SSTOの防衛を成功させた群像と紀伊達はイ401の艦内でゆっくりと話をしていた。
「これが蒼き鋼のメンバーだ」
紀伊は見渡して挨拶をする。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしく!」
「よろしくね」
蒼き鋼のメンバー達が各々挨拶をする。
「で紀伊は一体どうするつもりなんだ?」
挨拶が済んだ後に群像が聞いてきた。
「自分達はまだ決めてはいないけど群像達はどうするんだ?」
「自分たちはこれからクライアントに依頼達成の報告をな」
「そうなのか。ちなみに俺達が連いていくことはいいかな?」
「別にかまわないぞ」
「ありがとう。日下部もそれでいいかな?」
「ええ。良いわよ」
日下部の了承は取れたから群像達に連いていくことにする。
「じゃあ、それでいいのかな?」
「ああ、人数は多いほうがいいからな。よろしく頼む」
「ありがとう。よろしくお願いします」
二人は握手をした。
「まずどこに向かうんだ?」
「まずは長崎でクライアントに会わないと」
「分かった。それじゃあ進路を長崎に変更」
進路を変更して、出発したときに1つ忘れていたことがあったのを思い出した。
「そうだ。イ401は味方艦だから登録しておかないと」
紀伊はイ401を味方艦と設定した。
「よし、完了!それじゃあ行こうか!」
「やけに張り切っているわねあなた・・・」
そうしてやけに張り切っている紀伊に対して日下部がツッコんだ。
長崎近辺海域
「そういえばどんなクライアントなんだ?」
「上影 龍二郎という人で統制軍軍務省次官補の人です」
という事はお偉い人だよな。と俺は身を固くしてしまう。
「まぁ、会ってみたらわかるよ」
群像は身を固くしている紀伊に不思議な目線を送りながら言った。
長崎 港にて
長崎の港にイ401、キイ、「黒鯨」の3隻は停泊した。
「みんな準備はできたか?」
群像は紀伊、日下部、イオナの3人を見渡して言った。
「いいぞ」
「いいわよ」
「準備いいぞ」
3人とも準備は出来たようだった。
「それじゃあ行こうか。僧、頼むぞ」
「任せてください艦長」
僧達に船を任せて、上影の待つ建物に入る。
「お待ちしていました」
建物に入ると1人の男性が待っていた。
「こちらです。連いてきてください」
言われるがままに4人は連いていった。そして1つの部屋の前で男性は止まった。
「こちらで上影次官がお持ちになっています。どうぞお入りください」
男性に促されるまま、その部屋に入った。そこには1人の男性が椅子に座って待っていた。
「やぁ、待っていたよ」
「どうして早く言ってくれなかったのですか上影さん。そうすれば被害は拡大しなかったのに・・・」
いきなり言葉を浴びせる群像。
「長距離通信が使えなかったこともあったし、それに大人には都合がある」
「事情は分かりました。こちらは超戦艦のメンタルモデルである紀伊です。そして彼女は「黒鯨」の艦長である日下部 幸子」
「君達が報告にあった者達か。まぁ、詳しい話は座ってからでもいいだろう。とりあえず座りたまえ」
とりあえず悪い人ではなさそうではないので内心で安心しながら座った。
「ところで紀伊君と日下部君だったかな。1つ聞いてもいいかな?」
「何でしょう?」
「日下部君と紀伊君はどこで知り合ったのかな?」
「横須賀のドックの近くでたまたま会ったんです」
「そうか。やはり、あの時の戦闘は君達のものだったのか」
”横須賀”という単語で”戦闘”という単語が出てくるということは横須賀での騒動はどうやら彼は知っているらしかった。
「どうしてその事を?」
「自分ぐらいの立場になると自然に情報が入ってくるものでね」
「で、そのことについては後回しとして、上影さん、あなたはただ依頼の達成報告だけで私たちを呼んだわけではないのでしょう?」
見かねた群像が上影に向かって、どうなのかと問いかける。
「やはり君はするどいね。そうだな、本当の事を話そう。君達がせっかく守ってくれたSSTOだが先程、大気圏上で撃墜されたという報告が入った」
「っ!」
これには皆、少しばかり驚いた。しかし顔には出さずに淡々と話す上影の言葉を黙って聞いていた。
「あれにはとても重要なものが搭載されていた」
「重要な物とは?」
意味が深そうな上影の言葉に群像は質問する。
「あれには日本で研究、開発された振動弾頭のサンプルが入っていた」
「振動弾頭ですか・・・・」
「君達があっちやこっちで霧と戦っている間に私達もただ手をこまねいていたわけではないんだ。そして試行錯誤を繰り返してできたのがその振動弾頭だ。そして君達に最後に残った振動弾頭をアメリカに届けてほしい。さっき依頼を達成した後で申し訳ないが新たに頼みたいのがこの仕事だ」
「なぜアメリカに?」
「もう日本にこれを生産するだけの国力はもう無い。だから届けてほしいのだよ。アメリカに人類の希望を・・最後の希望を・・・・・」
「・・・・」
「君達はどうするかな?もちろん君達に関してはこの依頼を断ってもらってもかまわない。私に君達に依頼をすることはできないからな」
「分かりました。その依頼は私達も受けましょう。ただしこちらの条件を飲んでくれたらです」
「どういうものなのかな?事によっては私でも無理なものがあるが・・・」
「まず、我々の存在について認めてもらい、私達に攻撃を加えないようにしてほしいです」
「それは可能だが他にはないのかな?」
「最後に自分と彼女の艦艇に武器の補給をお願いします。守るべき武器がないと戦えないし、彼女のために食糧、水も頼みます」
「分かった。その条件を飲もう」
「ありがとうございます」
「ではこちらは失礼させてもらうよ」
こうして取引は終わった。
イ401艦内にて
「これは一体なんなんだ?見たところ魚雷みたいだが」
イ401艦内では上影から渡された振動弾頭の見取り図で一議論起っていた。
「どうやら霧の侵食魚雷を解析したようですね。それを更に強化したのがこの振動弾頭らしいです。この振動弾頭はブラックボックスも多いですが確かにこれが人類の手で量産されれば人類に反撃の芽があるやもしれません」
「渡す相手のアメリカが残っているならな」
群像がふと呟く。
「嫌なことを言うなよ」
「しかし実際、この件に関してのアメリカとの密約は今から3ヶ月前のことだ。その後はアメリカとの連絡は途絶えて現在、どうなっているのかは分からない」
「イオナ、何か分からないの~?」
今回はいおりも機関室から上がってきていた。
「私は他の船から情報を遮断されている。詳しい事は分からない」
「だよね~~」
イオナの頭に頬をこすらせながらいおりが言う。
「向こうの日下部さん達はどうなのですか?」
「向こうもどうやら上手くいかないらしい」
群像は上影との密約が終わった後に少しだけ聞いてみたのだが彼からの返答は首を横に振っただけだった。
「ということは私達が直接アメリカまで届けるしかないのですね」
「内陸はひどい内乱続きだって言うし、その中を運ぶのは危ないしな」
彼の言う通り、今や欧州などを中心とした大陸では食糧や資源を巡って、内戦が各地で起こっているらしかった。
「同じ人間同士で争うなんて・・・・」
静が悲しそうに呟く。
「だから艦長は依頼を受けたのですね」
「そうだ。この仕事を成功させることができるのは俺達と彼らしかいないからな」
その時に空間モニターから通信が入った。
「群像。そういえばその振動弾頭はどこで受け取るんだ?」
紀伊だった。
「どうやら横須賀に振動弾頭があるらしいからそこまでいかないといけない」
「げぇ!またあそこに行かないといけないのか・・・・」
げんなりする紀伊を失笑しながら群像は見る。男性型のメンタルモデルも珍しいがここまで人間らしさを見せるのもまた珍しいかった。
「辛抱してくれ、それともこの依頼を断るか?」
「痛いところをついてくるなぁ。まぁ、仕方ないや」
「分かってくれたらそれでいい。イオナ、進路を横須賀に設定」
「了解」
「じぁ、行こうか」
今、人類の希望を託された航海が始まる。