涼宮ハルヒの日常   作:My11

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キョン「なんであの映画?」
キョン子「さあ…、作者の好みじゃないのか?」
キョン「…そういうことにしとくか」


第11章 わたしはここにいる

あたしがこっちの世界にやって来て三日目の朝、ちなみに土曜日。

 

あたしはキョンの部屋の二段ベッドの上で静かに目を覚ました。時計を見るとまだ6時を廻ったばかりだった。

さすがに早く起き過ぎた。二度寝でもしようとしようかと思ったのだが、眠れなかった。なんとなくだが胸騒ぎがしたのだ。

 

昨日は何事もなく、あたしの世界同様の日常を過ごせた。

 

しかし、あたしはいつ戻れるんだろうな。……無事に帰れるんだろうか。

まあ朝から考えることじゃないか。

 

なんとなく携帯を持って下のリビングへと降りた。

テレビをつけてなんとなくチャンネルを変えていると妹が起きてきた。

相変わらず早起きな妹だ。

 

「あ、キョンちゃんおはよう!テレビ見てるの?」

「おはよう。いや、特に見たいのはないけど」

「じゃああたし見たいのあるから見ていい?」

「ああ、いいぞ」

 

あたしはそう言いながら妹にチャンネル権を譲った。

妹はすぐにチャンネルを変え、アニメを見始めた。

 

妹と一緒になんとなくテレビを見ていると突然携帯が鳴リ響いた。時間はまだ7時10分前ってとこだ。

こんな早くかけてくるとすればあたしが知る人の中ではただ一人。

携帯のディスプレイを見ると予想通り、ハルヒだ。

 

「はい…」

『あ、キョン子!今日いつものとこに8時30分に集合!いつもより早いけど遅れたら罰金だからね!』

 

そう言ってハルヒは一方的に電話をきった。

はあ、またか。やっぱりこっちのハルヒも変わらずだな。

しょうがない、支度をするとしますか。

あたしはそう思い、部屋に向かった。

 

部屋に入ると、電話をきって盛大に欠伸をするキョンがベッドで体を起こしていた。

 

「ハルヒからの電話きたか?」

「ん?ああ、今しがた。キョン子にもきたのか?」

「ああ。ついさっき」

 

あたしはクローゼットを開き、着ていく服を選びながら言った。

 

「わざわざ二人にかけなくても。同じ家に住んでいるんだから片方にするだけでいいのにな」

「まあいいじゃないか。あたしの世界では二人に必ずするよ」

「そうなのか?」

「あぁ、それとだな、悪いが着替えたいからさちょっと外してくれるか?」

「ん、ああ。先下行って飯食べてるぞ」

 

そう言ってキョンは部屋から出て行った。

あたしはいつものお決まりの私服に着替えて、髪をポニーテールに結い下に降りた。

そしてキョンと朝食をとった。

 

それからまあいろいろと支度をして8時前に家を出た。

またキョンのチャリの後ろに乗り、駅前に向かった。

 

 

駅前に8時15分くらいに着くと、――なぜみんなこんなに早いのか――すでにSOS団の団員が全員揃っていた。

おかしいだろ。みんなどんだけ早起きなんだ?予知能力でもあるのか?

 

「遅いわよキョン!罰金!」

「はあ?なぜ俺だけ!?キョン子もいるだろう!」

 

確かにキョンの言う通りだ。なぜキョンだけ?

 

「当たり前でしょ!双子でもあんたの方が兄なんだから、妹の分も補うのが当然!さ、行くわよ!」

「ち、ちょっと待て!……なんつー理不尽な」

 

ハルヒはキョンの言葉を無視していつもの喫茶店に入って行った。

 

「キョン、ドンマイ。ほら、あたしのお金少し渡すから」

 

そう言ってあたしはキョンにお金を渡した。

 

「……すまん」

 

 

さて、喫茶店に入りいつもの組分けをした。

組は次の通り。

 

あたし・ハルヒ

キョン・長門

朝比奈さん・古泉

 

あたしの世界でもたびたびこうして探索をしていたが、ハルヒと組になるのは初めてだな。……振り回されそうだ。

それぞれに行くところを指示し、キョンに伝票を渡したハルヒはあたしの腕を掴んで喫茶店を飛び出した。

 

「ハ、ハルヒ、どこに行くんだ?」

「ん?行けばわかるわ」

 

そう言ったハルヒの顔はなんだか輝いて見えた。

 

 

ハルヒに引っ張られること十数分、着いたそこは……

 

「映画…館?」

 

連れて来られたのは映画館だった。

 

「そうよ!町中探してなかなか見つからないんなら、今度はこういう所を探すの!さ、行くわよ!」

 

そう言ってハルヒはあたしの腕を掴んで映画館へずかずかと入って行った。

ハルヒが選んだ映画は、〇リー・〇ッターのシリーズ第6作品だ。

魔法学校に通う主人公とその仲間たちが、ある悪の魔法使いと対決するという映画だ。

この映画はあたしの世界でもかなり話題にされた映画で、実はもう長門と朝倉とで見た映画だった。

まあもう一度見るのも悪くない。

 

チケットと特大ポップコーンを買って席に着いたハルヒはとても楽しそうだ。

 

「前からこれ見たかったのよね~」

 

おいおいハルヒ。不思議探索はどうするんだ?

ただ映画を見るために来たみたいだぞ。

まあいいか。

 

それにしても、さっきから視線を感じるんだがただの気のせいだよな?

 

 

 

「ああ~!おもしろかった!」

 

映画が終わり、あたしたちは映画館を後にした。

 

「おもしろかったな」

「ええ!あ~、私も魔法が使えたりしないかしら!」

 

そう言いながらハルヒは映画に出てきた魔法使いの真似をするかのように右手の人差し指をくるくる回していた。

そんなことが出来たらあたしもいろいろとしてみたいがな。

 

 

 

少し時間は戻り

 

[キョン視点]

 

ハルヒが俺に伝票を渡してキョン子を連れて喫茶店を勢いよく飛び出して行った。

俺は支払いを済ました後、朝比奈さん・古泉ペアと分かれ長門と少し歩きながら話していた。

 

「さて、どこに行く長門?また図書館でも行くか?」

 

俺がそう訊くと長門はすぐ応えた。

 

「……行く所がある。ついて来て」

 

そう言って長門は歩き出した。

特に断る理由もないので、長門について行くことに。

 

着いたそこは……。

 

「映画…館?」

「そう」

 

なぜ映画館?長門は何か見たいものでもあるのか?

長門は無言のまま映画館内に入った。なんとそこには――

 

「な!ハルヒにキョっんぐ!」

 

俺は叫びそうになったが、長門が俺の口を手で抑えた。

 

「……なんでこんなとこに二人がいるんだ?」

 

俺は囁きながら長門に訊いた。

 

「特別意味はない。ただ映画を見ようとしているだけ」

「そ、そうか」

 

なんだよハルヒ。人には真面目に探せなんて言っておいて自分は遊んでいるではないか。理不尽にも程がある。

 

「それで長門、なぜ俺たちまで?」

「二人を監視するため」

「え?」

「情報統合思念体から報告があった。今日中にあの二人のどちらかに変化が起きると。万が一のため監視せよと言われている」

「そ、そうなのか」

 

長門は頷いて答えた。

ハルヒたちはもう上映フロアに入って行った。

俺と長門もハルヒたちと同じ映画のチケットを買い入った。

なるべく二人に気づかれないように後ろ、尚且つ二人がよく見える席を選び座った。

二人を見ると、ハルヒは特大ポップコーンを手にしワクワクしていて、キョン子もどこか楽しそうに見えた。

 

そのうち映画が始まった。

長門は映画には目もくれず、二人をずっと監視していたようだった。

俺はというと、最初こそはしっかりと見ていたがいつの間にか眠ってしまった。

 

 

 

目を覚ましたのは映画が終わった後だった。

長門が俺を起こしてくれた。

 

「あ、すまん長門。寝ちまった」

「問題はない」

「そうか。それで、二人は?」

「今ここを出ようとしている」

 

相変わらず無表情に答える長門。

 

「そうか、じゃあ俺たちも行こう」

 

長門は頷いて応える。

 

映画館の外に出ると、二人は少し先を歩いていた。

俺と長門は映画館の入口で二人を見ていた。

 

どうやら先程の映画について話しているようだ。

ハルヒが右手の人差し指をくるくると回していた。

 

何をしているんだ?と思っていると、なんと俺と長門の近くに停めてあった車が宙に浮き出したではないか。

 

「な、ななな何が!?」

 

俺は口を大きく広げて唖然としていた。すると、隣にいた長門がすっと右腕を上げたかと思うとあの超高速呪文を唱えた。すぐしてその車は静かに地面に戻った。

 

「な、なんだ!今のは!?」

「今涼宮ハルヒが指を回した事が原因。おそらく、先程の映画が影響している」

「へ?」

 

ああ、さっきの映画主人公たちが魔法使いだったな。まさか!?

 

「ハルヒは魔法を使った?」

「必ずしもそうではない。映画の真似をして涼宮ハルヒは無意識のうちに力を使った。だから今その車が宙に浮くという現象が起きた」

 

そうなのか。それを聞いた後ハッとして周りを見回した。どうやら今起きた現象に周りの人は気づいていないようだった。ホッと胸をなでおろす。

まったく、変な空間創ったり何度も夏休みをループさせたり、今度は魔法みたいなもん使ったり。

もう厄介事は勘弁してくれ、ハルヒ。

 

「もう心配はない。車を戻す際、涼宮ハルヒの周りに今の力を抑えるための制御ブロックもかけた。もう何かを浮かすという現象は起きないはず」

 

さすが長門。

 

「そうか。ありがとう長門」

 

長門は頷いて応えた。

 

 

俺と長門は一度ハルヒたちから離れ、駅前の集合場所に来ていた。

 

「それで、二人に変化は見られたのか?」

「今のところどちらにも変化は見られない。このまま何も起きないかもしれないが、断定はできない」

「……そうか」

 

長門と話していると、朝比奈さんと古泉が戻ってきた。

 

「おや、あなたにしてはお早い集合で」

 

相変わらずニヤニヤとした笑顔で古泉は言った。

 

「ああ、ちょっといろいろとあってな」

「ほお、お話をお聞きしましょうか」

 

古泉は少し真剣な顔になった。

 

俺は先程起きた現象と、長門が言った二人に変化が起きるかもしれない事を朝比奈さんと古泉に話した。

 

「それで午後からの探索なんだが、もしハルヒかキョン子のどちらかとペアになった人は、なんらかの変化が見えたらすぐに長門に連絡する。というふうにしないか?」

 

俺がそう言うと古泉は感心したように言った。

 

「珍しいですね。あなたがそんなに積極的なのは」

「そうか?とにかく長門、今の案でいいか?」

「私は構わない」

「朝比奈さんは?」

「大丈夫です」

「それじゃあよろしくお願いします」

 

さて、後はハルヒたちを待つだけか。

 

 

俺はこの時、この後あんな大変な事態が起きるなんて想像もしなかった。

 

 

 

[通常視点]

 

映画館を出たハルヒとあたしは、少し休憩しようとハルヒが言ったため近くのベンチに座っていた。

ハルヒはついさっきまで楽しそうに映画の話をしていたのに、急に黙ってしまった。

 

この沈黙はいつまで続くのかと思っていると、ハルヒが話し出した。

 

「キョン子」

「何だ?」

「前に訊こうとした事なんだけど……」

 

ハルヒは言いづらそうにしたが、すぐに言った。

 

「…キ、キョンって、好きな人…とか……いるのかな?」

「はい?」

 

え?今なんて……えぇ!?

ハルヒがそんな事訊いてくるなんて、あっあたしが知っているハルヒじゃない!

 

「で!どうなのよ!?」

 

訊いてくるハルヒは、顔を少し朱くしていた。

 

「なんでそんなこと知りたいんだ?」

「え!?そっそれは……だ、団長だからよ!団長はつねに団員のことを考えているのよ!」

 

ハルヒは更にまた顔を朱くして言った。

なんだか見てて、可愛いな。

ほんとに恋する女子高生って感じだ。見てて楽しい。

まあここは真面目に答えてやらないとな。

 

「そうだな、あたしはキョンじゃないからよくわからないけど今んとこはいないんじゃないか?」

「そ、そう」

 

ハルヒはいかにもどうでもいいという感じに言ったが、どこか安心したような顔をした。

 

「あっあと一つ!キョンって、あ、あたしのことどう思ってるのかしら?」

 

はい?今度はハルヒ?

そう言われてもなあ、あたしはこの世界の人間じゃないしたしかにあたしの世界のキョンもハルヒに振り回されているけどこっちのキョンはその倍は振り回されている気がする。

そんなキョンがハルヒをどう思っているんだろ。

…嫌い……なわけないな。

 

「また同じこと言うけどあたしはキョンじゃないからさ、ほんとの気持ちはわからない。けど、たぶんキョンはハルヒのことを嫌ってはいないと思う」

「……どうしてそう言えるの?」

「だって、もし嫌いならハルヒとこうして一緒にSOS団にいないだろ?キョンは何かしらハルヒに対して感じるものがあるんじゃないかな。」

 

あたしがそう言うとハルヒはまた少し朱くなっていた。その顔は、どこか嬉しそうに笑っていた。

 

「そ、相談聞いてくれて……あ…ありがとう…」

 

最後のほうは小さい声だったが、あたしには聞こえた。

ハルヒがありがとうか。初めて聞いたよ。

 

「どういたしまして」

 

 

その後、集合時間となるので駅前に向かった。着くと他の四人はすでに到着していた。

なかなか早いな。

 

いつもの店で昼食をとり、また組分けを行った。

ペアは次の通り。

 

ハルヒ・朝比奈さん

あたし・キョン

長門・古泉

 

今度こそハルヒは振り回しそうだ。なんせ相手が朝比奈さんだからな。

長門とペアになっていろいろと話したかったが、まあキョンとでもいいか。また話したいことが出来たし。

 

またそれぞれの探索場所を決められ、それぞれ分かれた。

 

あたしとキョンは、近くの公園にあるベンチに座って時間をつぶすことに。

いつだったか、あたしの世界でした市内探索で朝比奈さんと話したところだ。

最初は二人してぼーっと空を見上げたりしていた。

しばらくしてあたしはキョンに話しかけた。

 

「なあキョン」

「ん?なんだ?」

 

キョンは空を見上げながら答えた。

 

「キョンは、ハルヒのことをどう思ってるんだ?」

 

そう訊くとキョンは空からあたしに目線を変えた。

 

「な、なんでだ?」

「いや、毎日振り回されていてしかもこの世界じゃ不思議なんちゃらパワーがついてるんだろ?大変じゃないか?」

「う、まあたしかに、大変だな」

 

そう言いながらキョンは苦笑いした。

 

「だから正直なところハルヒをどう思ってるのかなあと」

「うーん、そうだな…あまり深く考えた事は……まああるにはあるが…」

 

そう言いながらキョンは話し始めた。

 

「たしかに俺はいつもハルヒが持ってくる厄介事に付き合わされて、うんざりとしていたところはあるな。いつも損するのは俺ばっかりだし。

まあでも、なんか憎めないと言うか……。

そりゃあの閉鎖空間に閉じ込められたりや、永遠とループする夏休みを過ごすハメになったりしたが。

そういう非日常的な生活をしてきたからか楽しいと感じるようになってな」

「楽しい?」

「ああ。今のほうが俺には日常になったんだ。キョン子や他の人から見れば非日常な事かもしれんが、毎日ハルヒの相手してれば考えも変わってくるさ。

それに、今の俺はハルヒがいたからこそここにいるのかもしれん」

「え?なんでそう言えるんだ?」

 

あたしは少し首を傾げて訊いた。

 

「なんでだろうな。ハルヒと出会っていろいろな体験して、俺もおかしくなっちまったのかな。でも、俺の中でハルヒはでっかい存在なんだ」

 

そう言ってキョンは、また苦笑いをした。でもさっきの苦笑いとはどこか違って見えた。

 

「そうか。じゃああたしの世界のキョンもそう思っているのかな?」

「さあな。そっちの世界はこの世界と違うけど、ハルヒの性格はほとんど同じなんだろ?」

「ああ」

「だったら、同じ考えでもおかしくはないと思うぞ」

 

そうだな。なんかいい話を聞けた気がする。

 

「そうか。ありがとな」

 

そうだな、あたしもハルヒと出会って何かが変わった気がするもんな。あたしの世界のハルヒは不思議なんちゃらパワーは持ってないけど、何か人を魅了するような不思議な力はあるよな。

そんなことを考えていると、今度はキョンが話してきた。

 

「じゃあ今度は俺からの質問。SOS団をどう思ってる?もちろん、自分の世界で考えてくれていい」

「SOS団か?」

「ああ。SOS団をどう思ってるか。俺はそうだな……簡単に言うと、ちょっと照れ臭いがかけがえのない仲間だと思う」

「かけがえのない仲間……か」

 

SOS団…か。あたしはどう思っているんだろう?

 

いつも何気なく部室に集まって、キョンや古泉、早川とゲームして、朝比奈さんからお茶をもらって、長門の本を読む姿見て、ハルヒが持ってくる厄介事にキョンとため息ついたりして……。

 

なんだろう?

あたしはどう思っているんだろうか。

…どこか、安心できるところ?

……わからないな。

 

でも、言葉にできないこの温かい感じは……?

胸の奥で感じる、この温かい感じ……。

 

「あたしにとってSOS団は……、まだ言葉にして表現できないな。でも、なんとなく居心地のいいところって感じはする」

「そうか」

 

キョンはあたしの答えを聞くと、少し微笑んでいた。

照れ臭く感じたが、否定はできない。

 

あたしの中にはあいつらがいるから。

 

 

「いつ、キョン子は帰れるんだろうな」

 

キョンが唐突に言ってきた。

 

「さあな。できるなら早く帰りたい……が……っう」

「キョン子?」

 

あたしは頭を抑えていた。

 

「どうした!?頭が痛いのか?」

 

あたしは無意識のうちにその場に立ち上がった。

 

「だ、大……丈…夫。少…し……痛い……だ…うっ、ぅああぁぁああああぁぁぁぁ!!!」

 

あたしは地面に膝をついた。

頭の中をまるでえぐられるような激痛が走ったからだ。立ってられなかった。

 

「いっ!あぁぁっ、…うっ……くっ!!」

 

あたしの頭の中で、いろいろな時の記憶が飛び交った。

生まれたばかりのあたし。

小学生のあたし。

中学のあたし。

 

そして、今のあたし。

 

また周りにいた友達や家族……。

 

今その記憶が一気に頭に流れ込んできた。

 

あ、頭が……爆発しそうだ……!

 

「キョ―子―しっ――しろ!い―長門―――から―!」

 

キョンが何か言ってきたが、あたしには何を言っているのかまったくわからなかった。

 

ダメだ……、また…意識が……。

 

あたしはそのまま意識を失い、地面に倒れた。

 

 

 

――――――――――

 

 

またあの真っ暗な空間だ……。

あの時と同じ。

 

……あたしはこのままどうなるんだ?

まさか、死んでしまうんじゃ……嫌だ!あたしはまだ死にたくない!

 

そんな考えとは反対に、体は少しずつ深い深い暗闇の中へ落ちていく……。

 

 

……キョン、ハルヒ、古泉、朝比奈さん、早川、朝倉、……長門!

 

 

その時。

遥か上のほうから光が見えた。

 

その光は少しずつ大きくなり、あたしがよく知る人物へ―――長門有希へと形を変えた。

 

長門はあたしに手を伸ばした。

あたしはその手をしっかり握った。

 

『もう、大丈夫』

 

そしてあたしの体は、温かい光に包まれた……。

 

 

 

[キョン視点]

 

キョン子と何気ない会話をしていた時だった。

突然キョン子が頭を抑えて叫び出した。まさかこれが長門が言った変化?

やばい、何かやばい!何かわからないが俺の脳が警告している。すぐに長門を呼ばないと!

キョン子は今や地面にはいつくばるようにして苦しんでいる。

 

「キョン子、しっかりしろ!今長門を呼ぶからな!」

 

そう言って俺は携帯を開き、長門に電話をした。

長門はすぐに出た。

 

「な、長門!キョン子が、キョン子が!」

 

俺はそれしか言えなかった。

 

『落ち着いて。あなたたちは今どこ?』

 

長門の声は落ち着いていたが、どこか焦っているような感じがした。

俺がちゃんと落ち着かないと。

 

「い、今駅前近くの〇〇公園にあるベンチだ!キョン子が突然苦しみ出した!」

『わかった。すぐ行く』

 

そう言って長門は電話をきった。

携帯をしまいキョン子を見る。

 

俺は目を疑った。

 

なんとキョン子の体が光の粒子となって消え始めていたのだ。

そう、あの時の朝倉涼子のように。

 

やばいヤバイやばい!!

まさかこのまま消えてしまうのか?

いや、そんな事ダメだ!

 

俺は自分の無力さに嫌気がさした。

俺は何もできないのか!?

 

その時、長門がマッハの速度で俺とキョン子の前に着いた。

 

「な、長門!キョン子が……」

「離れて」

 

長門の指示に従い、俺はすぐさま二人から離れた。

長門はキョン子の前に膝をつき、腕を伸ばしてあの高速呪文を言った。

すると、キョン子と長門を白い光のドームが包み込んだ。

 

俺はただひたすら願った。

キョン子が消えない事を。

 

数分後、光のドームがなくなった。

そこには立っている長門と、地面に仰向けになっているキョン子がいた。

なんとか消えずに済んだようだ。

 

「な、長門。キョン子はもう、大丈夫なのか?」

「もう大丈夫。心配はいらない」

「そうか。長門、なんでこんな事が?」

「おそらく、涼宮ハルヒによる情報改変が行われた可能性がある」

「……ハルヒが?」

「そう」

「もしかして、元の世界に?」

「おそらく。涼宮ハルヒが彼女を呼んだ目的を達成したと思われる。それにより彼女を元の世界に戻そうとした。もちろん無意識的に。しかしなんらかの影響でエラーが発生したため、彼女は情報連結が解除しかけた」

「ハルヒが、目的を達成した?」

「と思われる」

「そ、それで、キョン子を元の世界に戻そうとしたけど何かが起きて消えかけた?」

「そう」

 

長門はいつものように淡々と答えた。

 

と言うことはなんだ。

キョン子は元の世界に帰りかけたのに、逆に消えかけた?

そんな理不尽な事があるか!

 

……まあ消えずに済んでよかった。

 

「それで、キョン子はまだ起きないのか?」

「彼女は身体的にも精神的にもかなりのダメージを受けた。意識が回復するにはまだ時間がかかる」

「そうか」

 

さて、集合時間までに間に合うかどうか。さすがにハルヒには見せられない。

 

「心配はいらない。私の家に連れて行く」

「え?そうすると、ハルヒが怪しむんじゃ……」

 

そう言うと、長門はとんでもない事を言った。

 

「今あなたと私、古泉一樹と朝比奈みくる以外の人間は彼女を認識していない」

「え?そ、それはどういう…」

「涼宮ハルヒが行った情報改変によって彼女はこの世界から元の世界に戻されたことになっている。したがって記憶もない」

 

そ、そんな。もうこの世界の人は誰もキョン子のことを覚えてないって?

……待てよ、って事は

 

「ハルヒも忘れたって事は、キョン子はもうハルヒの力では帰れない?」

「そう」

 

なんてこった。

そうなると、キョン子は帰れなくなってしまったのか?

 

「長門、まだキョン子が帰れる方法は?あるのか?」

「まだ帰れる方法はある。その話はあとの二人が集まった時に話す。今は早く彼女を運ぶことが先決」

「あ、ああ。わかった」

 

よかった。

まだキョン子を元の世界に帰す方法はあったのか。

 

俺はキョン子をおぶって長門のあとについて長門のマンションに向かった。

向かいながら俺は古泉と連絡をとり、先に駅前にいてくれと言った。

 

 

長門の家に着いた俺は、長門が敷いた布団にキョン子を寝かせた。

時間を見ると集合時間まであまり余裕がなかった。

 

「長門、急いで戻ろう。時間がない」

「私はここにいる。彼女を見ている」

「え?そうすると、ハルヒには?」

「心配はない。情報操作を行い、今日私は最初から探索に参加しなかった事にする」

 

そう言うことか。こういう時情報操作って便利だよな。

 

「わかった、じゃあまた後で。二人も連れて来る」

 

長門は頷いて応えた。

俺は急いで駅前に向かった。

 

 

着いた時間は集合時間ギリギリだった。

そこにはやはり不機嫌なハルヒが待ちくたびれたと言うような顔をしていた。

 

「遅いキョン!しかも単独行動して、何様のつもり!」

「悪いな。時間ギリギリまで不思議を探そうかと思ったんだよ」

 

これを聞いたハルヒは少し機嫌が直った。

 

「あら、キョンにしてはいい心がけね。で、何か見つけた?」

「いや、さっぱりだ」

 

ハルヒはまた不機嫌な顔をしたが、すぐに戻った。

 

「まあいいわ。明日もしたいところだけど、用事があるから無しよ。また明後日会いましょう!」

 

そう言ってハルヒは帰って行った。

ハルヒが見えなくなると、朝比奈さんが不思議そうな顔をして話しかけてきた。

 

「あのぉ涼宮さんは何も言わなかったですけど、長門さんとキョン子ちゃんは?」

 

古泉も訊いてきた。

 

「僕も知りたいところです。今何が起きているんですか?」

 

俺は二人にキョン子に何が起きたのかを話した。

消えかけた事、ハルヒの情報改変、それにより帰る方法の変更。

朝比奈さんはキョン子が消えそうになったと聞くと、小さな悲鳴をあげた。

 

話し終えると、二人はとても真剣な顔になっていた。

 

「それでこの後、長門の部屋で話があると長門が」

「別の帰る方法についてですね」

「ああ。朝比奈さん、この後大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「古泉はもちろん大丈夫だよな」

「当たり前です」

「よし、じゃあ行こう」

 

そうして俺たち三人は長門のマンションへと向かった。

 

 

 

[通常視点]

 

……うっ…あ、あたしは、どう…なったんだ?

 

あたしは少しずつ目を開いた。

そこは、何度か泊まったりしていて見覚えのある部屋―――長門の部屋だった。

 

「起きた?」

 

長門があたしの左に座っていた。

相変わらずの無表情だが、目の奥で心配したというような感じを出していた。

 

あれ?

なんであたしは長門の家に?

たしかキョンと話していたら急に頭が痛く……!?

そうだ!!

頭が痛くなって地面に倒れて……

 

「長門!あたしはなんでここに……」

「落ち着いて」

 

あたしは起き上がろうとしたが、長門がそれを止めた。

 

「まだ寝ていたほうがいい。あなたは身体的にも精神的にもかなりのダメージを受けた。まだ回復できていない。安静にするべき」

 

そう言って長門はあたしを寝かせた。

 

「わ、わかった。……それで、あたしに何が起きたんだ?」

 

あたしは再度質問をぶつけた。

 

「あなたは今から1時間37分28秒前、突然起きた頭痛により意識を失ってしまった。その時情報連結が解除しかけたがなんとか阻止した」

 

え?

倒れたのはわかるが、なんだ?情報連結が解除?

それからあたしは長門から事情を聞いた。

 

長門を造った情報統合思念体とかいうところから報告があって、今日あたしかハルヒに変化が起きるかもしれないということ。

それで午前はキョンと一緒にあたしとハルヒを監視していたこと。(あの時感じた視線は長門たちのものだったのか)

 

それで情報連結の解除とは、あたしが消えてしまいそうになったと聞いた。

き、消えそうになっただって!?

 

「い、いったいどうして!?」

「おそらく、涼宮ハルヒがあなたを呼んだ目的を達成したと思われる。それによりあなたを元の世界に戻そうとした。もちろん無意識的に。しかしなんらかの影響でエラーが発生したため、あなたは情報連結が解除しかけた」

「ハルヒが、目的を達成した?」

「と思われる」

「そ、それで、あたしを元の世界に戻そうとしたけど、何かが起きて消えかけた?」

「そう」

 

長門はそう淡々と答えた。

 

あたしは元の世界に帰りかけたのに、逆に消えかけた?

そんな理不尽な事があるか!

……まあ消えずに済んでよかった。

 

「それで…、あたしはもう……元の世界には帰れないのか?」

 

聞きたくはなかったが、とても重要なことだ。あたしは帰りたい。

 

「涼宮ハルヒ本人の力による方法はもう出来ないが、まだ帰る方法はある」

「ほんとか!」

 

よかった。まだあたしは帰れるんだ。

 

「その話はあとの三人がここに到着してから話す。それまであなたは安静に」

 

三人とは、キョン・朝比奈さん・古泉のことか。

 

「わかった」

 

それにしても、ハルヒがあたしを呼んだ目的ってのはなんなんだったんだ?

……まさか!?

あの映画の後で訊いてきたあれか?

だとしたら、たったあれだけで……まあ、ハルヒならやりそうなことだな。

ハルヒにとっては重要なことだったんだろう。

 

しばらくして長門が話し出した。

 

「少し、訊いておきたいことがある」

「ん?なんだ?」

「あなたの世界の私とあなたはどんな関係?」

「あたしと長門?」

 

そう訊き返すと長門は頷いた。

 

「長門がどうあたしのことを思ってくれているのかわからないけど、あたしにとって長門は……とても大切で、守ってあげたい友達……かな」

「守り…たい?」

「ああ。あたしの世界の長門は長門と違って……普通の人間だし、いろいろあってだな……」

 

 

そこからあたしは、あたしの世界の長門の過去について話した。相手が長門だけあって話し辛かったが、聞いて欲しくて一生懸命話した。長門は真剣な眼差しで聞いていた。

 

「……だからあたしは、おこがましいかもしれないけど長門をずっと守りたいって思うし、ずっと仲良くしていたいと思ってる」

 

そう言ってあたしは話し終えた。

しばらくして長門が口を開いた。

 

「あなたの世界の私と私は同じ考えを持っていると断言はできない。だが、私はあなたに会えて何かを感じた。

あなたがここに泊まった夜、私は無意識のうちにあなたのところへ行った。一緒にいたいという感情を抱いたのはあなたで二人目。だがこの感じるものは彼とあなたでは違いがある。

うまく言語化できない。

でもあなたといるととても温かくなるような感じになる。

もしあなたの世界の私も同じ考えならば、あなたの世界の私もそう感じているかもしれない」

「そう……なのかな?」

 

あたしに会えて温かいものを感じたか……。

なんか照れ臭いが、嬉しいな。

 

「もうすぐ三人がやって来る。話はここでするからあなたはここにいて」

「わかった」

 

長門の気遣いに感謝だな。

 

 

長門が部屋を出る時、振り返ってあたしにまた話しかけた。

 

「先程のあなたの話を聞いて、あなたの世界の私はかなり精神が不安定だと推測する。あなたが元の世界に戻ったらしっかりと支えて欲しい」

「当たり前だ。あたしはあたしの世界の長門と約束したんだ。ずっと仲良く、一緒にいるって。長門とも約束するよ」

 

そう言うと長門はすごく微妙にだが、微笑んだように見えた。

こっちの世界で初めて長門が笑ったのを見た。

 

 

 

すぐして、インターホンが鳴り長門の後に続いて三人が入って来た。

長門はさっきと同じあたしの左に座り、朝比奈さんは心配しましたぁと少し涙目になりながらあたしの右に座った。

古泉は朝比奈さんの右隣り、キョンは長門の左隣りに座った。

まるであたしのお見舞いに来たような感じだ。

 

「キョン子ちゃん、もう大丈夫ですか?」

「はい、もうすっかり。長門のおかげで」

「そうですか。よかったです」

 

朝比奈さんは微笑んで言った。

 

「あ、キョン。ここまで運んでもらったみたいで悪かったな」

「ん、気にするな。無事でなによりだ。さて長門、キョン子を元の世界に戻す方法を説明してくれるか?」

 

キョンがそう言うと長門は頷いて話し始めた。

 

「情報統合思念体が調べた結果、複数の方法を見つける事が出来た。実は昨日の時点で見つかっていたが、帰れる確率がとても低く危険なものが多いため我々は涼宮ハルヒの力によるもので帰る事に賭けた。だが、それは失敗に終わってしまった。

そこで一番確実で危険の少ないこの方法を今の段階では推奨する。だがそれでも帰れる確率が50%しかない。あなたがもし嫌ならばまた違う帰れる方法を探す。だがかなり時間はかかると推測される」

 

ご…50%!?

これは半分の確率で帰れないということだ。

でも、更に安全な方法を見つけるまでどれくらい時間がかかるか……。

長門、あたしは……そうだよな、約束したもんな。

 

うん、決めた。

 

「それで…あたしが帰れるんなら、その方法であたしはいい」

 

この答えたにキョンが反論した。

 

「お、おい!いいのか!確率が半分しかないんだぞ。長門はもっと安全な方法を探すって言ってるんだからもっと確実な方法が見つかってからでもいいんじゃないか?」

「たしかにそのほうがいいかもしれないが、あたしは早く元の世界に帰りたい。あたしの世界で待ってくれているかもしれない長門やみんなに……早く…会いたいんだ。だから例え確率が半分だろうと、あたしはその半分に賭ける」

 

あたしは真剣な目でキョンを見ながら言った。

 

「……わかった。キョン子の世界の長門たちがとても大切なんだな。キョン子が決めることに俺はもう意見はしないよ」

 

キョンはやれやれとしたが納得してくれたようだ。

 

「ありがとうキョン。長門、あたしはその方法で行く。詳しく教えて欲しい」

 

そう言うと長門は頷いて話し始めた。

 

「方法は今から3年前の7月7日へ時間遡行を行い、東中学のグラウンドにある絵文字を使って行う」

「え?3年前?」

「な、あれを使うのか!?」

 

キョンはビックリとして長門を見ていた。

 

「そう。あの文字にはかなりの情報量と改変能力の源が詰まっている。涼宮ハルヒによって描かれたものだから」

「あれは俺が描いたんだがな」

「そう。あなたが描いたもの。だがしっかりと涼宮ハルヒの力があの文字にはある。その力を使って私が情報操作を行い異次元空間の壁に穴を開けワープホールを造る。その中に入れば50%の確率で帰れるはず。」

 

……あまりわからんな、仕組みが。

まあ長門が言うんだ。大丈夫だろう。

 

「そ、それでもしも失敗して帰れなかったら、どうなるんだ?」

 

あたしは恐る恐る訊いてみた。

 

「失敗した場合、30%の確率でまたこの世界に戻ると推測される。この場合あなたはもう二度と元の世界には戻れなくなる可能性がある」

「に、二度と?」

「そう。二度と」

 

な、長門。無表情のまま言うから、なんだか怖いぞ。

でも、失敗したら……もう二度とか……。

 

「それで、残りの20%はどうなるのですか?」

 

古泉はいつものスマイルではなく、真剣な顔で長門に訊いた。

 

「残りの20%中15%はどちらの世界にも行けず異次元空間に取り残されると推測。あとの5%は元の世界でもこの世界でもない、まったく違う世界に行ってしまうと推測される」

 

…それが本当だとしたら、あたしは相当危険な賭けをするんだな。

失敗してしまったら……もしかしたら普通の生活さえもできなくなってしまうのか……。

 

あれこれ考えているとまた長門が話し出した。

 

「決定権はあなたにある。私たちは出来る限りの事はする」

 

長門がそう言うと朝比奈さんも言った。

 

「そうですよキョン子ちゃん。私たちが精一杯支えます」

 

朝比奈さん……。古泉を見るといつものスマイルではなく違う微笑みを見せていた。言わずとも朝比奈さんと同じ気持ちですと言っているようだ。キョンもそうだった。

 

あたしの中の迷いはなくなった。

 

「みんな…ありがとう。……決めたよ、あたしはその方法で行く」

 

そうあたしが言うとみんなは頷いた。

 

 

 

「それではキョン子ちゃん、長門さん、いいですか?」

 

朝比奈さんがあたしと長門の肩に手を触れながら言った。

長門は頷いて応える。

 

「いいですよ朝比奈さん」

 

これからあたしと朝比奈さんと長門で3年前へとタイムスリップするのだ。あたしが元の世界に戻るために。

キョンと古泉は行っても役に立てる事はないということで残るそうだ。

 

「じゃあなキョン子。元気で」

「お気を付けて。お役に立てなくてすみません」

「いや、二人にはいろいろと世話になった。ほんとにありがとう。元気で」

 

キョンはああと言い、古泉はいつものスマイルで返した。

 

「それじゃ朝比奈さん、よろしくお願いします」

「はい。では目を閉じて、時間酔いするといけないので」

 

そう言われあたしはしっかりと目を閉じた。

 

「それでは行きます」

 

そう朝比奈さんが言ったその瞬間だった。

あたしはいきなり無重力空間に投げ出されたような、なんとも言えないような感覚に襲われた。吐き気がする……。

 

 

少しして、あたしの両足が固い地面についた。

恐る恐る目を開ける。

そこはどこかの学校の玄関だった。それに夜だった。

 

「……ここが、3年前……ですか?」

 

あたしは朝比奈さんに訊いた。

 

「はい。3年前の7月7日です。長門さんに指定された時間よりちょっと早い時間軸に着いてしまいました」

「早い?な……」

『違う!もうちょっとこっち!――』

 

あたしがなぜ早いのか訊こうとすると、グラウンドの方からどこか聞いた覚えのある声が聞こえた。

そおっとグラウンドを見る。

暗くてわかり辛かったが、グラウンドに降りるための階段の一番上からグラウンドにいる制服姿の男に向かって指示をだしている中学生らしい女の子がいた。

なんとそれは……

 

「ハ、ハルヒ!?それにキョン?」

 

あたしは少し声を抑えながら言った。

 

あれは間違いなくハルヒだ。今より一回り小さいが、あのしゃべり方はまさしくハルヒだ。しかもグラウンドには今と変わりないキョン!?

 

「はい。3年前の涼宮さんです。それとグラウンドにいるキョンくんは前に私と時間遡行をしたキョンくんですよ」

 

前に?

ああ、そう言えばキョンと朝比奈さんは前に過去に来て、昔のハルヒに会ったって言ってたっけ。それがこれか。

ということは

 

「長門、例の絵文字ってのは今キョンが描いているやつか?」

「そう」

 

はーあれが。なんて書いてあるんだ?

それに、一緒だという朝比奈さんがいないな。

 

「朝比奈さんはどこにいるんですか?」

「え?私ですか?私は、……あ、あそこで寝ちゃってるんです。見えないと思うけど」

 

そう言って朝比奈さんが指す方を見ると、グラウンドの脇に物置のような小屋があった。

暗いうえ遠かったので朝比奈さんが言うとおり誰かがいたとしてもわからなかった。

 

「なんで寝ているんですか?」

「えっと、なぜか私ここに時間遡行してすぐ眠ってしまって。よくわからないんですけど寝むくなっちゃったんです」

 

朝比奈さんは少し頬を朱く染め、恥ずかしそうに言った。

えっと、それはただの天然さんと片付けていいのでしょうか…。

 

「もうすぐ描き終えると思われる。それまでここに」

「ああ、わかった」

 

あたしたちはキョンたちが描いていなくなるのを待った。

 

 

しばらくしてキョンが描き終わりキョンはハルヒと話をしていた。それからすぐしてハルヒは学校をあとにした。

キョンは朝比奈さんを起こすと二人もすぐにどこかに行ってしまった

どこかしらあっちの朝比奈さんはとても慌てていたような感じだったけど、どうしたんだろう?

 

「朝比奈さん、なんかあっちの朝比奈さん慌てていたように見えたんですけど何があったんです?」

「え?ああ、あれはですね、ちょっといろいろあって未来に帰れなくなってしまって」

 

朝比奈さんは舌を出しながら言った。

 

「か、帰れなくなった!?それで、どうしたんですか!?」

「はい。この時間軸にいる長門さんに助けていただきました。それでなんとか帰れたんです」

「そ、そうだったんですか」

 

はー、長門はやっぱり(この世界では)頼りになるんだな。

あ、別にあたしの世界の長門が頼りないなんて思ってはいないぞ。

そう思っていると、しゃがんでいた長門がいきなり立ち上がった。

 

「どうした?長門?」

「二人が完全に学校の敷地内から移動したのを確認した。これから情報操作を行う」

 

そう言って長門は片腕を前に伸ばして超高速に呪文のような言葉を発した。

すると、学校の周りが一瞬歪んだように見えた。

 

「な、何をしたんだ?」

「学校外からの視覚情報をシャットアウトするためのシールドを展開した。これで外からはここで起きている事は見えない」

 

そう言って長門はグラウンドへと歩き始めた。

あたしと朝比奈さんも続いた。絵文字の前に着いた。

 

「そう言えば長門。この絵文字なんて書いてあるのかわかるか?」

「わたしはここにいる」

 

長門は即答した。

 

『わたしはここにいる』?

ハルヒはそんな事を書いて何を……。まさか、遠い宇宙人に向けてメッセージとかか?

ハルヒらしいな。

 

「これから情報操作を行う。少し下がって」

 

あたしと朝比奈さんは言われた通りに下がった。

長門は腕を絵文字に向け、また超高速呪文を唱えた。

すると、なんと絵文字全体が光り輝き出しちょうど真ん中あたりに光の渦のようなものが出来たのだ。

 

「あれが……ワープホール?」

「そう。あの中に入れば約50%の確率で元の世界に帰れる」

 

そうか、いよいよだな。

あたしが元の世界に帰る時は。

 

あたしは長門と朝比奈さんの方を向いた。

 

「朝比奈さん、ここまで連れて来ていただいてありがとうございました」

「いえ、少しでもお役に立てうれしいです。どうかお元気で」

 

そう言って朝比奈さんは微笑んだ。

 

「長門。いろいろと助けてくれてありがとうな。ほんと迷惑ばっかりかけちまったが」

「そんな事はない。私個人はあなたに会えてよかったと感じている」

「そうか、ありがとう長門。約束守るからな」

 

そう言うと長門は頷いた。

 

そしてあたしは、光の渦の手前まで行き深呼吸をした。

……大丈夫だ。きっと帰れる。

もう一度二人に振り返り、あたしは心から言った。

 

「ほんとにありがとう!!」

 

そしてあたしは、光の渦へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

ここは…どこだろう?

 

何もない真っ白な空間。

あの真っ暗な空間とは違う。

 

もしかして、これが異次元空間の中ってやつか?

……上も下も……右も左もわからない……。

 

あたしはここでずっと漂い続けるのか?

……嫌だ!そんなのは嫌だ!!

あたしはあいつらに会いたいんだ!

 

いつものように部室でキョンや古泉、早川とゲームして遊んだり、朝比奈さんが煎れるお茶飲んでハルヒの突然の思いつきを聞いて呆れたり笑ったりしたい。

 

クラスで夏姫から元気をもらったりして真田の自慢話でも聞いてやるよ。

そこに谷口や国木田も入れて馬鹿騒ぎしてもいい。

 

またあの鶴屋さんのなんの曇りもない笑顔を見て一緒に妹と遊んだりしてさ。

 

それに何より、約束したじゃないか。

 

朝倉と長門と

『ずっと一緒にいる、仲良しな友達でいる』

ってさ。

 

 

そうだ。

まだあたしにはやりたい事がたくさんある!

 

帰るんだ!

あたしの…世界に!!

 

 

すると、どこからか声が聞こえてきた。

 

『キョン子!』

ハルヒ?

 

『キョン子ちゃん』

朝比奈さん?

 

『キョン子』

キョン?

 

『キョン子さん』

古泉?

 

『キョン子』

早川?

 

『キョン子ちゃん』

朝倉?

 

『キョン子』

長門?

 

 

そのたくさんの声は、あたしの体の中……奥深くから聞こえてきた。

 

……温かい。

 

体全体が軽くなる。

 

 

今、そっちへ行くよ。

 

みんな―――。

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右手が温かい。誰かが握っている。

 

「……ん、う……~ん」

 

あたしは少しずつ目を開けた。

そこは知らない部屋だった。

 

「キョン子?」

 

右の方から聞き慣れた声。

 

「……長…門?」

「キョン子!!」

 

そう言って長門はあたしに抱き着いてきた。

 

「キョン子ちゃんが目を覚ました!」

 

そう言って朝倉も長門と一緒に抱き着いてきた。

扉がガラガラと開いて何人かが入ってきた。

 

「キョン子!」

「キョン子ちゃあん」

「キョン子!起きたのね!」

「キョン子さん、よかったです」

「おお、やっと起きたかいな。みんなして心配したでキョン子」

 

そう、キョンに朝比奈さん、ハルヒに古泉に早川だった。SOS団の全員がそこにいた。

 

 

 

あたしは、戻って来たのだ。……あたしの世界に。

 

「よかった……本当によかった」

 

長門は涙を流してあたしに抱き着いていた。朝倉もだ。

 

二人をそっと抱きしめた。

 

 

「ただいま……!」

 

 

あたしの頬にも熱い涙が流れていた。

 

 

 

 

 

あたしが目を覚ましたのはあの事故が起きてから4日目の朝だった。

 

あの日すぐにこの病院に運ばれて治療を受けたらしい。

なんでも体はかすり傷程度だけで済んだというのでビックリした。運が良かったということでいいのだろうか。

 

あたしをひいてしまった車の運転手は、すぐに自首したとのこと。なんでもブレーキオイルが抜けていたとか。

 

あたしの意識が戻らない中、長門と朝倉が付きっきりで看病していたらしい。

 

なんで朝からSOS団のみんながいたかと言うと、みんなして用事があると言ってあたしのところに来たそうだ。

 

キョンが家族と妹を呼ぶとすぐに駆け付けた。両親は安心したとホッとしていたし、妹はいつもより弱めだがあの元気いっぱいのタックルをしてあたしに抱き着いた。

 

その後もあたしが目を覚ましたという知らせを受けてたくさんの見舞いが来た。

 

鶴屋さんは大きな花束を持って来たし、谷口や国木田もやって来てくれた。

 

一番すごかったのは6組のみんな。なんと千羽鶴を持ってご登場。夏姫がみんなで作ろうと言って作ったらしい。やって来た夏姫は泣いて喜んだ。真田もやって来て、なんとも豪華な果物の詰め合わせを置いてった。

 

 

 

向こうの世界のキョン。

 

今なら確実に自信を持って言えるよ。

 

あたしにとってSOS団は……いや、このたくさんの友達は

 

 

『かけがえのない仲間』

 

 

だよ。

 

あたしはこんな仲間に出会えてよかった。

 

あっちの世界に行ったのも、今となってはよかったと思えるのかな。

なんかまあ楽しめたよ。

 

 

でもやっぱり、ここがあたしの居場所だから。

 

 

本当に今、いろんな人に言いたい。

 

 

 

『ありがとう』




~あとがきのようなもの~

どうも、My11です。
今回のお話、いかがでしたでしょうか。

今までの話より少々長めになってしまいましたが大丈夫でしたでしょうか?
どこかで区切って二つにしようかとも思ったのですが、どこで区切っていいか迷ったのもありますし、この話は一気に書きたかったので少し長いですがよろしくお願いします。
かなりグダグダな部分もあるかと思いますが、それがMy11のダメ文であります。ご了承ください。

あともう一つ。
前々回と今回はキョン子の通常視点とキョン視点の二つの視点から物語を進めてきました。
こういった別の視点を入れた方が面白いかなと思い入れたのですがいかがでしたでしょうか。

何はともあれ、楽しんでいただけたら幸いです。


キョン子「これからも『涼宮ハルヒの日常』をよろしくな」

作者「え!?いきなり主人公登場!?」

キョン子「ちょっと訊きたいことがあってな。今これからもよろしくなんて言ったが、今回のこれ最終回じゃないよな?」

作者「いやいや、雰囲気的にそう感じたのかもしれませんがまだまだ続きますよ。面白くないかもですが」

キョン子「作者自ら面白くないって……まあいいか。まだ続くのはわかったが、それにしても今回は疲れた。車にひかれたと思いきや、違う世界に行ったりタイムスリップしたり……」

作者「お疲れ様でした」

キョン子「一応訊くが、もうこんなトンでも設定はないだろうな?」

作者「ああー、どうでしょう?あるかもしれないし、ないかもしれません」シレッ

キョン子「(…これは身構えておいた方がよさそうだな)そ、そうかい」

作者「まあ、何はともあれこれからも

二人『涼宮ハルヒの日常をよろしくお願いします。それではまた』
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