東方黒龍紀 〜黒き絶望は希望となるか〜 作:ブラキDIOス(超絶スランプ)
第十話〜白玉楼の剣士〜
『……龍太…………』
何処かから聴こえる声。耳に響いてくるのでは無く、心に語りかけてくるかのような囁き。
龍太「……だ、誰…?」
『……我はそなた……そなたは我…………だが、似て非なる者……』
龍太「…え?」
その声の主の姿はどこにも無く、目の前には廃墟となった城が広がるのみ。
一度体験した夢をまた見ているのか。そう思っていたのだが、以前は声がしなかった。それにあの
龍太「ど…どこから話しているんだ!?聞こえたら返事をしてくれ!!」
『案ずるな……いずれ…また…』
龍太「どこにいるんだ!出てきてくれ!!」
『…………ではな……』
声はどんどん遠ざかって行き、やがてなにも聴こえなくなった。
「……龍太……龍太……」
龍太「……ううん…」
「龍太……おい、龍太!起きろ!」
龍太「うん…?」パチ…
聞き覚えのある声によって起こされた。どうやら昼寝をしていたらしい。
コウ「目ェ覚めたか?」
龍太「コウ……あれ?僕、なにしてたっけ…」
昼寝をしてしまったのは状況から分かるが、直前まで何をしていたのかが思い出せない。
コウ「白玉楼に行くんだろ?寝たから忘れちまったのか?」
そうだ。月影の話を聞き、刀を直してもらう為に白玉楼に行こうとしていたのだ。
龍太(…でもあの声……なんだったんだ…)
あの声からは、怒りと哀しみの感情が混じっていたように感じた。
コウ「ほら、支度するんだったら早くしろよ」
あれこれ考えている内に催促されたので、急いで身支度を済ませて神社を出発する事にした。
〜外〜
龍太「腰に差してっと……よし」
月影を腰に差し、これで身支度は完了しあとは出発するのみとなった。
聞くところによると、白玉楼は冥界にあるらしい。龍太は幽霊を信じてはいるが別に怖いとは思っていない為、すぐに行く決心がついたのだが…
コウ「俺がいないからってベソかくんじゃねぇぞ!」
どうやら彼は、幽霊が苦手なようである。
萃香「もしかして怖いのかい?」
コウ「!?い…いや……ゆ、ゆゆゆゆゆ幽霊なんか怖くねぇよ!?」ガクガク
足がガックガクの状態で言われても説得力など微塵も無い。極め付けには…
霊夢「後ろに誰かいるわよ」
コウ「フォアアアアアアアアアア!!!???」バッ!
霊夢「…嘘よ」
典型的なからかいにもこの有様である。これではボディーガードとして連れて行っても、足手まといになるどころか、一人で逃げ出してしまいそうである。
萃香「でかい図体して情けないね…」
コウ「う、うるせえ!別に怖いもんがあってもいいだろ!!」
それにしてもビビり過ぎである。それを証明するかのように、彼の縦に裂けた瞳孔が物凄い早さで開いていき、冷や汗と思われる液体が額から滝のように流れ落ちていた。
霊夢はそれを見て、口を抑えながら笑いを堪えている。
コウ「笑いたきゃ笑え!!」
霊夢「べ…別に面白くなんか……クッ…フフッwwwwwやっぱ無理wwwwww堪えられないwwwwww」
コウ「っ…チクショーッ!!!!」
龍太「あ…あはは…」
ごめんコウ。こればっかりはフォロー出来ないよ。
龍太「と、とにかく…行ってきます!」
霊夢「行ってらっしゃい…wwwww」
萃香「土産話楽しみにしてるよ〜」
なんかコウが物凄く落ち込んでたような気がしたけど気のせいだ。うん。
〜なんやかんやで白玉楼〜
龍太「やっと…着いたぁ……それなのに…なんで閉まってるんだよーッ!?」
道中で妖怪やら妖獣やらに襲われて絶叫マシーンもびっくりの恐怖体験をした上に、白玉楼の門は固く閉ざされている。
コウだったらよじ登ってでも中に入ろうとするだろうが、龍太はただの人間である。竜の身体能力を持っているわけでもなければ、幻想郷の住人のように能力を持っているわけでもない。霊夢曰く、能力は自然と身につくらしいのだが彼が幻想郷に来たのはほんの2、3日前。当然、何の能力も身についていない。
そんな彼の手元にあるのは、『妖刀』と呼ばれた錆だらけの刀が一本だけ。
龍太「これでどうしろと」
思わず愚痴がこぼれる。
龍太「…ハァ……引き返すわけにもいかないし…とりあえず開けてみるか…」
不法侵入で訴えられそうだな…などと考えながら扉に両手を添えて力を加えると、意外にもあっさりと開いた。
龍太(…これ、門の意味ある?)
かと言って、かなり厳重にされていてもそれはまた困った事になるのだが。
龍太「お、お邪魔しまーす…」
庭には無数の桜の木が満開の花を咲かせてはいたが、それがかえって不気味さを際立たせている。
龍太「桜か……綺麗だな………って言うか誰もいないのかな…?」
これほど立派な建物には警備がつきものの筈だが、それらしい気配は全く無い。
それにしても美しく整えられた庭である。庭師がいなければこのような庭に出来ないだろう。
龍太「……あれ?あそこにいるのは……女の子?」
遠くで掃き掃除をしている女の子を見つけた。するとあちらも視線に気づいたのか、こっちに向かってくる。
両手に刀を握って。
……ナンカ、イヤナヨカンガスルゾ?
???「曲者ッ!!」ブンッ!
龍太「うわぁぁぁぁぁ!?」サッ!
嫌な予感は的中した。いや…的中してしまったと言うべきだろうか。
彼女は龍太を見るなり、すぐさま斬りかかってきた。その剣筋に手加減など一切なかったのは、素人目に見ても分かる事であった。
咄嗟に身を引いて回避したものの…
龍太「っ…」ズキッ
どうやら剣先が掠ってしまったらしい。右腕に痛みが走り、血が僅かに腕を伝う。もし避けなかったら、と思うとゾッとする。
???「侵入者め!今この場で叩っ斬る!!」
なんと物騒な事を言っているのだろうか。いや、確かに勝手に入った僕が悪いのだけれども…
龍太「ちょっ…ま、待ってくれ!僕はここに用があって…」
???「問答無用!!」ブンッ!
龍太「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!??」ダダダダダダ…
???「あっ!?こ、コラ!!待ちなさい!!」タッタッタッタッ…
龍太(いくらなんでも叩っ斬るは無いでしょ!?)
???「待ちなさーいッ!!」
〜白玉楼 ???の部屋〜
「外が騒がしいな…」
「そうねぇ〜……はい、王手」パチン
「あ…」
「やっぱり将棋は苦手なようね」
「………ちょっと見てくる」
スタスタ…
(…逃げたわね)
〜白玉楼 庭〜
龍太「ハァ…ハァ……」
庭中を駆け回って二分ほど。背には塀、前には剣士らしき少女……言うまでも無く絶体絶命の状況である。
???「もう逃げられませんよ…」ジリ…
龍太(コウの奴…なんでこんな時に限ってついてきてくれなかったんだよ!!)
???「言い残す事はありませんか?」チャキッ
龍太「ひっ!?」
首筋から伝わる刀身の冷たい感触。
龍太「…………」ゴク…
???「では…」スッ…
ブンッ!!
刀が振り下ろされた!
……かと思いきや…
???「…!?」グググ…
龍太「………あ、あれ?」
振り下ろされた刀は顔に当たる寸前で動きが止まっていた。
そして少女の後ろには、少女の腕をガッシリと掴んだ男が立っていた。
???「はい、ストップ。ちょっと厳し過ぎじゃないか?話くらい聞いてやれよ」
龍太(な…なんなんだ?僕は…助かったのか…?)
〜続く〜