目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
目を覚ますと、見知らぬ天井が広がっていた。
って、もうそのくだりはいいんだよ。
まぁ、とりあえず寝ても身体は女のままだし、元の世界に戻る事は出来なかったという事が言いたかった。なら初めからそう言えよという話。
何なんだろうか、この現象は。まるでログ・ホライズンの大災害みたいな現象だな。でも、俺一人だけだから災害とでも呼ぶか。
あ、待てよ?
思ったんだけど、この世界に居るのって俺だけなんだろうか? もしかしたら、元の世界から別の人も来たてたりするのかもしれない。そういった人を探す事が、元の世界へ戻る手掛かりになる可能性もある。
………。
まぁ、最悪戻れなくてもいいや。寧ろ、この世界でハンターライフをエンジョイする方が楽しい気がするし。
ベッドから降りようとして、すぐ横には赤い座布団の上で丸くなっている物体が二つ。オトモアイルーの妖夢と咲夜である。気持ちよさそうに寝息を立てている。服装は相変わらずニャン天姿。
………。
今なら……今なら撫でる事も可能なのではないのか…?
……ちょっと触るくらい良いよね……?
起こさない様にそーっと咲夜へ手を伸ばし━━━瞬間、俺の喉もとにナイフが突きつけられた。丸くなったまま咲夜の手には、ナイフが握られている。一体、どこから出したというのか……。
咲夜の首がニョキっと起き上がり、
「あら…? お嬢様……おはようございます…」
「あ……うん……おはよう……」
寝ぼけ眼の咲夜にそう返す。俺はそっと手を引っ込めた。
教訓。寝ている咲夜に触れようとしてはならない。下手すりゃ命が危ない。
妖夢も同じ事が起こりそうなので止めておこう…。
★
妖夢と咲夜はまだ眠い様なので、俺一人で家から出てきたのだが、寝る前と日の傾きが一緒の様な気がする。
俺は丸一日眠ってたんだろうか? それとも時間が固定されているのだろうか?
その辺りも検証してみないといかんな。
正直、一番の疑問はアカムを討伐しに行く道中の6日、帰りも含めて12日間は何処へいったのかという事だが。
昨日━━1日経ったのかはまだ解らんけど━━受付嬢から話を聞いた限りでは、移動の日数は経過している様だ。アカムがもう一頭現れた事からも、それは間違いないと思われる。溶岩峡谷に現れるまで一週間は掛かるって言ってたしね。その割に一日早く現れたけど。
さて、どうしようかなとフラフラ歩きながら考えていると、自分のお腹が『グゥ〜…』と鳴った。
……そういやオラ、腹へっちまった。
でもこの村って小さいし、食事処なんて無いんだよなぁ、と思いながら自宅のすぐ右にある階段を降りて、自分の目を疑った。
━━━10軒近くの様々な店が軒を連ねている。
……What?
おかしい……ゲームでは、道具屋と武具屋と加工屋の3軒のみだった筈なのに……。
何だ? 何が起こっておるのじゃ…?
とりあえず、両側に連なっている店を観察してみる。
右は手前から、ゲームの時と同じ道具屋、野菜類を売っている八百屋、
左は手前から、ゲームの時と同じ武具屋、同じくゲームの時からの加工屋、その脇にアイルーの装備を扱ってるお店、茣蓙の上にアクセサリー類を並べている露店、食事処らしきお店、etc…。
ゲームの時と違って、凄い活気に満ちている。何だこれは。俺の知ってるユクモ村じゃない。
「あ、エクシアさん!」
呆然と突っ立っていると、道具屋の女性が話し掛けてきた。近くまで歩み寄る。
「いやぁ、エクシアさんのお蔭で村が凄く活気付いて、ウチは大繁盛だよ!」
……俺のお蔭…?
はて。ハンターってモンスターを狩るだけの人ではなかろうか。それで感謝されるとな?
どういう事なのかよく解らないので、詳しい話を聞いてみる事に。
そしたら彼女は「何言ってんだい」と色々語ってくれた。
まず、モンスターを狩る事によって交通の滞りが殆ど無くなったのだとか。街道にモンスターとかが現れると危ないもんね。うん、それは解る。
次に温泉の質が良くなった事。恐らく、温泉クエストの効果であろうが、それによってユクモ村の温泉が有名になり、色々な人が訪れる様になった。成る程、確かにあの温泉は色々な人が入るものな。
人が増えた事によって、お店も増え始めたのだとか。そのまま商人が居着き、ユクモ村は更に人が訪れる様になった。
しかし、人が増えればギルドへの依頼も増える。この村のハンターの人数はそれ程多い訳ではない。当然ながらクエストが滞ってしまう。
が、村に訪れる人の中にはハンターも居るらしく、そのハンター達がギルドでクエストを受けたりしているので、実質問題は無かったのだそうな。
そいつらの腕はどれぐらいなのだろうか? 少しだけ気になった。まぁ別にどうでもいいけど。
それからもユクモ村は少しずつ発展を重ねてゆき、今の形になったのだとか。マジでか。吃驚だわ。
そこまで話を聞いた所で客が来て、道具屋さんは商売へと戻っていった。
ううむ、まさかユクモ村がそんな事になっていたとは……ゲームとは違うんだなぁ…。
まぁ、何にせよ腹が減った。食事処も何軒かあるみたいだし、歩きながら色々見てみよう。
そうしてフラフラ歩いていると、人の視線が矢鱈と自分に向いている事に気付いた。明らかに見られている。
な、何だろう……俺、何か変なとこでもあるのかな…。確かに防具は天城と蒼天装備を組み合わせてるけどさ…。そんな変かな…。個人的には可愛いと思ってるんだけど…。
ふと、二人組のハンターらしき女性が小走りで此方に近付いてきた。ジンオウ装備の娘とナルガ装備の娘だ。どちらもガンナータイプで、俺の好みの装備である。見た目が凄く良い。スキル効果的に絶対使わないけど。作ったはいいがアイテムボックスに眠ったままになっている。
はて、ナルガのガンナーはマスク着用で、顔の下半分が隠れていたと思うのだが……兜のみ剣士用なのだろうか?
ジンオウ装備の娘がもじもじしながら、
「あ、あのっ……ユクモ村で大活躍してる伝説のハンター、エクシアさんですよね…!? 私達、ファンなんです! よろしければ、握手をお願いしますっ!」
と、手を差し出してきた。
…。
……。
………。
え…っ!?
な、何……え…? 伝説のハンター…?
待て待て待て。伝説って何の事だ。意味がよく解らないぞぅ!
もしかして、アマツマガツチとかアカムやウカムなんかを討伐した事を指しているのか?
確かに上位ハンターの中でも一流のみって言われてるけど…いや、でも他にも討伐した奴は居るんじゃないのか……?
そんな風に考え込んでいると、ジンオウ装備の娘が涙目になりながら震えだした。
やべ、握手を拒否ってると思われたのかも。
慌てて彼女と握手を交わす。すると、表情が一気にはちきれんばかりの笑顔に変わった。可愛い。
ナルガ装備の娘とも軽く握手を交わす。此方も嬉しそうな笑顔を見せてくれた。可愛い。
ジンオウちゃんが更に話し掛けてきた。
「あのあのっ。少し前にアカムトルムの討伐依頼がギルドに入ったって聞いたんですけど、それって矢っ張りエクシアさんが討伐したんですか!?」
「あ……うん……一匹逃がしちゃったけどね…」
「一匹……って、もしかして二匹居たんですか!?」
「う、うん……一匹が逃げて、それからもう一匹が現れたからソイツを狩って…」
「凄い凄ーいっ!!」
ジンオウちゃんが興奮した様にピョンピョン跳ねる。これが女の子か……。圧倒されちゃうな…。
っていうか、何気に周囲の人達が話し声が聞こえてくる……。『あれが凄腕のハンター…』とか『蒼天装備凄いなー…』とか『私もお話したい…』とか、男女問わず俺の事を話している。
ヤバい。何かよく解らんが恥ずかしくなってきた…!
「ごめん、用事あるから…!」
ジンオウちゃん達にそれだけ告げると、俺は逃げる様に小走りで農場の方へと去っていくのであった。
おまけ
周囲の人々の話し声。
「あれがエクシアか…」
「たった一人でアマツマガツチやアカムトルムなどの大型種を討伐したとか…」
「結構可愛いよな」
「俺も声掛けてみようかな」
「馬鹿、やめとけ。下位で狩ってるお前なんか絶対相手にされねぇよ」
「蒼天装備って初めて見たぜ…」
「なぁ、蒼天装備凄いなー…」
「エクシア様……ポッ…」
「弓使いだってな」
「双剣を使う事もあるらしいぞ」
「弟子にしてもらえないかしら…」
「強くなる秘訣とか教えてもらえないかな〜」
「私もお話したい…」
「お近付きになりたいわ…」
「あ、去っていくぞ」
「なんか照れてないか」
「可愛いな」
「ああ、可愛い」
「ハンターとは思えないぐらい可愛いよな」
「激しく同意ですね」