目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
「……ふわああぁぁ…」
思わず欠伸が出てしまった。隣のリリーとレベッカ、それにサニーがニコニコしながら此方を見詰めている。
……手で口元を覆うぐらいすれば良かった。いくら何でもはしたない。もうちょっと女の子らしくしないと。
しかし、あれから2時間は釣り続けているが、一向に黄金魚が釣れる気配は無い。というか、姿を見せる事すら無い。
……どうなってんだ一体……っと、魚がヒットした。ハリマグロだ。既に上限の30匹に達しているのでアイテムポーチには入らない。遠くに放り投げてリリース。2、30メートルぐらい飛んでいった。
座った状態で軽く放り投げただけなんだが、結構飛ぶんだよな。凄く強い肩をしている。本気で投げれば6、70メートルぐらい飛ばせそう。後で試しに石ころとか投げてみようかな。
再び膝の上に戻ってきた魔理沙を撫でながら、くだらない思索に耽る。
「っと、また来た」
またしてもハリマグロ。即座に遠投リリース。遠くに放り投げてるけど、戻って来ちゃってるんだろうか。
……まさかな。流石にそれは頭が悪過ぎるだろ。
リリーやサニー、レベッカも未だ黄金魚を1匹も釣りあげてはいない。外道ばかりである。白金魚は既に3匹釣り上げたというのに…。有り得ないだろ、この状況。
有り得ないといえば、4人ピッタリくっ付いて釣りをしているというのに、一度もおまつり状態になっていない。リアルだったら絶対に有り得ない。
これもゲームシステムとかの関係なのだろうか。不思議。まぁ、お陰で美少女達に囲まれながら釣りが出来るから良いんだけど。
「そう言えば、セツナはどうしてるんだろう」
「セツナさんですか? そう言えば、ずっと見てませんね…」
「セツナさんならあっちの方で釣りしてますよ?」
レベッカが左方を指差し、其方に視線を移せば一番向こうの方にセツナの姿が。
……あんな所で釣れるんだろうか。ゲームではそもそも釣りポイント以外の場所で釣りが出来なかったが。
……試してみようかな。
「私、ちょっとポイントを移動してみるね」
「あっ、じゃあ私も行きます」
「私も行くのです!」
「…私も…」
みんなで移動する事になった。マジですか。
まぁ、移動といっても少しズレるだけなんだけどね。
★
「……ふわああぁぁ…」
本日、二度目の欠伸。今度は口元を手で覆ったぞ。
それでもみんなは俺を見ながらニコニコしている。何というか、微笑ましいものを見た様な表情というか…。
まぁ、そんな事はどうでもよくて。
移動してから、魚の食い付きがめっきり減ってしまった。かれこれ1時間ぐらい経過していると思うのだが、釣れたのは5匹。全然魚が寄って来ない。
だが、黄金魚を1匹だけ釣り上げる事が出来たぞ。やったね。サニーとレベッカも1匹ずつ釣りあげているので、合計3匹。目標数は30匹。丁度10倍。
「……ハァー…」
やる気失せるわ…。なんつー面倒くさいクエストなんだよ…。退屈で死ぬ…。膝の上の魔理沙だって寝てるし…。
「エクシアさん、溜め息を吐くと幸せが逃げていっちゃいますよ」
と、リリー。逆に君は何故そんな笑顔なのかね…。
「あー、ごめんね。なかなか黄金魚が釣れないものだから…」
「そう言えばそうですね。他の魚はいっぱい釣れたのに、不思議ですね♪」
この娘は何でこんなに上機嫌なんだ? 黄金魚が全然釣れていないというのに。俺なんてもう長く座り過ぎて尻が痛くなってきたんだけど…。石の上にも三時間。
……慣用句じゃないんだから。
ふと、右肩にレベッカがもたれ掛かってきた。……寝ている。
まぁ、この娘は子供だしね……いや、子供じゃなくても眠くなるわな。俺もちょっと眠い。
気を紛らわす為に魔理沙でも撫でるか。
そう思った時だった。水面がジャバジャバとはねた。魚が餌に食い付いたのだ。俺の竿ではない。
「レベッカ、引いてる引いてる!」
「ふぁぇ…!? あ…っ!」
レベッカを夢の世界から引き戻し、彼女の持つ竿を一緒に引く。釣り上げたのは、本日4匹目の黄金魚。
「でかした、レベッカ!」
「ふぇ!? あ、はい! …えへへ」
レベッカを抱きしめて頭を撫でる。よくやった! マジで!
これであと26匹!
……26匹……やっと、か…。先はまだまだ長い…。
…いかん、数字を意識すると途端にやる気が失せる。考えない様にしよう。
それから再び釣れないまま30分が過ぎた頃の事。
……凄く…眠いです…。
今度は俺に睡魔が襲ってきた。さっきから頭がこっくりこっくりと舟こいでいる…。滅茶苦茶眠い…。ヤバい…。
……ちょっと寝ちゃおうかな…。魚も全然こないし、少しぐらい良いよね…。
「エクシア!! 後ろ!!」
「ふぁぇ━━━うぐっ!!」
背中に強い衝撃を受け、海の中へと叩き落とされた。
……まただよ。何なんだよ一体…。
水面から顔を出してみると、そこにはブルファンゴの死体が転がっていた。すぐ近くにはセツナが立っている。彼女がやったらしい。
「大丈夫?」
「…うん…大丈夫…」
セツナの伸ばした手を掴み、陸へと上がる。
……ああ、もう…。また磯臭くなる…。
「ごめんなさい、エクシアさん……。エクシアさんなら避けられるって勝手に思い込んでしまって…」
「ああ、いや。リリーが謝る事じゃないよ。私が寝こけてたのがいけないんだし…」
というか、落とされたのって俺だけなのか。膝の上に乗っていた筈の魔理沙ですら落ちていない。何でだ。
「……へくちっ!」
…寒っ…。水に濡れた所為もあるけど、日が大分傾いてきたからかな。少し前まであんなに暖かかったのに。
「…大丈夫ですか、エクシアさん…」
「う、うん…このくらい何ともないよ」
「何言ってんのよ風邪でもひいたら元も子もないわよ。今日のところはベースキャンプに戻って休みましょう」
「そうですね、そうしましょう」
「…賛成…」
「なのです!」
「えっ? えっ?」
あ、あれ。何だか話が勝手に進んでいくぞ。今日のところはってどゆこと? 明日また釣ろうって事? クエストは日を跨いでも良いのかえ?
「さ、行くわよ」
「行きましょう、エクシアさん」
「行くのです、エクシアさん」
みんなに手を引かれながら、元来た道を戻る事になった。魔理沙と霊夢も後をついて来る。
そうして、エリア2番まで戻ってきた時の事。
セツナが急に立ち止まり、
「ねぇ、誰か肉焼きセット持ってる?」
「あー、肉焼きセットなら私が持ってるけど…」
「そ」
素っ気なく返事を残し、セツナは風の如く駆けだした。その先には3頭のアプトノス。ホーリーセーバーを抜き放つと、アプトノス達に斬り掛かった。いや、襲い掛かったと表現した方が正しいかもしれない。
アプトノス達はあっという間に倒れて動かなくなった。相変わらず見事なお手前で。
そして、みんなで剥ぎ取りを行い、ベースキャンプへと戻ってゆくのであった。
ギリッギリで間に合った……!