pso2仮想戦記二年前の戦争   作:オラニエ公ジャン・バルジャン

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39話 オラクルより出でし者

無限に広がる虚空の中に無数の光が煌めいた。そこには巨大な鉄の塊が沢山その光から飛び出てきた。それは艦隊がワープアウトしたのだ。先頭を行く巨大な長方形の船体を持った水色の戦艦が他の艦艇を導くように進んでいく。その艦橋にまだ二十歳を少し過ぎたくらいの若者が腕を組み、自分の下のフロアで行き来する人々の気配を感じながらただ前を見つめていた。淡く青色に光る収まりがつかない黒色の髪の毛を持ち、顔は全体的に平たいが目や鼻はしっかりした堀があり、数世紀前であれば間違いなく美男子であろう顔付きをしたこの若い大将が、takumi・F大将である。本名はタジム・クヴァシルヒ・ミシェル(M)・フェデル、かつて栄華を誇ったオラクル第二帝政フェデル王朝本家の末裔である。彼はアークスでもあり、皇族でもあり、提督でもあり、また一人の恋人でもあった。そんな彼はただ前を見つめていた。この真空の闇の中に光る無数の星々を見ながら一人溜息を吐いき、そして力を抜きながら呟いた。

 

タクミ

『…三ヶ月で国に帰れればいいが、そうは行かないのだろうな〜。』

 

されど、帰らなければならない。祖国オラクル船団(他国からはオラクル共和国と言われることもある)は一月ほど前に大規模な遠征を展開した。総出撃艦艇数約百万隻、総兵力二千万将兵、内帰還兵力は艦艇約三十万隻、残存兵力約一千万(内健在兵力は四百万弱)という大敗北を期したのにも関わらず、事後同盟の参戦義務のない戦争に加担したオラクルにいつ、ダーカー、ダーク・ヒューマンが攻めて来るかわからないからである。

 

しかしタクミが向かう第三銀河は2つの勢力に二分され、いつ終わるか知らぬ血みどろの戦いを繰り広げて居たのである。1つは、オラキオ王国。一言にいってしまえば騎士の納める巨大星間王国である。その後継争いに強引な手法で第2皇子を追いやった第一皇子が支配する力のある者達こそ正義と称える国である。以前オラクルに工作員を送り込み、オラクルの監視、及び研究を行っていた。

 

1つはグラール太陽系及び星間植民地星系連合共和国。グラール太陽系を軸に数多の星系に進出した新興の星間民主主義国家である。数年前、このグラール太陽系はSEEDと呼ばれる宇宙生物の脅威を退けたばかりである。無数の犠牲を払った末、グラール太陽系は勝利した。それ以前は、グラール太陽系の三惑星パルム、モトゥブ、ニューデイズに住まうヒューマン、キャスト、ビースト、ニューマンがグラール太陽系やその他星系をまたにかけ百年近くの戦争を繰り広げたという過去がある。そんな国に約束された王位を追われ、祖国及び王位奪還を誓う第二皇子派がグラール共和国に助力を求め、銀河1つに及ぶ、王位継承戦争をしているのである。この2つの勢力が戦争を始めて既に3年の月日が経っていた。

 

しかし遂に三年の膠着状態は崩れ、オラキオ軍はグラール星系に迫ったのである。グラール評議会は満場一致でオラクルに救援を依頼する事を決め、オラクルも国家最高戦力に匹敵する戦力を派兵する事に相成ったのである。

 

タクミ

『その最高戦力の殆どが実は心配ばっかりの師団と大隊で混成されたお遊戯集団だと知ればどれ程落胆されることやら……ハァ〜…。』

 

この男の溜息が力なく口から漏れて、無に消えた。

 

その後ろに銀髪のツインテールをした美少女が後ろに立っていた。

 

マトイ

『各艦隊司令官が集合しました。直ぐに軍議を行いたいとの事です。』

 

タクミ

『分かった。直ぐにブリッジに上がってくれるように伝えてくれ守護衛士(ガーディアン)殿。』

 

マトイ

『副官で構いません。提督、いえ大提督。(大提督とはオラクル海軍において大将以上の提督に与えられる特別階級である。現時点ではタクミの他、ジェームズ・ネルソン元帥、セルゲイ退役元帥の合わせて三人しか名乗れる者は居ないが、以下の2名は既に元帥職に就いている、又は退役しているので実質タクミだけである。)』

 

マトイはタクミと同じくアークスの中でトップクラスの者に与えられる称号である守護衛士を持つ者であり、仲間でもあり、副官でもあり、恋人でもあった。この男女は互いに支え合い、共に生きようと誓っていたのである。

 

ハッチの開く音が聞こえ、タクミは振り返ると八人の提督が入ってきていた。

 

右から元第21艦隊司令官のハルヨシ・キダ中将、元第12艦隊分艦隊司令官チェンバレン中将。及び分艦隊司令官を務める少将6名がブリッジに入ってきた。第三銀河の派兵が終わればこの両中将の元に少将を三人ずつ派遣し、第21艦隊と第12艦隊を再編しようと艦隊司令部が考えて居たので、この際という事でタクミの元に派遣されたのである。

 

キダ

『大提督、お待たせ致しました。キダ、チェンバレン中将以下少将6名出頭致しました。』

 

タクミ

『よく来てくれました。早速ですが、大提督権限で第12艦隊と第21艦隊を再編します。各少将は両名の指示に従って行動するように。』

 

少将達

『はっ!』(少将たちは直立不動の姿勢で敬礼した)

 

タクミ

『我々はこれより第三回廊に侵入し、第三銀河に入ります。回廊内をジャンプドライブで航行出来れば楽なんですが、これを見てもらうと分かるように』

 

タクミがパネルを起動すると、第三回廊の図が表示された。そこには重力磁場や暗黒ガス帯が入り組んで存在している事を表していた。

 

タクミ

『我が国に残されていた星図も最新のものではない事もあり、いざジャンプしたらあらぬ方向に飛ばされる危険性が高く、我々は時間の短縮が出来ない事が分かりました。)

 

チェンバレン

『かと言って通常航行で行けばこの回廊を抜けるには4日は掛かる。我々にはそんな時間は残されては居ないという事ですな?大提督。』

 

タクミ

『左様。そこで回廊内の詳しいデータを迅速に採取し、再度、ジャンプ可能なナビデータの製作を行うべく、強行偵察型a.i.s三型を送り込もうかと思っています。』

 

諸将から声が漏れた。

少将1

『三型の強行偵察型か…。』

 

少将2

『確かにあれなら迅速かつ正確な航路作成が行動可能だ。』

 

キダ

『しかし、パイロット達がなんと言うでしょうか?2日間もあの狭いコックピットの中に二人。しかも機体はピーキーで安全性が保証されない実験機、聞けば廃棄処分同然の評価をされたとか、オマケにいつ目の前に敵艦隊が現れるか判らない中、快く引き受けてくれる者がいるでしょうか?』

 

タクミ

『だからこれについては専門家を使う事にしました。入って来てくれ。』

 

皆の前に二人のパイロットが現れた。一人は体つきの良いヒューマンの男ともう一人は細身の肌黒いニューマンの男だった。

 

アジス(体つきを良い方)

『第四航空師団のアジス中尉であります。』

 

マチェス(細身の黒人の方)

『同じくマチェス中尉であります。』

 

タクミ

『この二人はa.i.s三型強行偵察型のテストパイロットチームのリーダーで、三型の機動プロセスやデータ処理能力調整に一役買っていたんだ。だから今回はこの二人に任せようと思う。』

 

チェンバレン

『それであれば小官達の心配は杞憂で済みそうですな。しかし、危険な任務であることは変わりありません。そこでこの両人に特別配給を受けさせては?』

 

タクミ

『そりゃあ良い!仕事に見合った対価は必要だからね!』

 

キダ

『酒保を開放する。任務に必要な日常品や食糧を必要な分のみだが好きな物を持って行くと良い。』

 

アジス・マチェス

『はっ!感謝致します、大提督‼︎』

 

数時間後、旗艦金剛に繋留されたa.i.s三型強行偵察型に二人のパイロットが乗り込んだ。三型に大型の駆逐艦サイズのブースターに大口径戦艦クラスの中性子フォトン・レーザーカノン二門、大型クラスターミサイル他各種中型、小型ミサイルコンテナ、対空フォトン・レーザー四門、大型レドーム、航路作成用支援マシナリーO2、そして駆逐艦クラスのワープドライブが搭載されたまるで一種の駆逐艦の様な機械の塊の中央に専用の耐G、急加速による本体空中分解対策用の増加装甲が施されたa.i.sが固定されていた。

 

そのa.i.sの背部から二人のパイロットが乗り込んだ。

 

アジス

『マチェス!O2が航路作成中にセンサーブイを投下するのは無理だって言ってるぞ!』

 

マチェス

『しょうがねぇよ!O2本来の性能を引き出してもこいつの制御には限界がある。そこは俺たちがやるしかない、時限設置式の設定を書き換える。センサーブイの接続を確認してくれ!』

 

アジス

『よし!センサーブイは問題ない。ワープドライブ、各種武装良し。出撃準備完了!頼むぜ相棒(O2)、俺たちが艦隊に帰れるかはお前にかかってるんだからな!』

 

O2は機械音を鳴らして威勢良く返事をした。

 

アジス

『管制コントロール、こちらアジス中尉。各種武装弾薬十分。ワープドライブ、レドーム問題無し、加速プロセス最終セイフティ解除確認。全ブースターノズル稼働率120%。三型強行偵察型発進準備よし!命令を待つ。』

 

女性管制官

『了解中尉。準備加速を開始して下さい。一分後、第一加速を開始、本艦の繋留ケーブルを外して下さい。』

 

タクミ

『アジス、マチェス両中尉。危険な任務だが私は君達ならやり遂げられると信じている。それと開発部より強行偵察型のコールサインが届いた。ライトニング。これよりa.i.s三型強行偵察型のコールネームはライトニングだ。ではライトニング1、発進せよ‼︎』

 

マチェス

『ライトニング1了解。第一加速開始!金剛の艦首より数百メートル前に出る。』

 

ライトニングが徐々に加速しながら金剛の艦首の前に出て行く。そこより数百メートル先になった頃には第一加速の最大速度に達し、ケーブルも伸びきって居た。

 

女性管制官

『ライトニング1GO‼︎』

 

女性管制官の掛け声と共にライトニングは繋留ケーブルを抜き、一気に加速し瞬く間に見えなくなった。

 

女性管制官

『ライトニング1第二加速に移行。30分後には第三回廊に侵入します。出口までの予想到着時間は二日後のマルマル・マルマルです。』

 

タクミ

『フォトンと共にあらん事を…。』

 

ライトニングは加速し続け、遂に第三回郎に入った。パイロット達は目に映る景色を見て、目を疑ったと言う。それは漆黒の真空の中に暗黒ガスや放電帯がありとあらゆる所にあり、正しく獣道という方が正しく危険な航路であり、更に重力地帯により航行可能航路が入り組んでいるという魔境であったが、二人は宇宙の神秘と言うものに触れていてそれどころではなかった。

 

アジス

『マチェス見てみろよ。こんな宇宙の危険をてんこ盛りにした回廊を俺たちは進むのか?』

 

マチェス

『命令だからな。それにしても神秘的な景色だ。O2とレドームのお陰で最新航路作成とそれに伴った自動航法のお陰でこんな景色が見れるが、そうじゃなかったら気でも狂いそうだ。』

 

アジス

『おっ!そうだ忘れてた。おいマチェス!』

 

マチェスが振り返るとアジスが葉巻を手渡してきた。

 

アジス

『ギョーフ産の上等な葉巻だ。軍艦内だと排気が厳しいからな。士官用の物がたくさん残ってた。』

 

マチェス

『ギョーフか!久しく吸ってなかったな、下士官の頃少し贅沢しようと思って買ったら美味かったが財布に響いて彼女に説教されたっけ。』

 

アジス

『感謝しろよ?何時もなら彼女にお前はすぐ目を離すと吸い出すから止めてくれって言われてるが、まさかのギョーフ産の葉巻にこんな命懸けの任務ときたもんだ。吸わなきゃやってらんないぜ。』

 

マチェス

『そう言うお前さんもガキと嫁さんの目が厳しいから吸えなくなったクチだったなwありがたく頂戴するぜ。』

 

その時、O2が高い機械音を上げて二人に話しかけてきた。

 

マチェス

『どうしたO2!問題か?』

 

O2は今度は明るい機械音を鳴らし、コクピット内の機器の二本のロボアームを伸ばすと、火をつけた。

 

アジス

『成る程、火を貸してくれたみたいだ。サンキューO2!』

 

二人は暫く葉巻を吹かしながら景色と計器を見ながら談笑していた。その間に二人は交代で食事と睡眠を取りながら、任務を遂行した。そして遂に、回廊の出口に到着したのだ。道中、特に何も起こらなかったので二人は少し退屈していたと言う。

 

アジス

『マチェス、管制コントロールに通信を入れてくれ。我、新大陸ヲ発見セリ、てな。』

 

マチェス

『了解、管制コントロールへライトニング1から愛を込めて送る。我、新大陸ヲ発見セリ。』

 

女性管制官

『こちら、管制コントロール。確かに受け取りました。ライトニング1はその場で待機せよ。本艦隊は回廊の中間地点を航行中。六時間後にはその周辺にワープ予定。』

 

マチェス

『了解、ライトニング1アウト……コントロール!コントロール!緊急連絡‼︎』

 

女性管制官

『ライトニング1どうしたの?状況を教えて下さい。』

 

マチェス

『レーダーにワープアウト反応!数は20、駆逐艦と巡航艦クラス。画像を送る。識別を要求する‼︎』

 

女性管制官

『了解!ライトニング1待機して下さい。ブリッジより大提督以下作戦指揮官に伝達、至急ブリッジにお越し下さい。繰り返します、至急ブリッジにお越し下さい。』

 

数分後、タクミ以下各作戦指揮官がブリッジに到着し、ライトニング1より送られた、画像を吟味の始めた。

 

キダ

『見たところトラップ設置艦みたいですな。巡航艦のあの両舷の球体は恐らく重力井戸発生装置(ジャンプしようとする艦艇を重力を発生させて妨害する装置)でしょう。』

 

タクミ

『つまりミニサイズのブラックホール搭載艦だな。うちやお隣さん(第2銀河)では実用試験認可待ちなのに、向こうはもう前線に出してくるのか。オマケに駆逐艦は対艦用重機雷散布艦ときた。もしこのままワープアウトしたら…勿論。』

 

チェンバレン

『みんなまとめてローストビーフですな。老いぼれの肉など誰も食べんでしょうがの。』

 

マトイ

『付近の宙域及び回廊内にセンサーと機雷を撒いている見たいですね。多分手前でジャンプしても、引っかかっちゃうかも…』

 

タクミ

『…ライトニング1。敵の戦隊に対し、奇襲攻撃を掛ける事は可能か?』

 

その場にいた全員がタクミの顔を見た。当然だろう。孤立している味方に隠れるのを辞めて、その場で暴れろと言っているのだから、正しく遠回りの死刑宣告に等しかった。しかし、この二人のパイロットは…

 

アジス『ライトニングはあんなウスノロに追いつかれる事は有りません。充分翻弄できます‼︎』

 

マチェス

『本機の武装は全て、機動戦仕様でセッティングされております。以下に小回りの効く駆逐艦であろうとコッチとは次元が違います。一気に沈めて見せます!』

 

タクミ

『ライトニング1、すまない。直ぐに我々も飛ぶ。恐らくセンサーと機雷を管理しているのはあのボールを抱えた巡航艦だ。あれを沈めれば我々は安全に航行できる。』

 

マトイ

『タクミ、本当にやらせるの?危険過ぎるよ!』

 

タクミ

『だがやってもらわなければならない。彼らを信じよう。』

 

アジス

『では早速取り掛かりますアウト。』

 

アジスは通信を切ると、直ぐに機体のチェックと、プロペラントタンクの残り燃料残量を確認を始めた。マチェスも、武装の再点検と、各ミサイル発射制御をO2に覚えさせ、戦術プログラムを製作し始めていた。

 

アジス

『必要分の燃料を機体に搭載した。デッドウェイトのプロペラントタンクは切り離すぞ。ミサイルポッドも残弾が切れたと同時に切り離すように設定しておけば戦えば戦う程こいつの逃げ足は速くなる。』

 

マチェス

『マルチロック機構のチェック良し。各フォトンレーザー砲動作良し。ミサイル各種弾頭準備良し。』

 

アジス

『行くぞマチェス、飛ばせ‼︎』

 

マチェス

『おうよ‼︎』

 

マチェスは自分の右側の計器に付いているレバーを押し込むと、ライトニングのブースターユニットが一斉に火がついた。瞬間一気に機体は加速し、敵艦に突っ込んでいった。敵艦がライトニングに気づいた時には既に遅く、陣形を整える前に各艦が対空射撃を始めても既にライトニングは撃沈コースに入っていた。

 

マチェス

『先ずはそこの駆逐艦だ!主砲発射!』

 

ライトニングの大口径ロング・フォトン・レーザー主砲が火を噴くと、砲門から青味が掛かった緑色の太い光線が敵の駆逐艦目掛けて飛んでいった。

 

大きな爆発が起こり、駆逐艦は粉微塵になった。

 

マチェス

『ライトニング1一隻撃沈!』

 

アジス

『後ろにもう一匹いるぞ!O2、四番のミサイルポッドを開け!全弾発射‼︎』

 

甲高い機械音をO2が鳴らすと一つのミサイルポッドのハッチが開き、ライトニングの後方にいる駆逐艦目掛けて百数十のミサイルが飛んでいった。

駆逐艦がフレアと対空砲火を放ちミサイルを撃ち落とすが、ミサイルは無誘導の広範囲を焼き払うタイプの弾頭を装填していた為か、対空砲火が余計ミサイルの誘爆を誘発し、哀れこの駆逐艦も消滅した。

 

マチェス

『もう一隻だ!アジス、大型レーザー・サーベルを使おう!ハハハ!良いぞ、ライトニングはゴーストファイターなんかじゃない‼︎評価試験官の能無どもめ!こいつは鉄の棺桶なんかじゃない‼︎』

 

マチェスはライトニングに与えられた評価結果に不満を覚えており、再評価と、量産許可を直訴した結果があり、それをずっと引きずっているのだ。

 

アジス

『熱くなるなよマチェス。レーザー・ソード起動!さぁ真っ二つにしてやるぜ‼︎喰らいやがれ‼︎』

 

機体の下部に取り付けられた二機のクローの中に収納されている大型のレーザー・フォトン・サーベルを起動するとライトニングは駆逐艦を三枚におろしてしまった。そしてアジスは機体の操縦桿を巡航艦に向け、機体を向かわせた。

 

途中に砲火に曝され、機体に何発かのミサイルとレーザーが当たったが強硬な装甲と、偏向シールドのお陰で機体は無傷だった。(しかし振動は防げないのでパイロット達は少なからず揺らされたり、計器に頭をぶつけたりはした。

 

マチェス

『イテテ…何しやがる!このヤロー、これでも喰らえや‼︎』

 

マチェスが引き金を引くと、主砲が発射され巡航艦に致命傷を与えたが撃沈は出来なかった。

 

アジス

『チッ!巡航艦のくせに戦艦クラスの偏向シールド持ちかよ。もう一発…』

 

しかしその瞬間機体の後部が爆発した。ライトニングのブースターユニットに敵のミサイルが当たったのだ。勿論自動制御の対空レーザーが発射されていたが、敵が広範囲爆撃用の弾頭に切り替えて使用していたのだろう。つまるところさっきのお返しという事だ

 

マチェス

『偏向シールドと対空砲火の死角を突かれた!メインブースターユニットの一番と四番が損傷‼︎爆発する前に二機をパージする‼︎クソ‼︎お陰で重量をカバー出来ない‼︎』

 

アジス

『ミサイルを全弾ばら撒いて、ポッドを外そう!ある程度は軽くなる筈だ‼O2、全ミサイル︎、近接信管で発射‼︎』

 

数百発のミサイルが一斉に放たれ、ライトニングの周囲を炎で包んだ。このミサイルの雨で更に三隻の駆逐艦を撃破したが、手負いの巡航艦と14隻の駆逐艦がまだ残っていた。

 

マチェス

『シールドの冷却装置に異常。シールドの出力が40%ダウン!』

 

アジス

『エネルギー効率も悪くなってきやがった。主砲をぶっ放すと、もうそれ以降武器は使えねぇ。さっきのダメージで動力系に何かしらの以上が起きたようだ。正しく絶体絶命だな。』

 

アジスはそう言うと機体を、瀕死の巡航艦に向けると、マチェスは引き金を引き、主砲から閃光が伸びていった。そしてそれは巡航艦を灰燼に変えてしまった。だがそれは同時に二人に死を宣告するという事でもあった。

 

マチェス

『アジス、ガキの頃からの付き合いだったが、楽しかったぜ。』

 

アジス

『おうよ。お前は最高の友達だ。こちらこそ楽しかったぜ!』

 

残された駆逐艦はライトニングを取り囲み、一斉に宙間魚雷を放った。それと同時にライトニングが自爆。機体の中に残っていたエネルギーと魚雷が誘爆し、駆逐艦諸共大爆発を引き起こした。そして辺りはデブリが漂うただの常闇に戻った。

 

暫くして8万隻のオラクル艦隊がパイパースペースからワープアウトした。だが、もうそこには何も残ってはいなかった。タクミや他の提督達は駆逐艦や、艦載機、更には増加ブースターを装着したa.i.sを発艦して捜索したが…見つかったのは2人のものと思われる壊れたヘルメットと、奇跡的にスクラップを免れていたサポートマシナリーO2のみだった。

 

タクミ

『a.i.s三型強行偵察型、通称ライトニングは決してゴーストファイターなどではない。勇敢な英雄2人と共に確かにこの宇宙の歴史において、重要な局面を戦った。過去の評価、現場配備という事実上の廃棄処分という結果を彼らは覆し、更に我が艦隊百数十万将兵の命を救った。…犠牲になった英雄2人とライトニングに対し、全艦将兵、起立、敬礼すべし!』

 

タクミが敬礼すると、マトイや他の提督、幕僚、更に一兵卒に至るまでが全員起立し、彼らの目の前に広がるただの暗闇に敬礼した。だが彼らには2人のパイロットと一機の兵器の墓標が確かに見えていたのだ。

 

タクミ

『マトイ、彼らを殺したのは私…いや僕だ。その罪滅ぼしってわけじゃないけど、大元帥権限で、大本営に2人を讃える勲章の作成を具申しておいてくれ。それと2人の遺族にはフェデル家の秘密口座から慰霊金を送って欲しい。あと壊れたヘルメットも修理して送ってやってくれ。』

 

マトイ

『任せて。…タクミ、敵艦隊は私達と同じ、8万隻程の艦隊で編成してるみたいだから何か考えた方が良いかもしれない。みんなを作戦室に集めておいてあげようか?』

 

タクミ

『良いよ。もう作戦は立てた。A8のフォルダーに入ってるから送っておいてくれるだけで良いよ。』

 

マトイ

『了解しました。あれ?あなた煙草吸うの?初めて見たけど。』

 

タクミ

『煙草じゃない、葉巻だよ。』

 

慣れない手つきで葉巻に火をつけるとタクミは煙を吸い、吐いた。だが吸い込みすぎたのか、彼はそのまま咳き込み始めた。

 

タクミ

『ゲホッ‼︎ゲホッ!…コレ、2人が好きだったらしいんだ。代わりに吸ってやろうと思ったんだけど…初めて吸ったけど、これはキツイな。まだまだ私も子供だね。いつかこれが似合う大人になってみせる。カッコいい大人に。』

 

マトイは少し、鼻で笑った様な表情を浮かべたがタクミの隣に佇み、2人はそのまま宇宙を見つめ続けた。

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しばらくして、各艦隊に、タクミの立案した作戦が送られた。それを見た提督や艦長達は、眉を動かしたり、首を傾げたりしていたが、彼らは特に反論や質問もせずその準備に取り掛かった。彼らの共通の認識があったとすれば、『それはこの作戦なら死なずに済みそうだ!』と言ったところであろう。

 

艦隊は遂に敵艦隊との交戦距離に近づこうとしていた。指揮官隻に座っていたタクミは立ち上がると右手を上げた。すると、後続の艦二万と、それに続く大型輸送船数百隻が艦隊から離れ、敵艦隊を避ける様に迂回運動を始めた。コレで戦力差は六万対八万。二万も戦力差が開いてしまっていた。しかし、艦隊は全身をやめない。更にあろうかとか、艦隊は右に二万五千、左に同数で分かれていたのだ。そして中央には総旗艦金剛以下五千。常人から見れば戦力分散の愚を犯している。正しく乱心したと見るだろう。

 

マトイ

『全艦隊。作戦通りに展開しました。大提督、ご命令を。』

 

タクミ

『各艦隊に告ぐ、もう一度作戦を説明するぞ。まず後続の輸送船団の護衛で二万。これらは後続艦隊とし、諸君らは敵艦隊を迂回し、所定のポイントで待機せよ。残り六万は二手に分かれる。二万五千は敵右翼艦隊に当たれ、指揮はキダ中将に任せる。残り二万五千は左翼艦隊だ。チェンバレン中将が指揮を執れ。残り五千は金剛の直掩隊だ。敵中央は金剛が相手をする。』

 

マトイ

『前衛全艦、特殊兵器の装填が完了したと報告が入りました。』

 

タクミ

『敵の砲撃に合わせて発射する。まだ待つんだ。先攻をゆずろう。』

 

その頃、オラキオ艦隊の八万は目の前の敵の謎の陣形に首を傾げていた。だが中央、左右共に数の優位がある。少し突けば簡単に瓦解すると、この艦隊の指揮官になっていたルフェーブル伯爵は考えた。だから彼は迷いなく全艦に砲撃を下礼した。

 

だがこれはオラクル史上複数ある圧倒的な勝利の一翼に数えられる戦いとなり、オラキオは史上最悪の戦いとして記憶されることになる事をこの時は誰も知らない。

 

ルフェーブル伯爵

『全艦、撃て‼︎』

 

オラキオ艦隊は一斉に砲火を開き、数百万の閃光がタクミ達に迫ってきた。

だが彼らは一切ひるまなかった。

 

タクミ

『今だ!各艦、フォトン・リフレクター・シールド・ミサイル発射‼︎』

 

タクミの号令が掛かると複数の艦がミサイルを放った。そしてそれは、艦隊より少し前の位置で爆発するとその周囲にエネルギーの壁が出来上がった。

その壁に当たったミサイルは爆発し、レーザーはなんと、跳ね返ってきたのだ。更に壁の中にいるオラクル艦隊の砲火は一切壁に遮られること無くオラキオ艦隊に向かっていった。

 

伯爵は何が起こったか理解できなかっただろうし、彼の配下もそうだったろう。しかしオラクル側もこの自分達の前に現れた無敵の盾が起こした所業に息を飲んだが、しかしこの無敵の盾が永遠のものではない事を知っていた。

 

このミサイルは元々、第二銀河の研究所で作られていたものをオラクル軍がその研究所を占領。そのままサンプルと製造ラインを持ち帰ったものであった。原理としてはミサイルの中にフォトンエナジーが入っており、それを偏向シールドやエネルギーリフレクターの技術を使って、爆発と同時にエネルギーの壁を作るというものだった。エネルギー攻撃は偏向、跳ね返され、実弾系統はエネルギーの壁に突っ込むので、誘爆、溶解するという代物である。

 

しかし、瞬間的にエネルギーを消費する為、コストは高騰し、シールドとして機能する時間も実に短く、オマケに砲火が激しければ激しいほどエネルギーを消費する為、ゴリ押しで破る事が出来るという弱点があるのだ。

 

その為、オラクル側の凄まじい反撃を加えた。シールドが機能している間に、出来るだけ敵の数を減らさなければならないのだから。

 

タクミ

『敵を撃滅する必要はない!後続艦隊が迂回し終われば、我々も逃げる。全艦無理はせず、されど怯まず勇ましく戦え‼︎左右艦隊前進せよ。中央艦隊は左右より速度を落として前進だ。第2段階用意。』

 

マトイ

『第2段階用意。』

 

キダ

『第2段階か、敵の砲撃は左右の艦隊に集まってるか?』

 

下士官

『はい。予定通り左右に砲火が集中し始めております。僅かながら損害が出てきております。』

 

キダ

『よし、右翼艦隊‼︎戦列を偽装崩壊させよ‼︎いいか、押し込まれてグロッキーになってる様に見せるんだぞ‼︎』

 

チェンバレン

『少し工夫を凝らしてやろう。ダミーバルンに気化爆薬を詰めて放出し、時限式で起爆させろ‼︎』

 

オラキオ艦隊は左右の戦列崩壊(してるふり)を見逃さず後退した事により突出した中央艦隊に火力を集中させた。

 

タクミ

『動かざること山の如し‼︎決して退くな‼︎反撃し続けろ‼︎ミサイルは下手に撃つんじゃないぞ‼︎』

 

マトイ

『左右艦隊、展開率25%まだ半包囲には及びません。』

 

タクミ

『ゆっくりでもいい、気づかれない事が重要だ。よし艦長!』

 

艦長

『撃ちますか?』

 

タクミ

『おうやったろうやないけ!艦首要塞クラス拡散フォトン・レーザー砲用意。目標、敵前衛艦隊!』

 

金剛の艦首がゆっくりだが下に動き始めた。40門の艦首レーザー砲ユニットを含めた艦首が下にずれると、巨大な要塞砲が金剛から顔を出した。

 

そしてその巨砲は、エネルギーを溜めると、一気にエネルギーの濁流を吐き出した。一定距離を飛んで行ったそれは敵の艦隊の前で四方八方に拡散していき、数百の光線の帯になり、オラキオ艦艇を襲った。

 

立て続けに繰り出されるオラクル軍の新兵器に翻弄されるオラキオ艦隊の将兵達は大混乱に陥っていた。だが彼らの不幸はまだ終わってはいなかった。

 

戦列が崩壊したはずの両翼の艦隊がいつのまにか自分達を囲む様に展開していたのだ。そしてそれらから放たれる広範囲弾頭を搭載した長距離ミサイルの雨。避けても時限式で爆発する弾頭の所為で回避出来ず、出来たとしても他の艦に衝突して火球に変わり果てるしか道が無かったのだ。

 

オラキオの将兵は自分達より寡勢の艦隊が何故こうも戦えるのか理解が出来なかった。逆にオラクルは敵の弾が飛び交い、いつ自分にそれが当たるかも知れぬ最前方で自分達の前を堂々と進む総旗艦とそこに仁王立ちする大将に鼓舞され、または旗艦と司令官を失うわけには行かぬという義務感に駆られ追いかけていく。

 

将が前線に立つ事は異常な事である。だが常勝の軍勢は、常に指導者が最前線に立ち、兵達と苦楽を共にすることによって勝利を勝ち得る。

 

この矛盾がいつの時代も将兵達の中に存在し、そしてその矛盾は常にまかり通ってきたのだ。

 

そしてオラキオの旗艦に、その勇敢なオラクルの旗艦が強行接舷してきたのだ。敵将ルフェーブルはこの時になって自分の配下の艦隊が完全に壊滅していた事に気がついたのだ。

 

オラキオの兵達は敵が侵入するであろうエアロックに集まった。ある者は剣を構え、ある者は銃を構え、ある者はロッドを構え、ある者は斧を構えた。

 

そして不幸にも彼らの前に突っ込んできたのはオラクル最精鋭装甲擲弾兵師団ポツダム師団選抜部隊、老親衛隊であった。哀れオラキオの兵達は氷漬けにされ、真っ二つにされ、蜂の巣にされ、焼き尽くされ、引き裂かれ、粉微塵にされてしまった。

 

敵将ルフェーブルは呆気なく捕虜になり、自分がついさっきまで座っていた提督の椅子には、自分の兵を血祭りにあげた化け物を乗せた化け物みたいな戦艦に乗っていた、二十歳を少し過ぎた青年の見た目をした化け物が座っていた。そしてその化け物を白兵戦に参加したのか同じく返り血まみれの甲冑を身につけていた。

 

そして彼らはオラクル語で何かを話していた。

(尚、後年地球の秘密機関マザークラスタの調査ではオラクル語を他国の人間が聞くとフランス語、オラキオ語を聞くとトルコ語に聞こえるという事が分かった。)

 

カール准将(ポツダム師団2代目師団長)

『Que diriez-vous de la survie de l'ennemi?(敵の生き残りは如何致しましょう?)』

 

タクミ

『Conformément à la loi militaire, tout le monde devrait être prisonnier.(軍法に則り、皆捕虜にせよ。)』

 

シュミット大佐(ポツダム師団副師団長兼第1大隊大隊長)

『Votre honneur n'est absolument pas plus élevé. C'était une victoire facile.(閣下、此方の損害は全くありません。楽勝でした。)』

 

タクミ

『Eh bien, devons-nous demander ce que cette personne devrait écouter?(さてこの男に聞くべき事を聞くとしよう?)』

 

ルフェーブルはこの若い三人の高級将校の離している言葉を理解できなかったが少なくとも自分を尋問か何かの類を掛けようとしている事は理解した。

 

ルフェーブル

『Ne derse konuşsana, beni öldürme! ︎(何でも話すから殺さないでくれ!)』

 

タクミは少し眉を動かすと口笛を吹いた。すると何処から出てきたのか、全身タイツの様な特殊戦闘服を着た少女が現れた。その少女は六芒均衡の零、アークス諜報部副司令官クーナだった。クーナはルフェーブルの首に武器を突きつけ、実に流暢なオラキオ語で尋問した。

 

クーナ

『İlk Prensin ordusu nerede, Graal hakkında neler oluyor? Cevap vermezsen anlıyor musun?(第1皇子の軍勢は何処に居ますか?グラールの状況はどうなって居るのですか?…答えなければ、判りますよね?)』

 

ルフェーブル

『Gura'nın üç büyük gezegende üç bin filosu ile çevrilidir ve her biri 200.000 askerle iniş yapmaktadır. Zemin savaşının şimdiye kadar bu sefer başlaması gerekiyordu!(グラール主要3惑星にそれぞれ三万の艦隊で包囲、それぞれ二十万の軍勢で降下作戦を行う。もう今頃地上戦を展開して居る頃だろう!)』

 

クーナ

『既にグラール主要3惑星が戦場になっている様です。少し遅かったみたいですね。どうしますか?大提督。』

 

タクミ

『それも織り込み済みだ。すぐに向かおう。それと敵将よ、名は知らぬが一言言わしてもらう。』

 

タクミは腰につけたカタナを目にも留まらぬ速さで抜刀し、ルフェーブルの首を刎ね落としてしまった。ルフェーブルの首を失った体は痙攣しながらそのまま血を流しながら倒れこみ、やがて動かなくなった。タクミはカタナを鞘に収めながら死体に冷たい視線を送り、こう言い放った。

 

タクミ

『Eğer Olak konuşmazsan öleceğiz.

(オラクル語を喋れないなら死ね。)』

 

オラクル訛りは、あるものの会話は可能なレベルのオラキオ語を言い放ったタクミはそのまま旗艦金剛に戻っていった。この一連の出来事を見ていたオラキオの将兵は後にオラクル人とりわけタクミを人の姿をした悪魔と言ったという正しく恐怖を植え付けたのである。そしてこの恐怖のオラクル人の参戦は、グラール、そしてオラキオの運命を変えていくのだ。後のオラキオ、グラールの歴史家はこう語る。

『戦に関してはもはや桁違いの強さを誇ったあのフェデル帝国時代のオラクル人が、御伽噺に出てきた鬼の様に恐ろしいあのオラクル人が帰ってきたと誰もが思った。

 

何故なら彼らの通った道には敵として合間見えた我らの同胞の首だけが無い死骸が山を成していたからだ。』

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