「あーあ。いいことないなぁ」
今年で高校一年になる宮本 紀伊は悩んでいた。確かに自分は第一志望の高校に死ぬほどの猛勉強をして、何とか合格を勝ち取る事ができたがしかし元の中学校ではあまり目立ったような事をせずにいたため、高校ではあまり友達といえるものが出来なかった。いや、それはまだよかったのかもしれない。姉は自分が高校に受かったのを妬んで
「あんたは恵まれてるね。今はあんたの顔なんか見たくない!」
と言って家を出て行ってしまった。今も姉は帰ってきてはいない。
そしてそんな状況の中で今は高校の帰りである。
「いつになったら、友達が出来るんだろうか?」
今までのことで紀伊は後悔の連続だったが今は大切なテストの時期だ。しっかりしないと。
そして紀伊は交差点にとおりかかった。この交差点を行けば、もうすぐ我が家だった。そして青になって取っている時に
キィィィイィィ!!
激しいブレーキ音が聞こえて、右を向くとワゴン車が自分に向けて走って来ていた。そして自分に向かって突っ込んだ。
ドン!
肉がぶつかる音と激しい音と共に紀伊の意識は途切れた。
「はぁ!」
気がつくと紀伊は暗い中で目覚めていた。
「どこだ?ここは?」
確か自分は車に撥ねられたはずだ。しかし一体ここはどこだ。とりあえず起き上がってみた。
「うお!」
紀伊は驚いた。いきなり明かりがついたからだ。
「ここはまるで船の艦橋みたいだな」
紀伊は一回、自衛隊の護衛艦に乗ったことがあったので見覚えがあった。
「おーい。誰かいますかーー!」
しかし紀伊の声に誰も返事をすることなく、彼の声は虚しく響くだけだった。
「とにかく誰か探してみるか ____うん?」
誰か人を探そうとしたときに左手が凝った感じがしたので左手を動かすと白いサークルが出てきた。
「うわぁ!何なんだこれ!」
おもわず尻餅をしてしまった。そのときに頭痛がきた。
「う・・・・」
何かの映像がフラッシュバックした。
(誰だ。あの人?)
そして何かを言った。
「紀伊」
彼女が言った。
(なぜ自分を?)
そして彼女が振り返る前にそれは途切れた。
「何だったんだ。今の?」
それに自分の名前を言っていた。
「紀伊。なぜ自分の名前を」
自分の名前を言った途端にいきなり室内の機器がついた。
「うわ!何だ」
もう何回目の驚きか分からない。そして周囲に渦巻いている白いサークルから表示が出た。
(機器の準備が完了。出航は可能)
(これは何だ?出航?これはどうすればいいんだ)
しかしうじうじ考えても仕方ないのでとりあえず言ってみることにした。
「じゃぁ・・・出航・・・」
するとまた表示が出た。
(ケーブルを切断、格納庫に注水確認。)
すると目の前のモニターに映像が走った。映像には何かの格納庫とそこに居座っている船が見えたがそれは何なのかはすぐに分かった。
「大和型なのか・・・・?」
そして一気に格納庫の扉が開いて、大量の水が入ってきて、直後に物凄い衝撃が襲ってきた。
日本海近海 重巡洋艦 チクマ
「ようやく見つけたぞ」
東洋方面第一巡航艦隊に所属している重巡洋艦であるチクマは人類側がまた不穏な動きをしていたのでこの海域まで赴いてきたのだ。そしてその通り、彼女の目の前には日本の所属だろう戦闘艦(日本では護衛艦というらしい)
が数隻いた。
「これよりアドミラリティコードに従い、あの戦闘艦を撃沈する」
日本国 護衛艦「はたかぜ」
「艦長!霧に発見されました!」
「どれくらいだ?」
「重巡洋艦一隻、軽巡洋艦二隻、駆逐艦四隻です」
「我々はここから何としても重要な情報を届けなければならないのだ。各艦にも通達、戦闘準備何としても振り切るぞ!」
「り、了解!」
「ふ、無駄な悪あがきを!」
灰色の戦闘艦はこちらに向けて攻撃を仕掛けてくるが全てがクラインフィールドによって防がれてしまっている。
「全艦を開始せよ」
そして攻撃の為に砲門が護衛艦隊に向く。
「霧が攻撃をしてきます!」
「もはやここまでか!」
艦長は歯噛みして、死を覚悟した。そのときだった。
「な、何だ!」
そう言ったのはチクマの方だった。
「この反応は霧の船で間違いないですが」
その時、海面が盛り上がった。
「な!」
「うそだろ!」
驚きが双方から上がった。その浮かび上がってきたのは霧の艦種で言えば、超戦艦級にあたるヤマト型とそっくりだったからだ。
「どこの所属だ!」
目の前の艦船について出た。
「キイ・・・こんな名前の霧の船は聞いたことがないぞ」
「かなりの衝撃だったけどここは海なのか?」
周りを見てみると海だったが反対側を見てみると驚いた。
「あれは何だ!」
見ると自分が昔見た護衛艦と旧日本海軍の艦船によく似た艦船がいた。(しかも船体が所々光っている)
「どうなっているんだ?もう訳がわからない」
するとあの光っている船から通信がきた。
『そこの所属不明艦聞こえているか。私は重巡洋艦チクマだ。貴艦の所属とを言え!』
声からするにかなり若そうだ。しかしいきなり上から目線だなぁ。
(ど、どうしよう。ここは答えないといけないよな)
「自分の所属はどこかは分からない。一体これはどういうことですか」
とりあえず答えたがすぐに困惑した返答が返ってきた。
「その声は男か?馬鹿な!声で返答しているからにはメンタルモデルだろうが男というのは聞いた事がないぞ!」
まったく理解のできない言葉を言ってきた。
「と、とにかくだ。その様子だとまさか何も知らないんじゃなかろうな?」
「いや、何のことかさっぱり分からないので教えて頂けるとありがたい・・・・」
「やはりお前は記憶の一部がなくなっているな。とりあえず主砲を動かしてみろ」
「いや、分からなんですが?」
何のことかわからない。俺一人であんな大きい主砲をどうやって動かすんだよ。
「ああもう!めんどくさい!タマ、教えている間に人間が逃げないように見といてくれ」
なんかぶつぶつ呟いている。
「まずは自分が動かしたい方に思ってみろ。あ、自分達には向けるなよ」
とりあえずななめ右と頭の中で思った。すると本当にななめ右に動いた。
「!?」
「それはお前の指令に反応する」
どうやら俺がこの船を動かしているらしい。
「その調子で他の事もできるはずだ。まずは霧ならあの船を撃沈してみろ」
そう言われて反対方向を向くと砲塔もそちらに向いた。しかし危うく撃つところだった。
(あの船は撃てない)
「どうした撃たないのか?」
不信に思ったチクマが聞いてくる。
「ああ。撃てないよ」
「!!」
驚くチクマ。
「そうですが残念です。やはりこうするしかないですか」
何を言っているか分からない。
「簡潔に言います。アドミラリティコードに反する者として排除します!!」
それはいきなりの死刑宣言だった。
「なんでいきなり!」
さっきまで優しく教えてくれたのに打って変ったチクマ。一体どうしたのだろうか?
「人類の海上進出を止める事がアドミラリティコードからの指令だ。それを出来ないとは反する者。そんな霧は我々霧にはいりません!」
「分かったよ」
チクマは主砲を旋回させてこちらに向けてきた。どうやら本当らしい。紀伊もさっき習った事で対抗しようとした。
「「撃て」」
同時に発射した。そして両方の砲弾が自身の船体に届く前にクラインフィールドに当たり、すさまじい光を生み出す。
「何だこれ!?バリアか?」
「たった一発でこれほどとはやはり見た目だけではないですか」
自身が動かしている主砲から出たビームや攻撃を防いだバリアなどまるでSFの世界にいるようだった。
「仕方ありません。あまり使いたくはないですが・・・」
そしてチクマはVLSを解放する。
「おいおい。ウソだろ。早くケリをつけないと!」
そうしてチクマのVLSからの全弾発射と紀伊の主砲発射はほぼいっしょだった。