「こんな駄作でもいい!」という方のみ見てください。
ミッドウェイ近海 金剛型二番艦「比叡」艦橋にて
「一体何がどうなっているんだ?」
日柳の言葉が今ここにいる全員の気持ちを代弁していた。
「よく分からんがあの戦艦はこちらに友好的なことは分かったな」
自分達は”死”を覚悟していた。だがあの白い戦艦が現れたことで状況は一変した。あの戦艦は20隻もの艦艇を一体どういう方法で撃沈したかは不明だが少なくとも自分たちを援護してくれていることは分かった。
「前方の敵戦艦進路をあの白い戦艦に向けています!」
どうやら手負いの自分達よりもあの戦艦の方が危険と判断したようだ。駆逐艦以上の速さで向かっていった。
「どうやら今のうちの様ですね」
堀江が驚きのショックから立ち直り日柳に言う。
「確かにそうだ。各艦に通達!残存艦を集結させて生存者を救助後、この海域から離脱する!」
「了解しました」
どうやら向こうが気を逸らしている間に何とか生存者と残存艦を集めて、ミッドウェイ島か本国に帰るしか選択肢はなかったがこちらもかなりの被害を受けており、無事に本国に帰れる保証はない。つまり一番近く当初の目的地であるミッドウェイ島に行くことになった。
「どうにか耐えてくれよ・・・」
日柳は向こうで激しい攻防戦を繰り広げながらも戦い続ける白い戦艦に向けて願った。
「取り巻きはだいぶ減ってきたな。あとは大ボスか」
すでにこちらに対して撃ってきているのは既に1、2隻程度しかいなかったが問題はあの巨大な戦艦である。あのデカイ図体の割に駆逐艦よりも早く航行しており狙いが付きにくかった。
「まったくちょこまかと・・・」
段々といらいらしてきた。既に数十分もこれのループを続けていたのだ。しかも向こうは速さを生かして死角から次々と主砲、魚雷、ミサイルなどを食らわしてくる。
しかし向こうも全弾躱し切れているわけでは無い。あの艦の周辺にクラインフィールドと同じような網状のバリアが確認できた。おそらくそれが主砲の威力を殺してしまっているのだろう。
(光学兵器ではだめ。かといって実弾はさっきの艦隊のを見て防がれているのは見えた。しかしこちらと同じ原理なら攻撃を浴びせていけば必ずシールドが無効かされるはずだ)
紀伊はそれに賭けた。ひたすら主砲や侵食弾頭を発射する。ヴィルベルヴィントも負けじと魚雷や主砲を放つ。
両方ともに凄まじい爆発が起こったが両方共に船体に傷は入っていない。
しかし優勢なのは紀伊だった。確実に相手のシールドを削っていた。だが紀伊にとっても焦らなけばいけない懸念事項があった。
「まずいな・・・」
ミサイルなどの轟音の中で紀伊がポツリと言う。確かにこちらが押しているがあの謎の艦隊(日柳達の艦隊の事)は退避しているが新たに敵艦隊らしき艦隊群がこちらに向かって来ているのだ。
(俺だけなら何とかなるがあの艦隊まで守りながらはさすがにきついな)
確かに超戦艦の実力を以てすればあれだけの艦隊は片ずくだろう。しかしあの艦隊を守る事もすることになれば今戦っている戦艦と接近中の敵艦隊も相手にしなくてはならない。増してや全艦全てを守ることはできない。艦らずどこかで落伍艦が出てしまうであろう。とねればやることは一つだけだった。
「ここで短時間でケリをつけるしかない」
しかしこのままあのスピードに翻弄されかけていればとてもじゃないが時間がかかる。チマチマとあのシールドを削っていては埒が明かない。
「自分がシールドを消してその隙にあの速度でも機関を狙える艦がいれば一気にケリをつけることができるのに・・・・!」
そこまで考えてあることに気がついた。この状況を打破できる方法を。紀伊が考えていた作戦では自分がシールドを破壊してその隙に機関部かエンジンを破壊するという作戦だった。しかしそれには一つの大きな問題がある。それはあの艦のスピードであった。いくら自分がシールドを破壊できたとしても自分が破壊しようと主砲や侵食弾頭を用意している間にあのスピードで駆けまわられてまた振り出しに戻るというリスクが高かった。
その為別の艦が紀伊が止めている内にエンジンか機関を破壊する必要があったのだ。
(一か八かやるしかない!頼む!)
紀伊は心の内で祈りながら発光信号が送った。
「比叡」艦橋
「もう少しで戦闘海域を離れられるな」
御坂教官がらしくないことを言う。その言葉の後に艦橋にいる全員の顔を見ると全員がまだ緊張の籠った顔をしているがほんの少しだけ安堵の表情が見え隠れしていた。
「ですが被害が大きかったです・・・」
「・・・・」
誰もが自分の言葉に暗い表情を見せた。先程の戦いで我が艦隊の被害は甚大だった。右舷護衛艦隊は一隻も残さずに全滅。左舷護衛艦隊は数隻を残して全滅。直営護衛艦隊は全艦沈んでいないが全艦が中破かそれ以上。輸送艦隊は3分の一にまで数を減らしていた。
「それに自分達は何もしてやれなかった・・・!」
そうこの海域を離れられるチャンスを作ったのはこの艦隊の誰でもどの艦でもない。あの白い戦艦だ。
日柳は後悔や悔しさで胸がいっぱいだった。そんな思いを抱いている日柳が言う言葉に誰もが黙って耳を傾ける。
日柳が抱く思いは誰の胸の中にもあった。
誰もが絶望に明け暮れていた。
その時にだった。
『謎の戦艦より発光信号!』
見張り員がその言葉を叫んだ時にその雰囲気が変わった。
「何と言っているのだ!」
『はい!貴艦ラノ心中ハサッシテイルガアノ戦艦ヲ倒スノ二協力シテハモラエナイカ?と送ってきています!』
「あの戦艦を倒すだと・・・?」
「そんな事が出来るのか・・・?」
艦橋の全員がその言葉を疑った。
「艦長どうしますか?」
「確かにあいつらに一泡吹かしてやりたいが一体どうやって・・・?」
その疑問は次に飛び込んできた報告で解消された。
『更に発光信号!我、敵ノシールドを一時ハカイスル。ソノ隙二敵ノキカンカエンジンヲ破壊せよと言って来ています』
「どうしますか・・・」
堀江が聞く。しかし日柳にその言葉は聞こえていなかった。
(確かに向こうの言い分は理解できる。しかしそれが本当に正しい方法なのか?もし間違っていたら?自分の決断でここにいる全員の命が消えてしまうかもしれない)
日柳は決断を迫られていた。このまま護衛艦隊と輸送艦隊と共にこの海域を脱出するか。それともあの戦艦を手助けして危険を取り除くか。
しかし後者は確実に乗務員を危険に晒す。俺には皆の命を預かる事なんてできない。
「艦長」
堀江の声が聞こえて振り向いた。乗務員全員がこちらを向いていた。その眼は決して命を捨てる覚悟もあるという眼だった。
「我々も覚悟が出来ています。このまま逃げて敵の追撃に怯えるか。あの戦艦の手助けをして生き残った全員が生き残るか。あなたはどちらがいいですか?」
堀江の声は相変われず淡々としていたが言葉の一つ一つに重みというものがあった。
「・・・・分かった」
静かに日柳は言った。
「これより比叡は艦隊を離脱してあの戦艦の援護に回る!その間の指揮は霧島に任せる。そして・・・もしかしたらこの艦は戻っては来ないかもしれない。だからこの船を下りたいと言っても止めもしない。各員の判断に任せる」
数分後全部署からの報告が来た。
「艦長、全部署からの報告です。誰一人として艦から下りてはいません」
「・・・」
覚悟はしていたがまさか誰も下りないとは予想してはいなかった。いや、自分が乗組員を見くびっていたみたいだった。
「分かった。180度反転これよりあの戦艦を援護する」
「了解」
各員慌ただしく動く。日柳の判断が正しかったかどうかはこの戦いの後に決まる事だ。
「発光信号!?」
そこには一隻の戦艦が向かってきていた。その間から発光信号が送られてくる。
「我比叡 コレヨリキカンヲ援護スルか」
どうやら賭けには勝ったみたいだ。
「さてヴィルベルヴィント。お前の速さに負けないくらいのスピードでこの戦いを終わらす」
一気に全弾発射した。十数本はヴィルベルヴィントの機銃で落とされたみたいだがそれ以外は全て命中する。
「まだまだ!」
更に畳み掛けるように主砲を撃ち、命中したミサイルの爆炎といっしょにヴィルベルヴィントのシールドを確実に破壊しようと襲いかかる。
その光景はまさに暴風に等しかった。もちろんその中心にいたヴィルベルヴィントも只では済まない。その暴風が過ぎ去った後のヴィルベルヴィントは左舷部分の甲板や武装が文字通り綺麗に無くなっていた。しかしヴィルベルビントの速力が落ちていない事は未だ機関は無事ということだった。
「だがお前の速力もこれでお仕舞だ」
彼の横から爆音がした。
「・・・・凄い」
言葉を失っていた。あの艦が出す無数の墳進弾と謎の光はあの戦艦を包み込むように覆っていた。そしてその暴風から出てきたあの戦艦は完全に元の姿を失っていた。
その光景を見た後に自分達の使命を再び思い出す。
「全門開けっ!目標敵戦艦!主砲撃てッ!」
再びの爆音と共に主砲が火を噴いた。何発かは海に落ちて至近弾になってしまったがほとんどの弾は命中した。
そしてその一部がはっきりと何かの破壊音を聞いたこと。それを聞いた時に日柳はニヤリと笑った。
しかし後はあの戦艦の役目だ。自分達ではない。あとはゆっくりと見よう。
「良し!」
思わず紀伊は叫んでしまった。実際にヴィンベルヴィントは速度が目に見えて低下している。しかしそれでも人間が這うようにゆっくりとだが海域から離脱しようとしていた。
「そういう訳にはいかないんだよね」
そう言い放ち先程回復したヴィンベルヴィントのシールドをいとも簡単に破壊した。
「まずは武装から!」
主砲でヴィンベルヴィントの主砲と機銃を破壊し侵食兵器で魚雷発射管とVLSを破壊した。しかし武装を剥がされようともまだ逃げようとするヴィンベルヴィント。
「最後に動きを止めてッと!」
最後にヴィンベルヴィントの船首を破壊した。
「いっちょ上がりっと」
紀伊はあえて撃沈しなかった。もし人が乗っているのならどういう事なのかを説明してもらわないと行けない。
「そしてなぜ俺はこの艦の名前を知っているんだ?」
疑問は尽きなかった。一体自分は何をさせられようとしているのか。自分の存在理由についた知りたかった。
「ひとまずは中に入ってみないと」
早くしないと本当に沈没してしまう。紀伊は自分の船体をゆっくりとヴィンベルヴィントの船体に寄せた。
「思ったより浸水が酷いな。自分でやっといてなんだけど」
紀伊はヴィンベルヴィントの船体に飛び移り、中に入った。
「暗いな・・・」
しかし霧のメンタルモデルであるからなのか分からないが視界は明るく、楽に通路を歩けた。
「ここが艦橋か」
何とか艦橋らしき場所にたどり着いた。しかし今まで通ってきた通路や部屋には人の姿どころかその気配すら感じなかった。不審に思いスキャンをかけてみると熱源反応がまるでないことに気が付いた。
「何かあるかな・・・・うん?」
最後に残った艦橋に入って少しすると妙なものに気がついた。
「人影?」
艦長席に人影があった。
「う・・・ん?」
どうやら気を失っているらしかった。良く見ると女の子だ。
「はっ!あなたは!」
「うぁ!」
顔を目の前に近ずけた時にいきなりその女の子が起きた。しかも警戒心MAXでだ。
「もしかして君がヴィンベルヴィント?」
「・・・・」
彼女は何も答えない。代わりに返ったのは身震いするような鋭い眼だった。
「えーーと・・・・」
さすがに困ってしまった。その沈黙が数分続いた後に今度は彼女が切り出した。
「なぜ私を生かしておくんだ?」
「え?」
突然の質問に戸惑った。
「それは君のような人を助けて・・情報を・・・」
「ふん、お前はそんな奴じゃなかったはずだ」
その言葉にさすがに動揺した。
「君は俺を知っているのか?」
「何を言っているお前は私と戦い、君に敗れたはずだが?」
「はぁ?」
訳が分からなかった。第一俺はこんな船すら知らない。その紀伊の気持ちとは裏腹に彼女は言葉を続ける。
「それにいつの間に姿を変えたんだ。姿も顔もまるで男じゃないか?君はそんな趣味だったのか?」
「俺はあんたなんか知らない」
ついに紀伊は真実を言った。
「今更そんな嘘を言っても私は信じないぞ。覚えているはずだ」
「本当だ。あんたなんか知らないしこの船体だって見たことがない」
そう言い切った時に彼女は少し考えたようだった。その顔には若干困惑の表情が見える。
「・・・・分かった。とりあえず信じよう。それで紀伊。何か知りたいことがあって来たんだろ。私は先遣艦隊だが二回目だとはいえ私を打ち破ったんだ。答えられる範囲なら答えるぞ?」
未だに紀伊は動揺を隠せないでいたが彼女の瞳を見た。戦闘以外の何物にも興味はないという眼だった。
「なら聞こう」
少しだけ頭を冷やすことが出来た。
「お前たちは何者だ?そして俺は一体何なんだ!」
その紀伊の叫びは艦橋の電子機器のスパーク音で掻き消されてしまった。二人の顔だけがそこに照らし出された。
今回はいかがだったでしょうか?と言っても戦闘シーンは少なかったかもしれません。
そして紀伊の存在についても少しだけ触れました。一体紀伊とは!?
次回も期待せずに待っていてください。