ヴィンベルヴィントとの戦闘が終わった後
「あの戦艦は停止したようです」
「そうか・・・」
ヴィンベルヴィントへの砲撃を行った後はもはやワンサイドゲームだった。すぐさまあの戦艦は少ししか回復していなかったシールドらしきものを破壊されて武装を全て破壊されたあとに艦首を破壊されて完全に動きを止めてしまった。
あの白い戦艦がいたぶっているようにも見えてしまう。
「圧倒的だな・・・」
「あれが俺たちに向いていたら・・・」
思うだけでも背筋に寒気が来た。しかしまずは助かったことを祝うべきだ。
「艦長見とれているわけには行きません。すぐに敵増援艦隊が来るでしょう」
堀江の指摘は正論だった。ここに長くいることはそれだけ命が失われるリスクを高めているのだ。
『艦長、白い戦艦があの艦に横付けしました!』
「一体どういうつもりだ?」
敵の艦艇であり、ほっといても沈みそうな船になぜ横付けするのかが分からなかった。
「うん・・・・?」
「どうした?」
御坂教官が訪ねてくる。
「いえ、何でもありません」
日柳は嘘を吐いたが言ったとしても冗談にしか思われないのでやめた。ちらっとだが飛び移る影がいたように見えたのだ。
「ふん、馬鹿馬鹿しいか」
第一ありえない。船から船までかなりの距離がある。そんな距離を人間が一っ跳びすることなんて事は不可能だ。
日柳は見間違えだと頭の中で片付けた。
「あと8分してあの艦が動かなければ我々はあの艦を置いてこの海域を離脱する。それでいいですか?」
「異存はない」
「私もです」
御坂教官と堀江、その他の乗務員も異存はないということだった。
「頼むから置いて行かせるなよ」
正直に気持ちを言えば、出来ればあの艦と共に離脱がしたかったのだ。この場で置いていけば大きな戦力を失うだろう。それだけはどうしても避けたかった。
日柳はあの艦がなぜか何かを変えるような気がしてならなかったのだ。
ヴィンベルヴィント艦橋にて
「まずはそうだな・・・君たちの目的は?」
「いきなり核心をついてくるか。まぁ、正直に言うが我々の目的は”破壊”ただそれだけだ」
「たったそれだけなの?」
紀伊は段々と怒りが湧いてきた。”破壊”ただそれだけとは言えないがそれを理由だけで多くの人命が失われたはずだ。
「どれだけの人命が失われたと思っている!?」
「そんなものは知らん。我らは兵器だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「何ていう理屈だ・・・」
吐き捨てたいほどの理屈だが頭に上った血をどうにか抑えて、次の質問に移ろうとしたときに下の方から爆発音が聞こえてきた。
「何だ!?」
「どうやらあまり私は長くはないらしい。どうした?早く行かないのか?」
急き立てるヴィンベルヴィント。しかしまだ情報はぜんぜん引き出せてはいない。
「はぁー」
紀伊はため息を出し、頭を掻いて。自分の船体を動かした。
「?」
その光景をヴィンベルヴィントは不思議そうに見ていた。
「何をしている」
「決まってんだろ。お前を救うんだよ」
その言葉と同時に何かが接続する音がした。
「お前、まさか!」
ヴィンベルヴィントが懸念していることは当たっていた。
「お前を俺が引っ張っていって近くの島か何かまで運んで行くよ。そうしたら沈没の危険もないだろう?]
「何を言っている!?そんなことできるわけ・・・」
「出来る、出来ないの問題じゃない。やらないとね」
その言葉を聞いてもまだ彼女は「離せ!」や「敵に捕まるくらいなら沈没した方がましだ!」など煩いので自分の耳から彼女の言葉をシャットアウトする。
「さて、最後にもう一つだけやらないとね」
彼の眼には戦艦比叡が映っていた。
『戦艦より発光信号!』
「何て言っている!?」
『はい!一先ズハコノ海域ヨリテッタイスルガ貴艦ハドウスル?と送ってきています!』
「向こうの言い分もこちらと同じだ。離脱をしよう」
日柳が承諾しようとするが乗務員の一人が声を上げる。
「し、しかし向こうは敵を連れています。もし裏切った場合のことは考えなくていいんですか?」
「た、確かに・・・」
あの戦艦のことが信じられているのはまだ全員ではなかった。その意見に同調する声も決して少なくなかった。
「だがこのままの状況もかなり危険だ。裏切る危険があるのは承知の上だがそれは向こうも同じだろう。下手に刺激しあっては元も子もない。まずはこの海域を離脱してあの戦艦の乗務員と話をしてみるのが今できる最良の選択とは思わないか?」
御坂教官がその意見について異議を出した。その言葉に皆が黙る。
「・・・他に反対の意見は無いみたいだな。さぁ、早いとここの海域から離脱しよう」
「分かりました。あの戦艦に発光信号を送れ!」
「了解!」
「ええっとコノ海域ヲ離脱シタ後二本艦トノ面会ヲ希望スルか。まぁ、いいけどさ。それよりもあの戦艦とかどっかで見たことがあるんだよなぁ」
紀伊はあまり日本軍の艦艇については知らなかった。そのため目の前にいる戦艦が金剛型二番艦「比叡」とは気づけなかったのだ。
「おい!話を聞いて・・・」
「煩いよ」
紀伊は彼女の口を縄で塞ぐ。
「良し!行くか!」
紀伊と日柳の艦隊は現海域から離れていった。その後に来た敵艦隊が右往左往していたことについては彼らは知らなかった。
1時間後・・・・
「ここまで来ればもう大丈夫なはずです」
堀江の言葉に皆がため息を吐いた。それは今までの緊張が一気に抜けたからだった。
「お疲れ様です。艦長」
「あ、ありがとう」
必要最低限の人数以外は皆が休息を取り始めた頃に堀江が話掛けてきた。
「確かに貴官の指揮は見事だったぞ」
御坂教官も褒めてくれた。女性二人に褒められると自然に頬が赤くなった。
「ですが最後の問題があります」
「分かっているよあの戦艦だろ」
既に危険な海域を抜けた今、あの戦艦の乗務員の面会があった。
「既に向こうから乗船許可は下りている。内火艇を下してくれ」
「分かりました」
既にメンバーは決まっている。自分、堀江、御坂教官。そして4空母の艦長とアメリカ派遣艦隊司令と最後に・・・
「どけ邪魔だ」
内火艇に乗ろうとする自分達を無理やり退かして自分が先に乗った男がいた。山口提督だった。彼は右舷護衛艦隊の「阿賀野」に乗っていたが自分の乗艦した艦が沈められて漂っていたところを「比叡」に救助されたのだ。
「申し訳ございません」
「たかだが訓練生ごときの分際で私より先に乗ろうとするとは何事だ!」
最後の方は怒鳴られてしまった。彼は鬼の提督と各所から恐れらおり、味方も平気で囮にしてしまう恐ろしい人物だった。更にとても差別意識が強く、アメリカとの合同艦隊になったときには
『我が誇り高き大日本帝国軍人があんな鬼畜米兵といっしょに戦うだと!?』
と言う風に危うく米兵を殺しかけてしまいそうになるほどの勢いだったが何とか説得して今に至るわけだ。
「申し訳ありません」
「ふん、まぁいい。精々私の背中でも見ておくがいい」
そう言い放ち内火艇に乗り込んでいく。自分たちはその後内火艇に乗り込んだ。
ゆっくりと内火艇が動き出した。白い巨体に近づいていく。
「しかし奇妙ですね」
「そうだな」
確かにとても巨大だが船体には謎の模様があり、光っていた。しかも甲板には人の姿は無く、かわりにそこに何か変なものがあった。その巨体から再び発光信号が来た。
「何と言っているんだ?」
「待ってください。ソノママソコデ待機せよです」
「この私を待たせるとは一体どんな奴だ」
山口提督が待たされることに愚痴を吐く。しかしそれもすぐだった。ゆっくりとだが階段が降りてきた。しかし周りに人はいない。
「意外と速かったな」
山口提督はそんな事に見向きもせずにズカズカと階段を上っていく。三人は顔を見合わせて頷くと階段を上った。他の司令と付いてくる。
「しかしどうして人がいないのでしょうか?」
堀江が言っている事は正しい。戦艦の運用には多くの人間がいるがそんな気配は微塵もない。むしろ誰もいないということの方がしっくりときた。
「本当に人がいるんでしょうか?」
段々と不安が積もってきた。その時に艦橋に繋がるドアが開いた。
「この中にいるのかも」
中に入ってみるとかなり明るかったが驚いたのはその内装だ。どういう風に作ればこうなるのかが分からないくらいだった。それほど自分達が知っている内装とは違って見えた。
「まるで空想小説に出てきそうな場所だな」
日柳がぽつりとつぶやいた言葉に誰かが答えた。
「そうかもしれませんね」
その言葉を聞いた瞬間に誰もが固まった。今の声は誰のものでもなかったからだ。
「そう怖がらないでください。今行くので」
彼らが銃を構えた瞬間に再び声が聞こえた。やはり幻聴ではなかった。
そして暗闇から人影が出てきた。容姿はまさに自分と同じかそれ以下に思えた。
「誰だお前は?他の船員はどうしたんだ?」
山口提督が聞く。すると少し彼は自分たちを見て少し驚きながら
「あなた方はもしかして日本海軍の方ですか?」
と聞いてきた。さすがにこれは皆が面を喰らった。
「何を言っているんだ。この服装を他にどの海軍が着るというのかね」
当然と皆が答えると少年はかなり驚いていたが話を戻した。
「で、では最初の質問ですが自分は宮本 紀伊です。第二の質問ですが自分の他に誰もいませんよ」
「はぁ?」
言葉が分からなかった訳ではない。何を言っているのかと彼の正気を疑ってしまった。
「何を言っているんだ?ならどうして艦が動いているんだ」
その言葉に彼は即答した。
「それは私がこの艦自身だからですよ」
その言葉といっしょに彼の周りに白い輪のようなものが現れた。気が緩んでいた彼らは再び銃を構えた。
「では君は何者だ?」
「そうですね。今は”離れて”いますが霧の艦隊 超戦艦紀伊とだけ答えておきましょう」
「霧の艦隊だと?」
実は紀伊の方もよく分かってはおらず超戦艦の名前も自分の名前をつけただけである。
「そうです。おそろくですがあなた達よりも未来から来ました」
「未来から来ただとぉ?何を抜かしておる!」
再び山口提督が叫んだがそんな事は聞いていないかの様に振舞っていた。(この時紀伊は少し竦みそうな気持ちを必死に抑えて何事もなかったかのように振舞っていた)
「それはあなた方も見たはずです」
「・・・・・」
彼の言葉には信憑性はあった。確かにあんな兵器などは見たことがない。ましてやこの艦もだ。
「確かにそれは言えるな。それでその霧の艦隊の超戦艦がなぜ我々を?」
「それはですね・・・」
それからお互いに情報交換や自分達の現状を知り合った。特に日柳達の方はかなりの驚きに包まれていた。
「分かった。そちらの状況については理解したがこれから貴官はどうするつもりだ?」
「そうですね。あなた方に連いていってもいいかなと思っています。それでもよろしいですか?」
「もちろんです。あなたが来てくれるとこちらも助かる」
どうやらお互い利害が一致したみたいだった。
「では行きますか。ミッドウェイ島へ」
「はい」
こうしてお互いいい方向で方針が決まった。皆がそれを歓迎した。ただ一人を除いては・・・・
「見えましたミッドウェイ島です!」
艦橋からはうっすらとミッドウェイ島の島影が見え始めていた。
「「おおっ!」」
誰もが喜びの声を上げた。無理もない。命からがら着いたのだから。
「ようやく来れましたね」
「そうだな。見張り員何か見えるか?」
『そうですね。特段何も。味方艦も見えません』
「おかしいですね味方はもう気づいているはずなのに迎えもないなんて」
「そうだな。何かあ『艦長!』どうした!」
安ど感が渦巻いていた艦橋内で見張り員がその空気を破いた。
『ミッドウェイ島が・・・』
「ミ、ミッドウェイ島がどうかしたのか!」
『燃えています!』
その報告に一瞬時間が止まった様に全員が思った。しかしすぐに我に返り外を見る。
「冗談だろ?」
「嘘ですよね?」
そこには薄らとだが炎上して黒煙を上げるミッドウェイ島の姿があった。
どうしてもヴィンベルヴィントを連れていきたかった。皆さんは超兵器ではどれが好きですか?自分は中々上手く書けないですが大目に見てくれれば光栄です。
次回は黒炎を上げるミッドウェイ島。一体何があったのか!?