日本のとある研究所。そこでは一人の研究者が石油や原子力の代わりになる「反物質」なるものの実験を行っていた。だが、今この研究所はパニックとなっていた。
「あ・・・がぁぁ・・・!!」
げぼっ・・・
全身からうねうねと触手を生やした男は口から何かを吐き出す。それは研究員が男の体に埋め込んだ自爆装置だった。
「ダメです!!ガスも電流も効きません!!」
「バカが!!零号機を動かせ!!まだ不完全だが内部電源で5分程度は動けるだろ!!」
「はいっ!!」
主任研究者の男が指示を出し、部下はその零号機の起動スイッチを押すが・・・
「・・・・・・・・(ピコッピコッ」
零号機と呼ばれた少年は何の反応も示さず、触手を生やした男の隣でゲームをしていた。
「ダメです!!零号機が起動拒否!!電源が起動しません!!」
「何だとっ!?チッ!あのクソガキが!!開発した対触手弾を撃て!!」
触手の男と少年が閉じ込められている部屋の天井が開き、銃が顔を出すが・・・
「・・・よっ。」
ボッ!!!
少年が手のひらから放ったエネルギーが銃をすべて破壊する。
「加粒子砲!?射出口が・・・!!」
「あのっ・・・!!ガラクタがっ!!!」
命令無視に加え、少年が邪魔をしたことで研究員達は苛立ち、焦る。
ドゴォォォ!!!
すると研究室の壁が破壊され、触手の男と少年が現れる。
「っ!!ここで死ねモルモット!!撃てぇ!!」
パパパッ!!パパパッ!!
主任研究員の指示で銃を持った男達が一斉に射撃する。だが、男の脳は澄んでいた。男は砂粒をつまみ、指で弾く。すると砂粒は猛スピードで銃の男達に飛んでいき、彼らの大動脈を撃ち抜く。
「・・・大動脈を破壊するなら砂粒があれば充分だ。」
「図に乗るなモルモット!この兵器が避けられるか!!」
主任研究員が何かのスイッチを押すと・・・
ズドォ!!
何かが触手の男を貫く。それはこの研究所で行っていたもう一つの研究により誕生した触手兵器だった。だが、それでも男は倒れない。
「この程度じゃ死にませんねぇ。」
「あらよっ。」
ビュッ!!
「がぁぁぁぁぁ!!!」
少年が右の人指し指を男とは違う布状の触手に変化させて飛ばし、主任研究員の左目を貫く。次々と来る増援に男と少年は圧倒的な力で応戦する。二人にはすべて見えていた。どれが危険で、どれが強いか。どちらが生き残るか。全部見えていた。
・・・だからこそ見えなかった。男にしがみつく敵でも傷害でもない女性が。今目の前で触手兵器に貫かれた女性が。致命傷だった。医学を極めた男も治せないような。
「なんで・・・?」
「飛び出さなければ私達の巻き添えにならなかったのに・・・」
「ハハハ・・・声かけた位じゃ、あなた達は止まってくれない気がして・・・」
その通りだった。あのままでは歪んだ感情が男の触手を歪め、少年の力を暴走させ、どす黒い破壊生物になってしまうところだった。呼び戻してくれたのは、彼女だった。
二人は後悔をした。なぜ気づかなかった!あと0.1秒早く気づけば守れたのに!どうして!この力を!触手を!誰かのために使わなかった!!どうして!
「私が・・・殺したも同然だ・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
「そんなわけ・・・ないじゃないですか・・・それにね、あなた達なら私は・・・殺されてもいいと思う・・・それぐらい大切だから・・・」
彼女は二人にそう笑いかける。その笑顔は弱く・・儚く・・・美しい。
「・・・もし、残された1年間・・・あなたの時間をくれるなら・・・"あの子達"を教えてあげて・・・そしてあなたは・・・あの子達の友達になってあげて・・・」
「グズッ・・・(コクッ」
「・・・君がそう言うのなら。」
少年は涙を堪えながら頷き、触手の男は彼女の頼みを了承する。
「・・・なんて・・・素敵な触手・・・この手なら・・・きっとあなたは・・・素敵な教師に・・・」
彼女が男と少年に伸ばした腕は力なく地面に落ちる。男が彼女の懐を見ると、どういう場面で使用するのかまるで不明な巨大ネクタイ。
「・・・ダサい。」
「・・・ホント。」
だが二人はそんなところも彼女の魅力だと今理解した。男は彼女に誓いをたて、手紙をその場に残し、少年を抱えて研究所を去る。
凄まじい速度が出た。身体中の細胞が触手に置き換わり、男は新しい生物に生まれ変わろうとしていた。触手が男に尋ねた。"どうなりたいのか"と。
男は「弱くなりたい」と願った。弱点だらけで思わず殺したくなる程親しみやすく、どんな弱いものも感じ取れ、守れ、導ける。そんな生物に・・・そんな教師に・・・
同時に少年にも変化が起きていた。体の中のエネルギーが全身に染み渡り、黒い髪が白く染まっていく。それまで暴走に近かった少年の"力"は少年と一体化していく。力が彼に聞いてきた。"何になりたいのか"と。
彼は"生徒になりたい"と答えた。殺戮兵器としての「彼」ではなく、ごく普通の「彼」を取り戻したい。彼女と男が作り上げるクラスの一部になりたい。
時に間違うこともあるかもしれない。冷酷な素顔がでるかもしれない。でも、精一杯やろう。彼女がやろうとしていたことを自分なりに・・・
「・・・ヌルフフフ。」
「・・・キャハハハハ。」
・・・それからマッハ20の新米教師と人型殺戮兵器の新入生徒はゆっくりと、ゆっくりと立ち上がった。
こんな感じでほぼほぼ原作沿いです。