東方黒龍紀 〜黒き絶望は希望となるか〜 作:ブラキDIOス(超絶スランプ)
コウ「また俺ちゃんの出番が無いのね…」
龍太「ドンマイ」
コウ「…その優しさが俺ちゃんのハートをブレイクしてくるぜ…」
イナズマとの出会いから一日後…
〜???〜
これはとある建物内での会話。だが、この建物は幻想郷の中に存在するものの、龍太達が過ごしている空間とは別の空間に存在している。
パラレルワールドというわけではない。ただ、別の空間に存在するだけなのだ。いや、別の空間というよりも『異次元』と言った方が正しいだろうか。
「ーーー様、報告がございます」
まるで王を守護する衛士のような格好をした人物が、目の前の堂々たる雰囲気を醸し出している男に向かって膝をつく。
???「何の用だ?この世界の事が少しでも分かったのか?」
「はい、ここは我々が元居た世界とは別の世界のようです」
???「……それだけか?」
「…はい……」
???「………馬鹿か貴様は!!それくらいの事はとっくに分かっとるわ!!!」
「ひぃぃっ!?も、申し訳ございません!」
???「アピールか?自分は無能ですとアピールしているのか!?だったらもう少しマシなアピールをしろ!某動画サイトの時報の方がよっぽどマシなアピールをしているぞ!!午前二時くらいをお知らせします〜ってなぁ!!」
「も、申し訳ございません!!しかし、それはアピールとは少し違うものかと…「そんなのどうでも良いんだよ!!」ひっ!?」
???「分かったらさっさと情報を集めてこい!!ここの空間がもし、奴らに知られたらどうする!?『ちわーっす、この世界の者です〜』って、蕎麦屋の出前みたいに来たらどうすんだ馬鹿野郎!!」
「も、申し訳「謝ってる暇があったら、とっとと行け!!」は、はいぃぃ!!」
???「仕事は手早く済ませろ!!出前のようにな!!!早く行かないと蕎麦が伸びるだろ!!!」
「はい!!!」
部下が去ったのを確認すると、男は…
???「…全く………しばらく休息を与えてやるべきだろうか……」
と、頭を抱えながら小さく呟いた。そして、フゥと大きく溜息をつくと、どうせ誰にも聞かれる心配は無いとして、ぶつくさと独り言を言い始めた。
???「…いくら
そうしているうちにある事を思い出し、部下を呼び出す合図をした。
「お呼びでしょうか、ーーー様」
???「おお、早いじゃないか。良い心がけだ」
「お褒めに預かり、光栄でございます」
???「早速だが…あいつだ、あいつを呼べ」
「あいつ…と申しますと?」
???ほら…あの三重人格の……何て呼ばれてたか…えっと…」
「《熾凍龍》でございましょうか?」
???「そうだ!そいつだ!そいつをこの空間に連れて来い!!この世界に存在している事は間違いないからな。これを皆に伝えるのだ。ああ…そこまで急ぐ必要は無いぞ。情報が一通り集まったらで構わん」
「はい」
???「よし、もう行って良いぞ。用件はそれだけだ」
「ハッ!失礼します!」
部下が去ったのを確認すると、またもや大きな溜息をついた。そしてまた独り言を言い始めた。
???「《司銀龍》の奴は何をしているんだ…?…あのお方の命を受けているというのに……こうなったら………
……………この『グァンゾルム様』が動くべきだな…」
〜うってかわって人間の里〜
いつぞやの求人広告が貼り付けられた看板の前。
龍太「じゃ、僕はこれで…」
トドロキ「おう!付き合わせちまって悪かったな」
約束の通りに、龍太がトドロキに求人広告の内容を説明していたのであった。
龍太「全然大丈夫だよ。…でも寺子屋に通ったらどうかな…教えてくれるんじゃない?…多分…」
トドロキ「ぐ……」
この優しさが胸に刺さる。余計なお世話だと言いたいところだが……少しは考えてみよう。
龍太「…まあ、良い仕事に出会えるといいね」
トドロキ「おう。じゃあな」
龍太「うん、またね」
トドロキ(…今日はもう帰るか…)
説明を頭に詰め込むだけで、だいぶ疲れた。我ながらホントに馬鹿だと思う。自分を殴ってやりたいくらいだ。……まあそれはいい。今日はとにかく寝たい気分だ。
〜轟竜帰宅中〜
トドロキ「あ〜……疲れた…」
豪快に扉を開け、玄関から居間に移動する。ロギィが言うには人里でも結構大きめの家らしい。…俺は住めれば何処でもいいって言ったんだがなァ……
トドロキ「さて、仕事は…っとォ…」
胡座をかきながら、広告を書き写したメモ(龍太が書いた)を確認する。とりあえず、自分に向いているものを一通り書き写してもらった。勿論、ふりがな付きである。
・執事 又は メイド 報酬…働きによって変化 場所…紅魔館 期間…平日は仕事、土日に休み有り 依頼者…レミリア・スカーレット
・建築 報酬…働きによって変化 場所…決まり次第お知らせします 期間…仕事が入り次第お知らせします、休み有り 依頼者…ロギィ *力自慢の転成者大歓迎!
トドロキ「こんなもんか…って二つだけかよ!!しかも報酬が安定してねェじゃねェか!!!」
俺ってそんなに仕事向いてないのか…?と、思わず考えてしまうトドロキであった。
トドロキ「あの看板にもっと書いてなかったか…?……俺…働くのやめよっかな………『ジケイダン』とかいうのには入ってるが…」
実は、彼がこの人里に住むということになった時、ロギィから自警団に強制的に参加させられたのだ。ロギィ曰く、人手不足ということらしい。
トドロキ「…ったくよォ…」
不貞腐れていると…
『ドンドンッ』
「トドロキ、居るか?」
トドロキ「あん?誰だよ、こんな時間に……」
とは言っても、まだ正午を過ぎたくらいだ。誰かが訪ねて来てもおかしくはない時間帯ではある。だが、転成者であり、ましてや非常に凶暴な事で知られる轟竜である彼を訪ねる者など、ロギィくらいである。
しかし、だからと言って無視するわけにもいかないので、心の中で面倒だと思いつつ、渋々扉を開けた。
ロギィ「よお、調子はどうだ?」
トドロキ「何だよ…なんか用か?」
ロギィ「いや、特にこれと言って用は無いんだ。ただ元気にやっているか確認しに来ただけさ」
トドロキ「ああ、そうかよ」
ロギィ「んじゃま、人里での生活を楽しめよ。じゃな」
それだけ言うと、彼は口笛を吹きながら寺子屋がある方向へと向かって行った。
トドロキ「……寝るか……」
少しがたつく扉を強引に閉めると、居間に寝そべりスヤスヤと寝息を立てて眠り始めた。
彼は、毎日のように自らの過去を夢で見る。
毎日が血で血を洗うような縄張り争い。
肉を引きちぎり、そして骨を砕く。そして地面が血に染まる。
先ほどまで生きていた筈のものは、元の形を留める事すら許されず、ただただ地面に転がっている。
その光景が焼き付けられているかのように、忘れる事ができない。
夢の中でも、延々と獲物を殺し続ける。強い者が生き残る。それだけを考えて。
夢の中では転成前の姿。自分の思うがままに獲物を喰らい、純粋に力でねじ伏せる。
いつまでも続く争い。次第に嫌気がさすが、目の前に現れ続ける獲物は容赦なく襲いかかってくる。
(助けてくれ…)
助けを求める。だが、その声は誰にも届かない。
(もう嫌だ……)
頭ではそう思っていても、心の中で永遠の争いを楽しんでいる自分がいる。
(誰でもいい……)
たとえ同族でなくても良い。ただ助けてくれればいい。自分を殺してくれても構わない。
だがここは夢の中。周りは敵しかいない。味方と呼べるようなものはいない。
(誰でも…いい……頼む………助けてくれ…!!)
(誰か…!…………助けてくれェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!)
トドロキ「うわァァァッ!!?」
何かに弾かれたかのように飛び起きる。
トドロキ「……クソッタレ………またか……」
おかげで目覚めは最悪だ。
トドロキ「…今何時だ…?」
窓をふと見ると、夕日が見えた。
耳を澄ますと人間の話し声が外から聞こえる。どうやら“いどばたかいぎ”?というものをしているようだ。
トドロキ「夕日……寝過ぎたな………ん…?」
何処からか何かが焼けるような匂いがしてくる。
その匂いで、ある事に気がついた。
トドロキ「………腹ァ…減ったな…」
昼寝をしてしまった事で、うっかり昼食を食べ損ねてしまっていたのだ。
トドロキ「……ドチクショウ……」
だが過ぎてしまった事を嘆いていても仕方が無い。
トドロキ「何か狩ってくるか…」
そう思い、立ち上がろうとしたその時。
『コンコンッ』
トドロキ(…?ロギィか…?)
それにしてはノックの音が違う。確か、もっと力強い感じである。それに対して今の音は、どこか上品な感じがした。
「トドロキさんはいらっしゃいますか?」
トドロキ(…誰だ…?)
とりあえずはロギィでは無いことが確定した。今の声は明らかに女性の声である。
だが、トドロキが知っている女性といえば、ほんの数人しかいない。そしてこの声はその数人の中の誰でもない。声の質でそれは分かった。
トドロキ「…ちょっと待ってろ、今開ける」
だが、無視するわけにもいかないので扉に手をかけ、勢い良く開ける事が無いように、ゆっくりと開けた。
トドロキ「うおっ……」
まず最初に目に飛び込んで来たのは太陽の光であった。夕日とは言え、寝起きには少々辛いものがある。
そして次に視界に入ってきたのは……
紫色の髪が印象的な少女の姿であった。
???「…トドロキさん…で、合ってますよね?」
トドロキ「…誰だお前…」
???「あ、申し遅れました。私は幻想郷縁起を執筆している『稗田 阿求』と申します」
トドロキ(幻想郷縁起……ああ…文字が多過ぎてわけわかんなかったやつか)
幻想郷縁起の事はトドロキも知っている。ロギィに薦められて一度読んだ事があったのだ。……漢字が多過ぎて内容のほとんどが理解できなかったのだが。
恐らく、この世界の住人を紹介する、いわば、ハンターが所持するモンスターリストと同じようなものなのだろうと解釈していた。
阿求「貴方の事はロギィさんから聞きました。新しく人里に住む事になった方がいらっしゃると…」
トドロキ「…そうか」
阿求「それでご挨拶の印としてささやかなものですが…どうぞ」
大男の部類に入るトドロキからしてみれば、少し小ぶりな箱を手渡された。
トドロキ「…?……あ、ああ……(なんだ…受け取ればいいのか?)」
阿求「…?どうかしましたか?」
トドロキ「いや……ホントにもらっていいのか?」
阿求「ええ、どうぞ」
トドロキ「…なら、もらうけどよ……(これが人間のシュウカンってやつか…?)」
何かを貰うというのは不思議な気分ではあるが、悪い気はしなかった。
そして、習慣というのも、あながち間違いでもなかったりする。
阿求「…あの…幻想郷縁起についてなんですが…」
トドロキ「…あん?」
阿求「もうお読みになられたでしょうか?」
トドロキ「あ、ああ…(感想とか聞かれないだろうな……答えようがねェぞ…!?)」
そして、その勘は運悪く当たってしまう事となった。
阿求「出来れば、感想を伺いたいんですが…」
トドロキ「え!?…あ……いや…えっとなんだ……その……グォア……ガウ……」
阿求「?」
トドロキ「…その………俺、字が読めないんだよなァ……だから感想とか聞かれても………困るっていうか…なんだ……その…」
ああ、俺は何を言っているんだ……字が読めない事を何で言っちまったんだ……
阿求「!!!……そうだったんですか…」
クソッタレ……人間と話すのは苦手だ……
阿求「…良かったら、私が教えましょうか?その…字について」
ああ…なんだかイライラしてきやがった…………待て、今なんつった?
トドロキ「字を…教えてくれんのか?」
阿求「はい、私で良かったらですけど…」
トドロキ「本当だな!?それは本当なんだな!?」
阿求「は、はい」
トドロキ「なら教えてくれ!!頼む!!!」
阿求「ええ、いいですよ」
トドロキ「イヨッシャアアァァァァァァ!!!!!!!」
果たしてトドロキは字を覚えられるのだろうか…
〜続く〜