目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした   作:勇(気無い)者

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渓流に現れた野生の痴女さん。

「ハァッ!? ハッ、へ…ッ、ヘェアッ!?」

 

 メダパニ状態の俺は、裸同然の女性を前に訳のわからん奇声をあげていた。

 何この状況? どういう状況?

 すると、女性は此方に向かって全力ダッシュで近付いてきた。その表情にはどこか鬼気迫るものがある。

 対する俺は更に混乱した。いや、魅了されているとでも言えば良いのか。俺の視線は主に女性の胸辺りに釘付けとなっている。ここに来て25年間捨てる事の叶わなかった童貞が仇となってしまった。

 彼女は残り数メートル程の位置で勢い良く跳び上がり、そこから仮面ライダーばりの跳び蹴りを繰り出してき危ねっ!

 咄嗟に前転で回避成功。もうほんの少し遅ければ俺の顔面にライダーキックが決まっていただろう。

 すぐに身体を起こして振り返ると━━━裸の女性は既に眼前まで迫っていた。

 

「ぐぅ……ッ!!」

 

 彼女に突き飛ばされ、更にマウントを取られて上に乗られてしまった。そして、俺の首を両手で絞める。

 

「ぅぐ……ぅ……ッ!」

「……恨みは無いけど、見られた以上は死んでもらうしかないカナ」

 

 俺の首を絞めている手を振り解こうにも、女性の力が強すぎて振り解く事が出来ない。足をバタバタさせてもどうにかなる訳がない。

 ……あ、ヤバい……意識が……段々と……、こんなところで、真っ裸の女性に……首絞められて死ぬとか……笑い話にも……ならねえ……、

 

「ぅぐぅ━━━ッ!!」

「━━━ッ!?」

 

 それは、無意識の行動だった。自分の意識の落ちる直前、俺は手を真っ直ぐ伸ばして女性の顔面目掛けて貫手(ぬきて)を放った。

 すると、彼女はそれが当たる直前に手を放して飛び退いた。もしも目に当たった場合、失明の危険があるからだ。失明しなかったとしても、確実に視力は落ちる。

 ……この世界では外傷を負う事が無いので、視力が落ちる事もない気がするが。

 

「カハァッ! ゲホッゲホッ、ゲホッ……!!」

 

 新鮮な空気を肺の中へ取り入れ、喉を絞められていた苦しさから咽せる。

 し、死ぬかと思った……! マジに今のは死ぬかと思った……! あとほんの数秒遅れてたら死んでた……!

 自分の意思でやった訳ではないので、もしかしたら身体の防衛本能が働いて勝手に動いたのかもしれない。何にしても助かった。

 

「……無駄な足掻きカナ。どっちみち君は死ぬしかないカナ」

 

 ……カナっていうのは、もしかしなくても語尾なのカナ。ちょっと狙い過ぎな気がするカナ。色んな意味で。

 っていうか、何で服来てないのこの人? 新手の痴女か。どうしても胸元に目がいってしまう俺は童貞の鑑。

 そんな事はどうでも良くて、何で俺は目の前の痴女に殺されそうになってるんだ? さっき『見られたからには〜』みたいな事を言っていたような気がするが、痴女ってる所を見られたくないなら服を着ろよという話。

 兎も角、殺されてやる訳にはいかない。何とかセツナと合流するのがいいカナ。

 しかし、どうやって逃げようか。モドリ玉はあるけど、これはいざという時の手段として取って置きたい。

 ……となれば。

 アイテムメニューを開き、目の前に並ぶアイコンの1つをタッチ。瞬間、右手に丸い玉を掴んだ感覚があり、すぐさまそれを前方に投げる。

 すると、辺りに白い閃光が走った。……筈。

 投げたのは当然、閃光玉である。目を固く閉じた上、腕で覆って防いだので本当に白い閃光かどうかはわからない。が、痴女さんの怯んだ様な声は聞こえたので効果があったであろう事は間違いない。

 

「HAHAHAHA! あばよ、とっつぁ〜ん!」

 

 この世界の人間には100%伝わらないネタ台詞を吐きながら、エリア8番へ続く滝裏の洞窟を目指して走る。浅い川が流れている所為で若干走りにくい。とりあえずセツナと合流して、この痴女の事を話すのが先決だ。

 しかし、痴女ながらいい身体してたな。顔も髪に隠れて見づらいけど、さっきチラリと見た感じ美人だった。何で痴女なんかやってるんだろうか。全裸で渓流歩き回るとかアブノーマルにも程があるだろ。何なの欲求不満なの?

 何とはなしに痴女さんの方を振り返ると、

 

「なっ……!?」

 

 ━━━痴女さんが目を瞑りながらも俺の方へ向かって全力ダッシュで近付いてきていた。

 な、何で!? 閃光玉で目が使い物にならん状態にある筈なのに何でなんでナンデ!?

 とりあえず直角に曲がってやり過ごそうと試みる。が、痴女さんは何故か此方の居場所が解るとでも言わんばかりに俺を追ってくる。

 しかも足が速い。俺の二倍近くの速度で、正確に此方へと迫ってくる。お前はニュータイプか。若しくはイノベイター。

 このままではまた捕まってしまう。そうなったら、今度は決して抜けられない方法で殺しに来るやもしれない。

 俺は痴女の方へ振り返ると、強く地面を蹴って飛び上がった。どこぞの元配管工の様に高い跳躍。軽く痴女さんを飛び越えて着地。

 透かさずエリア8番方面へと走る。チラリと振り向いてみれば、またしても痴女さんは目を瞑りながらダッシュで俺に近付いてきていた。

 だから何で俺の居場所がわかるんだよ!? マジでニュータイプとかか!?

 もう一度配管工ジャンプで躱すものの、どうやって逃げるか。何か使えそうなアイテムは……、こやし玉、とか……? うんこをぶつけられたら流石に逃げていくかもしれない。モンスターだって逃げていくし。

 ……いや待てよ? もしも意に介さず此方へ向かって来たら……、それは嫌だな……こやし玉は最終手段にしよう。といっても、他に使えそうなアイテムなど持ってはいない。ペイントボールなんかぶつけても仕方ないだろうし……お?

 ……先ほどまで俺の居場所を把握しているかの如く正確に追い掛けてきた痴女さんが、足を止めて何かを探す様にキョロキョロと周囲を見回している。いや、まぁ目は見えていないようだが。

 これは一体、どういう事なのだろうか……?

 ……もしかして、彼女は何かを頼りに俺の居場所を特定していたのではないか……?

 例えば、音。

 

「………」

 

 音を立てないよう、慎重にしゃがみながら足元に落ちている小石を拾い、それをエリア7番方面へ投げた。ポチャンと、水面に音を立てる。

 瞬間、痴女さんが音のした方へガバッと振り向いた。やはり、俺の居場所を音で特定していたらしい。

 ならば話は簡単だ。痴女さんにバレないよう、抜き足差し足忍び足で音を立てずにこの場から去ればいい。

 ━━━と、思った直後。痴女さんは手で自分の目を擦ると、顔を上げて此方を向いた。目はバッチリ開いており、俺と視線が合う。

 

「………」

「………」

 

 奇妙な沈黙。

 次の瞬間、痴女さんは此方に向かって走り出した。完全に閃光玉の効果が切れている。

 だが、案ずるなかれ。閃光玉はまだ4つも残っているのだ!

 すぐさまアイテムメニューを開き、もう一度閃光玉をそぉい!

 炸裂音を聞いてから目を開けると━━━痴女さんも俺と同様にガードしていた。

 ……ですよねー。そりゃあモンスターじゃないんだから何度も同じ手は通用しないよね。人間だもの。

 再び迫る痴女さん。

 ど、どうしよう……。ぶっちゃけ万策尽きた感じなんだけど……。

 とりあえず意味も無くペイントボールを投げつけたが、難なく躱されてしもうた。仮に当たったとしても止まらないだろうけど。

 そうこうしている内にもう目の前まで痴女が迫っている。怖い顔で迫る! 怖い!

 

「た、タイムッ!!」

 

 俺が咄嗟に取った行動は、両手でTの字を作り、一時休戦の意思表示だった。

 痴女さんの動きが、まるで時間を止めたかのようにピタッと止まる。

 ……一応、意味は伝わったらしい。いや、もしかしたら俺の突然の奇行に何となく止まっただけかもしれない。

 まぁ、今はそんな事どうでもいい。兎も角、今の内に何とか逃げなければ!

 えーっと、えーっと……駄目だ、何も思い付かん。

 互いに固まったまま動かずにいると、痴女さんが先に動いた。ゆっくり歩いて俺の隣に回り、まるでボールを脇に抱えるかのように俺の頭を右腕で抱えて━━━

 

「痛い痛い痛い痛い痛いッ!!」

 

 ヘッドロックを掛けられた!! 痛いッ!! 何か頭蓋骨がミシミシいってる気がする!! いや、気がするっていうか絶対ミシミシって音してる!!

 痛い! 痛すぎる! 潰れる! 割れるぅっ!

 痴女さんの腕をバシバシ叩いてギブアップを意思表示するものの、絞める力は弱まるどころか強まってゆく。

 く、くそ……こうなったら最終手段……うんこをくらわしてやる……。

 そう思い、アイテムポーチに手を伸ばした、その時。

 突然、痴女さんのヘッドロックが外れて水の中に頭がダイブした。

 頭の痛みを堪えながらも身体を起こしてみれば、そこには二手に別れて行動中の筈のセツナが立っていた。

 

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