pso2仮想戦記二年前の戦争 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
新光暦239年オラクル船団と惑星リリーパを結ぶ回廊通称ゼノビア回廊にて二つの艦隊が相対しようとしていた。
一つはオラクル船団国防軍第一艦隊、一つはオラクル船団国防軍第五艦隊改オラクル船団現政権軍第一艦隊である。
それぞれ同じ国、同じ組織の艦隊であったが、主義と主張、人間が最も争いを起こす要因で対立し、今まさに砲火を切らんとしていた。オラクル船団国防軍第一艦隊総数13000隻将兵149万9000名対する第五艦隊は総数15000隻将兵170万であった。数は第一艦隊が劣るものの火力は第一艦隊が勝り、練度も桁違いであったが、此度の件で急行した為か、疲労感が漂っており、士気が下がっていた。
タクミは陣形を閣僚達と思案していた。敵は縦陣。火力面を補う為に数と陣形で補おうとしていた。対する第一艦隊は斜陣。陣形的には不利だが、火力を持って、敵艦隊を叩き潰そうという作戦になった。然し、彼は納得しなかった…彼には二つの不安要素があった。一つは何故戦力を分散したのか?確かに現政権軍は国防軍の四割に及び、その殆どが船団付近の戦力であり、アークス側の戦力が六割に対し、本土側に布陣出来る戦力は少ない。布陣出来るのは第一、第二、第三艦隊のみであった。守護衛士級を持たずとも分遣艦隊三つを合わせた連合艦隊を5つも編成できるのに何故各個撃破を取らないのか?現政権軍の布陣位置はこの三艦隊のうちどれかを各個撃破しても船団にすぐ戻る事出来る。残る二艦隊が船団に着いても、5個艦隊は船団を盾に出来る余裕は充分にある。あとは餓死させるだけという比較的楽ができる戦法を何故やらず戦力を各個に当てたのだろう?もう一つ不安要素があったが、これはまだ語るには速いだろう…何にせよ、彼は違和感を禁じ得なかった。
兎に角、目の前の艦隊を倒さねば成らない。
彼は目の前にいる敵を倒す事に集中する事にした。
敵第五艦隊司令は、矢崎大将であった。矢崎は軍人政治家であり、地位を政治圧力と金で買った男であり、贈収賄の常習犯であり、渾名は狸であった。この狸は、アークス不要論を唱えた主要人物であり、この内戦を引き起こした人物でも一人であった。そんな彼は功績も名声も無く、実戦なんかやった事が無く、艦隊運用はこのキャストの副官、名前をチャールズ・グリッドマン中佐に任せていた。
『青二才めが…この数の艦隊に恐れなしたのか攻めてくる様子も無いわ。そうだろうグリッドマン君?』
『左様ですな…』グリッドマンはただ一言こう返した。
攻めてくるわけ無かろう…陣形に置いて、不利なのにむざむざ攻めて兵力を無駄にする愚をするわけが無い。彼は内心思った。この第五艦隊は現政権軍に参加する際現首相におべっかを使うこの狸親父について行った艦隊は半数であり、残り半数は従わず、この狸親父は激怒し、艦から降ろし更迭してしまったのだ。その為残り半数は船団に拘留されており、不足を他の艦隊から引き抜いて編成している状態だった。その為、艦隊の動きにムラがあり、統一性を欠いていた。グリッドマン自体は従わなかった半数につきたかったが、艦隊副司令という立場からそれは無理な話であった。『こんな事ならこの狸親父を更迭して、第一艦隊に白旗でも降った方がマシだった。』彼はこの狸親父の私利私欲の為に兵が殺されるのは堪らなかったのだ。だが上官である以上、従わねば成らない。ひょっとすればあの第一艦隊に勝てるかも知れない。いや勝てる策はこの男は考えていた。それでも歴戦の勇士と戦えるというのは彼の戦士としての喜びを感じ得なかった。『こちらから攻めるぞ‼︎艦隊前進‼︎』矢崎は叫んだ。グリッドマンも前進の号令を出した。タクミは敵が動いたのを見ると直ぐに命令を発した。『敵が動いた!全艦迎撃開始‼︎』『全艦迎撃開始‼︎』
鹿島の号令で13000隻の艦艇が一斉に砲火を放つ。砲火は敵艦隊を捉えたが、大した被害を与えられていなかった。宇宙艦隊戦は陣形の強弱が勝敗を決する要因であり、陣形不利をとったタクミ一党は自然と敗北に向かっていた。
然し、負けるわけには行かない。彼はこう呟いた。負けなければ良い…そう負けなければ良いのだ。この男は負けなければ何とかなると言う用兵法の基本概念があった。『敗北しなければどうとでもなる。』彼は正面の敵を改めて見据えたこう指示した。『全艦火力を敵左右に集中。前は無視しろ。敵にこちらを突破させれるように仕向けろ。一歩も引くんじゃ無いぞ‼︎』第一艦隊は火力を左右に分け不動の体制を取った。第五艦隊は左右に被害を出しつつも前進速度を速めていた。『戦艦敷島轟沈‼︎巡航艦浜風、ハリー、ジョン・ポール・ジョーンズ航行不能‼︎』『閣下我が艦隊の左右に被害が出ておりますが…』『構うな‼︎前進し、あの青二才を殺せ!』グリッドマンは呆れたが直ぐにこの愚劣な指揮官に従った。『はい閣下…全艦進路そのまま、シールド出力を上げ、怯まず突撃せよ。』冷静なこのキャストは敵に疑問を抱いていた。何故このまま横陣を維持し、後退しないのか?このまま後退すれば敵に中央を突破されずに損害を与えられるのに、踏みとどまっている。後退すれば彼の策のメインとも言える物すらも無力化出来るのに何故引かないのか?彼は考えたがひょっとすれば第一艦隊の若造は大した用兵家では無いのかも知れない。
兎に角このまま突撃すれば敵を瓦解させる事が出来るのは間違いなかった。艦隊は猛烈な火力をタクミ一党に突きつけていた。頃合いだ。彼の幕僚は全員思った。そして時は来た。『全艦左右に展開‼︎敵艦隊に中央を突破されたように見せるんだ‼︎』タクミの号令が掛かるやいなや、艦隊が左右に分かれて行った。慌てるようにかつ正確に移動して行った。これを見た矢崎は、『ほら見ろ!敵艦隊は総崩れだ。あの若造に至っては完全に腹を見せてるぞ。』狸親父ははしゃぐように言った。冷静な副官もまた『左様ですな…この分なら敵艦隊は壊滅出来るでしょう』と素っ気なく答えた。然し、彼は違和感に囚われていた。突破されたというよりさせたの方が正しいだろう。我らは敵の中央にすらその砲火を届かせては居ないのだ。確かに敵の三割に被害を与えたがまだ巻き返せるだけの兵力を残している。…まさか敵は、敢えて突破させ、自分は左右に砲火を集中しつつ後方に回り込み、更に攻撃するつもりでは‼︎彼がタクミの策に気がついたときには遅かった。第五艦隊旗艦アキレスは振動で揺れた。ダメージを与えなかっとは言え、敵の砲撃がこちらに届いたのだ。『馬鹿な…』矢崎は絶句した。敵艦隊は左右に分かれて砲撃し、後ろに回り込んでいたのだ。従って、左右と後方から攻撃を受ける形となったのだ。これに近い戦法として地球の日本という伝説の島国の島津と言う豪族が得意とした釣り野伏せと言う戦法があるのをタクミは知っていた。それをこの宇宙艦隊戦で再現したのだ。僅かな違いは釣り野伏せは敵を奥深く攻めさせ、時が来れば敵の退路以外から攻撃し、追いおとすと言うものだが、彼が使ったのは、奥深くまで攻めさせ、左右と敵の退路から攻撃するものだった彼としては『同じ組織の仲間を宇宙の星屑にしたく無い』と言う思いがあった。
ここで敵が諦め、リリーパに方面に潰走してくれれば、戦う必要も無くなり、損害が少なくて済むのだ。然し、問屋は卸さず、狸親父は、と言うより憤慨していた寧ろ達磨に近いだろう。吠え散らしていた。『何故敵艦隊がこうするとは分からなかったグリッドマン‼︎お陰で私の地位と名誉と退路は無くなったんだぞ‼︎』グリッドマンはこの時になっても自分の事ばかり言う指揮官に嫌気がさしてきていた。『これも全部貴様の所為だ‼︎船団に戻ったら法廷に掛けてやる‼︎』帰れるわけも無いだろう。彼はもう目眩のようなものも感じた。彼は未だ、喚き散らしているこの醜く肥った中年の男に銃を向けた。『おいよせ‼︎辞め…』銃声が艦橋に複数鳴り響いた。彼が数発撃ったのでは無く、彼と共にいた第五艦隊幕僚の手によって放たれた銃声だった。かくして、矢崎は醜く穴だらけになった血と糞尿の詰まった袋に成り下がった。幕僚の一人が、降伏するかと聞いたが、グリッドマンは、『後は引けんよ。こうなったら何が何でも勝つ‼︎例の信号を出せ‼︎敵艦隊は後方に回りきってない今がチャンスだ‼︎』新提督の号令が掛かり、旗艦アキレスから通信が流れた。瞬間、第一艦隊の左右に分かれた艦隊のそれぞれ左右に艦隊が出現し砲撃を開始したこれで第一艦隊は左右から砲撃を受ける形になった。グリッドマンはもしもの時のために艦隊とは別に三千隻程度の分遣艦隊を二つ待機させており、もしもの時はこの艦隊でタクミの後方を襲わせるつもりだったのだ。だが今は分散した艦隊を叩かせるために使っている。これで数はタクミの艦隊の2倍に達し、各個撃破するだけであった。対する第一艦隊は既に三割半の艦艇を、轟沈または、戦闘、航続不能状態になっていた。『戦艦三笠、ドーントレス、モルドレッド轟沈‼︎巡洋艦インターセプター、モンゴメリー戦闘不能‼︎駆逐艦白雪、モルドバ、ベートヴェン、モンタナ、シミター通信途絶‼︎』オペレーターの悲鳴じみた報告は艦橋の至る所で聞こえていた。タクミは、もはや何も言わなかった。彼の中には、作戦の加筆修正や何故こうなったとか責任追及とか頭になかった。ただ自分のベストを尽くして負けるのなら後悔はしないということとここで将兵を死なせてしまうという情けなさと申し訳ないと言う思いだった。彼は死を覚悟した。その時、アキレス天井方向から、レーザーの雨が降ってきた。第五艦隊の将兵は、何が起こったか理解できなかった。勿論、第一艦隊の将兵も同様だろう。スサノオに座乗するタクミとその幕僚を覗いては…
『我らはフォトンに見放されては居なかったのだ‼︎来たぞ…我らが国防軍艦隊司令長官率いる秘匿艦隊第六艦隊が‼︎新型艦隊旗艦大和が来た‼︎』国防軍艦隊司令長官ジェームズ・ネルソン元帥…古の名提督であるネルソン提督の血を引くと噂されるこの老人は、ジャンや、ジョーゼフよりも戦歴が長く、正しく生きる化石であった。齢70を過ぎるこの男は今も剣の腕前はレギアスと並び、用兵はオラクルや、ダーカーを始めとする、全勢力の指揮官が束になっても勝てないと言わしめる宇宙最強の名将であった。彼の座乗する新型艦隊旗艦大和は正しく古の超戦艦を拡大し宇宙に引っ張ってきたと言うのが相応しいが、この艦自体は旧式艦で、三十年前に建造されていた。就役間近であったこの超戦艦は、時の事情により、マザーシップで埃をかぶる事になり、その後、完成した。守護衛士級等の技術を詰め込み、やっと数週間前に就役した守護衛士級を超える。真の艦隊旗艦であった。然し、圧倒的なコストが掛かり、そのコストはアークスシップを100隻建造出来るほどであった。その為秘匿され、この一番艦大和は第六艦隊通称秘匿艦隊として殆どの者が知ること無く戦列に参加していたのだ。そんな生きる化石と、動く博物館は今堂々たる戦場に立っているのである。『Fの坊やは無事か…全艦敵を叩き落とすのじゃ…だが撃滅する必要は無い。逃げたければ逃がしてやれ。』この老人に率いられた艦隊に第五艦隊は潰乱してしまい統率は不可能であった。グリッドマンは想像もつかなかった敵の増援にかなう術は無いと分かったのか。降伏を提示した。かくして、オラクル内乱最初の艦隊戦は終結した。第五艦隊残存艦艇は全て降伏し、タクミらの勝利に終わった。タクミは提督席に深く寄りかかり、大きく息を吐いた。『危なかった…もしネルソン閣下が駆けつけてくれなかったら…どうなってたか…』『閣下、もしネルソン元帥が敵方についていたらどうなさったのです?私はネルソン元帥をよく知らないので分かりませんが?』
『アリス大尉それは無いよ。彼は政治家嫌いでね。特に安全な場所で戦争を賛美し、無益な戦いに人々を向かわせようとする。首相のような人がね。僕も同じさ、彼は政治を腐敗させた。政治の腐敗と言うのは、政治家が賄賂を貰ったりする事では無く、それを奨励し、誰も批判しない。それを政治の腐敗と言う。彼は国の為に行動なんてしていない。常に自分のゴシップと財布ばかり気にしている。彼等の真の敵は民衆なんだ。彼等は支持と金の為なら民衆が何人死のうと気にも留めないだろうさ。政治家が真の目的は国を、民衆を飢えさせることなのだ。命を犠牲にしてまで民衆に尽くそうという同業者を片っ端から狩りあげ、国の為に献上した税金を自分の欲の為に使う。それはもはや人間では無く、動物のやる事だ。奴らは自分の立場を理解しようとしない生き物なんだ‼︎彼等が思う、敵は恐ろしく力を持った存在とは知らずにね。話を戻すがまぁ仮にネルソン元帥がついてたら僕は真っ先に降伏しますよ。』この女性は自分より二つ年下のまだ十代の若さが抜けきってないような21の青年がまさか降伏するなどとは考えなかったようだが、彼のそういう素直な所に何かを感じたのか、そっと近づいてこう言った。『提督、紅茶をお持ち致しますか?』『うんでも、それは従卒に…。』『あの子達が疲れてしまいますよ?任せてください。』そう言うと彼女は去っていき、程なくして戻ってきた。ストレートのセイロンで砂糖が入っていた。提督は一口それを飲んだ。彼は直ぐにハッとした。これには何とブランデーが入っていた。その美味いこと美味いこと、彼自身や従卒が淹れたものより遥かに美味だったのである。『どうやってこれを?』彼女はクスクスと、笑って『秘密です』と笑った。彼はまた紅茶を飲むと、死んでいった将兵に哀悼の意を示した。
はい6話です。…宇宙戦艦ヤマト(波動砲はありません。代わりに艦首にはレーザー砲だらけです。)の二番煎じに、ネルソン提督の子孫と思われる老人まで、何でもありですが、自分の物語であるpso2ならではの内容ではないでしょうか?(汗)そう言えば原作にも大和参戦の様ですが、提督である私としては、大和とは戦いたくは無いですねw(色々議論を呼んでるらしいですが)最後にこの様に時折、話の中で我々の人類戦史の例など重ねていくつもりですが、実在の人物、組織等には全くの無関係であり、現政権等を非難するものでは無い事をご理解下さい。