネガフォトンの力だけでは到底出ない力だった。正しくアウグストは正と悪の如く存在するフォトンとネガフォトンをコントロールしていた。そう、正しく二百数十年の時を経て、オラクルの英雄が蘇った事を深遠なる闇は感じ取った。
深遠なる闇
『貴様らオラクル人はいつもそうだ…絶えず絶望を与えても、ほんの僅かな希望とフォトンだけでそれを覆そうとする。貴様らは…いつも、いつも余の邪魔を、煩わせる‼︎その存在そのものが万死に値する‼︎‼︎』
アウグスト
『………。』
深遠なる闇をを見つめるアウグスト瞳は正しく光を放っていた。この翡翠の髪の色をした青目の青年に怒りを露わにした深遠なる闇は勢いをつけて突進してきた。その剣は正しくアウグストの首を狙っていた。
しかしアウグストは眼を閉じた。そして剣を構えた。そんなアウグストにフォトンとネガフォトンは語り掛けた。
(そのまま真っ直ぐ振り下ろすんだ。)
アウグスト
『ぬおおおおおああああああああ‼︎‼︎』
アウグストは真っ直ぐ剣を振り下ろした‼︎それは深遠なる闇の胸に当たった。深遠なる闇は胸にフォトンの切り傷を患った。
そのまま蹌踉めきながら深遠なる闇は下がっていった。
深遠なる闇
『クッ…ククク…アハハ、アハハハハハハ‼︎凄いね‼︎君がこんな事が出来るとはね!でももう遅い‼︎』
深遠なる闇は元の双子の姿に戻った。
深遠なる闇
『この要塞にいる間多くのエネルギーを得られた。君にはやられたが、次に会った時にはあっという間に殺せるだけの力は手に入った。』
アウグスト
『‼︎…まさか、この戦いは最初からそのつもりだったのか‼︎全てお前のエネルギーのためにあれだけの犠牲を出させたのか‼︎』
深遠なる闇
『そうだよ。今の君にやられるに至るこの決闘は完全に想定外だったけど、君はよく働いたよ。実に多くの憎悪とネガフォトンがこの銀河に溢れ、僕はたらふくそれを食べれた。この銀河に用は無い。僕は向こうの銀河、そう君達が第四銀河と呼ばれるダーカーの銀河に戻るとしよう。手の内にある以上君達はいつでも僕等は殺せる。』
『でもその時じゃ無い。せいぜい殺しあってくれたまえ。同じオラクル人同士、君達の宿命の戦いは必ず起こる。君は彼らが許せないし、向こうも君と戦わねばならない事を理解している。その時に、丸ごと頂くとしよう』
『『またね。コケ頭のお坊っちゃんw』』
深遠なる闇は次元の玄関を作り出し、そこに消えていった。同時にその場にいたダーカーやダーク・ファルス達も消え、アウグスト達だけが残された。
アウグスト
『次会った時は徹底的に殺すと言う事だろう…そしてお前は一瞬負けを認めた。これで分かった。お前にはもう後がない事が…次は殺せる‼︎だがその前にオラクルの者達だ。我らの民は決してオラクルを許さない。俺自身も、オラクルから銀河を奪いたい。その為には奴を倒さねばならない。お前もそう思っているのだろうか?タクミ・F、いやタジム・クヴァシルヒ・ミシェル・フェデル。フェデル王朝の末裔。お前を至尊の冠から叩き落とした男はここにいるぞ‼︎もう一度姿を表せ‼︎俺に見せてみろ、今のオラクルが生き残るに値するのかを!』
その後、アウグストは首都星ヴィサンチ・ノープルに降り立つ。そこでアウグストはオラドニア銀河帝国の建国と自身が初代皇帝に即位する事を宣言する。
『ジーク・カイザー‼︎ジーク・ノイエ・ライヒ‼︎』の叫びは第2銀河全土に轟いた。新光歴240年1月4日。オラクルの深遠なる闇封印戦より一周年を迎えるまであと一月を残す今日、オラドニア銀河帝国皇帝、アウグスト・フォン・シュヴァーベンは第2銀河内の全争乱が終結した事を宣言した!第三銀河内戦がまだ終わってないこの日に内乱が終わった事は後に帝国にとって栄光の一ヶ月になり、オラクルにとって最悪の一ヶ月になる事になるのだが、それはまだ後の話である。そして、オラクルはタクミ・F大将麾下のオラクル軍遠征軍団に物語の視点が映るのである。一人の英雄は全ての希望を力にし、勝利を納めた。もう一人の英雄は正しく全てを超え、真実を知る事になる。