目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
リーサがユクモ村に来てから、はや数日が経過した。
「ごきげんよう、エクシアさん」
リーサが声を掛けてきて、思わず身構える。
……俺が集会所へ来ると、毎回こうやって声を掛けてくる。ギルドナイトに入らないかと勧誘してくるのだ。当然ながら毎回断わっている……のだが、いつもあっさり引き下がる。この人の考えている事はよう解らん。
しかし……美人なんだけど、やっぱり苦手だ。慣れない。
それに、ネブラ装備のミレイナやオトモアイルーのシャルロットはどうしたのだろうか? いつ来ても見当たらない。どこへ行ったんだ。
「……どうも」
それだけ言い、すすすと彼女から距離をとる。
「そんなに警戒しないで下さいな。何もしませんわ」
信用出来るか! 隙あらば抱き付こうとしてくる癖に! しかも一度抱き付いたら暫く離れないし!
という訳で、俺は集会所へ来る際は必ず魔理沙を連れて来るようにしている。今も俺は魔理沙を抱っこしており、魔理沙は腕の中で爪を構えてリーサを牽制してくれている。このお陰でリーサは俺に近づく事が出来ない。
しかも、リーサに見つめられると何だか背筋にゾワッとするものが走るのだが、魔理沙にはそれが効かない様子。あの咲夜と妖夢ですら怯ませた視線だというのに。
きっと、俺への愛ゆえに魔理沙には通用しないんだな! ……愛とか自分で言っててクッソ恥ずいが。何にしても頼りになるぜ!
まぁ、そんな感じでリーサを牽制しつつ、クエストボードの前でクエストを確認する。
うーん、今日も目を惹かれるようなクエストは見当たらないなぁ。そんな事を思っていたところ━━━
「ハンター様、少しよろしいでしょうか?」
青色の撫子に身を包んだ受付嬢が声を掛けてきた。彼女はユーカ……ではなく、ユーカの同僚のササユさんである。
「どうしました?」
「ハンター様に緊急のご依頼が入っております」
oh……。イヤナ ヨカン シカ シナイ。
「その依頼というのは?」
「数日前、ハンター様が孤島へ赴いた時にイビルジョーが二頭出現したという報告をいただきましたが、その二頭のイビルジョーが孤島の村に被害を出しているとの事ですので、至急討伐をしてほしいという依頼です」
ああ……あったねそんな事……。黄金魚を30匹釣ってこいとかいう意味不明なクエストが。つい最近の出来事だったけど、フェルトの事で頭がいっぱいだったから忘れていたよ。
うぉー、マジかー……。セツナが居ない今、そんな依頼がくるのかー……。
イビルジョー二頭同時……ってか、あの時ほかにもリオレウスとかジンオウガとか居たと記憶しているが? それらはどうするんだ? 俺一人でどうにか出来るとは思えないんだが。
「えーと、依頼内容はイビルジョーの討伐のみですか? 確かあの時、リオレウスなども居た筈ですが……」
「調査班の報告では、イビルジョー以外の姿は見受けられないとの事です。恐らくはイビルジョーに捕食されたか、追い払われ身を隠しているのか……」
「……そうですか」
言葉を濁すササユさん。リオレウスなどがどうなったかは分からないらしい。
……やだなー、やりたくねぇなぁー……。イビルジョー二頭に加えて、もしかしたら……いや、もしかしなくてもリオレウスとかが居る、と考えた方がいいか。
……何その無理ゲー? イベントクエストに五頭の大連続狩猟━━━それも、金竜や銀竜の入ったクエストがあったけど、それより頭悪いだろ。
何だよ、イビルジョー二頭にリオレウスとジンオウガ……後は、リオレイアとクルペッコとロアルドロスとかもいたか?
……うん、頭悪いだろ。ゲームとして成り立ってねぇよ。1匹辺り7分で討伐する計算じゃねぇか。しかも全部同時とか1人じゃ無理だよ。
まぁ、この世界じゃ時間制限は無いが……だからと言って、やりたいとは思わない。あもりにも面倒くさ過ぎるでしょう?
と言っても、クエストを拒否る訳にはいかない。ギルドの信用が掛かっているのだ。それを失ったら、この村で生きていけないような気がする。左遷とかされて別の村に飛ばされるやもしれん。
「わかりました。準備が出来次第、すぐに出発します」
「お願いいたします」
一礼すると、ササユさんはカウンターへと戻っていった。
うーむ、イビルジョー二頭……他のが居るとしても、弓でやるのは当たり前として、属性は雷……だとマズイか? それにオトモアイルーはどうすっかなぁ……。
考え込みながら、俺は集会所を後にした。
★
「さて、どうすっかなー」
自分の部屋の中でポツリと呟く。抱っこしていた魔理沙を降ろし、アイテムボックスの前に立ってメニューを開く。
「ご主人、私の出番はあるか?」
「んー、そーだなー……」
魔理沙を連れて行くべきか……妖夢や咲夜もいい働きをしてくれそうだし、ハンター顔負けの『猫』の勇儀さんを連れて行ってもいい。狩り祭りの時はいい働きをしてくれたし。
……というか、いっその事全員連れて行きたい。そしたらイビルジョーだってリンチ出来ると思う。
しかし、それは無理なのである。前に実験したのだが、オトモ1とオトモ2に設定した2匹と設定されていない魔理沙を引き連れてクエストに出たが、いざクエストが始まってみれば魔理沙の姿は影も形もなかった。
それからクエストを終わらせて戻り魔理沙の話を聞いてみれば、俺たちの姿が一瞬にして掻き消えたとの事である。軽いホラーだよ。
そういう訳で、正式にクエストを受けて外に出る限り、俺はオトモアイルーを2匹までしか連れて行く事が出来ないのである。
……本当に変なところだけゲームだな。面倒だ。
うん、話が逸れた。そんな事より、アイルーをどうするかである。
が、まずは俺の装備を変更しよう。マイセット装備からセット22をタッチする。
武器:王牙弓【稚雷】
頭:ネブラUキャップ
胴:ネブラUレジスト
腕:ネブラUガード
腰:ネブラUコート
脚:ネブラUレギンス
護石:王の護石
発動スキルは『雷属性攻撃強化+2』『スタミナ奪取』『集中』『ランナー』『見切り+1』『氷属性攻撃弱化』。
リオレウスなどの他のモンスターの事を考えると、以前使ったシルバーソル主軸の装備━━武器は無属性のファーレンフリード━━の方が良いと思うかもしれないが、今回のクエストはイビルジョー討伐である。イビルジョーさえ始末してしまえば、他にどんなモンスターが来ようとも俺は自動的に帰還するのだ。だからこそ、今回は雷属性重視のこの装備を選んだ。
で、オトモアイルーをどうするかだが……。
「……魔理沙。聞いてたから分かっていると思うが、今回のクエストの標的はイビルジョーだ。かなり危険な戦いにな━━━」
「みなまで言うなよ、ご主人。私たちオトモアイルーは全力でご主人をサポートするのが仕事だぜ。ご主人の為ならたとえ火の中、水の中さ!」
…………俺は今、猛烈に感動している……。やばい……嬉しい……。泣きそう……。魔理沙可愛い……。
しかし、魔理沙の意気込みは買いたいところだが、感情は排して采配を下さなければならない。悲しいけどこれ、命が掛かってるのよね。
実際、イビルジョーに爆弾猫を連れて行くのはどうなんだと思う。これがゲームだったなら間違いなく近接のみのオトモを連れて行くだろう。チョロチョロ動き回るイビルジョーに爆弾は当たりづらい。
だが、今はゲームのような現実である。魔理沙は爆弾猫の癖にフットワークが軽く、小タル爆弾を連続で投げまくり、何なら大タル爆弾を投げつける事が出来る程の力を持つ。
……あれ? そう考えると、別に連れて行っても良いんじゃね?
…………。
ま、いいか。連れて行っても問題無いだろう。やる気あるみたいだし。あと可愛いし。
「じゃあ、今回は魔理沙を連れて行こうかな」
「やったぜ!」
嬉しそうに飛び跳ねる魔理沙。これから死地━━という程でもないが━━へ赴くというのに、無邪気な奴め。余程俺の事が大好きらしいな! 可愛いから許す!
さて、それじゃあオトモ設定をかえようか。
オトモボードの前に立ち、とりあえずオトモ1に魔理沙を設定する。その瞬間、横に立っていた魔理沙が俺の背後へと移動した。
農場の方でも同じだが、オトモボードからオトモ設定をいじると、選択されたオトモが俺の後ろに転移してくる。その時、そのオトモが何をしていようと、である。
そう考えると、オトモが人間じゃなくてアイルーでよかったと思う。
例えば人間だった場合、お風呂に入っているタイミングで転移してしまったら『キャーのび太さんのエッチ!』となってしまう訳だ。
……何をくだらない事を考えているのだろうか、俺は。そんな事よりオトモアイルーの選抜である。
「もう1人は誰にするかな……」
実際、かなり悩む。みんなハイスペックなので、誰を連れて行っても余り変わらない気がする。
まぁ、ナズーリンだけは『狩猟は苦手』と言っていたので、必然的に候補から外れる事になるが。
うーむ……。そうだ、偶にはアイルー達に決めてもらおうか。
★
という訳で農場へとやって来たのだが。
「あたい! あたいが行く!」
「待ちなさいチルノ、あんたには荷が重いわ。ここは私が」
「待ちなさいよ霊夢。私はまだ狩りについて行った事がないわ。ここはこのレミリア・スカーレットが」
「ブルーレットには無理よ」
「誰がブルーレットだコノヤロー!」
「私も偶にはお外に出たいわ〜」
「幽々子に狩猟って出来るの?」
「紫ったら、私だってやる時はやるのよ〜?」
「うーん、俄かには信じがたいわね」
「ひどいわ〜」
「いやいや、イビルジョーってのは凶暴らしいじゃないか。だったらこの『猫』の勇儀の出番さね」
「あたい! あたい!」
「力量を考えれば勇儀じゃないかい?
まぁ、ご主人次第だがね。おっと、私は探索専門だから勘弁しておくれよ」
「皆さん、仲が良いですね〜」
……聞かなきゃ良かったと思う程に決まらない。自分で決めりゃ良かったな。霊夢とレミリアは言い争ってるし、紫と幽々子の間には何気に火花散ってるし、チルノはあたいあたい言ってるし、勇儀は自信満々だし、ナズーリンは行きたくなさそうだし、星ちゃんはのんびりしてるし。
うーむ……どないしよ。本当に誰でも良いんだよなぁ……。
っつぅか、妖夢と咲夜が見当たらないんだが? あの2人はいつも何処にいるんだ。オトモボードから設定すれば呼び出す事も出来るが、それだけの為に呼び出すのもな……。『キャーのび太さんのエッチ!』状態になってしまうかも分からん。猫だけど。
いや、この間の温泉での事を考えると、案外どこからか俺を見守ってくれているのかもしれない。……そう思うと、監視されてるようで落ち着かないが……。
しかし、この状況をどうするか。誰を選んでも角が立つ気がする……という程でもないだろうが、嫉妬の念は受けるんじゃなかろうか。選ばれたアイルーが。
うーん、何かないか? イビルジョーをやる上で、立ち回りが楽になるような何かが……あっ、そうだ。
「みんな、ちょっと聞いてくれ」
全員が口を閉じ、俺に注目する。
「イビルジョーをやる上でなんだが、私としては尻尾を斬り落としてもらえるとありがたい」
イビルジョーの尻尾。弓で立ち回ると、そこそこ邪魔な時がある。右へ左へと頭を揺らし、デンプシーロールみたいに3回、若しくは5回、移動しながら噛み付く攻撃があるのだが、偶に尻尾に当たって吹っ飛ばされる事があるのだ。この時、尻尾が無いと楽に回避する事が出来る。
「という訳で、尻尾を斬り落とす自信のある者について来て欲しいんだが━━━」
「はいはい! あたいやる!」
「いやチルノ、あんたに尻尾を斬り落とすのは難しいでしょうから、ここは私が」
「いや、霊夢。あんたの封魔針だって尻尾を斬り落とすのは難しいでしょ。ここは私のレミリアクローで」
「ブルーレットには無理よ」
「私の名前はスカーレットだ! 二度と間違えるな!」
「はいは〜い。私が尻尾を斬り落とすわ〜」
「幽々子に尻尾を斬り落とす手段があるのかしら?」
「紫ったら、私だって斬る時は斬るのよ〜?」
「甚だ疑問だけど」
「ひどいわ〜」
「そういう事ならやっぱり、この『猫』の勇儀の出番さね! 見事、尻尾を斬り落としてみせようじゃあないか!」
「あたい! あたい!」
「斬るという事を考えるなら、妖夢が一番じゃないかい? まぁ、ご主人次第だがね」
「皆さん、やっぱり仲が良いですね〜」
おーい! 無限ループって怖くね状態に突入してんじゃねーか。さっきと台詞があんまり変わってねーってどういう事よ。このままじゃ収集つかんぞ。
どうしたものかと考え、結局のところ自分で選ばなくてはならない事を悟る。ナンテコッタイ。
「あー、ならみんなに一つ聞く。みんな尻尾を斬り落とす手段があるとして、それぞれどうやって斬り落とすのか教えてくれる?」
これで、一番効率の良さそうな方法を提示したアイルーを選ぼう。もうこれ以上考えるのも面倒だし、いいよね。
「あたいの氷剣なら、どんな尻尾もイチコロよ!」
「あたしはお札を硬質化させて剣を作り、それで斬りつけるわ」
「私には、この自慢のレミリアクローがある」
「ひらり〜、はらり〜。私の扇子は尻尾を斬り落とす事も出来るわ」
「右に同じく」
……みんなそれぞれ気になる攻撃方法を持っているな。氷剣とか札剣とか爪とか扇子でモンスターの尻尾を斬り落とすところとか逆に見てみたいわ。
そんな中、勇儀がずいっと前に一歩出て、
「大将、確か『王牙大剣【黒雷】』を持ってたよな?」
「うん? まぁ、一応作ってあるけど……」
ジンオウガの素材から作る、雷属性を持った大剣の最終形態である。作るだけ作ってアイテムボックスに眠っているが……おい、まさか。
「それを貸し出して欲しいんだ。そうすりゃ、どんなモンスターの尻尾だって斬り落としてみせるさ!」
……マジか? マジで言ってるのかこの猫?
大剣だぞ? 柄と頭身あわせて人の身の丈ほどもある、ハンター用の大剣だぞ? アイルーの何倍あると思ってるんだ?
……と思うけど、勇儀ならやりかねないな……。そして、それぞれの案の中で一番見てみたい。アイルーが大剣を振り回すというところを。
「……OK。じゃあ、今回は勇儀に頼もうかな」
「よっしゃあ! 任せな!」
ガッツリやる気の勇儀姐さん。頼もしい。
他の子達は渋々と言った様子で諦めたようだ。まぁ、ハンターの使う大剣を振るって戦う、なんて言われれば諦めも付くわな。
と思ったが、霊夢がギロリと魔理沙を睨み、
「っていうかさぁ。魔理沙が行く意味なくない? あんた爆弾しか使わないでしょ? 尻尾斬れないわよね?」
「うぐっ、それは、その……」
……おっとぉ? この流れは良くないんじゃないか?
「ソーダソーダ! あたいと変われ!」
「何言ってるのよ、ここは私の札剣が━━━」
「いや、このレミリアクローが━━━」
「ひらり〜、はらり〜。私の扇子が━━━」
「いや、幽々子より私の扇子が━━━」
「うるせーうるせー! 私がご主人と一緒に行くんだ! 約束したんだ!」
「皆さん、本当に仲がいいですね〜」
……無限ループって怖くね?
結局この後、俺が諭して魔理沙と勇儀の両名をオトモとして連れて行く事に決まったのだった。