タカオとの戦闘後
紀伊はイオナにキーコードを奪われてしまったタカオを見つめていた。彼女の顔は苦汁を飲まされたような顔をしていた。
「とりあえず何とか終わったな」
肩の力を抜く紀伊。船体にもクラインフィールドにも無傷に近い損傷だけで済んでいた。しかしこれでどれくらい自分に実力があるのかを理解できた。今回のタカオ戦は様子を見るために401の作戦を飲んでいたが実際に戦ってみて、そこまで危険視するほどでもなかった。
「次は正面突破もできるかもな・・・」
とまたいらぬ考えを考えてしまう紀伊だった。しかしそんな事も不可能ではなかった。今だ紀伊の実力は見せてはいなかった。
イ401艦内
「何とか突破できたな・・・」
杏平もほっと息をつく。
「そうだな。しかし紀伊と日下部がいなかったら少し危なかったかもな」
群像も横須賀に着くまでは何とか武器弾薬の消費を抑えたかった。
「しかしなぜ超戦艦である彼は素直にこちらの提案を受け入れたのでしょうか?あの超戦艦の力なら正面突破も出来たはずです」
僧は彼の行動に疑問視を浮かべる。
「まぁ、それはいいだろう。とりあえず早く横須賀に向かわないとな」
「それもそうか」
そして3隻は横須賀に向かった。
そして黒鯨の艦内では・・・
「なぜか私と黒鯨の存在が薄くなっている気がする・・」
日下部が乗る黒鯨は確かにイ401の撤退を援護したがそれからはタカオから来る魚雷を迎撃するだけという仕事だった。それゆえになぜかキャラが忘れられてしまっていると日下部は考え初めてしまっていた。
「はぁ!私はまた悪い妄想!いけない、いけない!みんなが私の事を忘れている訳がないわよね!ね?」
と誰に向かってしゃべっているのかが分からないがそんな悩みを抱える日下部だった。
横須賀港近辺 超戦艦のデッキにて
3隻の船が横須賀の防壁を越えて入ってくる。しかしそれは極めて異例な事だった。霧に海上を封鎖されているため迂闊に防壁の外に出る艦船はいなかった。
「横須賀か・・・2年ぶりだな」
艦との距離が近いために群像の呟きを聞いた紀伊は反応して群像の顔を見た。その眼には久しぶりに帰ってきたという感情があった。
「艦長は2年前に来たことがあるの?横須賀に?」
「というか俺の故郷だよ」
「ええっと、ごめん」
「いいんだよ。もう気にしてはいないから」
「そういや、お前たちもここで派手にやったんだって?」
杏平やいおりが聞いてくる。
「ああ、丁度ここでな」
紀伊にとっての横須賀入港時での不安は今だ警戒されているのではという懸念だった。
「まぁ、以前のように動かないとは思うけれどな」
群像は紀伊の不安を察したのか群像が大丈夫だと口を出す。そしてそんな会話をしている間に横須賀のドッグの入り口に着いていた。
「じゃあ、また後で」
「ええ、またね」
「ああ、後で」
イ401は7番ドックへ、紀伊は8番ドックへ、黒鯨は9番ドックにそれぞれ入った。紀伊は数日前に入ったドックとは違う事に気がついた。そしてドックの排水が完了して、突然ドックが下に向かって降りていった。
「これは・・・」
『静と日下部と紀伊は初めてだったな。これは生き残った日本の艦艇を守る為に作られた横須賀の地下ドックだ』
そこには日本の艦隊が所狭しと並んでいた。そして彼らの艦もその列に並ぶ。
「入港完了っと。とりあえず艦を下りてみよう」
艦を下りてみたがいち早く入港を完了させていた群像達はもうイ401の整備とミサイルなどの補充を行っていた。
「日下部の黒鯨はどうなっているのかな?」
自分の艦の整備はほったらかしにして今度は日下部の方を見に行った。
「やはりこことこことここはやはり一度、本格的な交換が必要です」
「分かりました。それでお願いします」
現場の監督と日下部は話していた。そして彼が去った後を見計らって話掛けた。
「よっ!日下部」
「あっ、紀伊!」
「どうなの?黒鯨は?」
実は紀伊も少し後ろめたい気持ちがある。だって今までの黒鯨の損傷は全て自分のせいであるからだ。
「やっぱりいろいろな設備が壊れていたわ。今まで何で潜水できていたのか不思議だと言われたわ」
「何か・・・すいません」
「何を言っているのよ。もう気にしていないわ。それにすぐ交換が済むそうよ」
そう言われると気持ちが和らぐと共にあることを思いついた。それは個人的に思っていたことである。そして彼女と分かれてさっきの現場監督を捕まえてこっそりと話した。
「な、何ですか?」
「実はかくかくしかじか・・・」
約3分後・・・
「分かりました」
「出来るの?」
「設備をフルで活用すれば、最低限の時間と人数で出来ます」
「分かったけどいいの?」
「ええ。私も言われてみればそうだと思いました。確かにあれはまずいですよね。それに同型艦と被りますし・・・」
どうやら納得してもらえたらしいがあれだけの理由でよく納得してもらえたなと思ってしまう。一体どういう人何だこの人は・・・・
「さてと・・・じゃあ自分も艦に異常は無いかを調べに行きますか!」
損傷などは特に無いのだが自分だけサボっているように見られたらいけないのでとりあえず振りだけでもしようと自分の艦に向かった。
その頃・・・
「イ401は無事に霧の封鎖網をあの艦達と共に突破出来て、横須賀に到着したみたいだな」
上影は部下に確認を取る。
「はい。先程確認が取れました。彼らは無事なようです」
「まぁ、無事でなくては話にならんがな」
上影は無事に到着出来ないとは思ってはいなかった。伊達にこの2年間の間彼らを高く評価していた訳ではなかった。その時にもう一人の部下が入ってきた。
「失礼します。上影次官補これを」
渡してきたのはとある書類だった。上影はそれを見て、目を細める。
「何の書類なのですか?」
「いや、君たちが心配することではない。もういいぞありがとう」
「分かりました。失礼します」
部下は少し心配そうな顔をしながら退室した。
「しかし面倒なことになったな」
彼はそう言って席を立って、窓の外を見た。彼の机に置かれれている書類は静かに置かれていた。
横須賀港地下ドック内
「どうやら重力子エンジンは異常なし、弾薬もしばらく持つと」
タカオ戦でもあくまで陽動であり、積極的な戦闘はしていない為問題は特になかった。
「おーい紀伊!」
日下部が呼んでいた。艦から見下ろす感じでどうしたのかと呼びかける。
「何か現場監督の人に追い出されちゃって、紀伊がよかったら外にでもいかない?」
日下部がいっしょにどうかと誘ってきた。
(どうせやることはないし、いいかな?)
「分かったよ。いこ__!?」
行こうと答えようとしたが言葉に詰まった。
「どうしたの?そんな深刻な顔をして?」
「いや、何でもない。今は行けないよ。それと用事が出来たから少し外すよ」
「え!?どういう事」
紀伊はその質問に答えずに作業員に合図を送る。するとさっき降りた地面がゆっくりと上がり始めた。
「どこ行くの!?」
「悪い。群像達には少し用事があると言ってくれ」
「そんなので納得しないわよ!」
しかしもう何もかも遅かった。地上のドックに戻り、注水が終わると急いで出た。そして防壁から出て少し行った海域でソナーを作動させた。効果はすぐに現れた。
『待っていたわよ』
通信に女性の声が聞こえた。
地下ドック 日下部にて
「一体どうしたのよ」
「どうしたんだ?」
群像とイオナが駆けつけてくる。
「どうやら紀伊がいないようだ」
イオナが答える。
「一体どうしたんだ?」
「分からないわ。外に誘おうとしたらいきなり血相を抱えて飛び出して行っちゃたみたいだわ」
「イオナ分かるか?」
イオナに紀伊がどこにいるかを訪ねる。
「どうやら防壁の外にいるらしい。防壁の扉の制御装置がハッキングされて開けられた形跡がある」
「紀伊がやったの?」
「いや、違うみたいだ」
どうやら紀伊がやったわけではないらしい。しかしどうしてそんな所に・・・。
「あの~~」
その時にいおりがひょっこりと顔を出した。
「どうした?」
「捕まっちゃたよ」
「え?」
よく見ているといおりの背後には明らかに海軍ではない兵士が銃を構えていた。
「おい、何だ!」
「何のつもりだ!」
整備員達も周りの兵士達に銃を向けていた。そしてその兵士の中から黒いスーツを着た男が出てきた。
「実は君達と話がしたいお方がおられる。ご同行よろしいか?」
「誰だよ。その無礼な奴は?」
杏平が食って出る。
「口を慎みたまえ。特に・・・・北 良寛先生の前でな」
「北 良寛?」
「仕方ない。行きましょう」
彼らは仕方なく彼らの元に連いていった。
横須賀付近海域にて
『待っていたわ』
海域に着いた途端に通信に声が入った。
『さすがは超戦艦級ね。ここまで探知できるなんて』
「褒めはいらない。しかしお前は誰で何の目的でこの横須賀に近づいたんだ?」
姿は見えない為おそらくだが潜水艦だろう。
『そんな事は今はいいわ。それよりも私はあなたと戦わなければいけない。お手並みを拝見させてもらうわ』
「チッ!やはりそれが目的か!」
舌打ちをしながら通信を切った途端に後方から決して少なくない魚雷が襲ってきた。
着いた先の豪邸で一人の老人が海を見ていた。
「あなたが北 良寛与党幹事長」
群像が呼びかける。
「あなたが・・・」
日下部は目の前の人物の気に圧倒されかけていた。伊達に今までの過酷な人生を送ってきたわけではなさそうだ。
「ほぉ、さすがは日下部家の長女だな」
ゆっくりと北は前を向いた。
「今回は何の用件で私達を集めたのですか?」
「いきなり本題に入るか・・・ところでそこの401のメンタルモデルの他にあの大和型のメンタルモデルは?」
紀伊もどうやら目当てだったらしい。北はイオナを見ながら言った。それに陸軍の兵士が答える。
「申し訳ございません。我々が突入する少し前に海軍の地下ドックから出ていまして現在は防壁の外にいると思われます」
「そうか。出来れば彼にも話を聞いてほしかったが仕方ない。単刀直入に言おう。君達はイ401、黒鯨そしてあの戦艦を我々政府に返還もしくは渡し、新兵器輸送プロジェクトから手を引いてくれないかね?」
「・・・・・」
沈黙が辺りに漂った。
「あの戦艦はともかくイ401、黒鯨は元々は我々政府が所有していたものだ。まだ子供が扱っていい代物ではない。そして大戦艦級クラスかそれ以上の戦艦が今、手元にある。それを研究して人類の未来の為に役立てるというのを君達は理解できないかな?」
「政府の手で管理が出来るのですか?」
「そうだ。子供に扱わせるのではなく、きちんとした訓練を受けた正規の軍人を乗せて正しく運用されるべきだとは思わんかね?」
「お言葉ですが自分の意見は違います。あなたが言っていることはつまり霧のメンタルモデルに任せていればいつ暴走するかもしれない。つまり”信頼”に値しないということだ。しかしその信頼に値しないのは大海戦の後の17年間何もしてこなかったあなた達の方ではないのですか?」
「・・・・」
群像の反論を黙って聞く北だがさっきの物言いは日下部にとってもカチンと来るものがあった。
「それに良寛さんあなたは正規の軍人を乗せて正しく運用されるべきだと言いましたがいくら戦術に彼らが長けているとしてもそんな訓練や経験は霧に対してはまったくの意味をなさない。その事がまだあなたには分からないのですか?」
「イオナや紀伊だってまるで化け物みたいに呼ばないでほしいわ」
日下部は怒りの籠った声で言った。
「そうかならば仕方がない。ここで拘束させてもらう」
彼が合図を出すと兵士達が出てきた。だが拘束されることはなかった。
「何だ!?」
防壁の方から爆発音が聞こえて警報がなる。
(今だ!)
日下部は兵士達が気を取られている間に逃げだした。
「!?逃げたぞ。追え!」
「日下部!もう少し行くのは遅れそうだと紀伊に会ったら伝えてくれ!」
兵士達に追われている日下部にそう言った瞬間再び爆発音が響いた。部下が北に耳打ちをする。
「!?・・そうか分かった」
「どうしたのですか?」
「どうやら霧の大戦艦級が二隻こちらに向かって攻撃しているそうだ」
彼は静かにそう告げた。
それからほんの少し前
「いきなりかよ」
そう言いながら向かってくる魚雷を一瞬で撃破した。
『ようやく力を出してきたわね』
自分の魚雷が迎撃されたのを気にも留めなかった。
「いや全然」
そう言って予測地点に魚雷を撃ち込む。
『あらそうだったの?意外だわ』
「馬鹿にしてくれちゃって」
次はミサイルの雨だった。
「まだいたのかよ」
どうやら撃ち込んだ地点のは全て撃破されたようだ。相手も中々の強敵だった。
『ふふ、残念ね。私もまだ全然本気は出していないのよ?』
続けて魚雷を撃ち込まれるが迎撃しながら気ずいた。
「見つけた!ペラペラとしゃべっているからだよ」
『あらもう見つかったかしら?ショックだわ』
見つかったというのに焦りも何もなかった。
「まったく・・・じゃあこれで終わり・・・!?これは」
『あら気づいたかしら。だったらあなたの質問に答えてあげるわ。確か『何の目的で?』だったかしらあなたなら気づいていると思うけど私はあなたをおびき寄せる為の陽動よ』
「まさか”お前ら”の目的は!」
『そうよ。キリシマ、ハルナの突入を援護するためよ。私との戦闘に熱が入ったからかな。迂闊だったわね』
彼女の読みは寸分違わずそうだった。彼女以外は敵はいないとタカを括ってしまった結果がこの様だった。
『私の用事は終わったし、かーえろっと!あなたはどうするの?』
「分かっているくせによく言うよ。俺は助けに行くぞ。少なくとも俺が知っている人達は助けるぞ」
『そうよね。なら精々頑張って』
「だがその前に一つ教えてくれ。お前は一体何者なんだ』
「そうねぇ。本当は私もこんな事はしたくはないのだけどね。命令だからね。ああ、それはさっきも言ったわね。そういえば私がいた所の人間はこう言っていたわね』
そう言った後にまるでもったいつけるかのように間を空けてから言った。
『それは機密につき申し上げる事はできませんだったかしら。それじゃあね超戦艦さん』
「俺は紀伊だぞ」
『覚えておくわ』
そうして彼らは離れた。双方の姿を見ずに・・・・
いよいよキリシマ、ハルナ戦です。次回は紀伊がドンパチ撃つ回になると思うのでお楽しみに
群像とイオナのお墓参りはもう少し後でします。そして途中出てきた潜水艦については勘の良い人や知っている人ならわかるはずです。(言ってはだめですよ)それでは。
(黒鯨と日下部の活躍どうしようかな)