涼宮ハルヒの日常   作:My11

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キョン「……夏だなあ」
キョン子「ああ、夏だな」
キョン「暑いなあ」
キョン子「何を当たり前なことを……まあそうだな」
妹「もう、せっかくの夏休みなんだから遊ぼうよ二人とも!」
双子「「おおぅー」」


第13章 夏~だっ! 1

だるぅく暑ぅい夏休みの中旬。

 

リビングでキョン、妹とともにあたしたちとはまったく縁のない県同士の甲子園の戦いをテレビで見ていた。

こういう野球やサッカーなんかを見ていてどちらのチームも興味がない時、ついつい負けているほうを応援したくなる。なんでだろうな?

 

さて皆さん、今日8月17日が何の日かご存知だろうか。

え?知らない?

まあそりゃそうだろうな。なんせ普通の日だからな。

 

どっかの誰かさんは終戦記念日から二日後とか言ってたが、まあそれは置いといて。

 

教えよう!

今日8月17日はハルヒが暴れだす日なのだ!

 

たぶんな。

 

なぜそんなこと言うかって?

いや実はあたし一度異世界に行って来ているんだよなあ、知っていると思うけど。

そこはこの世界とあまり変わらないところだったんだよ。(変わらないと言っても、宇宙人なんたらがいたのはビックリしたが)

そういうわけなのかこの世界の出来事とほとんど同じ事が起きていたんだよ。

微妙なズレなんかはあるが。

 

例えば、SOS団を結成した過程はかなり酷似していたが古泉が転校して来た日はかなりズレていた。

他にも、こっちでは球技大会があったが向こうではその大会すらなかったなどだ。

 

そういうズレが多少あるが、あたしが向こうの世界に行ったのが9月の初めごろ。

なので8月いっぱいまでの大まかな出来事は何かしら起きるんじゃないかと思っているんだ。

 

向こうの世界のキョンはこう言っていた。

8月の17日、こうしてテレビを見ていると携帯が着信を知らせる。もちろん、ハルヒからだ。

『水着一式と十分なお金を持って駅前に集合!あ、自転車に乗ってくるのを忘れずに!』

てなことをハルヒが言い出すらしい。

それから二週間はずっとハルヒによって振り回されるとか。

 

正直言ってこれをキョンから聞いた時はあたしの世界ではズレが生じてなしになってくれと願ったさ。

だって聞いたその課題とやらの内容は確かにおもしろそうだが、あたしの体力が持たん。勘弁して欲しいところだ。

 

まさかとは思うが、向こうの世界みたいに一万何千回とループしたりなど……するわけないか。

 

 

そんな感じなことを考えていると、なんとまあキョンの携帯が鳴りはじめたではないか。

…やっぱりあるのか……エンドレスな夏休みは…。

 

「キョンくん電話~」

「わかっている」

 

キョンは電話に出たが、一言も言わずに通話は終了した。

どうせハルヒが一方的に用件を言ったんだろう。

キョンは一回ため息をした。

 

「キョン子」

 

呼ばれたのでキョンを見ると、目がこっち来いと言っていた。

キョンの後について廊下に出た。

廊下に出て話をしようとしたのは妹に聞かれないようにするためだろう。そうしないとどうせついてくることになるからな。

 

キョンが何か言う前にあたしが先に言った。

 

「ハルヒからだろ?」

「ああ、なぜわかった?」

 

キョンは不思議な顔をした。

 

「なんとなくだよ」

「ん、そうかい。で、これからすぐに駅前集合だと」

「水着一式と十分なお金持ってか?」

「!?……おまえ、エスパーにでも目覚めたか?」

 

キョンはビックリしていた。

 

「なんとなくそう思っただけだ」

 

そう言ってあたしは自分の部屋に水着を取りに行った。

 

 

 

「遅い、キョン!」

 

キョンがこぐ自転車の後ろに乗してもらい駅前に行くと、すでにメンバー全員が集まっていた。古泉と早川はそれぞれ自転車を持っていた。

 

「毎度のことだが、なぜあいつらはこんなに早いんだ」

 

キョンの自転車からあたしが降りると、あたしにしか聞こえない声で訊いてきた。

 

「さあな」

 

小さい声であたしは応えた。

 

「さあ、みんな集まったことだし、行くわよ!」

「一応訊くが、どこにだ?」

「何言ってるの、市民プールに決まってるじゃない。夏は夏らしく夏じみたことをしないといけないの!高一の夏休みはたった一度きりしかないのよ!悔いを残さないようにしなきゃ」

 

そう言ってハルヒは満面の笑顔を見せた。

 

「夏休み序盤はキョン子のこととかいろいろあったから遠慮しといたけど(キョン子 へえハルヒが遠慮か)もう夏休みも残り二週間しかないんだから!さっさと行くわよ!」

「でもどうやって…」

「じゃあ古泉くんは後ろにみくるちゃん乗せてあげて。諒は有希を乗せて。キョンはあたしとキョン子よ!」

「…そういうことかよ」

 

ハルヒはキョンの後ろに立ち乗りした。いや、三人乗りってヤバイんじゃ…

 

「それじゃキョン、市民プールまで全速力!!古泉くんと諒に負けんじゃないわよ!」

 

ははは、そんなことハルヒが気にするわけないか。仕方ないな。

そう思いながらあたしはハルヒの後ろにおとなしく座ることにした。

 

 

 

「う~んこの消毒液の臭い、いかにもって感じね。さあ!行くわよみくるちゃん!」

「ふえ?ひゃあぁ~!」

 

ザッパーン!!

 

市民プールに着いて早々ハルヒはマッハの速さで着替えを済まし、今しがた朝比奈さんを道連れにしてプールへとダイブを行った。

ハルヒ、この飛び込み禁止の文字が見えなかったのか?

 

「早く来なさ~い!水がぬるくて気持ちいいわよ!」

「はいはい」

 

まあ何にせよここまで来たんだから楽しまないと意味がない。

 

「有希、行くか」

 

有希は頷いて応えた。

 

 

こんなにプールではしゃいだのは久しぶりだった。

 

キョンは古泉と水中息止め競争したり(古泉がなんともさわやかに勝利をしていた)、ハルヒは早川と泳ぎで競争したり(ハルヒも速いが早川もいい勝負をしていた)、近くでボール遊びをしていた子供たちと一緒にボール遊びをしたりなどなどだ。

ハルヒはいつも以上にハイテンションで遊んでいた。

お昼には朝比奈さん特製のサンドイッチをいただいた。

 

あたしと有希が日陰で休んでいるとキョンがやって来た。

 

「はあ疲れた。ハルヒのあれにはもうついていけん」

 

そう言いながらキョンはあたしの横に腰をおろした。

 

「はは、まあ不機嫌なハルヒより全然マシだろ」

「それもそうだがな」

 

キョンは苦笑いしながら答えた。

 

「つかこのプール、市民プールと言うより庶民プールと名乗ったほうがいいぜ」

「あはは、それ言えるな」

 

そんな感じにプールでのひと時をあたしたちは楽しんだ。

まあこんな夏休みの過ごし方も悪くはないな。

 

だがまあ、これがただの始まりにしか過ぎないということはハルヒを除けば、あたししか知らないことだった。

 

 

プールで存分に遊んだあたしたちはいつもの喫茶店に来ていた。

各々が飲み物を飲んでいると、ハルヒが一枚の紙をテーブルの上に広げた。

キョンが眉間にシワを寄せながらハルヒに訊いた。

 

「なんだこれは」

「これからの活動予定よ」

「一応訊くが、誰の予定だ?」

「SOS団の予定表よ!プールに行く前にも言ったかもしれないけど夏休みも残すところ後二週間しかないのよね。まだまだやってないことがたくさんありすぎるわ。こっからは巻きで行くわよ!」

 

そう言ってハルヒは拳を突き上げた。

朝比奈さんが紙を見ながら内容を読みあげた。

 

「えっと、盆踊りに花火大会、バイト、天体観測……、ふわぁいっぱいあるんですねぇ」

「これ全部残りの二週間で全てやるんかいな!」

 

早川はマジかいなと言わんばかりに叫んだ。

 

「そ!何か他にはやりたいことある?」

「あ、私は金魚すくいがしたいですぅ」

「オッケー!金魚すくいね…」

 

そう言いながらハルヒは紙に金魚すくいと付け足した。

あ、朝比奈さん!?わざわざ追加しなくても……。

 

「それじゃさっそく明日から決行よ!この近くで盆踊りやってるところあるかしら?花火大会でもいいけど」

 

おいおいハルヒ、ちゃんと計画してから言ってくれよ。

 

「僕が調べておきましょう。追って涼宮さんに連絡します」

 

古泉がいつものようにスマイルで答えた。

 

「さすが副団長!お願いね古泉くん!じゃあ今日は解散!」

 

 

いつものようにキョンがみんなの飲み物代を払って解散となった。たまにはあたしも半分払ったりしてあげているが、集合に遅れる理由は大半がキョンの寝坊のため、たまにだけである。

というより遅刻自体もそれほど多くはないんだが、他のみんなが早すぎるのも原因の一つだがな。

 

家へと帰りながらキョンが言った。

 

「はあ、やれやれ。これから毎日遊ぶってのか」

「だろうな。ああなったハルヒはなかなか止まらないだろう?」

 

あたしがそう言うとキョンはまたため息をついた。

 

 

翌日――。

 

朝っぱらから電話をかけてきたのはハルヒだった。

盆踊りの会場が見つかったらしい。なんでこう都合良く見つかるんだ?

場所は市民運動場。

 

それで、なんで朝っぱらから電話をかけてきたかと言うと

 

『浴衣を買いに行くわよ!』

 

ということだ。

朝比奈さんに有希、あたしも浴衣を持っていないと聞いたハルヒが買いに行こうと言い出したのだ。

 

『夏の祭りにはそれに相応しい格好じゃないといけないの!』

 

だそうだ。

 

てことで今モールで浴衣を選んでいるんだが、なかなか決まらない。

というのもみんなの分を全てハルヒが決めているからだ。まあ、ハルヒのセンスはなかなかのもんだから任せて大丈夫だろう。

 

 

浴衣を選び始めて一時間ほど。

 

「お待たせ~」

 

店前で待たせていた男子三人にハルヒが機嫌良く言った。

 

「「「おお~」」」

 

三人は振り返ると三者なりのリアクションをとった。

古泉はいつもの爽やかスマイルに。

早川は少し目を見開いて意外というような顔。

キョンは朝比奈さんを見てあからさまにに目を糸目にしていた。

 

「みなさんお似合いですよ」

「せやな。なかなかやで」

「でしょう!あたしが選んだんだから当然よ!みくるちゃん、めっちゃ可愛い~!さすがあたしのセンスは間違いないわ」

 

確かに。ハルヒのセンスはかなりいい。

朝比奈さんは全体がピンク色で桜の花びらの模様がある浴衣。

ハルヒは全体が赤く胸辺りに大きな白い花がある浴衣。

有希は全体が薄めの水色で風鈴の絵柄が入った浴衣。

あたしは全体が藍色に近い色で花火柄の浴衣だ。

みんなかなり似合っている。

 

またみんな手頃な値段で高い買い物にはならなかった。

前に有希と私服を買った時もハルヒが選んだやつは手頃な値段だったな。

ハルヒは買い物上手だ。

 

「よし!それじゃ行くわよ!」

 

そう言ってハルヒは朝比奈さんの手を引いて盆踊りの会場になっている市民運動場へと向かって行った。

 

 

「久しぶりに来たな」

 

盆踊り会場に着いたSOS団一行。まだ日没前なのにけっこう賑わいを見せている。

 

「おまえは久しぶりだろうな。中学になってからこういうのいかなくなったから」

 

あたしはつい先日、近所であった小さな祭りに妹と行って来たばかりだった。というか毎年のように妹に引っ張られて連れていかれるんだがな。

 

「わあ、楽しそうですねぇ」

「みくるちゃん!あなたがやりたがってた金魚すくいもあるわよ!さ、行きましょ!」

 

そう行ってハルヒは朝比奈さんの手を引いて金魚すくいの屋台へとダッシュして行った。

 

「僕らもどうです?誰が一番金魚をすくい捕れるか競争でも」

 

にこやかに言った古泉。

 

「ええやろ、やったろーやないか!キョンもどや?」

 

やる気満々の早川。

 

「いや、俺はパスだ。それより食い物に興味があるね」

 

近くの屋台から漂ういい香りをかぎながら言うキョン。

おい、おまえそんなキャラだったか?

 

「なら俺たちだけでやるかいな。一樹、行くで!」

「ええ、負けませんよ」

 

そう言って古泉と早川も金魚すくいへと行った。

 

「さて、二人は何か食べたい物あるか?なんなら奢ってもいいぞ」

「ほおー、キョンにしては気前がいいな。じゃああたしは……りんご飴をもらおうかな。有希は?」

「私も…りんご飴」

「はいよ。ちょっと待ってな」

 

そう言ってキョンも屋台の方へと向かった。

有希を見るとどこか一点を凝視していた。

その視線の先にはお面がずらりとならんでいた。

 

「あれが欲しいのか?」

 

そう訊くと有希はすいすいーっと何かに吸い込まれるようにお面売り場に行き一つのお面を指指した。

 

「これ」

「はいよ~、まいど!」

 

気前の良さそうな屋台のおっちゃんからお面を貰い頭につけた有希。

まあ有希が欲しいって言うんだから何も言わないさ。

やがてキョンがりんご飴を持ってやって来た。なんと四つも買って来ていた。SOS団の女性陣分だそうだ。なにか良いことでもあったのか?キョン。

キョンからりんご飴を貰いハルヒたちがいる金魚すくいの屋台へと向かった。

 

屋台に着くとちょうど勝負がついたようだ。

 

「13匹!!大漁よ大漁!」

 

満面の笑みのハルヒ。

 

「6匹だったで」

「僕は4匹がやっとでしたよ」

 

苦笑いの二人。

 

「意外と難しかったですぅ」

「そんなにたくさんいらないからみくるちゃんと1匹ずつ貰って来たわ」

 

そう言ってハルヒは金魚を見せた。水の入った袋の中を行ったり来たりしている。

 

「そうかい。ほら、これやるよ」

 

そう言いながらキョンはハルヒにりんご飴を一本あげた。

 

「あらキョンにしては気が利くじゃない。あたしたちに無償で買ってくるなんて珍しいこともあるものね」

「別に。あ、野郎にはないからな」

「いえいえ大丈夫ですよ。それにしても何か良い事があったんですか?」

「まあ、そんなとこだ」

 

キョンはまんざらでもないというような顔で言った。

 

 

その後も盆踊り会場内を回りながらいろいろと遊んだり食べたりした。

射的やヨーヨー釣りで勝負したり、綿飴やかき氷なんかを食べたりした。あ、的当てなんかもしたな。

十分過ぎるほどあたしたちは遊んだ。

 

 

一通り回り終えたあたしたちは近くにあったベンチに腰掛けていた。

 

「はい、キョン。一個だけならいいわよ。さっきのお返し」

 

そう言ってハルヒはキョンにタコ焼きを差し出した。

 

「お、サンキュー」

 

キョンは一つ貰って食べた。

 

「あ、そうだ!こういう格好してるんだし今日花火もやっちゃいましょ!」

 

ハルヒがひらめいたというような顔で言った。

 

「そうだな。あそこで売ってたし、やっちゃうか」

 

こうしてあたしたちは花火をすることになった。

 

 

近くの河原にやって来てみんなで花火を楽しんだ。

ハルヒは花火を持って走り回っていたし(ちょっと危なかったんだがな)、早川とキョンは打ち上げ花火を何発も打ち上げた。ネズミ花火もしたな。

体は疲れていたが、楽しかった。

 

だいたいの花火が終わり、最後に残った線香花火をあたしと有希と朝比奈さんでしていた。

キョンは後片付けをしていた。

ハルヒは手提げ鞄からあの紙切れを取り出してバツ印を書いていた。

 

「よし。これでまた二つ課題は終了ね。明日は昆虫採集をするわよ!」

 

ハルヒは盛大に言った。

 

「ハルヒ、遊ぶのもいいんだが、夏休みの宿題は終わっているのか?」

 

キョン、まだほとんど手もつけていないおまえが言える立場じゃないだろ?

 

「何よキョン、あれくらい三日もあれば十分じゃない。あたしはとっくに終わらせたわよ」

「「三日!?」」

 

キョンと早川が同時に叫んだ。

ハルヒが頭がいいのは知っていたが、まさかあの量を三日でするとは……すごいな。

あ、ちなみにあたしは有希と一緒にやって一昨日終わらせた。なんせズレがあるとはいえ起きるかもしれない出来事の前に厄介事は片づけておいた方がいいからな。

ま、ハルヒの思いつきが始まる前に終わってよかった。

 

「網と虫カゴを持って、そうね…北高にみんな集合よ。いいわね!う~んそうね、一番多く捕まえた人には一日団長の権利を譲ってあげるわ!」

 

うわ、いらなーその権利。

 

「虫なら、なんでもいいんですか?」

 

古泉が早川をチラチラ見ながらハルヒに訊いた。

早川を見るとちょっと顔が青い……か?

 

「う~んと…、セミね。セミ限定。そう、これはSOS団内のセミ捕り合戦よ!」

 

ハルヒがセミと言った瞬間、早川の顔は真っ青になった。

 

 

 

翌日の午後――。

これでもかと太陽がギランギランに輝いていた。

 

あたしたちは北高の裏にある森の中でセミ捕り合戦を開始した。ハルヒは颯爽と森の奥へと走り出した。

あたしも渋々行こうかと思ったが、あまりにも顔が青い早川が目に入ったので話しかけた。

 

「おーい早川。大丈夫か?」

 

早川はゆっくりと顔をあげてゆっくりと応えた。

 

「あ、ああ。大丈夫…やないな……」

 

そう言いながらなんとか笑みを見せようとしたみたいだが、すごい変な顔になっているぞ。

 

「どうしたんだ?顔が真っ青だが」

「あーいや、実はやな……俺…虫が……苦手なんや……」

 

マジですか!?

なんかけっこう虫捕りを楽しみそうなやつだけどな。

 

「特にセミは大の苦手なんですよ。諒くんは」

 

突如あたしの横から出て来た古泉が言った。その言葉に早川は頷いた。

 

「だったらハルヒに虫は苦手だから勘弁してくれって言えばいいじゃないか」

 

さりげなく話を聞いていたキョンが言った。

 

「言ったんやけど、情けないって言われてやな……今回のセミ捕り合戦で虫嫌いを克服しなさいって言われたんや……んな無茶な…」

 

早川ははぁーっとため息をついた。

さすがハルヒ。容赦ないな。

 

「まあ、一応やってみる…」

 

そう言って早川は歩き出した。ビクビクしながら。

 

「おい、早川は大丈夫なのか?」

 

古泉に訊いた。

 

「いや、こればっかりはなんとも……僕がついて行きますよ」

 

そう言って古泉は早川の後を追いかけた。

かなりのトラウマがあるとみた。どんなことがあったのかと訊くのはよしておこう。

 

 

 

数時間後――。

 

「は~い!!結果発表しま~す!」

 

ハルヒの集合の合図で最初の場所に集合したあたしたちはカゴの中でうようよと動くセミを持っていた。

早川は、顔が青を通り越して白くなっていた。

 

「最下位は諒、0匹。もう、だらしないわねー。もっと頑張りなさい!」

「そんな無茶言うんもんやないで……」

 

早川はそう呟いて肩をガックリと落とした。

 

「その次はみくるちゃん!2匹。もうちょっといけたわね、みくるちゃん」

「ふぇ、これでもがんばりましたよ~」

 

あたふたしながら朝比奈さん。

朝比奈さんは虫大丈夫みたいだな。

 

「5位は有希!6匹ね。なかなか頑張ったわね有希」

 

有希は捕まえたセミを見ながらコクンと頷いた。

その顔はなんとなく充実しているような顔だった。

 

「4位キョン子!8匹。まあキョン子なら当然よね」

 

当然てなんだよそれは。あたしはこれでもかなり頑張った方だと思ったんだがな。

 

「3位は古泉くんの11匹!かなり頑張ったわね!」

「ありがとうございます」

 

いつものスマイルをしながら古泉。

後で聞いた話によると早川を近くで見守りながらしていたらいつの間にかあれほどの数を捕まえていたらしい。

 

「2位はキョンの14匹ね!キョンにしては頑張ったじゃないの」

「まあな」

 

キョンは昔っからこういうのは得意だったからな。なんだかんだ言いながら本気だったってか。

そんなキョンは嬉しいというより、疲れたというような顔をしていた。

 

「そして、1位はあたし!!17匹!!やっぱり団長の権利は一日たりとも譲れないわ!」

 

そう言いながらハルヒはカゴをみんなに見せつけた。

かなり気持ち悪いほどセミがうようよしていた。

早川には近づけないであげろよ。もう失神しかけてるからな。

 

捕まえたセミはちゃんと自然に還した。

最後のセミが飛び立つと早川が

 

「もう絶対虫捕り……特にセミ捕りなんかせーへんからな……」

 

と呟いたのが聞こえた。

かなりの虫嫌いなんだな。

 

 

 

さて、更に翌日――。

 

ハルヒは今度はどこからみつけたのか、バイトをあたしたちにありがたーくも押し付けてきた。

近くのスーパーで着ぐるみ被って風船配り。

このくそ暑い中、着ぐるみなんか被ってバイトなんて最悪だ。

ちなみに、着ぐるみは4つしかなく、入ることになったのはジャンケンに負けたあたし、キョン、朝比奈さん、古泉だった。

なぜこういう時に負けるかな。

早川と有希はスーパー内で品出しなどだ。

 

え?ハルヒはって?

 

片手にアイス持ちながら店長のおっちゃんと楽しそうにおしゃべりしてるよ。

 

「これでバイト代の配当が同じなら、暴動を起こしてやる……」

 

隣にいたキョンがハルヒの方を見ながら低い声で言った。

いやキョン、たぶんバイト代はだな――。

 

 

数時間後、なんとかバイトが終了。

倉庫らしき控室で着ぐるみを脱いで休んでいた。

 

「ふぅ~、脱皮した蛇の気分が解るぜ」

「あはは、上手い事言いますね」

 

古泉のいつものスマイルも汗まみれで歪んで見えた。

グダーっとしているとハルヒがおつかれ~っと言って入って来た。

キョンがバイト代は?とハルヒに訊くと

 

「ふふん、これよ」

 

ハルヒが指差したのは、朝比奈さんが着ていたアマガエルの着ぐるみだった。

……やっぱりか。

 

「これ前から欲しかったのよね~。みくるちゃん!これいつでも好きな時に着ていいから!あたしが許すわ!」

 

これを聞いてキョンと早川は怒りを通り越して、呆れてしまったようだ。

あたしがなぜこのことをわかっていたかというと、向こうの世界に行ったとき部室にアマガエルの着ぐるみがありどこからそんなもんもってきたとキョンに訊いていたからだった。

まさかこっちでも同じことになるとはな。

そんな朝比奈さんは暑さでかなりへばっていたし、ハルヒの言葉を聞いて更に机に突っ伏した。

 

 

 

更に翌日――。

 

今度は天体観測をした。

場所は有希のマンションの屋上。

望遠鏡は古泉が用意した。

なんでも、小学生の頃よく早川と星を見ていたらしい。

 

「星なんか全然わからないな。オリオン座くらいしかわからん」

 

望遠鏡をセッティングしている古泉を見ながら早川に話しかけた。

 

「ああ、俺もそんぐらいしか知らへんな」

「え?よく星見てたんだろ?」

「何の星かなんてわかって見てなんかないで。一樹はわかってたかもしれへんがな」

 

そう言いながら早川は夜空を見上げた。

結構綺麗に光輝いていた。

 

最初はハルヒも火星なんかを見たりしていたが、そのうちUFO探しみたいなことをし始めたりしていた。

まあ、楽しめたかな。

 

 

 

さ・ら・に、翌日――。

 

今度はバッティングセンターに行くなんて言い出した。

どうせ甲子園の決勝でも見て野球がしたいなんて思ったんだろう。いい迷惑だ。

 

ハルヒは何発も快音を出してかっ飛ばしていた。(しかもかなり速い球だ)ホームラン賞までとってたな。

早川はこの前のセミのこともあってか、かなり豪快にバットを振り回してストレスを発散させていたようだ。

 

あたしもやってみたが、90キロの球を当てるのが精一杯だった。なかなか難しいんだな。

朝比奈さんも同様で「えい!」なんて言いながらバットを振っていたが、全部球の上や下だった。ここは可愛らしいのでオッケーとハルヒ。おい、あたしには散々ダメ出ししておいて……差別だ差別!

 

有希はずっと自販機の隣にあるベンチで読書にふけていた。

有希もこういうのやってみればいいのに。

 

 

とまあ、かなりハードな一週間目。

 

あたしの体は悲鳴をあげそうであった。

だが、神はあたしを見捨てなかったのだ!

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