白き鋼のアルペジオ   作:神奈翔太

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横須賀決戦 前篇

横須賀襲撃からほんの少し前

 

横須賀の外の海域に二つの巨大な物体がゆっくりと横須賀に向けて舵を切っていた。

 

霧の大戦艦級

 

大戦艦ハルナ

 

大戦艦キリシマ

 

「どうやら上手くあの潜水艦があのヤマト型をおびき出したみたいだが残念だ」

 

「なぜ?」

 

ハルナが静かに聞いてきて、キリシマは当然といった顔で言う。

 

「一度その超戦艦級と戦ってみたかったんだよ。だけどあの潜水艦が陽動でおびき出してしまったから一戦交えることが出来なかったから残念なんだよ」

 

「それは作戦行動には入っていない。私達の目的はイ401の撃破だ」

 

「分かっているよ。それにしてもこの壁は邪魔だな通してはくれないし壊すか」

 

キリシマはそう言い放ち主砲を旋回させて撃った。

 

ズドォン!

 

物凄い轟音で爆発が起こったがまだ破壊には至らない。続けてハルナが撃つ。それを何回か繰り返すと壁が壊れ町が見えた。

 

 

「久しぶりだね人類の皆さん。このキリシマとハルナが401に会わせてもらいに来たよ」

 

「・・・・来たよ」

 

 

二人の霧が破壊をもたらす為に横須賀に現れた。

 

 

 

 

横須賀地下ドッグ

 

今、横須賀基地全体が霧の大戦艦級二隻現れたことに混乱している中、一つの潜水艦が着実に出港準備を整えつつあった。

 

「「白鯨級」全クルーの搭乗を確認。作業員は至急退避してください」

 

それは日本が対霧用決戦兵器として建造していた白鯨であった。黒鯨から得られた開発データを元に更なる改良が施され、新型の兵器を搭載するという、まさに今の日本の切り札的な艦であった。

 

「そうだ!今は生活物資を後回しにしても良い。時間が無いんだ!」

 

「システムチェック!」

 

「機関室どうか!」

 

「間違いなく侵食魚雷は積み込んだんだな!」

 

白鯨も急な出港の為、大急ぎで準備を始めていた。その中で一人の人間が新しく発令所に入ってきた。

 

「響オブサーバー発令所に入室!」

 

「どうも響さん。私はこの艦の艦長である駒城です」

 

「初めまして艦長」

 

入ってきたのは白鯨のオブサーバーとして呼ばれた響 真瑠璃である。そして艦長である駒城 大作であった。真瑠璃は元イ401のソナー主であった。

 

「出港準備は出来たか?」

 

「もうすぐ完了であります」

 

そう答えたのは副官である浦上 博である。その腕を見込まれて白鯨に乗り込んでいた。

 

「あとは待つだけだな」

 

着々とその艦の決戦の火ぶたは落とされようとしていた。

 

 

 

 

同時刻 日下部

 

「何とか振り切れたわ」

 

日下部は命からがら海軍の地下ドックへ到達できていた。

 

「急いで艦の準備をしないと!」

 

そう言って疲れている体に鞭を打って黒鯨のある場所まで着いた彼女の第一声は今が戦闘時だと忘れてしまいそうな声だった。

 

「何よこれぇぇぇえ----!!」

 

彼女の視線の先は今まで見慣れてきた白い黒鯨の船体では無く、まさしく名前に相応しい黒一色のカラーリングになっていた。

 

「あ、日下部艦長。あの戦艦のメンタルモデルに頼まれて新しい塗装と装備をつけました。塗装は見ても分かる通りで装備の方はあの白鯨と同じですからね」

 

しかしそんないい仕事をした風に話す声はほとんど聞こえていなかったが一つだけ心に決めたことがあった。

 

「後で紀伊覚えておきなさいよ・・・」

 

まるでうわ言の様に呟いて彼女は発令所まで行った。

 

「確か白鯨が居たはずね。とりあえず黒鯨も参戦すると伝えておいて」

 

命令をして船体や装備品のチェックをする。確かに新しい装備が入っていた。海軍の人達が装備の積み込みや船体の修理(塗装は置いておいて)それら全てをこの短時間で済ませている事に日下部は驚いてしまった。

 

「システムチェックはOKと後は白鯨だけね」

 

こちらの準備も完了していた。

 

 

 

 

「黒鯨から通信が入りました!どうやら向こうも参戦するそうです」

 

「心強い。ハッチを開け。機関室スーパーキャビテーション航行はできるか!?」

 

『願ってもないことです』

 

「本気ですか?本来スーパーキャビテーション航行は魚雷群を振り切るためのシステムで___・・・って艦長は分かっておっしゃっているんですね」

 

「そういうことだ。黒鯨を含めた全艦に通達!これよりスーパーキャビテーション航行に入る!。全艦衝撃に備えろ」

 

全員の準備が完了する。

 

『ハイドロジェット取水及び噴水口閉鎖』

 

『各区画対ショック装置作動確認』

 

『キャビテーション発生装置作動開始』

 

「黒鯨もスーパーキャビテーション航行を行おうとしています!」

 

どうやら向こうもこちらの意図に気づいてくれたらしい。駒城は向こうの艦長も優秀だと感心した。

そして二隻の白鯨級が出港した。一隻は純白、二隻目は漆黒の対照的な潜水艦だった。

 

「操舵!浅深度で思う存分ぶん回せ!」

 

『お任せを!』

 

『ロケットモーター燃焼終了まであと30秒!』

 

「全兵装目標霧の艦隊左舷艦!魚雷は直進射でいい!」

 

 

 

「くっ!やっぱりぐっとくるね」

 

黒鯨も改装で航行装置が改良されていた。

 

「白鯨は左舷を狙うか。こちらは右舷を狙おう。全兵装目標は霧の艦隊右舷艦!直進射でいい!」

 

もはや白鯨と黒鯨のコンビは完璧に等しかった。

 

 

 

 

 

「海中から推進音?401のものではないな・・・人類の兵器か」

 

そう言う間に魚雷が片方はキリシマにもう片方はハルナに命中するが全てクラインフィールドが無効化してしまった。

 

「演算処理を実行中・・・・問題はない」

 

「まぁ、いいさ。401が出てこないから退屈だったんだ。遊ばせてもらうよ」

 

キリシマは顔に子供が新しい玩具をもらった時のような笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

「いいぞ!そのままふかし続けろ!”サウンドクラスター”どうか!」

 

『ロケットモーター燃焼終了まで後5秒!』

 

『サウンドクラスター魚雷諸元入力完了!』

 

「黒鯨の方はどうなっている!」

 

『あちらもサウンドクラスターの発射準備は出来ているようです!』

 

「分かった。黒鯨には合図で指定した範囲に撃てと通信で打電しろ!」

 

『ロケットモーターの燃焼終了!』

 

スーパーキャビテーション航行が終了する。しかし未だにイ401とあの白い戦艦のどちらかが来てくれるまでは耐えなければならなかった。

 

『霧の二艦が機雷源に侵入を確認』

 

事前に撒かれてあったキャニスターから次々とミサイルが発射されていく。しかしやはり効いてはおらずに逆に撃破されるという醜態であった。だがそれだけの時間稼ぎがあれば十分だった。駒城は未だに使った事がない新兵器を試すことにした。

 

「サウンドクラスター魚雷発射!速力落とせ!静音航行!」

 

『黒鯨の発射も確認!』

 

二隻から発射された二つの魚雷は外殻をパージにして無数の装置を辺りに射出した。

 

「これがサウンドクラスター魚雷ですか」

 

響が新兵器にくぎ付けになり、浦上がそれについて説明する。

 

「このサウンドクラスター魚雷は大型魚雷が回転しながら進んで行き、256個の小型スピーカーを散布します。この小型スピーカーは展開後、それぞれが個別の周波数を発振して音の幕を作ります」

 

「そしてこちらはその幕の中に隠れる形で行動をしていくのですね」

 

響が補足をする。

 

「ええ・・・ただこのままではこちらも相手を探知することが出来ませんので工夫がしてあります。故意に使用しない音域がありましてそこは白鯨と黒鯨のソナーが利用します」

 

つまり幕の中に小さなのぞき穴があるということだ。

 

「幕にのぞき穴が開いているわけですか」

 

「そうです。そののぞき穴も一定時間で場所を変えます。スピーカー群が変調し、それに合わせて白鯨のソナーも使用する帯域を変化させていきます」

 

「と・・・そこまでは技研が言っている事ですが何分使ったことの無い装備なので正直ドキドキしています」

 

そうこの白鯨のクルーだけではなく、日本いや世界のどこだって霧に対しては使用したという実績は無い為、これがどこまで霧に通用するかは怪しいものがあった。

 

「変調パターンが解析されてしまうかもしれません」

 

響は現実的な言葉を言う。

 

「・・・・たしかにそう長くはもたないでしょう」

 

しかし我々はあくまで主力が来るまでの時間稼ぎだ。それまで逃げる事ができればこちらの勝ちだった。

 

 

 

 

 

海上でも使ったことは既に分かっていた。

 

「小型スピーカーを256機確認。変調パターン有り」

 

ハルナが淡々と分析した結果を言う。

 

「・・・次から次へと妙な装備を」

 

「どうする?変調パターンを解析する?」

 

「いや、いい。もうこいつらと遊ぶのは飽きた」

 

ハルナの提案をキリシマは飽きたという理由で却下する。

 

そして金剛型ではカタパルトと呼ばれる部分を海面に突き刺して

 

「驚け」

 

次の瞬間、海面に衝撃が走った。

 

 

 

 

ドォン!

 

海面だけではなく、海中でも同じく衝撃波が起きた。そして次々と白鯨と黒鯨が放ったスピーカーを破壊しながらその衝撃は二隻にも届いた。

 

「きゃあ!」

 

日下部は悲鳴を上げる。黒鯨のシステムにエラーが次々と出る。

 

「しまった。推進装置を含めた装置がエラーが出てしまった。何とか自律防御システムが生きていたけどこれじゃあいい的だわ」

 

すでに二隻は丸裸だった。それにキリシマとハルナの魚雷が追い打ちをかけるように発射されてそれを迎撃するという繰り返しだった。

 

 

 

「まだあの二隻は動けるのか。大したものだよ」

 

小馬鹿にしたような笑みを浮かべながらまだ見ぬ人類の潜水艦を褒めた。霧の大戦艦級を相手にここまで生き延びたのだ。だがそれももう終わりだとキリシマは思う。

 

「沈め」

 

そしてそれを撃沈するために主砲を向けて発射しようとしたときに船体に衝撃を感じた。

 

「キリシマ!」

 

ハルナも驚くが自身もレーザーと侵食魚雷を受けた為にそれどころではなくなった。

 

「侵食魚雷だと・・・一体誰だ!」

 

 

 

「来たか!」

 

駒城もその存在が来た時に少しだけ笑みを見せる。

 

 

 

「遅いわよ!」

 

日下部が怒る。それに二つの反応が返ってきた。

 

「「すまない。遅くなった」」

 

 

 

 

海中からは蒼い潜水艦が

 

 

防壁の外からは白い戦艦が

 

 

 

二隻の大戦艦を止める為に横須賀の湾内を駆ける。

 

 




すいません。次回にイ401と紀伊、ハルナとキリシマとの戦いになります。


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