目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
温泉から上がった俺は、浴場の入り口付近に立つアイルーに話し掛けた。ドリンク屋である。
「旦那、ぇいらっしゃい! 今日は何にしやしょうか! ニャ!」
「そうだなぁー…」
ドリンククエストは殆どクリアしてある。何種類あるのかは知らないが、とりあえず今出ている19のクエストは全て終わらせた。
でも『ドリンククエスト』の下に表示される『CLEAR!!』の文字が銀色なので、恐らく何かしら出てないクエストがあるのだろう。
くっそぅ、こんな事になるんなら調べてやっておくべきだった!
……まぁ、今更言っても仕方ない。後悔先に立たずとは言うが、それならそれで今を楽しもう。
さて、ドリンクは何を飲もうか。ぶっちゃけ、ゲーム時代は『招きネコの激運』が発動する『ラッキーヨーグルト』か『ラッキーラッシー』のどちらかしか飲まなかったけど、折角だから色々飲んでみたい。
それに、村長さんから受けたクエストであるうえ、相手はクルペッコだから効果は正直何でも良い。
……けど、とりあえず『ラッキーヨーグルト』を飲んでみようかな。
「あい! 畏まり!」
アイルーが竹筒を取り出し、500zを支払ってそれを受け取る。
「ささ、旦那。グイッと一杯やってくだせえニャ」
アルミ缶でもスチール缶でもなく、竹筒。日本育ちの俺からしたら凄く珍しい。
アイルーに言われるまま、一気に呷る。
「んぐっ……ぷはっ!」
くぅ〜ッ! キンキンに冷えてやがるっ……!!
湯上がりのほてりと………浴場の熱気で…暑苦しい体に……染み込んできやがる……! 体にっ……!
一言で言い表すのならば、
美 味 す ぎ る ッ !!!
って、所かな。某、伝説の傭兵みたいな感じで。
爽やかな甘さに、あっさりとした喉越し。コーヒー牛乳なんて目じゃねぇ。犯罪的な美味さだ。
まさしく天にも昇る味だった。
「ニャッ!?」
ふと、アイルーが竹筒を俺の手からぶんどった。何ぞや一体。
それからアイルーは竹筒の底を見て、
「ニャッハー!! ア、アタリが出たニャ! こりゃめでたい!」
……えっ、アタリって底を見て判明するもんなの?
「旦那、次回1本無料になるサービス券をお渡ししやす!」
「あ、ありがと…」
「クエストに行く前には、あっしの店に飲みに来てくだせえニャ」
お決まりの台詞を受けつつサービス券を受け取り、俺は更衣室へ再び足を踏み入れる。
矢っ張り一瞬の出来事で、あっという間に早着替え。ゲームシステムであるとはいえ、一体何がどうなってこうなるのか謎である。楽でいいけど。
俺と二匹のアイルーは集会所を後にした。
★
さてさてさーて。
温泉に入って気力も体力も充実したので、張り切ってクエストに行ってみましょー。
アカム戦からアイテムを碌にいじってないけど、まぁ村クエのクルペッコなぞはすぐに終わるでしょう。
赤子を殺すより楽な作業よ、って奴だ。このハンターエクシア、容赦せん!
……名前的に、未来を切り開く! のが良かったかな?
どうでも良かった。
村クエは自宅の向かいにある吊り橋から出発する。正直、集会所の出発口も変わらんと思うんだが。まぁそこはゲームの事情って奴で。
オトモ達と共に━━魔理沙は震えながら俺の頭にしがみついている━━吊り橋を渡りきると━━━
━━━俺はいつの間にか、辺りに岩山の
左脇には、暖炉代わりの
穴蔵入り口の両脇には木製の燭台。内部の温度を下げない様にするためか。それぞれの燭台の隣には赤い箱と青い箱。赤い方は納品ボックスで、青い方は支給品ボックスだろう。
この外観は間違いなく渓流のベースキャンプだ。
そう、俺は渓流にやって来たのだ。
いやぁー、ゲームの時から思ってはいたけど、絶景だな。美しい自然。都会では味わえない澄んだ空気。
これだよ、これこそがモンスターハンターだよ! たまんねぇな!
「ヤッホーッ!」
思わず叫ぶ。少し遅れて山彦が返ってきた。
これが山彦か。現実に体感するのは初めてである。何か感激。
「何してんだよご主人?」
「あ、いや、ちょっと山彦を体感しようかと」
「あはは、ご主人は子供だなぁ」
何だとぅ。魔理沙なんて甘えん坊のくせにっ!
「あたい、山彦って知ってるよ! こういう山とかで叫ぶと、声がはんきょー…? して返ってくる事でしょ!」
えへん、と胸を張るチルノ。可愛いなぁ。
っていうか
「あたいも山彦したい!」
「あ、うん。いいよ」
「ヤッター!」
ハシャぐチルノ。可愛過ぎる。
大きく息を吸い込み、
「バカヤローッ!」
大きな声で叫んだ。その言葉のチョイスはどうなのか。
すると、また少し遅れて、
「何だとテメーコノヤロー!」
━━━返答の山彦が返ってきた。
…。
……。
………。
えっと……。
……
東方projectに出てくる山彦の妖怪である。ぎゃ〜て〜ぎゃ〜て〜。
響子ちゃんじゃないにしても、山彦の妖怪だろうか。最近はよく解らない事が起こったら、とりあえず妖怪の仕業にしとけっていう風潮が流行ってるし。
よ〜う〜か〜い〜の〜♪ 所為なのねそうなのね♪
ちょっと確認してみようか。
「1+1はー!?」
………。
山彦がない……知能が低い様だ……なんつって。
これで山彦は妖怪の仕業だというのが確定的に明らかとなった訳だな。
だから何だ。どうでもいいわ。
さて、そろそろ狩猟に向けて動きますか。
まずは支給品ボックスを漁ってみよう。青い箱に触れると、支給品ボックスのメニューが開かれた。ゲームと同じでアイコン表示。
入ってるものは、地図やら応急薬やら携帯食料やら。うん、殆ど要らない。ってか必要ない。所詮は村長クエストだしね。
あ、でもペイントボールだけは貰っておこう。持ってくるの忘れた。まぁ逃げられる前に仕留めきるつもりだけど。
よし。では、いざ行かん、渓流地帯へ!
傾斜となった小道から、下へ下へと降りてゆく。意外と距離あるのな。
2、3分程を費やし、漸く渓流最初のエリア1番に到着した。木々に囲まれた、美しい自然の景色が辺りに広がっている。
今、俺は2メートル程の低層断崖に立っており、すぐ左の辺りから水が流れて来ている。それは下へ下へと低い所を目指して流れており、断崖の下には薄い水が張られていた。
そこには3匹の……いや、3羽と数えた方がいいのか。ガーグァ達が歩き回っている。
まるで大きくなった鶏……いや、少しだけ小さくなったダチョウとでも表現すれば良いのか。それを鮮やかな青色に染めて、もっとブサイクにした感じ。兎に角可愛くない。
うむむ……どうせならケルビの方が見たかった…。まぁいいや。
とりあえずクルペッコを探す事から始めなければ。
まずは左にある小道からエリア2を目指す。
辺りから徐々に木々が消えてゆき、僅かに草が生えているだけの岩場に到達した。
右手にはベースキャンプと同じぐらいの切り立った崖が広がっている。思わずタマヒュンしてしまう……あ、俺もうタマ無いんだった…。
まぁ、兎に角絶景だよ。
そこを真っ直ぐ進むと、分かれ道に突き当たる。左に進めば、竹の自生する地帯へと行き着くだろう。山菜爺さんの居る3番のエリアだ。
だが、今回は右のエリア6に続く下り坂を進んでゆく。クルペッコが居るとしたら、エリア6が一番怪しい。
長い下り坂を進み、漸くたどり着いた。轟々と小さな滝の流れるエリアだ。浅い川が広がっている。
「……ご主人、奴だ」
魔理沙がぼそりと小さな声で話し掛けてきた。
今回のクエストのターゲットである、クルペッコがそこに居た。
本当は前話の後書きに貼る予定だったんだけど……。おまけです。
★エクシアの知らない事。
集会所、温泉外の柵の前に居る者達の会話。
「矢張りエクシアちゃんは可愛いな」
「ああ、可愛い」
「小柄なのに胸はちゃんとあって、バランスが整っているよな」
「激しく同感だが、そういう事は余り口走るな」
「すまん、つい本音が…」
「シッ! エクシアちゃんが湯に浸かるぞ」
「………」
「……いつ聞いても色っぽい声だな」
「ああ」
「全くだ」
━━━彼らはエクシアちゃんファンクラブの者達である。ここに居るのはほんの一握りであり、総勢を把握している者は居ない。
エクシアちゃんファンクラブの掟。
一、会員はエクシアちゃんに近付き過ぎてはならない。
一、会員は自らエクシアちゃんに話し掛けてはならない。
一、会員はエクシアちゃんと混浴してはならない。
一、エクシアちゃんに近付く野郎は死、あるのみ。
一部抜粋。
彼等の所為(お陰)でエクシアに近付く男は居ないという事を、当の本人は知らない。