目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした   作:勇(気無い)者

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ドスファンゴ狩り祭りマジでふざけんな。

 日は沈み、美しい満月が顔を出し始めた頃の事。

 場所は変わって、渓流の中で最も西にあるエリア9番。地図で言えば、最も左にある場所である。

 ここには大きな大木が存在する。といっても、縦に背が高いのではなく、横に大きいのだ。目算で横幅が7、8メートルはあるんじゃないかという太さ。枝も長く伸びて紅葉の様な葉を窶しているが、ベッキリと折れた太い枝もある。上の方が平たくなっている様で、そこは何か生き物の巣にでもなっているのではなかろうか。

 また、根元には苔がびっしり生えた鳥居が立っており、そこには蜂の巣が存在する。絶対に近寄りたくない。しかし、鳥居があるという事は、この大木は祀られていたのかもしれない。小さいボロ小屋も建っているし、きっとそうだ。

 東側には断崖絶壁が広がっているが、橋も掛かっている。枝が幾重にも重なって出来た様な、一見するととても脆そうな長く伸びた橋。意外と頑丈な様で、人が渡っても大丈夫ではある。見た目から、とても渡る気にはならないのだが。渡れば山菜爺さんの居るであろうエリア3番の竹林地帯へと辿り着くだろう。

 南側には洞窟がある。中へ入って真っ直ぐに進んでゆけば、飛竜の巣へと辿り着くだろう。更に進めば、俺が孤軍奮闘していた浅い川の張ったエリア6番へと辿り着く。

 北側は緩やかな下り坂が続いている。かなり長いが、ずっと進んでゆけば大きな川が一望出来るエリア7番へと辿り着く。地図で言えば、最も上に位置する場所。

 

「ねぇ…」

 

 ふと、背中合わせに座っているセツナが声を掛けてきた。

 一度は二手に別れた彼女だが、エリア6番で俺が一頻(ひとしき)り暴れてドスファンゴの死体を積み上げ、足の踏み場に困る程に討伐しまくった後。流石にやり辛くなってきたので、場所を移して北の大きな川が広がるエリア7番へと移動したのだ。

 そこにもドスファンゴ共はウジャウジャ湧いていた。この頃には全身に疲労が溜まり始め、腕は重くなっていた。数は一向に減る気配が無かったが、俺は気力を振り絞って必死に双剣を振るいドスファンゴを狩り続けた。

 一時間程経過した頃の事だ。東の方からセツナがやって来た。恐らくはエリア4番で狩り続けて、死体が邪魔になったので流れて来たのだろう。

 それからは彼女と共闘し、ドスファンゴを狩り続けた。

 それでも矢っ張りドスファンゴは次か次へと湧いてきて、7番も足の踏み場に困り始めた頃には日が傾き、時刻は夕方となっていた。

 俺とセツナは再びエリア移動する事を選択し、西側の緩やかな傾斜を登り始めたのだ。それでもドスファンゴ達は追い掛けてくる上、新しい奴が草村から次々湧いてくるので、討伐しながら移動する羽目になった。

 なので、俺達の通った道にはドスファンゴの死体がゴロゴロ転がっている。まさしく死屍累々の光景。

 

 漸く今のエリア9番へ辿り着いた頃には日もすっかりと暮れ、夜空が広がり満月が輝いていた、という訳である。

 そして、そこでは勇儀と妖夢が奮戦を繰り広げており、俺とセツナも加わりドスファンゴを狩り続けた。

 凡そ50匹程仕留めただろうか。漸くドスファンゴが現れなくなり、一息ついて今に至る、という訳である。

 前述の通り、俺と彼女は背中合わせに座っている。もう疲労が限界だった。腕や足は鉛の様に重くなり、身体を動かす気力などは欠片も残っていない。

 また、アイテムポーチのアイテムも殆どすっからぽんとなっていた。回復薬グレートは使い切ったし、回復薬も僅かにしか残っていない。秘薬も使った。砥石も使い切ったが、キレアジは少し残っている。持ってきて本当に良かった。

 あと、途中から空腹がヤバかった。強走薬を飲むと少しは気を紛らわせる事も出来るが、一時的なものでしかない。5個全て使い切り、試しにクーラードリンクやホットドリンクを飲んでみたが、腹が満たされる事は無かった。まぁ、無いよりマシではあったので全部飲んだけど。

 いにしえの秘薬も試してはみたが、腹が満たされる訳では無かった。多少は疲労がとれたので有り難かったけれども。

 

「ねぇ、ってば…聞いてるの…?」

 

 おっといけない。セツナが話し掛けてきていたのだ。今までの出来事を振り返っていて、彼女の事を忘れていた。

 因みに、勇儀は腕や足を放って大の字の体勢で仰向けに倒れている。妖夢は(うつぶ)せに倒れ、お尻を僅かにあげていた。ちょっと可愛い。

 何にしても、みんな満身創痍である。

 

「……どうしたよ…?」

 

 正直、喋るのも億劫だ。でも、何もしなかったらこのまま眠ってしまいそうなので、会話に付き合う事にした。

 

「……あんた、さ…何匹ぐらい狩った…?」

「……さぁ、ね……100までは数えていたけど…、そっから面倒くさくなって……数えてない…」

 

 少なくとも150は狩ったと思うが、詳しい数字は本当に100までしか数えてないので解らない。面倒というより、余りの疲労に数えられなくなった。そんな余裕は本当に無かったのだ。

 

「…そ……奇遇ね…私もよ…」

 

 セツナも同様であるらしい。まぁ、当たり前だろう。重ねて言うが、みんな満身創痍なのだ。腹も減ってる。だが、それ以上に早く帰って眠りたい。

 再びセツナが口を開く。

 

「クエスト……終わったの…かな…」

「……さぁ…」

 

 クエストが終わったのなら、そろそろ集会所へ瞬間移動する筈である。セツナも一緒だろう。

 しかし、暫く待ってもその兆候は無い。

 ……まさか、まだどこかにドスファンゴが残っているのだろうか。クエストのクリア条件が『ドスファンゴの全滅』だった事からも有り得ない話ではない。マジで勘弁だな。もう動きたくない。

 それと、考えられる可能性がもう一つ。ゲーム時代に設定されていた『50分』という制限時間を過ぎてしまった事による影響だ。瞬間移動等はゲームシステムから来るものだから、有り得ない話ではない。だとすると、歩いて帰還しなければならなくなる。

 ………。

 それも本当に勘弁してほしい。ユクモ村の場所だって解らないし、動きたくない。動きたくない。

 心の底から思う事なので2回言いました。

 ふと、離れた所から何かの足音が耳に届いた。

 音源の方へと視線を移せば━━━

 

「……セツナ…」

「……何よ…」

「…どうやら……クエストはまだ…終わってない、らしい…」

 

 気力などはもう残っていない。だから、意志の力でゆっくりと立ち上がる。腕が、足が、身体がガタガタと震えてしまう。

 それでも何とか立ち上がり、双剣を構える。

 

「…お山の、大将の…、おでましの様だ…」

 

 エリア7番の道から姿を現したのは━━━人の三倍はあろうかという、巨大なドスファンゴだった。

 金の王冠だとか、そんなレベルの話ではない。リオレウスよりもデカいのだ。明らかに異常なサイズだ。

 セツナも気力を振り絞る様に立ち上がる。勇儀と妖夢も同じく。

 

「…巫山戯んじゃ、ないわよ…こんな所、で…終わって…たまる…もんですか、…」

「……それだけの、啖呵を切れるなら…安心だ、な…」

 

 ドスファンゴが此方に気付いて鼻息を荒くする。やる気満々って感じだな。マジで勘弁してほしいぜ…。

 

「……行くぞッ!」

 

 俺達は武器を振りかざし、ドスファンゴへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

「………ん……シア…ん…!」

「…ん…ぁ…?」

「エクシアさん…! 良かった…!」

 

 目を覚ますと、目の前には涙目になったいつもの受付嬢さんの顔が。

 ……周りを見回すと、ここは集会所のクエスト出発口の前だった。すぐ隣にはセツナが倒れており、赤撫子の受付嬢さんが介抱している。勇儀と妖夢の姿は見当たらない。どこに行ったのか。

 ……どうにも伝説の(スーパー)ドスファンゴに相対してからの記憶が曖昧だ。俺達はクエストをクリアしたのだろうか。それとも失敗したのだろうか。そもそも、伝説の超ドスファンゴを討伐出来たのかどうかも解らない。

 受付嬢に支えられながら身体を起こす。全身の疲労感は消えていない。とてつもなく怠い。

 でも、クエストの成否は気になる。

 

「…クエストは、どうなりました…?」

「勿論、成功ですよ。エクシアさんとセツナの活躍のお陰です」

「…そう、ですか…、」

 

 良かった…。これだけ頑張っておいて、クエストは失敗ですとか言われたら目も当てられない。ショックの余り引退するわ。

 

「報酬金をお支払いしたいので、カウンターまで来て頂きたいのですが……立てますか?」

「……ええ、…何とか…」

 

 僅かに回復した気力を振り絞り、足に力を込めて立ち上がる。が、バランスを崩して受付嬢に寄り掛かってしまう

 

「きゃ…っ」

 

 受付嬢の小さな悲鳴。見れば、彼女の胸を鷲掴みにしていた。

 ……けど、手に感覚が無いので全然解らない。折角のラッキーイベントも無意味に終わった。くやぴぃ…。

 それから受付嬢に支えてもらいながらカウンターへ行き報酬金━━セツナと折半で10000z━━を受け取った所で、セツナも此方へやって来た。彼女は報酬金を受け取ると、フラフラとした足取りで集会所を出て行こうとしたが、途中で崩れ落ちて膝をついた。

 

「そんな身体で無茶ですよ、セツナ様…。部屋を用意してますから、そこで少し休んでからでも…」

「…嫌よ……私は、ギルドを信用、してないの…、よ…」

 

 再び立ち上がるセツナだが、バランスを崩して倒れそうになった所を、赤撫子の受付嬢が抱き留めた。

 ……ギルドを信用してないだって? 一体、何があったというのだろうか。

 それから暫く受付嬢達がセツナを説得しようとするも、彼女は頑なに首を縦には振らなかった。何をそんな意地になっているのかよく解らないが、見るに見かねて声を掛ける。

 

「…だったら、私の家に来るか…?」

 

 俺の発言に、3人とも目を丸くしていた。その中でも、青撫子の受付嬢が一番驚いた顔をしている。……何故。

 兎も角だ。

 

「…セツナの家が…、どこにあるのかは、知らない…。でも、私の家が一番近いのは、間違いない…少し休んで行くと、いい…。…凄く疲れてる…、筈だ…私も酷く、疲れてるから…ね…」

 

 暫く逡巡していたセツナだったが、やがて、

 

「………そう、ね…」

 

 俺の提案を受け入れ、首を縦に振った。

 

 その後、俺達は受付嬢達に送ってもらい、家に着いた途端にベッドへ倒れ込んで2人一緒に泥の様な眠りについた。

 




勇儀と妖夢は農場へ帰ってますんで御安心ください。
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