その日はいつになく快晴だった。
「こんな時は昼寝が一番だな」
草原に横たわっているのは戦艦「日向」の艦長である山田 勝也(やまだ かつや)だった。
今日はいつにも見ない程の快晴であり、今の現状を忘れて昼寝をしそうになっていた。その光景は今が戦争中だということを忘れてしまいそうだった。
ミッドウェイ島に駐留しているのは以下の艦艇である。
日本艦隊
戦艦 「扶桑」、「日向」
巡洋艦 5隻
駆逐艦 10隻
アメリカ艦隊
戦艦 「オクラホマ」、「ニューヨーク」
巡洋艦 6隻
駆逐艦 14隻
支援艦隊
タンカー 3隻 輸送艦5隻
彼らは日柳達の艦隊が出る前にミッドウェイ島への道を確保するのが目的だった。彼らは思っていた戦闘もなくミッドウェイ島の港に着いてしまった。彼らは安全確保を果たし、本土に連絡すると「後続艦隊が到着するまで待機せよ」と命じられて羽を伸ばしているのだ。
「艦長何をしているんですか?}
日の光が遮られたと思い、目を開けてみると「日向」の副長が居た。
「ああ。昼寝でもしようと思って」
「何を呑気な事を言っているんですかこれから新型航空機を見に行くんじゃなかったんですか?」
副長に指摘されてようやく思い出した。このミッドウェイ島には今回現れた謎の敵に対して既存の航空機では歯が立たないことがあったのだ。その為、ここミッドウェイ島で航空機の開発に着手していたのだ。それが昨日試作機が出来たという報告があったので皆で見に行こうということになったのだ。
「悪い悪い。行こうか」
「はい。ところで艦長帽子は?」
「え?あっ!」
どうやら帽子を日向の艦橋に置き忘れていたみたいだ。取りに返えなけらば恰好がつかない。
「すまない。後で行くから先に見といてくれ」
「分かりました」
副長は遠のいていく彼を見ながら背を背けた。
彼が走っていく港にはありとあらゆる艦船があった。さすがに先発隊ともあって空母は無いがそれも後から来る増援に空母が居る為また増えそうだった。
「はぁ、はぁ」
しかし一気に港の端から端まで行くのはこの年になると体力的にはきつくなるのだ。時々もつれそうになる足を何とか言う事を聞かして戦艦「日向」にたどり着いた。
「ぜぇ、ぜぇ、何とか着いた・・・・」
少し近くで腰を下ろして息が整うのを待ってから日向の艦内に入った。
「えーと目的のものは・・・」
艦橋を少し探すとすぐに目的の帽子は見つかった。
「よしよしこれでいいと」
「日向」艦長になった日からずっと着用している帽子は今までの様に頭によくフィットした。艦橋には今は誰もいなかった。おそらく皆が新型航空機を見学しに行っているのだろう。警備の連中は可哀想だと勝也は思った。
「さぁ、行くか」
「日向」の艦橋に置いてきた忘れ物は取れたので艦橋を出ようとした。おそらくは副長や他の乗務員が待っているだろう。自分も早く新型航空機を見たいと思っていたところだった。
ピーピーピー!
甲高い音がした。何の音だと振り向いた瞬間に思い出した。これは無線の呼び出し音だと。すぐに勝也は出た。
「こちら日向艦長の山口 勝也だ。どうした?」
聞いた時に雑音と共に慌てた声が聞こえたが雑音が酷く断片的にしか聞こえない。
「こち・・・駆逐・・・時雨・・・ほう・・て・・こう・・ただ・いひ・・よ」
「どうした雑音が酷くて声が聞こえないもう一度はっきり言ってくれ」
すると先程より声を大きくしたのか先程よりもはっきりと聞こえるようになった。
「こちら駆逐艦時雨!報告する!敵航空部隊多数接近!直ちに警戒せよ!繰り返す敵航空部隊接近中!」
「何だと!?」
安全だと思われていたミッドウェイ島に敵の航空部隊が向かっているという報告を受けた勝也は馬鹿なと思った。
このミッドウェイ島は度重なる偵察の上で安全だと思われた。実際に自分たちがそれを証明してしまっている。
だが現実は変わらない。やはり戦争はどこも安全ではなかったのだ。
「!!」
ついに航空機の音がした。かなりの音だろう。基地の連中も気がついたようで大慌てで機銃につくが時すでに遅しだった。
ヒュー―――
何かが落下してくる音がした。艦橋から出てみると黒い何かが落ちて来ていた。紛れもない爆弾だった。
「くっ!」
咄嗟に艦橋の中の隅に飛び込んだ。次の瞬間、空や地上が赤くなった。
ドンッ!ドンッ!
次々と敵が落とした爆弾がさく裂していく。近くの湾岸施設、高射陣地、宿舎、格納庫、そして艦船に降り注いだ。
しかし味方部隊も黙ってはやられずに生き残った高射砲が艦爆を文字通り蜂の巣にした。その高射砲の搭乗員はほくそ笑んだに違いない。しかしそれもすぐに終わった。更に多くの爆撃機が爆撃の雨を降らして大きなクレーターが出来るほどまで落とし続けた。
「あれは・・・」
その光景に目を奪われていると何かが日向の横を渡った。アメリカの「ニューヨーク」だった。どうやらいち早く状況に気がついて脱出しようよしているようだった。しかしそんな生存の為に航行している「ニューヨーク」に対して非情にも敵航空部隊の攻撃が加わった。
「そんな・・・「ニューヨーク」が・・・」
最初の艦爆の攻撃はニューヨークの対空砲で防いだがその次に来た雷撃機が魚雷を放った。ニューヨークに2本の水柱が立った。その為、船速が遅くなり、次々と爆弾や魚雷を放って行き、ついにニューヨークはその身を海底に沈めることになってしまった。
もちろん近くにいた日向も只では済まなかった。しかし今度ばかりは運が味方についてくれたのか。沈没しようとしたニューヨークの船体により、爆弾や魚雷が防がれてしまったが内いくつかは日向の後部主砲全てを吹き飛ばしてしまった。
「みんなは・・・・どうしたんだ?」
勝也も皆の心配をしたかったがそれどころでは無かった。それから数分か数時間たったのかは分からなかった。いや、分からない程まで長く感じたのだ。敵航空隊は勝利を誇るかのように飛び去ってしまった。
「う・・・う・・」
勝也は敵航空機が去って行ったのを見計らって、艦橋から外を見渡した。
「あ・・・あ・・」
声が出なかった。さっきまでとはがらりと島は姿を変えていた。地上施設で目立った建物は全て破壊されていた。
しかし艦艇は戦艦で言えば、「オクラホマ」はドックにいたため、無傷に近いが「扶桑」はあの長い艦橋が根元から折れていた。巡洋艦はといえば、残っているのは全て中破かそれ以上、駆逐艦に関してはほぼ大破に近かった。
「この攻撃はまるで・・・」
そう日本軍自身が行った真珠湾攻撃とまったく同じような状況だった。偶然だろうか。いや、今はそんなことを考えている暇はない。とりあえず被害報告と生存者の救出だ。
それから2時間後 紀伊達が島に着く数分前
「とりあえずこれで全部か・・・」
ようやく被害が分かった。
被害状況
日本
戦艦 扶桑 大破
日向 中破(後部砲塔全滅)
巡洋艦 「青葉」、「衣笠」大破 「天龍」大破 「龍田」沈没 「川内」沈没
駆逐艦 「秋霜」 大破 「清霜」 「岸波」沈没「夕立」 「時雨」「白露」 「山風」中破 「五月雨」 「海風」「涼風」 沈没
アメリカ
戦艦 「ニューヨーク」沈没 「オクラホマ」健在(ドッグにいたため難を逃れた)
巡洋艦 「ペンサコーラ」大破 「ノーザンプストン」大破 「アトランタ」大破 「ジュノー」「サンディエゴ」沈没 「ヘレナ」大破
駆逐艦 「ワッツ」 「ロス」「ロウ」 「スモーレイ」 「ロビンソン」「ミラー」 沈没 「カップス」 「エヴァンズ」 「ブラウン」 「ボイド」大破(内二隻が修復不能) 「ブッシュ」 「ホーエル」
「ヘイウッド・L・エドワーズ」 「リチャード・P・リアリー」が中破だった。
損害艦では数が多かったアメリカ側の方が大きかったがこちらも日本にしてみれば無視できないほど損害は大きかった。何しろ日本の艦艇はアメリカと違い、短期に艦艇を作ることはできないのだ。その為、この数でも十分痛手だったのだ。
「くそっ!」
思わず悪態を空に向かって叫んでいた。これほどの悲劇は見たことがなかった。日向やその他の艦艇達の乗組員はほぼ航空機を鑑賞しに集まっていた為、航空機の餌食となってしまっていた。島の防衛に当たっていた陸軍も攻撃を受けて壊滅寸前だった。アメリカ軍も同じであった。
その時に安全の為に飛ばしていた偵察機から通信が入った。
「どうしたっ!?」
一気に現場が騒然となる。おそらく次の攻撃を受ければ全滅するだろう。
『増援です!どうやら後続の艦隊が来たようです』
どうやら間に合ったようだ。一気に現場で安堵の空気が広がった。
「分かった。艦隊を誘導してくれ」
『了解しました』
「赤城」旗艦の機動艦隊と「比叡」旗艦の練習艦隊だろう。彼らがいれば少しは安心できるようになる。
「良し。彼らを迎えに行くぞ」
船体の上で静かに紀伊は考え事をしていた。確かにミッドウェー島が攻撃されていることにも驚いたが偵察機からの応答があったのでどうやら全滅はしていなかったらしい。しかしそれと同じように重要な考え事をしていた。
(彼女と俺は一度会ったことがあるみたいだ。しかし俺にはそんな面識は一度だってない。それに俺の顔を見て俺が体をまるで作り直したみたいな言動をやっていた。なぜそんな事を?そもそもなぜ俺はこんな世界に?)
今まで考えてきて一度だって結論にたどり着けなかった論題だった。しかし今回彼女との遭遇であともう少しで答えをだせそうな気がなぜかした。
そもそもなぜ自分はこんな事態になっているのか?小説でしか見たことが無いような事態の連続だ。お蔭に自分はいまや人ですらない。家族や今、どう思っているのだろうか。そんな考えをずっとしてきていた。
「必ず帰らないと・・・」
だがそれはどの世界にだ?日下部や群像達がいる世界か、それとも自分が元いた世界か。もし元の世界に帰っあっとしてもこの体は元に戻るのか。疑問は次々と湧き出してくる。
「あーーーもうっ!」
そんな無限ループのような考えを捨て、大声で叫んだ。今、悩んでも仕方のないことだ。まずは目の前の事態を解決しないと思い。強引に意識を現実に引き戻した。良く見ると発光信号を送っている。
「我に続け、誘導するか。ここまですぐに分かってしまうんだから・・・・」
顔が熱くなってきた。少し休んだ方がいいかもな。そう思いながら紀伊は比叡達と共に湾内に入っていった。
「何なんだ・・・・」
「やはり被害は被っていたか・・・!」
皆がミッドウェー島の惨劇を目の前にして言葉を失っていた。それもそうだろう一番安全だと思われていた島が句集を受けて壊滅寸前だったからだ。
「すまない。自分たちの不甲斐ないばかりに」
勝也の言葉に皆が慌てる。
「い、いえっ!勝也艦長達の所為ではありません!悪いのは空襲を行った敵です!」
御坂教官が必死に擁護するが効果は逆効果だったようだ。
「そ、それで被害状況の方はどうなっているんですか?」
日柳が話題を唐突に変えた。
「地上施設は一部を除いて全滅だ。艦艇も一部を除いて大破か撃沈だ」
「そうですか・・・」
「しかもとても今の設備だけでは修復できない艦艇も多い。とてもじゃないが反攻作戦には使えないな」
「・・・・」
誰もが悔しさと無力感でいっぱいになっていた時に一人だけ違う者がいた。紀伊である。
(この反応は・・・・ナノマテリアル?)
実は一度だけこの船体を作っているナノマテリアルの元の姿をイオナに見させてもらっていた。その時の反応がこのミッドウェー島の付近や湾内の至る所で出ているのだ。
「うっ・・・!」
再び頭痛がした。今までとは比較にならない程だ。その痛みに耐えきれずに急速に彼の意識は消えて行ってしまった。
日柳達はどうしようかと迷っていた。既に主力艦は全てドック行きか沈んでしまっている。これからどうすればいいのかと迷っていると
「おいおいどうした?何か問題があったか?」
場違いな声が響く。皆が驚きながら振り返った。そこには紀伊と呼ばれる人間?がいた。しかし何か様子と言うか雰囲気が違っていた。
「実は・・・」
事情を話した。すると紀伊は納得した。
「何だそんなことか」
「そんなことって・・・」
皆が何かを言ようとすると紀伊は言葉で遮った。
「おいそこの!」
「はいっ!私ですか?」
「そうだ。すぐに修理が必要な艦を集めろ!私が短時間で直してやるよ」
「嘘だろ」
皆が失笑した。だが紀伊は言葉を続けた。
「いや本当だ。まずは被害が少ない艦からだ。あと作業を見るなよ」
皆が呆然としていると彼は一歩前に出て
「何をぼさっとしている。作業にかかるぞ!!」
高らかにそう宣言したのだ。
「一体何が」
「彼に」
「起こったんだ?」
日柳達は同一意見だった。そんな彼らの前で高らかに笑う紀伊だった。
いやーー中々いい文が出来ない。おそらく次はビフォーアフ・・ゲフンゲフン
次回は艦船たちの改装です。そして紀伊には何がおこったのか?