目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
翌朝。自分の家のベッドの上で目を覚ますと、なぜかセツナが一緒に眠っていた。
…………おかしいな。なんでセツナがここに居るんだ?
昨日は確か、魔理沙と勇儀の2人と一緒に温泉に浸かったあと、適当な飲食店で飯を食って、それから色々疲れたから今日はもう寝てしまおう━━魔理沙と勇儀はまだ眠くなかったらしく、牧場へと向かっていった━━と思い、防具を全て外してベッドで横になったのだ。
……うん、セツナには会ってないね。なんでここに居るんだ?
とりあえず起こさないように上半身を起こし━━━ベッドの横、オトモアイルーが丸くなって寝る為のベッド(ふかふかの座布団みたいなやつ)にフェルトが眠っていた。
…………なんでここに居るんだよ!
★
とりあえず2人を起こして一通り話を聞いてみたところ、要約すると次のようになる。
まず、フェルトの腕や足━━肘や膝の辺りから下━━がジンオウガのような皮膚になっているのだが、それを隠す為の装備が出来上がったので、それを俺に見せる為にユクモ村までやって来たらしい。現にフェルトは今、剣士用のジンオウガ装備一式を身に纏っている。彼女の手足の皮膚がジンオウガっぽいので、それに合わせてジンオウガにしたんだとか。まぁ、違和感なく包み隠せていると思う。
で、まず集会所に行ったらしいのだが、
すると俺は既に眠りこけており、いくら揺すっても叩いても━━叩くなよ━━起きなかったので、適当に村をブラついて時間を潰すことに。
それから夕方頃になり、再び俺の自宅へとやって来てみたが相変わらず眠りこけたままだったので、また揺すったり叩いたり━━だから叩くなよ!━━したがやはり起きない。
「だからもう一緒に寝ちゃおうと思って」
と、いう訳らしい。俺は一度眠ったら朝まで目を覚まさない事が判明した。モンスターが村を襲撃してきたら間違いなく死ぬな、俺。
じゃねーよ。なんで一緒に寝るって事になるんだよ。どんな結論に至ったらそうなるんだよ。
「宿を取ればよかったじゃないか。セツナならそれぐらいのお金はあるだろう? そうすれば2人ともベッドで寝られたのに」
俺の正論にセツナは顔をプイッと逸らし、
「……エクシアと一緒に寝たかったのよ……悪い?」
と、頬を若干赤く染めながらそう言った。
……何かアレだな。セツナはツンデレだな。一般的に伝わっている『普段はツンツンしているが、2人きりになったりすると急にデレる』方ではなく『初めて会った頃はツンツンしていたが、段々とデレ始める』方の意味で。
いや、前者の感じもするような気がするが……セツナって俺の事が好きなのかな……? そう考えると、今までのセツナの奇行も色々と辻褄が合うような……? ……いや、まさかな。
まぁ、それはどうでもいい。
「……ま、まぁ、2人がそれでいいなら私は構わないけど」
「本当?じゃあたまに泊まりに来てもいい?」
「え? ……まぁ、別にいいけど……」
「じゃ、じゃあたまに泊まりに来るわね!」
とても嬉しそうな表情を浮かべながらセツナはそう言った。
そんなセツナを見ながら内心で「可愛いなぁ」と思っていると、急にフェルトがこちらに寄って来て、唐突に俺の背中をバチンと叩いてきた。痛い。
「いきなり何をするんだ……」
「見てたら何か腹が立ってきてネ。八つ当たりだヨ」
理不尽すぎるだろ! 何だコイツこんな奴だったか!? 人のインナー借りといて……そうだ!
「フェルト、服の都合ついたんだから私のインナー返せ!」
「えっ? あれ、ワタシにくれたんじゃないのかネ……?」
「誰もそんな事言ってないよ! しかもそれ私のお気に入りのインナーなんだからな! 返せ! 今すぐ返せ!」
「いや、そんな事急に言われてモ……代わりのインナーだって用意出来てないシ……」
「じゃあ、私の別のインナー貸すから! そっちのインナー返せ!」
「うん? まぁ、そういう事なら構わないガ……」
そう言って徐に防具を脱ぎ始めた。流石に渓流で全裸生活送っていただけに躊躇がないな。いや、ここに女しか居ないからだろうけども。というか、男の目があるところで脱ぎ始めたら普通に引く。
そして、よく見ると肘と膝の継ぎ目部分を隠すように布が巻かれている。防具で隠れていたので気が付かなかった。
防具があるのに隠す必要はないんじゃないかと思うが、世の中なにが起こるか分からない。備えあれば憂いなし、であろう。
「ほら、脱いだヨ」
全裸になったフェルトさん。もう少し恥じらいを持てよ……ここに人が訪ねて来る事だってあるんだぞ……。
「うん、そっちの引き出しにインナー入ってるから━━━」
「いやいや、どうせなら今、エクシアが着ている物を借りるヨ」
「……は?」
……
「……すまないが、よく聞こえなかった。もう一度言ってくれるか?」
「エクシアが今着ているインナーを借りるヨ」
聞き間違いじゃなかった! 何でそうなるんだよ! 頭のネジ飛んでんのか!
「……うん、そっちの引き出しに別のインナーが入って」
「エクシアが今。着ているインナーを借りるヨ」
やべぇコイツ目がマジだ……。取り付く島もない……。
「さぁ、早く脱いデ! ハリーハリーハリー!」
「いや、ちょっ待っ……! セ、セツナ!」
「手伝うわ」
「ちょおおぉぉぉぉいっ!?」
裏切り者めが! 何だコイツら頭おかしいんじゃないのか⁉︎ そこの引き出しにインナー入ってるんだから、おとなしくそっちを着とけよ!
必死に抵抗しようと試みるも、2人がかりの上にフェルトの力が尋常じゃなく強い所為で抵抗も虚しく、上のインナーがあっという間に剥ぎ取られた。
「そっちにインナーあるんだからそっちを着ろよ! 何でわざわざ私のインナーを脱がしてまで着ようとするんだよ!」
「君の着ているインナーを着ることデ、ワタシとセツナが幸せになれるのサ! 分かったら早く脱ぐんダ!」
「分かんねーよ! 何言ってんだお前は! このっ……離せ! やめろ脱げちゃう! やめっ……やめろォー!」
そんな風に騒いでいると、
「何事ですか!?」
闖入者が現れた。白のシャツの上に赤を基調としたベスト、同じく赤いチェック柄のミニスカートという出で立ちという女性。
ギルドの受付嬢であり、ササユさんの同僚であるユーカだった。私服という事は、今日の仕事はお休みであろうか。
そして、俺もセツナもフェルトも動くのを忘れて視線をユーカの方へ向け、場に沈黙が落ちる。何だかよく分からないが、気まずい雰囲気だ……。何か言わなければと思うのだが、こういう時に何を言ったらいいのか分からないの。ついでにどういう
しかし、その沈黙を破ったのはユーカであった。
「…………3Pですか……!?」
……何を言ってるんだお前はああああぁぁぁっ!?!?
この状況をどう見たら……いや、冷静に考えてみたらどう見てもそういう状況だコレェ! 10人中10人が見たらそういう状況だと答えるぐらいにそういう状況だコレェー!
「違っ……、これは誤解で━━━」
「やっぱり……! やっぱりエクシアさんとセツナさんは、そういう関係だったんですね……!」
「……え?」
いや、ちょっと待って下さいユーカさん何か誤解してらっしゃいます━━━と、誤解を解く暇もなく。
「私の入る余地なんて……うぅ……っ! お邪魔しました! ごゆっくりいぃぃぃっ!」
「ちょぉぉぉぉ!? ユーカさああぁぁぁん!?」
涙目になりながら、ユーカは我が家から去っていった。
再び場に沈黙が落ちる。が、空気の読めないセツナが口を開いた。
「……邪魔者が居なくなったところで━━━さぁ早く脱ぎなさいエクシア!」
「ちょっ」
「観念するがいいネ!」
「やめろォー!」
咲夜と妖夢が助けに来る━━━なんて事は起こらず、俺は再び脱がされた。
★
「全く、ひどい目に遭った……」
村の中を歩きながらボヤく。
あの後、俺はインナーどころかパンツまで脱がされ、フェルトの物と交換された。何故、パンツまで交換するのか。これが分からない。
というか、セツナが俺のパンツを両手に持ちながらジッと見つめていたのに少し引いた。セツナってこんなキャラだったっけか? やっぱり俺の事が好きなのか? ……だとしても人のパンツをガン見してる姿は普通に引く。
それから頭、腕以外をユクモ装備に━━普段着チックでかなり楽━━変更し、頭と腕は装備なしである。例えるなら、スウェット並みに楽チン。
いや、スウェットの方が実際には楽だろうけど、この世界においてはユクモ装備がスウェット並みに楽だという意味である。他は鎧とかになるので当たり前だが。
「で、どこでご飯食べるの?」
と、俺の右隣を歩くセツナが問うてきた。セツナの更に右隣にはフェルトが歩いている。
とりあえずお腹空いたのでご飯食べに行こう、という流れになってこいつらも付いてくる事になったのだ。まぁ、同じ時間に起きたのだから三人とも腹が減っているのは当たり前だが。
さておき、何を食べるかという事だが……特に何も考えてなかったんだよな。今までは中華一択だったのだが、最近になって飽きてきた。
……うーむ。確か、セツナは和食が好きだった筈だよな。
「そうだな……たまには和しょk」
「因みに私は中華が食べたいわ」
「…………」
こ、この女……。なんでセツナはこう、色々とタイミングが悪いというか何というか……。
だが、まだフェルトがいる。フェルトの意見次第では中華とは決まらん。
「……フェルトは? 何か食べたいものとk」
「ワタシはセツナと同じものでいいヨ」
━━━お前は何でそんな主体性のない事を言うんだもっと自分の意思を持てよ意見を出せよ頑張れよ諦めるなお前はやれば出来る子やれるやれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れ出来る出来るどうして諦めるんだそこで応援してくれてる人の気持ち考えろよ!(?)
もっと熱くなれよォッ!!!
……なんて益体のない事を考えても仕方ない。二人とも中華が良いって言ってんだから、中華でいいか。というか、すぐそこに中華料理屋もあるし。
そんな訳で俺たちはテーブルに着き、ウエートレスのお姉さんに注文した。俺はラーメンと天津飯のセット。……にしたら二人も同じ物を頼んだ。何でや。いいけど。
「で、エクシアは今日これからどうする予定なの?」
「う? うーん、そうだなぁ……」
予定、予定か……どうすっかなぁ。
今やらなアカン事っていったら、多分リーサを探してお礼を言わなきゃいけないよなぁ……。一応、助けてもらった事になってるっぽいし。
……ぶっちゃけると、助けてもらう必要はなかったんだけどね。だって、俺はクエストクリアしたら一分経過で自動的に集会所に戻されるんだもん。
まぁ、そんな事を説明する訳にもいかんので、お礼を言わなきゃならんと。メンドクサイ。
でも、それをセツナ達に話すのは更にメンドクサイ。詳しく説明するのがメンドクサイ。クサイクサイ。
どうしたもんかなー、と考えていると。
「あら? エクシア様ではありませんか」
背後からの声。振り返ってみれば、特徴的な赤い衣装━━━ギルドナイト装備を身に纏う女性。
って、リーサやんけ!? 何でここにこのタイミングで来るねん!? 今、魔理沙おらんねんで!?
リーサは「奇遇ですね、お隣失礼しますわ」と言って俺の隣に座り、さり気なく注文も済ませた。
なぜ座る。向こうへ行きなさい。セツナとフェルトから「誰こいつ? 説明しなさいよ」的な視線が俺に突き刺さっているから向こうへ行きなさい。あなたが居たら適当に誤魔化す事が出来ないから向こうへ行きなさい。あとそんなピッタリくっつくんじゃない魔理沙連れてこればよかったクソッタレ! 一応助けられた事になってるから邪険に扱えない!
そんな念を心の中で飛ばしているのだが、彼女は
「ちょっと、エクシアから離れなさいよ!!」
突如、セツナが机をバンッと叩きながら荒々しく立ち上がった。急な不意打ちに思わず身体がビクッとなる。いきなりどうしたんや……。
すると、リーサは何を思ったか俺の腕に抱きつきながら。
「……何故、私がエクシア様から離れなければなりませんの?」
と、挑発的な視線をセツナに送る。
何でそんな煽るん……ん? エクシア……様? 様付けなんてされてたっけ……? 俺は謙虚だからさん付けでいいぞ。
「エクシアが迷惑がってるでしょ!」
「あら、そんな事はありませんよね、エクシア様?」
うわ、こっちに飛び火した。俺に振るなよ面倒臭い。しかも、これってどっちを選んでも角が立つ選択肢じゃねーか。そんなもん、俺に選べる訳……。
「うん、離れて欲しいかな」
選べる訳ない、とでも言うと思ったかヴァカめ! お前には色々と悩まされてきたからな! 普通に離れて欲しいわ! フハハハハ!
セツナも「ほらみなさい!」と言って勝ち誇ったような顔を浮かべる。
そして、リーサの方へ視線を移すと、
「え、ちょっ」
この世の終わりのような、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。
……その反応は予想外なんだが……泣くのはズルイだろ……。というか、不覚にもちょっと可愛いとか思ってしまった……。
俺からそっと離れ、まるでお通夜のような雰囲気を漂わせながら俯くリーサ。これからご飯だというのに、何つー哀愁を振りまくんだ……。
この元凶であるセツナは気付いているのかいないのか、未だ勝ち誇ったようにドヤ顔をしている。お前はどんだけ神経が図太いんだよ。俺は罪悪感で押し潰されそうだよ。
そして、フェルトは何故かニヤニヤしながら俺を見ている。何その表情、ムカつくんだが。張り倒したい。
いや、そんな事よりリーサを何とかしないと、こんなお通夜みたいな雰囲気出されてたら罪悪感と相まって飯が不味くなる。
「……えっと、リーサさん? 少しくらいなら別にいいですよ?」
そう声を掛けると、彼女の表情がジョジョにパアァっと明るくなり。
「エクシア様!」
「ファッ!?」
ガバッと抱き付いてきた。
すると、セツナが「あーっ!!」と叫びながら立ち上がり、
「私のエクシアに何すんのよ!!」
━━━私のエクシア!? いつから俺はお前のになったんだ!?
何て疑問を問う暇もなく、リーサがピクリと反応し、俺から離れて立ち上がり。
「聞き捨てなりませんわね? 貴女、エクシア様とはどういう関係ですの……?」
「あんたなんかに言う義理はないわね!!」
二人は机越しに睨み合う。
……えっ、何この状況? 何か修羅場みたいになってんだけど、何これ……?
チラリとフェルトに視線を寄越すと、相変わらずニヤニヤしていやがる。何わろてんねん。俺はこんなにオロオロしているというのに……ムカつく。
セツナとリーサは暫く睨み合い火花を散らし、やがてセツナが口を開いた。
「決闘よっ!!」
「望むところですわ!」
俺を置いてけぼりにして、事態は面倒な方へと転がってゆくのだった。
このすばの方にかまけすぎて投稿遅くなってごめんなさい。
このすばにガンはまりしてしまった。思わず原作小説全部買っちゃったよ。
ところで、男女のトラブルという言葉があるが、女性同士の場合は