荒野。
そこに立っているのは二人の男。
片方は剣を携え、細身の服に身を包んでいる。
色としては、白、だろうか。全体に白は少ないはずなのに、所々の白のアクセント。
それによって印象が「白」となるのだろう。
全体に薄い色であることもそれに拍車をかけているのだろう。
もう片方は黒。外套に身を包み、袖口などの赤はくすんでいる。
武器などは持っているようには見えない。
白が言う。
「さ、て。それじゃあ、決着をつけようじゃないか。
5年以上前からの。その最高に最低な、吐きそうなくらいに面白かった、この戦いに」
黒が言う。
「面白かったかどうかは別にして―――いい加減、決着はつけないと、な。
このまま流れに流れて終わったら、先に逝ったあいつらに笑われちまう」
「「それじゃあ、戦争の幕開けといこうか」」
先手は黒。外套のうちから出した手は、すでにナイフを握っていた。
右と左、それぞれ二本ずつ、計四本。
そして、右手と左手が十の字に交差するように振り、後退する。
振られた手からは先ほど握られたナイフが投擲された。
右から左。
左から右。
下から上。
上から下。
それぞれほんの僅かだけタイミングがずれ、そして軌道の違う四本のナイフ。
それを白は。
(運動係数制御。身体能力、および反応速度を三十倍に固定)
一本の剣を二回。たった二回振ることでたたき落とした。
(熱量制御。「氷弾」生成。平行処理。分子運動制御。「檻」)
白の周りを氷弾が取り囲み、足下が隆起して動きを遮ろうとする。
(情報解体発動)
一振り。取り囲むように生まれた弾丸の大部分を無視。
ただ黒の喉笛に噛み付かんと疾走する、そのためだけに。
前方の弾丸、遮ろうとする大地の檻。そのすべてが一太刀の元に消え。
黒と白は接近した。
(反応加速。反応速度のみ四十倍に設定。容量不足。分子運動制御を解除)
(エントロピー制御。氷盾、生成)
白の剣。その、今にも黒に当たろうとした瞬間。剣が止まった。いや、止められた。
白の腕。剣を振るべきその腕の、まさに振るうために使われる部分。そこを押さえるように氷盾が生まれていた。
「ち、ぃぃぃ!」
力任せに振り切り、黒をとらえにいく。
だが。
「おいおい。炎使いが接近戦できない、なんて、誰がいつ、どこで決めた?」
そうつぶやいた黒。
その瞬間、氷盾は消え。
その体がするりと白が振るう剣の内側に入り込む。
白は対応しない。いや、できない。
なぜって、さっき剣を振るために力をふるい。その力が完全に止められることなく流れたのだ。
止まるはずがない。
そして
「これでも、喰らいな」
黒が再び手に握っていたナイフ。それが白の体に突き刺さる。
だが。
「う、おおおお!!」
白は止まるはずがなかったその力を止め、無理矢理黒の方へ振り下ろした。
黒は回避できず、左手に傷を負う。
ここで黒は一度距離をとる。
白の腹部。浅いとはいえないが、深いともいえない。
黒の左手。これはしばらくは動かせないだろう。
過去、このようになったらお互いに引いていた。だが。
「今回は―――」
「―――待ったなし、だ」
お互いにそう声をかけ。
黒は後ろに下がるように。
白は前に進むように。
戦闘が、再開した―――。
そしてしばらくの戦い。
その決着が、ついにつくときが来た。
(自己領域、展開)
(磁場形成)
白は全身の力を込めた刺突。
黒は全情報制御、および全技術を込めたナイフの投擲。
互いに言葉はいらない。
(名称固定。「白牙」発動)
(レールガン、準備完了)
互いに準備が終わる。
白は自己領域の中に飛び込み、自分の運動のみが加速するように改変した世界を突き進む。
黒は目の前に生まれた磁場に全身の力を余すことなく使い、伝えたナイフを投擲。フレミング力によって加速されたナイフは、音速に達した。
小細工は無用。互いの得意な行動、その限界でもってぶつかり合う。
「「―――――――――!!」」
互いは叫び、声にならない思いがぶつかり合う。
大気が悲鳴を上げる。
投擲されたナイフはその技法、その加速によってもはや大砲に等しい。
それに向かう剣。加速、重さ、ともに申し分なく、その上さらに加速がなされ続ける
そして―――。
爆音。
すでに土地は原形をとどめていない。荒野にあった、ほんの少しの隆起。
それは姿を消し、至る所に穴があいている。
そこに立っていたのは、一人。
その男は、何も言うことなく、立ち去った―――