目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
あのクソミソカスッタレの変態意味不明ボケキザバカ生物の男がポッケ村へやって来てから、1ヶ月の時が経とうとしていた。
あのクソ野郎は本当にクソ野郎だった。
まず、集会所で働く女性職員にセクハラ紛いのボディタッチを平然としてくるのだ。しかも、嫌がっている素振りを見せているのに平気で何度もタッチしてくる。もうこの時点でクズ確定。そもそも嫌がっているのに何でやめないのかが理解不能。嫌がっている事に気付いてないのか。バカなのか。バカなんだろうか。気色悪い。
それとも知っててやっているのか。もしもそうだとしたら、心臓に毛がはえているとかいうレベルじゃない。剛毛だわ。何の自慢にもなりゃしないけど。気色悪い。
あと、仕事してない。いや、本当にしてないのかは知んないけど、大抵は受付嬢にセクハラしてるか女の子を舐め回す様に観察してるかだ。隙あらば私にも触れようとする。気色悪い。人に本気で死ねと思ったのはこれが初めてだ。思わず殴りそうになったけど、粗相はしないってお姉さんに約束してるし…。急に心臓麻痺とか起こしてショック死しないかな。気色悪い。
それに、男性職員には矢鱈と厳しい。些細なミスでもネチネチと説教している。器が小さい。まずアンタが仕事しなさいってのよ。手本を見せなさいよ手本を。気色悪い。
あんなのが上の地位に就いているなんて、ギルドはもうダメかもしれないわね。気色悪い。
いつ心臓麻痺起こすのかな。早くショック死してほしい。今すぐに。
「セツナ君」
くだらない事を考えながら村の中を歩いていると、元ハンターの中年男が話し掛けてきた。彼は私がポッケ村に来る前の常駐ハンターだった人。膝に轟竜の爪を受けてしまってな…とか言ってた気がする。よく無事だったわね。とりあえず、立ったり歩いたりは出来る程度に回復したらしいわ。
「何?何か用?」
私の口からは相変わらず素っ気ない言葉が出てくる。でも、この人も嫌そうな顔をしない。ちょっと世話焼き好きで鬱陶しいけど、別に嫌いじゃない。
「いや、相変わらずキミはアイルーを雇っていないのかね?」
「またその話?」
彼は偶にこの話を持ち出してくるが、私はアイルーなんて雇う気はさらさら無い。だって、こんな私に毎日振り回されるなんて不幸じゃないの。私だったら絶対に嫌だ、こんな奴。
……自分の事ながら傷付くわね…。
「しかしだね、アイルーを雇えばキッチンアイルーとして料理を作ってくれたり、オトモアイルーとして狩りをサポートしてくれたりと色々便利で……」
「そんな事言ったって雇う気なんか無いわよ」
プイッと素っ気なく話を切り上げて歩き出す。私がアイルーを雇うなんて、それだけで虐待だと思われかねない。家出なんてされた日には、流石の私でも傷付く。
それに、キッチンアイルーが料理を作るとは言うけれど、それはどうなの?毛が入ったりしないの?だって、アイルーって全身に毛が生えてるじゃないの。どう考えても毛が入っちゃうでしょうが。何で誰も気にしないの?
オトモアイルーにしたって、私と上手く連携を取れるとは思えない。前に何度か別のハンターと一緒に狩りへ出た事があるけど、全然上手くいかなかった。誰も私についてこれなかった。ハンターがついてこれない程なのだから、アイルーが私についてこられるとも思えない。1人で狩りをしている方が色々と楽だと思う。
「あら、セツナちゃん」
今度は道具屋のおばさんが話し掛けてきた。
「何?何か用?」
相変わらず誰に対しても口を突いて出るのは素っ気ない言葉。こんな自分が嫌になる。どうして素直になれないのか、自分でもよくわからない。何でだろう。
おばさんも最初の頃は口喧嘩ばかりしていたけど、今では嫌な顔一つせずに優しく話し掛けてくれる。
「ギルドマネージャーさんがそろそろ帰ってくるらしいわよ。手紙にそう書いてあったわ」
「お姉さんが……そう」
という事は、あのクソ野郎がギルド本部へ帰ってくれるって事ね。長かったわ。何か本気で辞めようとかと考えてる受付嬢も居たらしいし、良かった良かった。
「それはそうとセツナちゃん、今日は良いリンゴを仕入れたのよ。買ってかない?」
「そうね…、じゃあ2つちょうだい」
「2つで30zよ」
お金を支払い、リンゴを2つ受け取った。「ありがと」と短く礼を述べ、リンゴを1つかじりながら歩き出す。うん、甘くて美味しい。
それから私は集会所ではなく、訓練所へと足を運んだ。最近は集会所に行ってはいない。あのクソ野郎に会いたくないからだ。
なので、暇つぶしに訓練所で闘技訓練とかを行っている。大闘技場の中にモンスターを放ち、1対1で闘うシンプルな訓練。装備品は
昨日はイャンガルルガを討伐したんだっけ。今日は何をやろうかな。
ティガレックス……は、別に訓練するまでもない相手だし、キリンなんかは良いかもしれない。私はちょっとだけキリンが苦手だし。いや、本当にちょっとだけね。それか、基本に立ち返ってイャンクックをやるのも良いかもしれない。基礎は大事だって教官も言ってたし。
そんな事を考えている内に、訓練所へと辿り着いた。集会所の脇にあるゲートを潜って奥へ進むと、木製の少し大きな小屋が見えてくる。そこが訓練所。
更に奥へ進めば、闘技訓練を行う為の大闘技場もある。
ドアを無造作に開け、中へと入る。
「教官、居る?」
「む、セツナか」
教官が此方へと振り返る。彼は机の上に置いてある箱の中身をいじっていた様だ。
「リンゴ食べる?」
「む、ありがたく戴こう。丁度腹が減っていた」
私の手からリンゴを受け取り、それをひとかじり。
「今日も訓練か。集会所のクエストは良いのか?」
「良いのよ、私以外にもハンターは居るんだから別に問題ないでしょ。それとも私がここに来ちゃ迷惑な訳?」
「む、そんな事は無いぞ。寧ろ大歓迎だ。訓練所に来るハンターは最近、めっきりと減ってしまったからな。我輩は暇なのだ」
この訓練所、大丈夫なの?その内潰れるんじゃ?
私には関係ないけど。
「それよか、その箱の中身は何なの?」
「これか? これはセツナ、貴様専用の装備品だ」
って事は特注品の……。
……私は悪くない。
「で、今日は何の訓練を受けるのだ?」
「そうね、キリンの闘技訓練が良いわ」
「うむ、キリンか。キリンの雷に打たれれば、いくら頑強な鎧といえど、あっという間に消し炭だ! だが気持ちで負けていては話にならんぞ。攻めの気持ちを常に持ち、困難を乗り切るのだ! と言いたい所だが、生憎と訓練所にはキリンが居なくてな……」
ガクッと思わずこける。
「居ないなら居ないって最初からそう言ってよね!!」
「うむ、すまん。久しく言ってない台詞だから、ちょっと言ってみたかったのだ」
「そんなくだらない理由で!?もう!!」
「まぁそう怒るな。そうだセツナ、もし暇ならキリンを捕獲してきてくれんか?」
「嫌よ面倒くさいもの。暇なら教官が自分で行けばいいんじゃない?」
「我輩は訓練所を離れる訳にはいかん」
「でも暇なんでしょ?」
「それでもだ」
この人、たまによくわかんないわね。誰も来ないならここに居てもしょうがないでしょうに。
「あー……わかったわよ、行ってくるわよ行ってくればいいんでしょ!!」
「おお、すまんな。因みに、キリンのクエストが無かったらティガレックスかディアブロスを頼む」
「はぁっ!?……もう!!仕方ないわね!!ホント、私が居ないと駄目なんだから!!」
「ついでに生肉を頼む」
「それは自分で何とかしなさいよ!!」
★
「やぁ、セツナさん。お久しぶりです」
で、集会所に来れば当然ながらコイツが居る訳で。
出会い頭に人の手を勝手にとろうとしたので、後ろに引っ込める。
「最近は全然来ていただけてなかったので、心配していたのですよ?」
今度は人の後ろに手を回そうとしてきたので、咄嗟に距離をとる。そのまま背後を見せない様に立ち回る。
コイツは人の後ろに回るとボディタッチしてくるから、絶対に背中は見せない。しかも、お尻を触ってくる……らしい。もしもコイツに身体を触られたら、私はコイツを半殺しにしてしまう。
流石にそれは拙い。お姉さんとの約束を破る事になる。
「どうしたのです、セツナさん? スキンシップをさせて下さい。何なら私の胸に飛び込んで来てくれて良いのですよ?」
死ね。今すぐ心臓麻痺を起こして安らかにくたばれ。
「スキンシップなら、そこに居るアイルーにでもしたら…いいんじゃないですか…?」
「ハハハハ! 私は女性以外にはスキンシップをしないのですよ」
早く心臓麻痺起こしなさいよ。
っていうか、粗相をしないって約束守る為に一応コイツに敬語使ってるけど、使う必要性が感じられない。っていうか思い切り罵ってやりたい。っていうか殴りたい。
数分程したら諦めたらしく、奥の部屋へと姿を消した。
全く、くだらない事で時間とらせるんじゃないわよ。私は忙しいんだから。
すぐにクエストボードの前に立ち、キリン討伐の依頼を探し……探し………無いわね。じゃあティガレックス……も無い……ディアブロスも無い。
「何よ無駄足じゃないの!!もう!!」
仕方ないので、私はグラビモスの討伐依頼を受けるのであった。
「キリンもティガレックスもディアブロスも依頼が無かったから、グラビモスを捕まえてきてあげたわよ」
「グラビモスは足りているのだが…」
「………」
「………」
「もう!!もう!!もうもう!!!もうー!!!」
「牛の鳴き真似、か…?」
「んな訳ないでしょ!!」
「ぁ痛っ!!」
訓練所は今日も暇です。バンド組めば二人ぐらい来そう。