目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
そんなこんなで色々あったが、ようやくユクモ村が見えてきた。行きで2時間使ったが、帰りは3時間ぐらい彷徨っていただろう、日は既に沈み始めている。無事に帰れて良かった……。
「やっと着いたのね」
「ああ、何とか帰ってこれたな……」
「それにしても時間かかり過ぎよ。しっかりしてよね、エクシア」
そんな事を言ってくるセツナ。お前が言うなと言いたい。
「HAHAHA! エクシアは仕方ないネ!」
お前も言うな。そして早く着替えて俺のお気に入りのインナー返せ!
「まぁ、とりあえずここで一旦お別れだな」
「そうね、
セツナの家か……ちょっとだけ興味あるな。よく考えると誰かの家にお呼ばれした事って無いし、女の子の家だし。
「うん、また今度。楽しみにしてる」
「た、楽しみにするほど何かがある訳でも無いけどね⁉︎」
「や、でも前セツナは私の住んでる家は良いところだって褒めてくれたし、きっとセツナの家も落ち着いた良いところだと思うな」
案外、俺の住んでる家と同じで質素な感じかもしれん。俺もそういう家は好きだし。
「そそ、そんなに褒めたって何も出ないわよ⁉︎いやでも嬉しいけどね⁉︎ありがとね⁉︎」
と、何故か顔を赤くし、動揺するセツナさん。最近の彼女の奇行にも慣れてきた。ちょっと落ち着いた方が良いと思うが。
そして、そんな俺とセツナを交互に見ながら、フェルトがとんでもない事を口走った。
「……二人はもしかして、付き合ってるのカナ?」
「……は?」
思わず『何を言ってるんだこいつは』みたいな声と視線を向ける。本当に何を言ってるんだこいつは? 俺もセツナも女なんだが。いや、俺は心……というか、中身は男だけど。
……それとも、この世界では女同士の恋愛は普通なのか? 俺の価値観がおかしいのか?
そんな事を考えながらセツナの方に視線を向けると、
「バッ⁉︎なななな何言ってんのよ⁉︎私とエクシアは別にそんな関係じゃないから‼︎そもそも私もエクシアも知り合ってまだ間もないし⁉︎そういうのはもっとお互いの事をよく知ってからっていうかまだ早いっていうか⁉︎そりゃあ私とエクシアは相性抜群だからそう思われても仕方ないけど‼︎でも
顔を真っ赤に染めながら、久々のマシンガントーク炸裂。よくそんな早口で喋れるなと感心しちゃうね。何言ってんのかさっぱり解んねぇけど。ハァ〜さっぱりさっぱり。
しかし、フェルトは今のを聞き取れたらしい。嬉しそうな笑みを浮かべながら口を開く。
「フムフム、二人はまだ付き合ってはいないと……」
「そ、そうよ⁉︎勝手な勘違いしないでよね‼︎」
「ウム、じゃあまだ私にもチャンスはあるという訳だネ?」
「ぬぁ⁉︎あんたまさか……あんたもなの……⁉︎」
ライバルが増えたと小さく呟き、ぐぬぬと唸るセツナ。よく解らんけど大変だね。ドンマイ。
ふと、フェルトがこちらへ寄ってきて、
「キミが手を拱いてるようなら、その隙にワタシが盗ってしまうヨ?」
と、耳打ちしてきた。
はて。取ってしまう……盗ってしまう? 何のこっちゃ。俺、何か持ってたっけ? 盗られて困るような物は別に……まぁ、力と守りの爪は困るけど。
いや、その二つにしても金と素材━━確か素材は恐暴竜の鉤爪だったか━━があれば幾つでも作り直せる。イビルジョーの素材ならまだ結構あった筈だ。だからと言って盗られたくはないけども。
「何くっついてんのよ‼︎くっついてんじゃないわよ‼︎ほらもう行くわよ‼︎誰かに見られるかも解らないんだから‼︎」
「そうだネ、行こうかネ」
「それじゃあまたね、エクシア‼︎」
「ああ、うん……また」
そうして、セツナとフェルトの二人と別れた。
★
村の入り口━━村長クエストを受けて帰還した時と、ゲームを
何故か。皆、俺を避けるように道を開けてくれたのだ。まぁ、実際は避けてるんじゃなくて、道を譲ってくれてるだけなんだけど。
でも、人を見ながらひそひそ話したりするのはやめて欲しい……。やれ「話し掛けてみようか」だの、やれ「狩りに誘ってみようか」だのと。この世界に来てからずっとこうだよ。みんなよく飽きないね。俺も未だに慣れないし、声掛けて欲しいとは思わないけど。
まぁ、でも実際に声を掛けられた事はない。何故かというと、恐らくは前方からやって来ている小さな生き物のおかげだろう。
「ご主人!」
黄金の毛並みを持ち、ニャン天装備に身を包んだ猫━━━即ち、オトモアイルーの魔理沙である。
「おかえりだぜ!」
「ん、ただいま」
ピョンと飛びついて来る魔理沙を抱き留める。相変わらず可愛い奴だ。よしよし。
こうやって、クエストが終わった後などは魔理沙がやって来る━━俺の帰還をどうやって察知してるのか知らんが━━事が多い。恐らく、というか十中八九間違いなく魔理沙が居るから話しかけづらいんだろう。
とはいえ、魔理沙が来ない時もある。だが、そういう時に限ってリリーやサニー、レベッカなどが現れたりする。みんな図ったかのようにタイミング良く来るけど、どういう事なんだろうか?
運命の悪戯? それとも神様━━存在するとは全く思っていないが━━の仕業? ちょっと怖い。
兎も角、そんな訳で俺の交友の輪が広がりそうにはない。
まぁ、ハンターには男が結構多いし、ぶっちゃけ話し掛けられたくはないのでありがたいんだけどね。女の子は大歓迎だが。
「……ん?」
ふと、俺の来た方とは別の方の人混みが割れる。そこから姿を現したのは、2人組の女性。と、その足元に1匹。
一人は赤い衣装を纏っており、三銃士とかが被っていそうな赤い帽子が特徴的な女性。顔立ちは割と中性的に近く、髪は金色のセミロング。身長はリリーやサニーと同じくらいか。腰には鞘に収まったレイピアを帯刀しており、背中にはセツナと同じ……いや、色が違う……? 兎に角、ホーリーセーバーのような双剣を背負っている。
……どう見てもギルドナイト装備にしか見えないのだが……3rdにギルドナイト装備なんてあったか?
もう一人はネブラS一式装備に身を包んだ女性。明るい茶髪で、ポニーテールに纏めている。確かケルビテールという髪型だったか。
愛らしい顔立ちをしており、女性というよりは少女という印象を受ける。背丈はセツナと同じぐらいか。ライトボウガンを背負っているので、ガンナーだ。俺はボウガン系にそこまで詳しくないので、何という名前の武器かまでは解らない。
最後に、ギルドナイト装備の女性の横を二本足でチョコチョコ歩く猫。ギルドSネコ装備を身に纏っており、毛並みは赤虎とまではいかないが赤色。装備している武器もギルドネコカリバー。
2人と1匹はまっすぐこちらへと歩いてくる。……俺も避けた方が良いのかな。
そんな事を考えながら横へ逸れようとした時、ギルドナイト装備の女性が話し掛けてきた。
「貴女がユクモ村のハンター、エクシアさんですの?」
「えっ……あ、うん……そうだけど……」
何か、お嬢様みたいな喋り方だな。俺に何か用があるのだろうか……。
彼女は「ふぅん……」と呟き、品定めでもするように俺の全身を見てくる。ちょっと無遠慮すぎやしませんかね……。
暫くして、彼女は再び口を開く。
「一つ質問してもよろしいかしら?」
「あ、はい」
「どうしてそのように継ぎ接ぎのような装備で固めていらっしゃるのかしら? 貴女ほど有名なハンターなら、セットで装備を揃えるぐらい出来るでしょう?」
……まぁ、伝説のハンター(笑)とか言われるぐらいだから有名なんだとは思うけど……どれぐらい有名なんだろうか? ユクモ村周辺に住んでる人には殆ど知られているようだが、もっと遠くの方まで名声が届いていたりするのか。
まぁ、今はそんな事よりも、彼女の質問にどう答えたものか……。
今現在の装備は上から『バンギスヘルム』『ナルガUメイル』『ナルガUアーム』『ネブラUフォールド』『荒天【袴】』。武器は無双刃ユクモ【祀舞】である。
双剣を使う上で「あったら楽だな」というスキルを集めた結果、このようなグチャ味噌装備になった訳だが……。セツナがスキルとかを知らなかった事を鑑みるに、十中八九彼女も防具のスキルについて知らないだろう。説明するの面倒だしなぁ……適当に答えとこ。
「見た目よりも機能性を重視してるからだよ」
「機能性……? オッホホホ!」
いきなり笑われた。後ろのネブラ装備の少女もくすくすと笑っている。失礼な人達である。というか、オホホとか笑う人をリアルで始めて見たわ……。
……そして魔理沙の毛が逆立っている。もしかして怒ってる? 俺は平気だから落ち着いてくれ。ちょっと怖い。
「貴女の装備しているその防具……バンギスヘルムと荒天【袴】は兎も角としても、他のナルガUやネブラU装備はそれらに比べて防御力が幾らか落ちますのよ? ご存知ないのかしら?」
「や、それは知ってるけど……」
「あら、そうなの。でしたら、軽装にして少しでも回避力でも上げようという事なのかしら?」
「え? う、うーん……まぁ、そんなとこかな……」
ナルガなんかは特に軽装だからそう思われているのか……説明も理由も考えるのが面倒だし、そういう事にしておこう。
すると、また「オホホ」と笑われた。
「防御力を削ってまで装備を軽くしなければならないなんて、エクシアさんは見た目通り華奢なお方なんですのね」
「お嬢様、それは仕方ないっスよ。エクシアさんはお嬢様と
と、少し後ろに控えているネブラ少女。可愛いって言われた。ありがとう。
でも……お嬢様って、多分ギルドナイト装備の人の事だよね? お嬢様と
しかしネブラちゃん、魔界戦記ディスガイアに出てくるプリニーみたいな喋り方だな……。
「んん! まぁ、そんな事よりも。まだ名乗っていませんでしたわね。わたくしはリーサ・クジョウと申します。お見知り置きを」
「あ、はい。ご丁寧にどうも……」
「そして、この子はわたくしの共をしているミレイナ。こっちのアイルーはわたくしのオトモアイルーのシャルロットですわ」
「よろしくっス」
「よろしくお願いいたしますニャン」
ネブラちゃん改めミレイナが軽く手を上げ、アイルーのシャルロットが華麗に一礼する。
「それでは、わたくし達はギルドへ報告へ赴かなければなりませんの。これで失礼いたしますわ」
「はあ……」
生返事をしながら、2人を見送る。
ふと、シャルロットがこちらを振り返った。俺に……いや、魔理沙に視線を向けているようだ。
目と目が合う魔理沙とシャルロット。すると━━━シャルロットは肩を竦めてやれやれと言わんばかりに首を振る。
「テメーこの野郎! 喧嘩売ってんのか⁉︎」
シャルロットに飛びかからんとする魔理沙。その声に反応したリーサが振り返り、
「貴女のアイルーは随分と野蛮ですわね」
と、それだけ言うとまた歩き出した。ミレイナもくすくすと笑いながらその後を着いてゆく。
更にシャルロットはというと━━━デスノートの記憶を完全に捨て、Lと共に火口卿介を追い詰め、再びデスノートが戻ってきた時の
「計 画 通 り」みたいな。
……周囲からくすくすと笑い声のようなものが聞こえる。まさか、あの挑発するような行為は魔理沙に恥をかかせる為か? なかなか小賢しい猫じゃないか。魔理沙が顔を赤くして━━体毛の所為で分かりづらいけど━━ひしっと抱きついてきている。
うんうん、恥ずかしかったんだね、よしよし。おのれシャルロットめ……魔理沙の反応が可愛かったから許せる。
「エクシアさん!」
ふと、リリーがこちらへ駆け寄ってきた。
「今の人って、もしかしてリーサ・クジョウじゃありませんか?」
「あ、うん、そう名乗ってたけど……知ってるの?」
「やっぱり……! エクシアさん、あの人には余り関わらない方がいいですよ……」
「え? ど、どうして?」
何か黒い噂でもある人なんだろうか? 犯罪者とか?
そんな事を思っていたが、実際はその真逆だった。
「リーサ・クジョウはギルドナイトなんです」
……。
…………。
………………。
━━━な、なんだってー⁉︎