東方黒龍紀 〜黒き絶望は希望となるか〜   作:ブラキDIOス(超絶スランプ)

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今回は前半が敵サイドの話、後半がトドロキの人里生活での様子となっています。

コウ「また俺ちゃんの出番が無いのね…」

龍太「ドンマイ」

コウ「…その優しさが俺ちゃんのハートをブレイクしてくるぜ…」


第二十五話〜不穏な動き〜

 

イナズマとの出会いから一日後…

 

 

〜???〜

 

 

これはとある建物内での会話。だが、この建物は幻想郷の中に存在するものの、龍太達が過ごしている空間とは別の空間に存在している。

パラレルワールドというわけではない。ただ、別の空間に存在するだけなのだ。いや、別の空間というよりも『異次元』と言った方が正しいだろうか。

 

 

「ーーー様、報告がございます」

 

まるで王を守護する衛士のような格好をした人物が、目の前の堂々たる雰囲気を醸し出している男に向かって膝をつく。

 

???「何の用だ?この世界の事が少しでも分かったのか?」

 

「はい、ここは我々が元居た世界とは別の世界のようです」

 

???「……それだけか?」

 

「…はい……」

 

???「………馬鹿か貴様は!!それくらいの事はとっくに分かっとるわ!!!」

 

「ひぃぃっ!?も、申し訳ございません!」

 

???「アピールか?自分は無能ですとアピールしているのか!?だったらもう少しマシなアピールをしろ!某動画サイトの時報の方がよっぽどマシなアピールをしているぞ!!午前二時くらいをお知らせします〜ってなぁ!!」

 

「も、申し訳ございません!!しかし、それはアピールとは少し違うものかと…「そんなのどうでも良いんだよ!!」ひっ!?」

 

???「分かったらさっさと情報を集めてこい!!ここの空間がもし、奴らに知られたらどうする!?『ちわーっす、この世界の者です〜』って、蕎麦屋の出前みたいに来たらどうすんだ馬鹿野郎!!」

 

「も、申し訳「謝ってる暇があったら、とっとと行け!!」は、はいぃぃ!!」

 

???「仕事は手早く済ませろ!!出前のようにな!!!早く行かないと蕎麦が伸びるだろ!!!」

 

「はい!!!」

 

部下が去ったのを確認すると、男は…

 

???「…全く………しばらく休息を与えてやるべきだろうか……」

 

と、頭を抱えながら小さく呟いた。そして、フゥと大きく溜息をつくと、どうせ誰にも聞かれる心配は無いとして、ぶつくさと独り言を言い始めた。

 

???「…いくら()()()()の力でこの空間ができているとは言え…ここが見つかるのは時間の問題か…」

 

そうしているうちにある事を思い出し、部下を呼び出す合図をした。

 

「お呼びでしょうか、ーーー様」

 

???「おお、早いじゃないか。良い心がけだ」

 

「お褒めに預かり、光栄でございます」

 

???「早速だが…あいつだ、あいつを呼べ」

 

「あいつ…と申しますと?」

 

???ほら…あの三重人格の……何て呼ばれてたか…えっと…」

 

「《熾凍龍》でございましょうか?」

 

???「そうだ!そいつだ!そいつをこの空間に連れて来い!!この世界に存在している事は間違いないからな。これを皆に伝えるのだ。ああ…そこまで急ぐ必要は無いぞ。情報が一通り集まったらで構わん」

 

「はい」

 

???「よし、もう行って良いぞ。用件はそれだけだ」

 

「ハッ!失礼します!」

 

部下が去ったのを確認すると、またもや大きな溜息をついた。そしてまた独り言を言い始めた。

 

???「《司銀龍》の奴は何をしているんだ…?…あのお方の命を受けているというのに……こうなったら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………この『グァンゾルム様』が動くべきだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜うってかわって人間の里〜

 

 

いつぞやの求人広告が貼り付けられた看板の前。

 

龍太「じゃ、僕はこれで…」

 

トドロキ「おう!付き合わせちまって悪かったな」

 

約束の通りに、龍太がトドロキに求人広告の内容を説明していたのであった。

 

龍太「全然大丈夫だよ。…でも寺子屋に通ったらどうかな…教えてくれるんじゃない?…多分…」

 

トドロキ「ぐ……」

 

この優しさが胸に刺さる。余計なお世話だと言いたいところだが……少しは考えてみよう。

 

龍太「…まあ、良い仕事に出会えるといいね」

 

トドロキ「おう。じゃあな」

 

龍太「うん、またね」

 

トドロキ(…今日はもう帰るか…)

 

説明を頭に詰め込むだけで、だいぶ疲れた。我ながらホントに馬鹿だと思う。自分を殴ってやりたいくらいだ。……まあそれはいい。今日はとにかく寝たい気分だ。

 

 

〜轟竜帰宅中〜

 

 

トドロキ「あ〜……疲れた…」

 

豪快に扉を開け、玄関から居間に移動する。ロギィが言うには人里でも結構大きめの家らしい。…俺は住めれば何処でもいいって言ったんだがなァ……

 

トドロキ「さて、仕事は…っとォ…」

 

胡座をかきながら、広告を書き写したメモ(龍太が書いた)を確認する。とりあえず、自分に向いているものを一通り書き写してもらった。勿論、ふりがな付きである。

 

 

・執事 又は メイド 報酬…働きによって変化 場所…紅魔館 期間…平日は仕事、土日に休み有り 依頼者…レミリア・スカーレット

 

・建築 報酬…働きによって変化 場所…決まり次第お知らせします 期間…仕事が入り次第お知らせします、休み有り 依頼者…ロギィ *力自慢の転成者大歓迎!

 

 

トドロキ「こんなもんか…って二つだけかよ!!しかも報酬が安定してねェじゃねェか!!!」

 

俺ってそんなに仕事向いてないのか…?と、思わず考えてしまうトドロキであった。

 

トドロキ「あの看板にもっと書いてなかったか…?……俺…働くのやめよっかな………『ジケイダン』とかいうのには入ってるが…」

 

実は、彼がこの人里に住むということになった時、ロギィから自警団に強制的に参加させられたのだ。ロギィ曰く、人手不足ということらしい。

 

トドロキ「…ったくよォ…」

 

不貞腐れていると…

 

『ドンドンッ』

「トドロキ、居るか?」

 

トドロキ「あん?誰だよ、こんな時間に……」

 

とは言っても、まだ正午を過ぎたくらいだ。誰かが訪ねて来てもおかしくはない時間帯ではある。だが、転成者であり、ましてや非常に凶暴な事で知られる轟竜である彼を訪ねる者など、ロギィくらいである。

しかし、だからと言って無視するわけにもいかないので、心の中で面倒だと思いつつ、渋々扉を開けた。

 

ロギィ「よお、調子はどうだ?」

 

トドロキ「何だよ…なんか用か?」

 

ロギィ「いや、特にこれと言って用は無いんだ。ただ元気にやっているか確認しに来ただけさ」

 

トドロキ「ああ、そうかよ」

 

ロギィ「んじゃま、人里での生活を楽しめよ。じゃな」

 

それだけ言うと、彼は口笛を吹きながら寺子屋がある方向へと向かって行った。

 

トドロキ「……寝るか……」

 

少しがたつく扉を強引に閉めると、居間に寝そべりスヤスヤと寝息を立てて眠り始めた。

 

 

 

 

彼は、毎日のように自らの過去を夢で見る。

 

 

 

毎日が血で血を洗うような縄張り争い。

 

 

肉を引きちぎり、そして骨を砕く。そして地面が血に染まる。

 

 

先ほどまで生きていた筈のものは、元の形を留める事すら許されず、ただただ地面に転がっている。

 

 

その光景が焼き付けられているかのように、忘れる事ができない。

 

 

夢の中でも、延々と獲物を殺し続ける。強い者が生き残る。それだけを考えて。

 

 

夢の中では転成前の姿。自分の思うがままに獲物を喰らい、純粋に力でねじ伏せる。

 

 

いつまでも続く争い。次第に嫌気がさすが、目の前に現れ続ける獲物は容赦なく襲いかかってくる。

 

 

(助けてくれ…)

 

 

助けを求める。だが、その声は誰にも届かない。

 

 

(もう嫌だ……)

 

 

頭ではそう思っていても、心の中で永遠の争いを楽しんでいる自分がいる。

 

 

(誰でもいい……)

 

 

たとえ同族でなくても良い。ただ助けてくれればいい。自分を殺してくれても構わない。

 

 

だがここは夢の中。周りは敵しかいない。味方と呼べるようなものはいない。

 

 

(誰でも…いい……頼む………助けてくれ…!!)

 

 

 

 

 

 

(誰か…!…………助けてくれェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

トドロキ「うわァァァッ!!?」

 

何かに弾かれたかのように飛び起きる。

 

トドロキ「……クソッタレ………またか……」

 

おかげで目覚めは最悪だ。

 

トドロキ「…今何時だ…?」

 

窓をふと見ると、夕日が見えた。

耳を澄ますと人間の話し声が外から聞こえる。どうやら“いどばたかいぎ”?というものをしているようだ。

 

トドロキ「夕日……寝過ぎたな………ん…?」

 

何処からか何かが焼けるような匂いがしてくる。

その匂いで、ある事に気がついた。

 

 

トドロキ「………腹ァ…減ったな…」

 

 

昼寝をしてしまった事で、うっかり昼食を食べ損ねてしまっていたのだ。

 

 

トドロキ「……ドチクショウ……」

 

だが過ぎてしまった事を嘆いていても仕方が無い。

 

トドロキ「何か狩ってくるか…」

 

そう思い、立ち上がろうとしたその時。

 

 

『コンコンッ』

 

 

トドロキ(…?ロギィか…?)

 

それにしてはノックの音が違う。確か、もっと力強い感じである。それに対して今の音は、どこか上品な感じがした。

 

「トドロキさんはいらっしゃいますか?」

 

トドロキ(…誰だ…?)

 

とりあえずはロギィでは無いことが確定した。今の声は明らかに女性の声である。

だが、トドロキが知っている女性といえば、ほんの数人しかいない。そしてこの声はその数人の中の誰でもない。声の質でそれは分かった。

 

トドロキ「…ちょっと待ってろ、今開ける」

 

だが、無視するわけにもいかないので扉に手をかけ、勢い良く開ける事が無いように、ゆっくりと開けた。

 

 

トドロキ「うおっ……」

 

まず最初に目に飛び込んで来たのは太陽の光であった。夕日とは言え、寝起きには少々辛いものがある。

 

そして次に視界に入ってきたのは……

 

 

 

紫色の髪が印象的な少女の姿であった。

 

 

???「…トドロキさん…で、合ってますよね?」

 

トドロキ「…誰だお前…」

 

???「あ、申し遅れました。私は幻想郷縁起を執筆している『稗田 阿求』と申します」

 

トドロキ(幻想郷縁起……ああ…文字が多過ぎてわけわかんなかったやつか)

 

幻想郷縁起の事はトドロキも知っている。ロギィに薦められて一度読んだ事があったのだ。……漢字が多過ぎて内容のほとんどが理解できなかったのだが。

恐らく、この世界の住人を紹介する、いわば、ハンターが所持するモンスターリストと同じようなものなのだろうと解釈していた。

 

阿求「貴方の事はロギィさんから聞きました。新しく人里に住む事になった方がいらっしゃると…」

 

トドロキ「…そうか」

 

阿求「それでご挨拶の印としてささやかなものですが…どうぞ」

 

大男の部類に入るトドロキからしてみれば、少し小ぶりな箱を手渡された。

 

トドロキ「…?……あ、ああ……(なんだ…受け取ればいいのか?)」

 

阿求「…?どうかしましたか?」

 

トドロキ「いや……ホントにもらっていいのか?」

 

阿求「ええ、どうぞ」

 

トドロキ「…なら、もらうけどよ……(これが人間のシュウカンってやつか…?)」

 

何かを貰うというのは不思議な気分ではあるが、悪い気はしなかった。

そして、習慣というのも、あながち間違いでもなかったりする。

 

阿求「…あの…幻想郷縁起についてなんですが…」

 

トドロキ「…あん?」

 

阿求「もうお読みになられたでしょうか?」

 

トドロキ「あ、ああ…(感想とか聞かれないだろうな……答えようがねェぞ…!?)」

 

 

そして、その勘は運悪く当たってしまう事となった。

 

 

阿求「出来れば、感想を伺いたいんですが…」

 

トドロキ「え!?…あ……いや…えっとなんだ……その……グォア……ガウ……」

 

阿求「?」

 

トドロキ「…その………俺、字が読めないんだよなァ……だから感想とか聞かれても………困るっていうか…なんだ……その…」

 

ああ、俺は何を言っているんだ……字が読めない事を何で言っちまったんだ……

 

阿求「!!!……そうだったんですか…」

 

クソッタレ……人間と話すのは苦手だ……

 

阿求「…良かったら、私が教えましょうか?その…字について」

 

ああ…なんだかイライラしてきやがった…………待て、今なんつった?

 

トドロキ「字を…教えてくれんのか?」

 

阿求「はい、私で良かったらですけど…」

 

トドロキ「本当だな!?それは本当なんだな!?」

 

阿求「は、はい」

 

トドロキ「なら教えてくれ!!頼む!!!」

 

阿求「ええ、いいですよ」

 

トドロキ「イヨッシャアアァァァァァァ!!!!!!!」

 

 

果たしてトドロキは字を覚えられるのだろうか…

 

 

〜続く〜

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