白き鋼のアルペジオ   作:神奈翔太

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SSTO防衛

横須賀を脱出した紀伊と日下部は「黒鯨」が紀伊にやられた場所をコンピュータが自動で修復箇所を修復している間に紀伊の戦艦に集まって、今後の話し合いをしていた。

 

「で、横須賀から逃げ出したのはいいんだけど・・・・」

 

「あんたが言いたいのはこれからどうするかってことなんでしょ」

 

さすが日下部言いたい事を的確に言ってくる。

 

「「黒鯨」の修復は少なくともあと5時間はかかるからそれまで考えよう。このまま情勢が自分達に有利になるまで待つか、それとも打って出るか」

 

「う~~~ん」

 

紀伊は唸っていた。

 

「そういえば・・・・」

 

日下部が何かを思い出したみたいだ。

 

「噂で聞いたんだけど佐賀県付近で蒼き鋼のイー401の反応があったんだって」

 

「蒼き鋼?」

 

紀伊は首を捻った。

 

「あんたって本当に霧なの?蒼き鋼はあなたみたいに霧から離脱したイー401と千早群像とその他のクルーで構成されていて、霧と戦い続けている集団のことよ」

 

「それは分かったけどどうしてその蒼き鋼のことを?」

 

「決まっているじゃない。私達と彼らの境遇はほぼ同じ、それに彼らの方がある意味では先輩よ?会って情報交換というのも悪くないんじゃない?」

 

日下部は提案してくるが紀伊は唸り続けるだけだ。

 

「ま、まぁまだ五時間はあることだし、私にこの船を案内してよ!」

 

この場の悪い空気に耐えられなかったのか、日下部は提案してくる。確かにちらっとしかまだ見れていない。自分の武器だってまだ通常弾頭と主砲しか把握していないのだ。せっかくの機会だし、回ってみるか。

 

「うん、いいよ」

 

そうして艦内を見て回ることになった。

 

 

 

そうしてこうなった・・・

 

 

「これが浸食弾頭。こっちが浸食魚雷・・・・」

 

 

日下部はミサイルや魚雷をなぜか見つめていた。

 

「何でミサイルや魚雷を見ているの?」

 

「え!あなたはまさかこれを使っていないの?」

 

紀伊は首を縦に振った。

 

「何か悔しいわ」

 

「・・・・」

 

やばい。本当にこいつ大丈夫かよって顔している。

 

「はぁ、まぁ使ってみたらわかるわ」

 

そして艦内を見た。

 

「しっかし本当にすごいわね。初めて浸食兵器を見たから興奮してしまったわ。他にもあるかな」

 

艦内の設備に興味深々な彼女はまるで新しい玩具をもらった子供みたいだった。そして立ち止まっている日下部に追いつくと日下部はまっすぐに一点を見つめていた。

 

「これは霧の航空機・・・・」

 

それを見るとそれは紀伊でも分かる航空機だった。

 

「零式水上観測機じゃないか」

 

日本海軍の開発した水上観測機だった。しかし霧の船といっしょでバイナルパターンが入っている。

 

「ねぇ、これを動かせるの?」

 

日下部が聞いてきた。その顔を見てみるとある思いが見え隠れしていた。

 

(動かして)

 

しかも何か脅しているような感覚がする。安全な内にまだやった事の無い航空機を動かしてみよう。

 

「とりあえずこうすればいいのかな?」

 

とりあえず船を動かしたみたいに航空機を制御してみる。

 

 

ブオオオ!

 

零式水上観測機が動き出した。

 

「すごいわね!」

 

さすがに初めてみる霧の航空機に驚きを隠せないようだ。

 

 

「何とか動かせたみたいだな。これがあともう一機はあるみたいだな。今度運用してみようかな」

 

 

しかし自分の演算力を少しばかり使ってしまうがまぁ、このくらいなら問題はないだろう。

そして未だ興奮して呆然としている日下部を引きずりながら、艦橋へ戻った。

 

 

 

そして6時間後

 

 

それぞれ釣りやら睡眠しながら6時間を過ごした時に船のレーダーに反応があった。

 

「これは何だ?」

 

「どうしたの?」

 

騒ぎに気ずいた日下部がこちらに来た。

 

「どうやらこの近くで戦闘が起っているみたいだ」

 

「それは大変だわ!もし海軍と霧との戦闘なら助けにいかないと!」

 

 

日本の・・いや世界の海軍は霧に対する有効な兵器は無い。

 

 

「場所は・・・佐賀の宇宙センターの近くだ」

 

「霧がそこまでするなんて・・・もしかしたら宇宙センターのSSTOに何かあるのかもしれない。すぐに行こう紀伊!」

 

「分かったよ。行こう。「黒鯨」の準備は?」

 

「ばっちりよ!」

 

元気な声で返事が返ってきた。なら行くか。

 

「良し!救援に行くぞ!」

 

こうして佐賀の宇宙センターに向かうことになった。

 

 

 

 

 

佐賀県宇宙センター

 

現在この宇宙センターは攻撃を受けていた。そしてそれの防衛についている護衛艦やミサイル砲台の先には赤いバイナルパターンの軽巡がいた。

 

 

「軽巡ナガラが近づいてきます!」

 

「何としても打ち上げを成功させなければならない。SSTOの発射を急がせろ!」

 

 

皆が霧の襲来に慌てる中でナガラは迷うことなく、VLSを開き、弾頭を発射してそれを砲台や護衛艦が防いでいく。そしてナガラが主砲を撃ち、護衛艦が被弾する。

 

「「たちかぜ」轟沈!「あまつかぜ」大破!。ナガラ機雷源を抜けます!」

 

「このままでは防衛線が破られるのは時間の問題です!」

 

誰もが絶望したときにまた一人叫んだ。

 

「またレーダーに反応!」

 

「霧の増援か!」

 

ナガラだけでも危険なのに更に増援が来られれば、今度こそ終わりだ。

 

「いえ、この反応は・・・イ号401です!」

 

「来てくれたか!」

 

 

 

 

 

イ401艦内

 

「艦長!「たちかぜ」轟沈!「あまつかぜ」は大破しています!」

 

「分かった。イオナ相手のデータを出してくれ」

 

「分かった。モニターに出す」

 

イオナと呼ばれた青いセーラー服を着た少女の肌に青い発光する模様が浮かび上がってモニターにナガラのデータが表示された。

 

「長良級ナガラ。軽巡洋艦。強制波動装甲装備。12,3cmアクティブターレット3基6門で各種弾頭や光学兵器を発射可能。艦艇部に魚雷発射管12門。船体の側面に連装魚雷発射装置複数。その他レーダー高角砲が3門。高角砲は浮遊攻撃が可能。ミサイル発射管及び近接攻撃・迎撃システムが多数。潜水機能は無し。速力は60ノット。標準的な霧の軽巡洋艦」

 

 

イオナが淡々とナガラのデータを読み上げる中、艦長である千早 群像はナガラに対する戦術を考えていた。

 

「艦長。敵はまだこちらに気づいている様子はありません。先にこちらが先制攻撃をするべきかと」

 

副長の織部 僧が先制攻撃をしてはどうかと提案してくる。彼は群像の同級生であり、群像に次いで成績が優秀である。この船の彼の役目は艦長をサポートすることであり、最終的な判断を群像が出すために的確な作戦を提案してくれる良き参謀であった。

その提案に群像は頷き、次の指示を出す。

 

「よし、杏平。一番、二番に音響魚雷、3番に浸食弾頭、4、5番に魚雷装填」

 

「了解!各種魚雷装填完了!」

 

 

火器管制席で武装を管理するモニターをタッチペンで操作するのは樫原杏平。

 

彼も群像と同級生である。いつもゴーグルをつけており褐色肌が目立つ男である。船ではいつもみんなのムードメーカーだが横須賀の海洋技術総合学院では砲術・水雷の成績で必ず10位以内であり、それらのエキスパートだった。

 

 

「いおり、機関最大行けるか?」

 

「全力は数分保障しま~~す」

 

群像は手元の端末を操作して、今はいないもう一人のメンバーに声をかけた。四月一日 いおりがいる機関室に繋がる。

彼女も同級生であり、船の命である機関室をほとんど一人で管理している彼女は元気な声で答えた。

 

 

「頼むぞ」

 

「なるべく早くね」

 

 

機関室は大丈夫だと分かると最後のメンバーに声をかけた。

 

「静、そのままナガラの監視を続けてくれ、相手の動きに注意しろよ」

 

「分かりました」

 

船の耳と目であるソナーとレーダーを担当している八月一日 静

彼女は台湾出身の女性であり、様々な経緯でこの船に乗った。彼女の耳と判断力は随一だ。

 

「イオナ、最大戦船!宇宙センターに被害が無いうちにナガラを仕留めるぞ!」

 

「了解。最大戦速」

 

群像の号令と共にイ401は加速した。

船尾に装備されているジェットエンジンが唸りを上げながら、水をかき分けながら進む。

その前方にはミサイルを物ともしないナガラがいる。今だナガラは気ずいていない。その横腹に浸食魚雷を当てられれば、勝負は決する。

 

 

「三番音響魚雷、発射!」

 

「了解、浸食弾頭発射!」

 

杏平がキーボードを叩く。

 

そしてイ401の3番発射管から浸食魚雷を射出、浸食魚雷は寸分狂いなくナガラに進んでいく。

 

「ナガラから着水音及び高速推進音、数2、魚雷です!」

 

「4、5番スナップショット。発射後に装填!機関停止潜れ!杏平当てろよ!」

 

「了解!」

 

「きゅ~そくせんこ~」

 

機関を停止して潜り、迎撃に出した魚雷とナガラの魚雷がぶつかり合う。しかし魚雷が一本抜けてくる。それに気づいたイオナがクラインフィールドを展開する。

 

「クラインフィールド展開」

 

そしてクラインフィールドを張った船体に魚雷が命中して、船体を揺らす。

 

「く・・・」

 

「魚雷命中まで5秒!」

 

杏平がカウントをする。

 

「5!、4!、3!、2!,1!」

 

「ナガラ、クラインフィールドを展開!」

 

「遅い!」

 

ナガラは浸食魚雷に気ずいたみたいだがもう遅かった。ナガラに浸食弾頭が当たり、爆沈した。しかしナガラは浸食魚雷が命中する前に通常弾頭を大破している「あまつかぜ」に向けて、発射していた。

 

「艦長!ナガラのミサイルが「あまつかぜ」に!」

 

「しまった!」

 

そしてナガラのミサイルが「あまつかぜ」に届く直前でミサイルは撃破された。

 

「な!?」

 

「砲撃です。センサーにも反応!これはっ!」

 

「どうした!?」

 

「モニターに出します!」

 

「なっ!」

 

「そんなバカな!」

 

「何であんなものがここに!」

 

誰もが声を上げた。彼らの目前には超戦艦級のヤマト型がいた。

 

 

 

超戦艦キイ艦橋

 

「間一髪だったね」

 

あともう少し遅れていれば「あまつかぜ」は撃沈されていただろう。その時、「黒鯨」にいる日下部から通信が入った。

 

「向こうから通信が入っているよ」

 

「どこから?」

 

「イ401からだわ!」

 

 

日下部が叫んだ。

 

 

 

 

 

そして数分後、海上で待っていると青い塗装の潜水艦が現れて、そこのハッチから青年と少女が出てきた。

 

「こちらは蒼き鋼 イ401艦長の千早 群像、こっちはメンタルモデルのイオナ。そちらは?」

 

「自分は超戦艦のメンタルモデルの紀伊です。こっちが「黒鯨」艦長の・・・」

 

日下部の端末から得た情報を基に答えた。ちなみに艦艇の名前は分からなかった。

 

「日下部です。よろしくお願いします」

 

「男性型のメンタルモデルは聞いた事が無いですが詳しい話はあとにしましょう」

 

それは蒼き鋼とのファーストコンタクトであった。

 

 




改稿しました。

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